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第18回1000字小説バトル
Entry17

しろくろ

作者 : 幸野春樹
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文字数 : 859
 今日、しろくろが遊びに来た。
 真っ黒い耳に白い顔、真っ黒い体に白い足。
 靴下を履いてるようなしろくろは、ぱぱしゃんに抱っこされてぐ
っすり眠っていた。
 
 僕は、ねこじ。
 オス。
 4さい。
 しましま。
 まるしっぽ。
 まぐろがすき。
 ひなたがすき。
 お外もすき。 
 ぱぱしゃんとまましゃんもすき。

 最近ちょっと、お外に出してもらえない。
 この前、遊びすぎて5日も帰らなかったから、ぱぱしゃんとまま
しゃんが、すごく心配したからなんだ。
 隣りのうちのしょうたが時々遊びに来るから楽しいけど、やっぱ
り時々はお外に出たいなぁ。
 しょうたはいつもお外の匂いがする。葉っぱや土の匂い。
 きっと、しろくろもお外の匂いがするんだろうな。
 早く一緒に遊びたいよ、早く起きないかな、どんな声かな。
 しろくろに手を伸ばしたら、まましゃんが僕を抱き上げた。
 何で。
 眠ってるから?
 僕、一緒に遊びたいよ。
 まましゃんがどこかに電話をかけて、ぱぱしゃんがしろくろを外
に連れて行こうとした。
 連れてかないでよ、まだ遊んでないよ、声も聞いてないよ。
 ぱぱしゃんに飛びつくと、腕からぽとりとしろくろが落ちた。ね
むったまんま、どさりと床に落ちた。
 まだ、しろくろは眠っていた。
 いつも愉快なぱぱしゃんが無言でしろくろを抱き上げた。
 外に連れて行ってしばらくすると、大きなトラックが来た。荷台
には、ビンや割れた電気がたくさんあった。ぱぱしゃんがしろくろ
を渡すと、トラックの人はビンの上にしろくろをどさっと置いた。
 しろくろはゴミじゃないよ!!
 僕はぐにゃっと動いた。
 僕を抱っこしてたまましゃんが僕をぎゅっと抱きながらあっと言
った。
 ぱぱしゃんが、怒ってしろくろを取り上げた。
 動かなくて、固くなっていたしろくろ。
 トラックが行ってしまった後、ぱぱしゃんは庭に大きな穴を掘っ
た。 そして、柔らかい紙にくるんだしろくろをそこにそっと置い
た。その傍にネコ缶を3つ置いて、葉っぱをたくさんかけて、そし
てまた土をかけた。
 しろくろの真っ白い手が見えなくなる瞬間に、僕は一度だけにゃ
あと泣いた。






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