第31回1000字バトルは、さとう啓介さんの『海石榴(つばき)』がチャンピオン作品と決まりました。
皆さま、ご投票いただきましてありがとうございました。
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※☆が実際の得票の数を表しています。★は「次点」「他に面白かったもの」といった感想の合計です。バトル集計には含まれません。
# | 題名 | 作者 | 点数 |
---|---|---|---|
26 | 海石榴(つばき) | さとう啓介 | ☆☆☆☆★ |
9 | 戦場 | 芋澤 扇風機 | ☆☆ |
33 | 俺たちに明日は無いに向かって撃て | るるるぶ☆どっぐちゃん | ☆☆ |
2 | 揺れる汽車は思いを生かす | 燕尾兆 | ☆ |
8 | 対決!怪人ランバオウ | 鈴木信太郎 | ☆★ |
12 | キス ミー ハニー | Ame | ☆★ |
18 | 土管 | のぼりん | ☆★ |
25 | ダンゴ3兄弟 | 上條 裕 | ☆ |
29 | おしゃまな恋 | 池田@ママ | ☆★★ |
10 | 小鳥 | 党 | ★ |
11 | この幸せが永遠に続くように | 野口 | ★ |
13 | 或る日ある時 | YamaRyoh | ★ |
22 | コイン | 林徳鎬 | ★ |
23 | 牛丼を食べるときに思いだす女のことなど | 岡野義高 | ★ |
28 | またあえるよ | 坂口与四郎 | ★ |
32 | 18 | ナンバー0 | ★ |
34 | スープの話 | 伊勢 湊 | ★★ |
35 | 死体 | 越冬こあら | ★★★ |
36 | ターザン夢を見る | 御自慰 小津郎 | ★ |
37 | なぞなぞ | おおた ゆう | ★ |
頭の中で何度も読み返した作品です。
印象的なタイトルといい、
娘→その息子と繰り返されるお墓参りの様子といい、
回想シーン挿入の絶妙なタイミングといい、
突っ込みどころがありません。
結婚を反対された理由まであえて書かれていないあたりも、
この字数で物語のゆとりをキープするのに良かったのではと思います。
今回の推奨作品は、さとうさんの『海石榴』に決めました。筆跡の奥深さがあります。1000字への思い入れも感じられます。作者個人の確立があります。
私が最終選考に残した作品は、次の5作品です。
「或る日ある時」YamaRyohさん
「海石榴(ツバキ)」さとう啓介さん
「おしゃまな恋」池田@ママさん
「スープの話」伊勢 湊さん
「死体」越冬こあらさん
他にも面白い作品はあったのですが、私が思う作品としての質の高さから、絞ってしまいました。
「或る日ある時」は、純真な学生の気持ちが読んでいて、心が洗われるようにさえ思いました。
「海石榴(ツバキ)」は、苦手な話しではありますが、作品としての纏まりが秀逸です。
「おしゃまな恋」は、温かな親子関係が可愛いです。
「スープの話」は、これも私の苦手な話しではありますが、やっぱり感動物は嬉しい。
「死体」は、やはり作者の観点ともいうべき異常さが楽しい。
こうやってみると、なんだかチャンピオンクラスの人達だけなんですが、これは仕方がないのかとも
思います。その中で今回は、一番心に残ったさとう啓介さんの「海石榴(ツバキ)」に一票。
なんだか、懐かしいんだか歯痒いんだか、うれし恥かしい感慨に襲われてしまいました。この確立された路線を突っ走ってもらいたいものです。
この作品を読み終わった瞬間、負けた!という気がした。
とにかくオチが効いている。
まあ、褒めすぎるのも無粋なので、これ以上は何も書かないけれど。
他に良いと思ったのは、池田@ママさんの「おしゃまな恋」と、越冬こあらさんの「死体」という作品。
「おしゃまな恋」の方は、何ともほのぼのした感じが伝わってきて良かった。作者さんの名前からして、私小説であろうか。しかし、小説というよりはエッセイという感じがしたのが、残念と言えば残念。
「死体」は、作者さんのセンスが光る作品であるように思われた。最初の一文で読者の心を掴み、その後の展開で意外性を持たせる。単に「死体」というタイトルから想像されるイメージとはかけ離れたアンバランスさが、良いアクセントになっていると思う。
全体的に「死」の香りを漂わせた作品が多かったのが残念だ。最近の風潮なのかもしれないが、似たような作品が続くと読む方がダレてしまう(勿論それは作者各個人の責任ではないのだが)。
又、レベルのそれなりに高い作品と、どうやっても陳腐に過ぎない作品とに分かれていたように思われる。恋愛ものは割と万人に共感を覚えさせやすい反面、陳腐に陥りやすい。恋愛ものとして区分される作品で良いと思ったものは、岡野義高さんの「牛丼を食べるときに思いだす女のことなど」、党さんの「小鳥」、Ameさんの「キスミーハニー」であった。他のものは、決して悪くはないが、良いとも言い難い作品であったように思われる。
面白い。最後の落ちで声を出して笑ってしまいました。最後の落ちを読
んでからもう一度読み直させていただきました。こういうの大好きです
林徳鎬とるるるぶ☆どっぐちゃん
前回、林徳鎬は、異様さ特異さをもって登場した。その資質の不気味さは、次作を期待させるのに十分だった。Q書房読者にそれほど厚遇されたとは言えなかった林を、ひそかに評価していた私は、次作でどんな作品を書くのか気にしていた。
今作、その異様さは、薄められている。しかし、評価されるかどうかを別にすれば、「小説」という枠組みを支持する多くの読者に「作品」として受け入れられるはずだ。逆に、前作の1000字3000字作品に異様さ加減を認めた読者にすれば不満の残る作品に映るはずだ。
しかし毎度秀作を出せというほうが無茶なのかもしれない。林の作品の丁寧な読者なら、今作は今作で林の資質を感じることはできる。それで十分ではないか。前回、いきなり『きりんの寓話』で登場したのが損だったのだ。そのうち『きりんの寓話』を超える作品を書くだろう。などと偉そうに思ってみたりする。
もう一人、僕が気にしている作者がるるるぶ☆どっぐちゃんで、今作、『俺たちに明日は無いに向かって撃て』もいい作品だった。この人はいくらでも詩に近づいていけるし、いくらでも小説に戻ってこれるという面白い資質を持っている人だと思う。
で、どれに一票入れとくか、となったときに、まあ林の『コイン』も悪かないし、どういう作品が評価されるかというマーケティング的なことは気にせずに突き進んでほしいという願いを込めて、林に一票入れとこうかと思うわけだけれども、そんな一票は嬉かないだろうと思い直し、るるるぶ☆どっぐちゃん(舌をかみそうな名前だ)に一票入れとこうというわけなのです。
独特の世界観は前々から気になっていましたが
最近はまりぎみで、これにしました。
この人の作品は3000字より1000字が断然好きで
上手く言葉にできませんが、なんか惹かれます。
(感想になってない?)
欠点のない作品だとは思いません。もう少し何が起こったのか明確になればいいのにな、と思いました。けれど、汽車の走って行くリズムと反比例する様に、ばらけて日常への適応力を無くして行く思考の流れが、静かに哀しいと思います。うーん、何と言うのかその「滑り落ちる感じ」が好きな作品です。
「ターザン夢を見る」 とどちらにしようか悩んだ。 「対決!怪人ランバオウ」は短いからいいのだ。 これで長かったら、「ターザン」を選んでいた。
恋愛に伴う、切なさ、後悔、、、恋愛しているときに感じるすべての 泣きたい気持ちがうまく押し込められていると思います。 恋愛していても感じる孤独をうまくお洒落に表していると思います。
子供の好奇心とそれに反する臆病さ、ずるさが良く出ていると思う。 内容としては、ゆう君が最初に土管に入って出てくる時に正面を向いてと言う様な表現があればもっと不自然で最後の足の裏の事もうまく掛かってくると思われました。以上!
タイトルはパロディで、本文は台詞だけで、性同一障害に対する偏見に満ちあふれていたりしますが、やりとりが何だか軽妙で、オチも賞味期限内(虚実表示の恐れ)なので、良いです。 ネタのバカレベルで言えば、平井堅も近い処なのですが、小説と現実世界の芸能人の食い合わせはどうも悪いし、駄洒落としての破壊力も足りませんでした。