第1回 1000字小説バトル

参加作品
1 路上 小笠原寿夫1000
2 よこはま会議 1000
3 メールひとつの天恵 アレシア・モード1000
4 ともだちをさがしに ごんぱち1000

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バトル結果発表
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路上
小笠原寿夫

Q.試験管Aに炭酸ナトリウムを入れ、ゴム栓をし、ゴム管を試験管Bに繋いだとき、試験管Aを下方置換により、ガスバーナーで熱したとき、どのような状態変化が起こるかを答えよ。
A.試験管Aに炭酸ナトリウムを入れ、下方置換にてガスバーナーで加熱する。ゴム栓からゴム管を通し、試験管Bに通す。だんだん理科の実験みたいになってきた。試験管の中に、粉末状の白い物質が現れる。白い物質を水酸化ナトリウムと名付ける。試験管Cが現れた。試験管Cを割ると、ゴム管が、首に巻き付いてきた。必死で振りほどくと、更に試験管Aを熱する。熱すれば、熱するほど、試験管Aは、上方置換へと変わる。試験管Aの口先に水が溜まり出す。試験管Bに石灰水を入れてやると、白く濁る。二酸化炭素が、蓄えられている証拠である。試験管Bにガスバーナーを近づけ、白く濁った液体を逆流させてやると、白くて苦い液状の物質が出来てくる。更に試験管Aを熱してやると、ゴム栓が、飛び出すか、試験管Aが、押さえるか。よく観察していると、ゴム栓が勝った。哀愁を帯びた試験管Aは、下方置換へ戻って行く。だんだん理科の実験みたいになってきたなという奴がいたので、シカトした。理科の先生が仲間に加わり、試験管Aをじっとみつめる。ゴム管が膨れ上がってきたかと思ったら、中から石が出てきた。石が7つたまると、願いが叶うかもしれない。白いパンティーが欲しい! と叫ぶと烏龍茶が出てくる。熱い烏龍茶を一気に飲み干せば、試験管Aが木の棒に変わる。給食の時間だ。オムライスとほうれん草ときのこのおひたしにおつゆ。スプーンをマイクにして、上手に食べる食べる。歯磨きをする。サッカリンナトリウムの含まれた研磨剤で歯を磨く。えづく。オムライスのハムが、洗面所に落ちる。ハムの事を考える。ハムが飛ぶように売れた。経済は循環している。それだけに笑いは起こる。商売繁盛すれば、世の中は潤う。世の中が潤えば、みんなが笑う。爆笑。脳と膓は線で繋がっている。だからこそ健康でいられる。健康を維持するため、人間は生きている。人間は生きている。動けば動くほど健康は維持できる。躍動。シャッターフラッシュを押す。カシャカシャと音が鳴るとき、それが目に残るチャンス。だからこそ、ぐずぐずになっても人間は生き続けなければならない。人間の記憶は確かではないのだから。人間の脳はそれほど強靭には出来ていないのだから。

よこはま会議

「わー、大変だ!」
「なんだ、どうした?」
「市長が突然、辞任だってさ!」
「さかな君じゃなくて?」
「ちがーう! 確かにさかな君に似てるけど、今はそれ言うな~! 
 それ言うと市長怒るらしいし」
「なるほど、故にこの時期か……」
「何が?」
「考えてみなよ。ここのところ、ぜんぜん盛り上がってないじゃん」
「ベイスターズ?」
「確かに弱い……、じゃなくて、今は市長の話してんでしょ!」
「市長なのに、知事達の会に無理やり入ってたもんね」
「そーなんだよ。何気に知事達の懇談会とかオフレコの食事会とかに参加してんだよね」
「あ、あれ、テレビ観ててなんか変だったな~」
「お前がそこにいていいのかって感じだったよな」
「あはは、でも、あの人、マスコミ出たがりだからしょうがないよ。で、何でこの時期に辞任なの?」
「全然盛り上がってないでしょ。Y150!」
「うん、全然盛り上がってないね。しょうがないから小学生が課外授業で来場させて参加人数を稼いでるみたいだね」
「そうだよ。有料エリアだって、そうたいしたことないらしいし、チケットの組み合わせも変らしいぜ」
「あ、俺も聞いた。動物園のチケットと抱き合わせなんだろ?」
「そうそう、変だよな」
「だから、その大失敗イベントのY150の責任を追及されるのが嫌なんじゃないかと……」
「あ、それ記者に突っ込まれてたよ」
「へぇ、勇気ある記者がいるもんだな。で、市長はなんて?」
「あれはイベント会社が考えたイベント内容だから、市長に責任はないってなこと言ってたよ」
「お気楽だな~。イベント会社もとんだとばっちりだな。かわいそうに」
「普通、一番上の責任者が現場にタッチしてなくても、何かあった時は責任取るのが普通だろ。それが理想の上司というものだ」
「うんうん、『責任は私が取るから、好きにやりなさい』とかな~」
「あはは、あの市長に理想の上司像を求めること自体、最初から間違いだけどね」
「ちげーねぇ」
「でも、どうなるんだろうな~」
「国政選挙と一緒にすれば予算の節約とか言いつつ……。投票箱とかそんなにたくさんあるのかね?」
「裁判官の承認投票も一緒だよな」
「一斉選挙だから、近くの市町村から借りるってわけにもいかないだろうし」
「それよりも、このばたばたしている時期に立候補する人いるのかな?」
「『確かな野党』って最初から与党になることを潔く諦めてる共産党はすぐ立てるだろうね」
「ここだけ世間とは逆行かよっ!?」

※作者付記:
横浜市、がんばれ!
イベントとか宣伝とかはもういいから、住みよい市・街作りをしてくれっ!

メールひとつの天恵
アレシア・モード

親愛なる兄者

ご無沙汰だな兄者。仕事もいいが、たまには山に遊びに来いよな。


>弟よ。
>
>こんなメールが届いたんだけどな。
>真偽の程は分からんが困ってるようなので。
>どうしたものだろう、ちょっと考えてくれないか。

了解だよ、兄者。

>>はじめまして! 私は放浪詩人セリヌンティウスと申します。今は無名の草なれど、いずれムーサの啓示を得て、大詩人として世に我が名を知らしめましょう。
>>
>>オデュッセイア!
>>
>>さて本日は、私の生涯の目標にぜひご支援を賜りたく勝手ながらメールさしあげた次第です。詩人である私の目標、それはあの『アテーナイ・春のバッカス祭り』で開かれる『悲劇勝ち抜き詩人バトル』の優勝に他ありませぬ。今だ知られぬ我が才能を以てすれば、一度ならず何十回でも優勝できる事でしょう。アイスキュロスとか目じゃないのです。しかし私はさる事情で悲劇バトルに参加できぬのであります。
>>
>>オデュッセイアーッ!
>>
>>ああ、まさに悲劇。かくも才能豊かな私に御座いますが、一体如何せん、バトル会場のアテーナイへ向かうにも、先立つものに事欠いているので御座います。ついてはあなた様のご支援を、ほんの僅かで構いませぬ、無尽の宝物庫の黄金のひと欠けらでも賜れば、私は千の悲劇も紡いで止みませぬ!
>>何とぞよろしく。
>>
>>オデュッセイアァ―ッ!


どこが悲劇だw

冥府の大神たる兄者は、こんな妄言いちいち相手する必要ないな。てゆーか才能ないぞこいつ。ここは黄金など遣らずとも、本来の夢を叶えようじゃないか。
本人も言ってるし、ここは俺からアポローンに頼んで適当なムーサ……タレイアとか? 女神のダイビング・ヘッドバットがパルナッソス山のトップからこいつの頭に直撃弾ってのはどうだ。
いわゆる天刑、もとい天啓だな、天啓。
運が良ければ大詩人、或いはそっちに行くけど、まあここはゼウスの仕業って事でいいから。
面白そうだろ。任せてくれよな兄者……




(ああ、そんな形で良かったわけか。流石はゼウスだな)
 弟からの返信に、冥王ハーデースは安堵した。
(こんな問題はゼウスに任せるのが気楽で良い。とにかく私は苦手なのだ、この手の仕事は)
 胸のつかえが取れ、ハーデースの眉間の皺が一つ減った。これで死人データベースの最適化にも没頭できるだろう。

(でも……タレイアって悲劇じゃなくお笑いの担当女神でなかったか?
 それってどうよ……
 ああ、いや忘れよう。どうせゼウスの仕業だ♪)

ともだちをさがしに
ごんぱち

 水の中にどんどん体がしずんでいく。
 クラスメイトたちは、半分笑ったような、困ったような顔でノブを見つめ、ウロウロしているだけ。
 助けて、と、さけぼうとしたノブの口に水が入って、そのまま胸の中にながれこむ。胸が冷たくなって、そこから体中が冷たくなっていった。

 ノブは目をあけた。
「だれも……助けて、くれなかった」
 大きくためいきをつく。
「ぼくには、本当の友だちなんて、いなかったんだ」
 ゆっくり起き上がり、部屋から出て行った。

 外に出てから、ノブは道を歩く。
 ポカポカした初夏の日差し。
 土の道。
 薄い黄緑の草の生える地面に、タンポポの黄色がぽつぽつとちらばっている。その中に、ひときわ大きなタンポポがあった。
「タンポポさん」
「ん……なんだね?」
「ぼくの本当の友だちを見ませんでしたか?」
「ふむ」
 少し考えてから、タンポポは言う。
「本当の友だちというのは、作るものだと思うね」

 草原は終わって、田んぼにさしかかった。
 田んぼの土はなまぬるく、ぐんにゃりしたドロになっている。
「ドロ……か」
 ノブはドロをこねてみる。
「なにをやっているんだね?」
 ノブをながめていたウシガエルが尋ねる。
「本当の友だちを作ってるんです」
「こいつがかい?」
 ウシガエルはドロの友だちをまじまじと見る。
「本当の友だちというのは、まず、自分が相手にとって本当の友だちになることからはじめるものだと思うがな」

 田んぼの中の道を歩くうちに、家がふえはじめ、それから、町にたどりついた。
 ノブは自分と同じぐらいの背丈の男の子を見つけて、声をかけた。
「君、ぼくと本当の友だちにならない?」
「え?」
 その子は、ちょっとおどろいた顔をしてから、少し考えて言った。
「本当のって、なに?」

「……ブ……ノブ! ねえ、ノブ!」
 泣きそうな声が遠くでしている中で、ノブは目をさました。
 医者と、両親と、それからクラスメイトたちが、心配そうにノブを見つめていた。
「……みんな」
 ノブは病院のベッドで横になっていた。
「ふむ、これで一安心ですな」
 医者は顔をほころばせる。
「良かったぁ……」
「あんまりおどろかせるなよ!」
「何にも出来なくて、ごめん」
 クラスメイトたちは、色々な顔で、色々な声で、色々な事を言う。
「そうか……友だちっていう言葉でくくる事が、そもそも、ちがうんだ」
 ノブはおかしげに笑った。
 病院の少しあいた窓から、涼しい風が吹き抜けて行った。