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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第6回バトル 作品

参加作品一覧

(2010年 1月)
文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
ごんぱち
1000
3
アレシア・モード
1000

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197
小笠原寿夫

 我、死ニ様ヲ想像シタルベキハ他ノ生キ様ヲ照ラフベキガ如キナリ。故ニ他ヲ愛スベキ事、己ヲ知ル事ナレバ此、真実ニテ候。我、代ニ融ケ逝ケバ他ノ夜更ケヲ待チ侘ビシ候。死ニ逆ラフ生キ様ヲ以テ他ヲ排シタル事、代ニ逆ラフ事ナレバ他ヲ愛デ死ニ逝クヲ以テ此真実ト為ス。
 天ヲ以テ義ト為スナルハ地ヲ以テ仁ト為ス事ト同義ナリ。
 仁ハ人ヲ愛スベキ心ナリ。
 義ハ正義ヲ愛スベキ心ナリ。
 智ハ真実ヲ愛スベキ心ナリ。
 勇ハ志ヲ愛スベキ心ナリ。
 此、南無阿弥陀仏ニ祈リ込メシ数珠ヲ左手首ニ巻キ込メ只代ヲ想フ。人、極楽浄土ヲ想ヒ地ヲ踏ミ生キル。他ヲ想フ心己ヲ想フ心ヲ超越シシ折死者ヲ悼ム心態ヲ為ス。死ニ逝クモノ世ニ在ラザレド魂ゾ此処ニ在リ。人、永遠ナラザルナレバコソ我ガ心ニ一片ノ曇リ無シ。心、此処ニ在ラザルナレバ宇宙ヲ想ヒナガラ地ヲ踏ミシ候。世ヲ宇宙ニ喩ユレバ人、相違ナク宇宙ノ一欠片ニ相違ナシ。代ヲ偲ビシ心アレバコソ我ガ生キ様ヲ見ユレド行キ着ク当テヲ探シ求メル旅ヲ以テ人生ト為ス。人鏡ニ於ヒテ己ヲ見ユルハ己ヲ鑑ミル事ナリ。己が己を想フ折、人ハヒトツノ魂ト化ス。生キ抜ク術ヲ見イ出シシ折、相反シ人間ノ赴ク様自ズカラ一点ニ決マリシ候。人、生ヲ受ケシソノ日カラ死ニ向カヒ歩ミ行ク。尚、生ニ執着スルハ代ニ残シ賜フ物アルベキ為ナリ。他ガ為ニ生キ抜ク事ゾ人ノ道ナルハ我ガ為ニ生キ抜ク事ト同義ナリ。武士道トハ死ヌル事ゾト見ツケタリ。死ヌル覚悟ニテ生キ抜ク事コソ本来ノ生キ様ナリ。悠久ヲ以テ代ノ大義名分トナルハ子ヲ想ヒ遣ル心ヲ広ク持ツ事ナリ。代に蔓延スル悪ト戦フ事ヲゾ情トスルハ義ノ心ヲ持チ愛スヘキ何カヲ守ル事ト心得ヨ。死ヲ恐ルル心誰モガ抱クナレド親想フ心此ヲ超エシ折我命ニモ捨テ難ヒ信念ヲ以テ此ヲ投ゲ売ル。親想フ故ニ己ヲ小サク殺ストアラバ代ヲ想フ故ニ他ヲ活カスニ似タリ。他ヲ肯定シ慈シム心アラバ自ズト己ヲ成長サス事、容易ナラザルべカラズ。
 親ヲ愛セ。子ヲ愛セ。友ヲ愛セ。恋人ヲ愛セ。妻ヲ愛セ。己ヲ愛セ。世ヲ愛セ。
 証明セヨ。我ラガ先祖ガ過チヲ犯サザリシヲ。
 伝達セヨ。我ラガ何ラ過チヲ犯ザリシヲ。
 淘汰セヨ。我ラガ民族ヲ亡キ者ニシタル多民族ヲ。
 脱出セヨ。此ノ殺伐トシタ世ヲ変エルベク。
 教育セヨ。我ラガ世ヲ自ラノ手デ作リ出スベキヤウニ。
 想像セヨ。争ヒ無キ世ガ引キ寄セラレタル事ヲ。
 対話セヨ。君ガ代ニ送リ出ス最高克ツ最愛ノ子孫繁栄ノ為ニ。
197 小笠原寿夫

誤嚥
ごんぱち

「げふっ、げほっ、えっほっ! げほふぁっ、げふっげほっ、がはっ、げほっ、が、あっあっ、ふぁっ、げふほぁっ! げほっ! えほっ、げほげっ、えおぇ、えぉっ、げふっ、げは、がははっ、げふっ、げほっ、おぅおえええっ、げほ、ぶふぁっ、いぃぃげえっほっ、あうあえべぶぉっ、げほっ、あうぉっ、げほっ、ぶふぁっ、げふっ、ひぃっ、げふ、えふぁっ、ひぃっ、ぜぇ、は、げほっ、げぶふぁっ、ぶじゃっ、げほっ、あおああっ、どぷぁふぁふぉ、ぶふぁっ、ぷぁっ、げ、いいっひ、けはっ、ごあお、ぉらえげぇろ、えぉご、でばぇろぁお、いーべらしゅ、おぬずぁお、え、ぎひあうおらけ、ごぶ、ぷっ、えぼらぷぇ、えがらべなっ、おごらえべれべばぼっ、あぐあらえらおごぶ、ひぁふぁおごえあがご、ぐおぁっ! えげれっ、ぐばぼふぁっ、えべれっ、あぶぁ、えほっ、けほっ、かああっ、けかっ、あごっ、えぐぉあっ、ぜ、ぜはっ、うぷぁふぉはっ、うぅ、ひはっ、ぱつぁおら、かぉはぁっ、ひだぁおあおっ、あかっ、げほっ、う゛ほ、ばぼふっ、ひでぁっ、ぐぇほっ、べほっ、っだばげら、ごぶらべぼ、えげっ、げあぼごろらればぼればぼ、げれ、あおえうおおうぽぁっ、いげうぉぼらえべ、ぇおぉら、ぅあほぁがぶらびれば、おんばらばぶらべらべぼだぼまらぃ、っっ、ゅおぁえぶゅぎ、ひぁふぁ、かはっ、だばぼらべらばらす、さはらべぼらど、かげらがばっ、けはっ、け、けごああらわぁ、ひぶぁらべ、おぼぶばらべっ、うごがあるあぉ、げへっ、げへへへっ、げふぉふぁほっ、ぶずざ、ぜあおぞ、ぞぶらげっ、ゅあばげらごばぁぶら、ほんぶらだばらべぼ、ぃげらべ、べらぶぼぉ、あひゃえおら、のらべあばび、びひっ、えべらがごっ、あうえん、んじょあばっ、だぶらごらばらべ、ちぁおわうらふぁ、ひぁゅえわうらばべっ、いぎごぐげらしょらさ、ぱぴゃはぁ、えふぁろぁああおっ、げふっ、おげ、げ、あうげあぇあろ、げぇぇぇ、げほっ、がはっ、かかかぁああがばあ、あはっ、ふばっ、ぶふぁっ、ぶじゃばらべらぼぶら……ぜぇぜぇぜぇ……げほっ……ぜぇぜぇ…… ぜぇ……げはあああ、おげれえええあああああああえええええおお……」
 白雪姫の喉に引っ掛かっていた毒リンゴは取れました。
 王子は生き返った白雪姫を后に迎えました。そして、魔法使いの継母は王子様が送った兵隊に殺されました。
 こうして、白雪姫は、王子様といつまでも仲良く幸せに暮らしましたとさ。
誤嚥 ごんぱち

ねこのきもち
アレシア・モード

 元日に届いた年賀状の、一枚目がそれだった。
 写真年賀状に刷られていたのは変てこに改造された猫写真だった。ベースは茶トラだが、その縞々がくっきり黒々と上から塗られている。どうやら虎のつもりらしい。強そうに見せるためか顔には太く眉が描かれているが、情けない八の字眉はただ失笑を誘うだけだった。フォトショップで描いたか加工自体はリアルだ。
 まゆ毛ネコのにやけた口元からはフキダシが出て、中に台詞が書いてある。
『トラの寅次郎でーす。すぐ遊びにきてニャ』
「と、寅次郎ッ!」
 全然気付かなかった。慌てて葉書の表を見る。やはり奴の年賀状だ。あの馬鹿野郎、私の寅に何をした。奴がフォトショとか使うわけない!


 数十分後、私は馬鹿の部屋のチャイムを連打していた。
「開けろこらァ」
 わぁいアレシアさんだ♪もう来たよ、と馬鹿な声がしてドアが開く。
「さ、入って。早く閉めてね。寅次郎が出ちゃうから」
「にゃあ」
 馬鹿の足下で寅次郎が嬉しげに啼いた。その顔にはやはり太い眉が描かれていて私はがっくり肩を落とした。
「これ、落とせるんだろうな?」
「洗えば落ちますよ。でもせめて三が日はトラらしく……」
 私は無視してブーツを脱ぎ、寅次郎を抱き上げ部屋へ上がった。近くで見れば一層哀れな縞々は、尻尾の先までご丁寧に描かれて、悲しいやら馬鹿馬鹿しいやら。
「一体、私の寅を何だと思ってる」
「いや私のって言われても……飼ってるの僕ですよぉ」
「寅はな、私の恋人だ。貴様は彼の食事住居その他お世話を担当してるだけだ」
「それを飼ってると言うんです。ていうかあなたの恋人って僕でしょ」
「はァ?」
 どさくさに何言ってやがる、と思う間もなく馬鹿は私にのし掛かってきた。
「アレシアさん~~クリスマスも~年末も~ずっと仕事で会ってくれなかったし~寂しかったんです」
 仰向けに押し倒され、私と馬鹿の目が合う。その隣にもう一つの顔が覗き込む。まゆ毛ネコの顔だった。
「にゃあ」
 私は一秒間だけ脱力し、
「ええい、鬱陶しい」
 顔を寄せてくる馬鹿をはね除け蹴り飛ばした。
 ああ、この間の悪さが馬鹿の証拠だ。こっちは新年の朝から頭の中はまゆ毛ネコで一杯なのに、急にそんな気分になれるか。何が寂しかっただ。自分で仕掛けておいてこれだから情けない。
「とりあえず酒でも出しやがれ。正月だろ」
「はーい♪」
「にゃあ」
 私は寅次郎の頭を撫でて嘆息した。こうなりゃ私がトラになってやる。