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1000字小説バトル

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1000字小説バトル stage3
第9回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
本作品は掲載を終了しました
2
小笠原寿夫
1000
3
ごんぱち
1000
4
石川順一
1026

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(本作品は掲載を終了しました)

保育園
小笠原寿夫

「腹が減って死にそうや」
そう漏らすメールに返ってきた答えは、
「それやったら飯炊いて食えばええやろ」
であった。至極当たり前の答えなのだが、それが出来なかった。何故なら、米がなかった。真夜中にメールをしたことにデリカシーの欠片もなかったと思うのだが、あいつはきっちり返信してくれた。少し傷ついたが、2010年2月18日(木)現在、それは見事なまでに、真をついた突っ込みだった。あいつと私とでは立っている状態が違う。今となっては、笑い話で済むかもしれないが、逼迫した状況に、それは酷な裁きだった。
「腹が減っては戦ができぬ」
そのように返信したい気持ちでいっぱいだったが、いっぱいいっぱいの私には、それが出来なかった。何せ腹の中も身体の中も空っぽなのである。とりあえず私は煙草を吸うことにした。眠眠打破というサプリメントがコンビニに売っている時代に、
「飯を喰って早く寝たい」
という考えはあまりにも子ども染みていて、わがままな欲求だった。話は戻るが、煙草というアイテムは、腹の虫が収まらないときに、気を間明わせる効果がある。その意味に於いて、ドラゴンクエストの「薬草」というアイテムはヒットポイントを回復させる手段としてよく練られた発想だった。10Gで買えるそのアイテムはモンスターをやっつける勇者には必需品だったのかもしれない。レベルがアップするに連れ、薬草を手放し、勇者は「ホイミ」という呪文を覚え、薬草を買っても買わなくてもよい状態になる。ホイミを唱えるとOooという効果音と共にヒットポイントが回復する。私が子どもの頃の話である。ゲームばっかりしている子どもだった。ゲームと面と向かって、物語りに吸い寄せられていく私を見ていて両親はどのような視線で私を見ていたことだろうか。現実を見よう。私は生活保護受給者。独り身である。娯楽と言えば、メールを打つことくらい。テレビを見ることも出来る。パソコンに向かい、素人の手習いも出来る。鏡に向かい、歯磨きをすることも出来る。上等じゃないか。やってやるぞの姿勢を崩させ、やる気になればなんでも出来る。浮浪者のような身なりをしていてもその真は夜露を凌げる家がある。ワンルームのアパートで、どこが悪いのかわからないことが、また頭を悪くする。ケータイ気違いと呼ばれながらも、文章を書いているこの現状が私の病をまた悪化させる。どこが寂しいのか分かっている。さあ、飯を食べようか。
保育園    小笠原寿夫

只、玉の緒を繋ぐ為
ごんぱち

 5.5ミリ小銃を抱えたまま四谷京作はタコツボの中で毛布にくるまりうずくまる。
 月は満月に近く、空は星で一杯に埋まっている。
「静かだな」
 隣りで毛布をかぶっている蒲田雅弘が呟く。
「起きてたのか」
 四谷はちらりと蒲田を見る。
「あんまり眠れてねえんだ」
 蒲田は苦笑いを浮かべる。
「……オレもだ」
 四谷は襟元からペンダントを出し、握り締める。
「半年前は……ただのサラリーマンだったんだぜ」
「――四谷」
「あ?」
 蒲田はじっと四谷のペンダントを見つめる。
「それって、ロケットか?」
「あ、ああ、まあな」
 照れたように四谷は笑い、ペンダントを開く。中には、若い女の写真が入っていた。
「オレ、この戦争が終わったら、結婚するんだ」
「ちょっ、バカ、何やってんだよ!」
「え?」
「それ死亡フラグだろ! 死ぬぞ、お前! つかもう死んだも同然、死体だ、ゾンビみたいなもんだ!」
「そ、そうかな」
「かあああっ、もう信じらんね! テンプレにも程がある! さっさと潰せ、フラグを潰してしまえ! 死にたくなければな!」
「そうは言っても、結婚はOK貰ったし」
「んなもんいくらでもひっくり返せるだろ! そうだ、慰安所で撮った写真あったろ、あれの中でいちばん露骨なの送っとけ、あれ! そーすりゃ、絶対あっちの方から振って来る。それで嫉妬しないような女は、そもそもお前に惚れてなんかいねえ!」

 引き揚げ船の船室で、荷物を枕に蒲田は独り寝転がる。
 手には認識票が握られていた。
 周りの兵士たちは皆疲れ切った表情をしている。戦場での心身の疲労、命が助かった安堵感、そして、これから先の生活への期待と不安。全てが積み重なっていた。
 汽笛が船内にまで響いて来た。重い音は、床板をビリビリと振動させた。
「陸だ!」
 丸窓を覗いていた兵士が叫ぶ。
「日本に戻って来た!」
「やったぞ、帰って来たんだ!」
 兵士たちは我先にと甲板へ上がって行く。
 途端にがらんとなった船室で、蒲田はゆっくりと起き上がった。
「――なんだ、みんなどうした?」
 丁度その時、トイレから四谷が出て来た。
「陸が見えて来たらしい」
 蒲田は自分の認識票をポケットに突っ込む。
「限りなく憂鬱なんだけど」
 四谷の背嚢からは、手紙の束がはみ出していた。
「……それ、全部彼女のパパからか」
「娘を泣かせやがってぶち殺すって」
「大丈夫、ショットガンパパに射殺なんてフラグねーから」
「現実には割とありそうだよ!」
只、玉の緒を繋ぐ為    ごんぱち

火の愉悦
石川順一

「燃え上がる」
 スーパーの駐車場にそれはあった。発泡スチロールにすっぽりと収まった中古の武者兜には大量のネギがばらまかれて居り、私には山に有る緑の森の様に見えた。既にスーパーの従業員に通報されて居り、早く実行しなければ私の狂気は実現出来なくなって仕舞う。青々とした山の狂気、ぞくぞくとする炎のエロス、それらは女の私にとっては、必要不可欠のものの様に思えた。私はこのスーパーで深夜ストリップショウをやって居る所を通報された事があり、ブラックリストにも載って居て、面もわれて居るので警察に通報されたら直ぐに御用になって仕舞うに違いない。早くしなくては。私はその発泡スチロールに入念に灯油を撒くと、マッチを擦って火を放った。

「ライヴを盛り上げる」
 割れた酒瓶の中身は玉子酒に60度以上のウオッカが混ざって居た。私はそれらをなめまわして、気をためて吐き出して、燃え易い空気の状態を自分の周りに作り出した。そうしておいてから、マッチを擦って息を体中に吸い込むと、体中から息をマッチの火めがけて吐き出した。紅蓮の炎は直線状のアリアとなってライブ会場を駆け抜けて行った。

「ボーマンナスオさん」
 ボーマンナスオさんは火薬工場の会長だったが、和菓子工場も秘かに経営して居た。和菓子工場の方は無許可操業だったので、地下の秘密の和菓子工場はばれないように全くの無音稼働をして居た。地域の雇用、地域の御中元御歳暮などの贈答品需要を満たしたり、ちょっとしたお茶受けとしてバカ売れしたりしてこの地域では全面的に受け入れられて居たのだが、無許可操業を警察が見逃す筈も無く、ついに警察の手入れが入る事になって仕舞った。
ボーマンナスオさんは警察の手入れを食らうぐらいだったらと、自社製の火薬で和菓子工場の方は燃やして仕舞った。

「ゴリラの告白」
 -みんな私でした。私はスーパーの駐車場にあった発泡スチロールに灯油を撒いて火を放ちました。ライヴを盛り上げると称して、家族とも言えるファンの皆さまから負傷者を出して仕舞いました。ボーマンナスオとは私の事です。警察の目を眩ませる事には成功しましたが、それで済む筈も御座いません。-

 全てあらいざらい告白したゴリラは、気が高ぶって来たのか体から湯気が立ち始め、体中が高熱化して、火をを吹き燃え始めた。
 「皆さん逃げて下さい」
 そう言ったかと思うとゴリラは自ら炎と化して、三日間燃え続け、自ら高層ビルに昇って、高層ビルの屋上から落下して果てた。