第18回 1000字小説バトル

参加作品
1 子ほめ 小笠原寿夫1000
2
3 和尚vs小僧 ごんぱち1000
4 世間話 石川順一901

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バトル結果発表
※投票受付は終了しました。
子ほめ
小笠原寿夫

 おはようございますという挨拶がございます。それ自体に何の意味もございません。「おはようございます」がどうしたというのでしょう。
「本日はお早いことでございます」
くらいなら意味も通りましょうが、それを略して、「おはようございます」という言葉が出来たんやそうでございます。挨拶と申しますのは、「私は、あなたに敵意を持っていませんよ」という合図のようなものなんやそうでございます。挨拶の次に重要になって参りますのが、相手を誉めるという作業なんやそうでございます。道端で親子連れにあってもね、「や~かわいい顔してまんなぁ、女のお子さん? いや、まぁ、男の子でんの。あんまりかわいいから女の子と勘違いしとりましたわ。ニコニコ笑ってる顔がなんとも愛らしい。末は総理か大臣かっちゅーお顔してまんがな。将来が楽しみでんなぁ。さいなら、ごめん。」とこう言ったら、相手も喜びまんがな。
「こんにちは。お早いこってございます。」
「どないしたっちゅーねん。」
「たまには旨い酒飲みたいっちゅーて来とりまんねや。旦さん飲んでる酒はどこの酒でんねん?」
「おぅ、これは灘の酒や。」
「どないして手に入れましてん。」
「海外に出張に行った帰りがけの旦那捕まえて、色が黒なりましたなっちゅーたらこの酒おごってもうたんや。」
「色が黒いっちゅーだけで一杯もらえんのかいな。」
「色が黒いにはちゃんと意味があんねや。海外で仕事してお金儲けしてきたんや。それをぐるっと一周回って色が黒いとこういかんかい。」
「はっはーん、相手を誉めたらよろしおまんねんな。」
「お前に極意を教えたろ。相手の年を聞け。で、年より四つ五つ若こ言うてやったら相手も喜ぶわい。」
「四つ五つ若こ言いまんのかいな。」
「相手が四十五なら四十に見えまんな、とこういかんかい。」
「ほうほう。ほな行って参ります。」

「こんにちは。アンタいくつ?」
「アンタ誰や。」
「アンタこそ誰や?」
「色が黒おまんなあ。」
「誰にもの抜かしてけつかんねん。」
「お宅の年はいくつでんねん。」
「わたい、四十になります。」
「四十じゃ具合悪いねん。四十五にしてもらわれへんやろか。」
「何ゆうてなはんねん。四十に見えなんだらいくつに見えんねん。」
「どっからどう見ても四十にしか見えまへん。」
「当たり前や。」
「ここに寝ているお子さん可愛らしい顔しとりますけど年はいくつでんねん?」
「まだ三つや。」
「へぇ~、まだ産まれてない。」

※作者付記:
(註:落語「子ほめ」より)

(本作品の掲載は終了しました)

和尚vs小僧
ごんぱち

 和尚さんと小僧さんが法事に出かけました。
 檀家はお寺からかなり離れており、和尚さんと小僧さんは随分と長い事歩いていました。
 そのうちに、小僧さんは少々もよおしてきました。
 そこで、道の端に立って、田んぼに向かってやらかそうとしていると。
「珍念、何をしておる」
「ええ和尚様、ちょっと小便を」
「これ、田に小便をするとは何事か」
「え、でも、水に小便だから目立ちもしないし……」
「田には田の神様がいらっしゃるのだ。罰が当たるぞ」
 和尚さんに叱られて、小僧さんはしょんぼりしながらも、もよおしているものは収まりません。
 道端に立っている大木に向かって、やらかそうとすると。
「これ、珍念。木には木の神様がいらっしゃる。小便をかけて良い道理があるものか」
 また叱られました。
 何とか我慢して小僧さんは和尚さんについて行くと、道の先に橋が見えて来ました。
「おお、川があるな。水を汲んで行こう」
 橋まで来た和尚さんが、川に降りて水を汲もうとしていると。
 小僧さんは橋の縁に立って、和尚さんの頭に思い切り小便をかけました。
「何をするか、珍念!」
「え、えへへ、だって、和尚さんの頭にはカミがないから」
 和尚さんはじぃぃぃっと小僧さんを見つめます。
 それから、黙って手招きをしました。
 小僧さんは薄ら笑いを浮かべながら、和尚さんの所へ降ります。
 和尚さんは足元の石を指さします。
「え? 何ですか?」
 小僧さんが石を覗き込むと。
「ひゃああっ! つ、冷たっ!」
 小僧さんの頭に、和尚さんがぶっかけました。
「な、なな、何をするんです、和尚様!」
「お前の頭にもカミはなかったな」
「あ、う、そ、そうですけど……」
 小僧さんは顎から滴を垂らしながら俯きます。
「良いか。我らは僧侶だ。僧侶は人を諭し導く者だ。それが、人目のあるそこいらの道端で小便を垂れる。そんなみっともない事をして良い道理があろうか? 外へ出るのならば、前もって小便ぐらいは済ませておくべきであるし、万が一我慢が出来んのであれば、そう言って素直に詫びれば、そこかしこの家で、厠を借りる事も出来たであろう」
「その、でも、和尚様も、ここでやらかしましたよね?」
「これは、ただの水だ」
 和尚様は、水筒を見せました。
「これに懲りたなら、立ち居振る舞いには気を付ける事だ」
 それから和尚様は、何事もなかったかのように先へ進み始めました。
「……いや、和尚様、頭は……洗って下さい」

世間話
石川順一

  ホワイトジャックは神田の江戸前寿司を昼食に食べた。
 食べるまでに結構苦労した。
 「こら白い靴は並ぶんじゃない、看板に書いてあるだろう、黒い靴の人様限定って、白い靴はおととい来な」
 せっかく来たのに門前払いじゃってんで海田靴店で黒い革靴を新調する事にした。
 やっと江戸前寿司にありつくといろいろとせっつかれた。
 「お前さん、ネットゲームでがんを治す新手法を開発したそうじゃないかわしに教えな」
 店内は青竹のかおりが上品で落ち着いた雰囲気を醸し出して居た。
 「そうですねえ、ネットゲームを12時間やるんです。ですが、ただ12時間やればいいってもんじゃない、私が開発したゲームを12時間やるんです」
 ホワイトジャックは自信満々に答えた。
 「そのゲームとは」
 「ガンガナオールゲームです」
 「そのまんまじゃないか」
 「タイトルはそのまんまだが、効果はあります」
 「その効果とは」
 「体中に生気が湧き起こりがん細胞を死滅させます」
 「本当かいな」
 「本当です」
 「それはそうとおまいさんお母さんと一緒に今日スーパーに忘れ物を取りに行ったそうじゃないか」
 「先ずは日用雑貨のエキスポへ母の運転で行きました。それからです。行ったのは。傘と合羽を取りに。今朝雪が降って居て積っても居たし母が濡れにくい白い靴を用意したのです。そして傘を差し、合羽を持って行ったのです。でも行ったら晴れ間もあり、傘は使ったが合羽は全然使わなかった。だが傘も合羽も全て忘れて来て仕舞った」
 「スーパーへなにしに行ったの」
 「エイズとがんの撲滅キャンペーンをやりにです。当然じゃないですか、2010年12月31日です。ネットゲームを開発した事だし、当然だと思います」
 「で、効果はあったの」
 「ありました。熱烈な支持を受け、沖田君には歌を歌って貰いました」
 「沖約尾君には歌って貰わなかったの」
 「彼は名前が沖田君と紛らわしくって残念ながら歌って貰えませんでした」
 「それは残念、聞きたかったのに」
 「そうですねえ、歌ってもらえれば録画していましたから、その場に居ない人にも聞いて貰おうと言う企画でした」
 「へえーそりゃーいい企画だね」