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1000字小説バトル

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1000字小説バトル stage3
第19回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
本作品は掲載を終了しました
3
ごんぱち
1000
4
石川順一
1011

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こんなはずじゃなかったのに
小笠原寿夫

 ギィー……ガチャガチャ……ギィー……ガチャ、スポッ
 右の胴体から背中にかけてオイルを差してやると動きが断然よくなる。後ろの方からラジオ音が聞こえたと思ったらそれは何やら説教にも似た懐かしい声だった。まさか幻聴かと思いきや振り返ると、大きな丸い物体がまさに地球を思わせる球体に目を奪われる。するとそこへ鼠が現れた。核兵器を持ち出したその球体は機械音を立てながら鼠を攻撃し始める。なんとかなだめすかしてその球体を止めると今度は見たこともない古道具が飛び出した。何でもどこへでも行けるというその扉の向こうには美女が浴槽に浸かっている。
「きゃあ」
と鳴くその美女から水を浴びせかけられあわや大惨事に見舞われるが如くに逃げ帰る。さてこの球体、始末に終えぬとやや不思議。風呂敷を出したと思えば中から小さな球体が……。このまま行くと厄介者のこの球体、増殖しかねないぞと急いで押し入れの中に押し込み布団をかける。嬶が帰ってきたから言い訳をどのように取り繕うかと思案の末、出した答えが猫を飼っている。嬶が階段を降りていくのを見計らい球体を窓から放り投げるとその球体から竹とんぼが飛び出して中空に舞い上がる。帰ってきた球体にややもすると不死身の産物に仕上がったかと我が罪を償うつもりがこの球体、ラジオ音で慰めを述べ始める。なんぞやと聞いていると今度は風呂敷から茶菓子を取り出し私に持たせる。何時なんどき如何なる時も肌身放さぬその風呂敷包みのずしりと重いこというなれば一見の平屋建てを片手で持ち上げるが如し。一世一代の大博打にてその球体を磨いてみるに塗装が剥がれ落ち中から銀色の物体が……。洒落にならぬと球体に抱擁してみると風呂敷からは工具とプラモデルがわんさか出てくる。
 何ゆえならぬ何をばせんとこれを見やるに風呂敷の隅に小さな説明書。ここぞとばかりにプラモデルを作り出すとこれがなかなか面白い。完成品を見上げると大きな机と椅子になっている。備品のコンセントプラグを差し込むとぴっかりライトが点灯す。なにごめなにごめ文句を唱えるとスケジュール帳とシャープペンシルが入っている?さあ働けといわんばかりにこっちを見やるその青い球体は猫型ロボットに似ていたとかいなかったとか……。その球体に緑色を加えると丸い地球を彷彿とさす柔らかな球体に……。茜差す窓から斜に光るその球体をもう一度転がすと風呂敷に包んで粗大ごみの袋に入れた。
こんなはずじゃなかったのに    小笠原寿夫

(本作品は掲載を終了しました)

ウサギとカサ
ごんぱち

 ある雨の日のことです。
 ウサギが街に買い物に出かけました。
「おっ、雑誌の新刊が出てるぞ」
 ウサギはカサ立てにカサを置いて、本屋に入って行きました。

 ウサギが店から出た時、まだ雨は降っていました。
 カサ立てから自分のカサを取ろうとすると。
「あ、あれ?」
 カサがありません。
「なんてことだ! 盗まれた!」
 もう一度カサ立てを見ます。
 何本かカサがありますが、ウサギのカサはありません。
「……ひょっとしたら」
 ウサギは考えました。
「ひょっとしたら、誰かがカサを間違えて持って行ったのかも知れないな」
 カサ立ての中から、一本のカサを取ります。
「うん、そうだ、そうに違いない」
 ウサギはそのまま、誰かのカサをさして帰りました。

「今日は街に映画でも見に行こうかな」
 数日後の晴れた日、ウサギはまた街にやって来ました。
「さあて、あの映画の席はあるかなぁ」
 ウキウキした気分でウサギが歩いていると。
「このカサ泥棒!」
 ものすごい怒鳴り声がしました。
「な、な、ななな、なんだ!?」
 ウサギは文字通り跳び上がって、それから声の方を見ます。
 そこには、イタチの首根っこを掴んでいるクマがいました。
「ひぃぃ、ご、ごめんなさい、カサは返しますからぁ!」
 イタチは涙をボロボロこぼしてあやまりますが。
「今さら遅いわあああああ!」
 クマのツメが、ぎらりと光りました。

 ――イタチは、アザだらけ、血まみれになって、手も足もあり得ない方向に向いてしまいました。
「ふん、これぐらいにしておいてやらぁ。もう二度と、おれの見えるところに現れるな」
 クマはイタチにタンを吐きかけ、行ってしまいました。
「だ……大丈夫?」
 ウサギが近寄ります。
「……許さない、ゆる……さ」
 イタチがぶつぶつと呟いています。
「これも……あっしのカサが、ぬすまれなければ……カサを盗んだヤツ、ゆるさない……どこまでも、おいつめて……一生、苦しめて……」
「ひっ!」
 ウサギは全力で走り去りました。

 家に帰ったウサギは、盗んだカサをバラバラにして燃やして、庭のずっと深くに埋めました。
 そして、街に近付く事は決してなくなりました。
 それでも、時々夜中に目が醒めるのです。ふと気がつくと、今度は自分の番かも知れない、と、恐怖に打ち震えるのです。
 いつの間にか毛は全て白髪になり、寝不足で目は真っ赤になっていました。
 それからです。
 ウサギの毛が白く、目が赤くなったのは。
ウサギとカサ    ごんぱち

我が友ヒトラー
石川順一

ホワイトジャックは撲滅キャンペーンを止める事にした。結構ボランティアはしんどい。2010年末キャンペーンをやらして頂いたお礼に店内のトイレ掃除をしたのだがパワー液とジフを垂らしてデッキブラシで男子トイレをごしごしして、白く泡立ったまま完了させたら、その中途半端さが問題になった。
 2011年1月8日撲滅キャンペーンの後お礼に店内をモップで拭いて居て、偶然5千億円を拾ったのだが、届けようとした所、まさか交番に届けるんではないでしょうね、交番に届けると、法的にあなたの者になる可能性が生じる、それはいかんよ、店内での拾得物は、端的に言って所有権が店主に属して居ます、あなた、拾得場所を偽って、そのお金をわたくししようとしたでしょう、とあらぬ嫌疑をかけられて仕舞った。
 1月31日ホワイトジャックは父と母の3人で喫茶店へ行った。らんちを食べようとすると、表示上のナポリタンが無く、カレーしかない。仕方なく何時ものモーニングで済ませる。モーニングサービスが14時頃までやって居て何かと便利だが、ランチは残念だった。
 ホワイトジャックはいろいろと落ち着いて来ると、撲滅キャンペーンは止めて、ヒトラーの研究に没頭する事にした。
 三嶋由紀夫の「我が友ヒトラー」は三嶋由紀夫がヒトラーの事を「我が友」と言って居るのだと思っていたが、これは突撃隊隊長のエルンスト=レームとヒトラーとの親密な関係からレームがヒトラーの事を「我が友」と言って居るのだとホワイトは知った。
 ヒトラーは長いナイフの夜事件でレームを粛正する。これは当時のドイツ国においては大統領からも国防軍からも支持され、国家の正当防衛行為とされた。諸外国は様々な非難を投げかけたが、むしろヒトラーは事件後ほどなくしてヒンデンブルク大統領が死去すると、自らの首相職に大統領職を合わせた様な日本語で言う所の「総統職」につく。フューラー=指導者であり、国家元首として独裁権力を確立したのが1934年。
 それまでにもヒトラー率いるナチ党と共に伸長著しかった共産党は解党させられ、ナチ党政権奪取以前は政権政党を担う事の多かった社会民主党も共産党同様活動禁止の憂き目にあってナチ党に匹敵する政党が壊滅していた。
 ヒトラーいかにして政権奪取したかにホワイトは大いに興味をそそられた。ある出版社の大物政治家叢書ではヒトラーもチャーチル、ルーズベルト同様に扱われて居るのを知って自分の探究心に確信を持てたのだった。