第20回 1000字小説バトル

参加作品
1
2 付け焼き刃 小笠原寿夫1000
3 パンなぞ ごんぱち1000
4 ボネさん 石川順一1030

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バトル結果発表
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(本作品の掲載は終了しました)

付け焼き刃
小笠原寿夫

 ラーメン屋『民海亭』の店主は、この道三十年。
「はい、お待ちどう」
と出してくれる味噌ラーメンには、腰のある太麺に玉子、陳元菜、叉焼に鶏の出汁から採ったスープに味噌を加え、豆板醤が少々、入っている。
 こぢんまりとした店内には客は私しかおらず、ズルズルと麺を啜る。麺を半分噛みきると、口の中ではしゃぎ回る麺の食感と口一杯に広がる味噌の風味が、次から次へと箸を進めてくれる。
と更にスープを飲み干すと、得も謂われぬ口溶けに舌鼓を打つ。
「ここのとこ、チェーン店が出来て、みんな向こうに持っていかれてるんだよ」
そう漏らす店主は、それでも笑顔を絶やさない。
 チェーン店が出来たということは、その分だけ味が認められたということだ。とはいえ、ラーメンの需要はなくならない。
 この道一筋にやってこられた主人の苦労は、いかばかりか知れる。私は、その苦労を買っているのである。
 少しでも余計なことを考えると、奥さんが沢庵をつきだしてくれる。
「はい、美味しいお漬け物」
店内には、私一人しかいない。ラーメンを啜り終え、レジカウンターに向かうと、奥さんが愛想よくお勘定してくれる。
 財布の中を見ると、小銭がちらほら。
 明らかにラーメン代が足りない。
「どうしよう、困ったな」
と思っていると、それを察したのか、奥さんが、
「また今度でいいよ」
と言ってくれた。
 『つけ』というものは、こういった時に発生するのかと身に染み付いたものだ。
「すみません、あとで支払います」
と言った、次の日かその次の日くらいに、改めて代金を支払いに行った。
 つけは廻り廻ってチャラになる。
 常連になればなるほど、つけは廻ってくる。
 一見さんであれば、つけは聞かなくて当然だが、常連になってくると後でつけが廻るのである。
 借金をしたくなければ、一見さん。店と顔馴染みになりたければ、常連さん。世の常だが、客商売というのは難しい。飽きないでやるから商いなのである。
 三十年という道のりは長いようで短い。振り返れば、覚えている思い出などたかが知れている。
 だけど身体は覚えているものである。客である私もその味を覚えている。
 そしてまた足を運ぶ。これが付き合いというものである。店主との会話を楽しみながら、ラーメンを食べるのも、チェーン店にはない小型店舗の強みであったりもする。
 国家予算も財政もこれくらい簡素化されれば、うまく経済は廻るのではないかと思わざるを得ない。

パンなぞ
ごんぱち

「パンはパンでも食べられないパンってなーんだ?」
「うーん……」

 昔、イエスさまが、説法をしていました。
 それを知った皆は集まり、熱心にイエスさまの言葉に耳を傾けます。
 イエスさまのお話は、時に涙なしには聞けない悲しいものであり、時に思わず笑い出してしまう滑稽なものであり、時には大きな驚きを感じさせる聞いた事もないものであり、そしてそのどれもが、深い愛を感じずにはいられない、大きな御心の伝わって来るのでした。
 お話しは長く長く続き、時間が過ぎて行きました。
「イエスさま」
 例え話の一つが終わった時を見計らって、弟子の一人が声をかけました。
「なんだい、ペトロ?」
「そろそろ夕食時です。皆を一度帰らせましょう」
 弟子の言う通り、日は傾き始め、皆の表情にも空腹と疲れが浮かんでいました。
「帰らせるには及びません」
 イエスさまは仰られました。
「我らの食料を分けてあげなさい」
 弟子達は困った顔になりました。
 その時イエスさま達が持っていたのは、僅かなパンと魚だけだったのです。
 ところがイエスさまはまったく気にしない様子で、全てのパンと魚を盆に載せました。
 そして。
「ペトロ、全部食べなさい」
 盆を弟子に差し出します。
「えっ? 私が? 全部?」
 イエスさまは、じっと弟子を見つめます。
 皆の視線も集まります。
 じぃぃっと見つめられます。
 孔が空くほど見つめられます。
「い、いえ、私は、その……お腹が空いていませんので」
「ではあなたはどうですか?」
 今度は、集まったうちの一人に差し出します。
「あっしですかい? こ、こりゃ困った……ええと、そ、そう、晩飯は食わない事にしてまして」
「そうですか」
 イエスさまは皆を見渡します。
「最初に手を挙げた者に差し上げよう。誰かいませんか?」
 手は挙がりません。
「なら、全員お腹いっぱいですか?」
 ぽつぽつと首を縦に振る者が出始めます。
「きちんと答えて下さい、お腹いっぱいですか!?」
「は……い」
「はい……」
「そう、です……」
「聞こえませんよ! お腹いっぱいですか!!」
「「「はい」」」
「聞こえない、ぜんっぜん聞こえない! お腹いっぱい!?」
「「「「「おなかいっぱい!」」」」」
「パンはいらない!?」
「「「「「「パンはいらない!!!」」」」」」
「はいっ、分かりました! みんなお腹いっぱい! 説法を続けます!」

「あの時の……パンかなぁ」
「……苦労されてますね、ペトロ様も」

ボネさん
石川順一

 ボネさんは大津市で暮らして居る。きゃーと女性の悲鳴が。く、又女性の悲鳴か、俺は沖を眺めながら英語を日本語に訳して居る。女性の悲鳴なら後にしてくれ。ある夏の日の出来事。サマーフェスティヴァルだ。
  
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 私は父と母の3人で父の車に乗って、ロンマキシムへ来ていた。目的は母の衣料品漁りだ。父と私は車で待って居るだけに終わろう。私も昼食を食べ足りなかったのでマクドナルドでビッグマックを買うつもりだった。期間限定でマックが一つ200円で買える。だから父と母に付いて来たのだ。昼食がウインナーで御飯を一杯だけ。今日は朝方、家を早めに出たのでお腹が空いて居た。何時もは10時半へ職場へ着く為に10時ごろ家を出るのを今日は契約更新の為10時に仕事場へ着かなければならず家を9時半ごろ出た。それで13時半まで働いて来たので腹が何時もより減った。それで15時前後父と母に附いてロンマキシムへ向かった時、御飯一杯と小さい焼き芋を二つ食べたとは言え、空腹がひどくてしょうがなかった。ビッグマックを余分に食べたくなったゆえんだ。

 母の衣料品購買が終わるまで私は車内で待っていた。意外と長引く。父も車内で待っているつもりだったが、母を直ぐに見に行き車内から消えた。私は車内で独りでNHKFMを聞きながら「ボネさん」を読んで居た。FMは「トリスタンとイゾルデ」をやって居た。あー2日前に以前NHK教育テレビでやっていたのを録画したのを後半部分だけ見て居たなあと思いだした(金曜日)。

 「ボネさん」はおもしろかった。ボネさんの大冒険が楽しめる。ボネさん頑張れと私は思った。
 15時50分ごろ母は戻って来たろうか。その後一宮市内のアピタへ行く。アピタの南西方向に道路挟んで直ぐの所にマクドナルドがある。私は父と母らと16時30分に車で待ち合わす事にして別れた。何時もはアピタ内の本屋を待ち合わせ場所にするのだが。私は何時も通り本屋へ向かう。
 
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 本屋に居るとウォークマンの充電池が切れて音楽が止まった。なので私は本屋のすぐ隣のオーディオショップのテナントへ向かった。オーディオショップだが映画のDVDも置いてある。AV(オーディオヴィジュアル)ショップだな。其処には私の予想通りボネさんが居た。ボネさんには足が膝から下が無い。ボネさんは幽霊なのか。私はボネさんの追跡を始めたのだった。