第22回 1000字小説バトル

参加作品
1 ラストオーダー 弥生1000
2 卓球 小笠原寿夫786
3 (本作品は掲載を終了しました)
4 神の鳥 石川順一1052
5 慈しみと親愛を持って ごんぱち1000

掲載時に起きた問題を除き、作品内容の訂正・修正はバトル開始から終了まで基本的に受け付けません。掲載時の不備などがございましたら、ご連絡ください。

QBOOKSではどのバトルにおきましても、原則的には作品に校正を加えません。明らかな誤字脱字がございましても、そのまま掲載しておりますことをご了承ください。

バトル結果発表
※投票受付は終了しました。
ラストオーダー
弥生

「よく食べるねえ」
「ちゃんとしたモン食うの、久しぶりだからね」
 作ってくれる子がいればなあ、と笑いながら、川野くんはぼんじり串をほおばった。男の人ってこんな風にご飯を食べるんだっけ、なんてぼんやりと考えながら、私はジョッキに少しだけ残っていた生ビールを飲みほした。
 川野くんに初めて会ったのは、今からちょうど1年前だ。私たち2人が所属するゼミの顔合わせが行われた時、偶然私の隣に座ったのが彼だった。人みしりの私には、よろしくね、と笑顔であいさつする勇気なんて無く、ホワイトボードの前に立つ教授の方を向いたまま、横眼でちらっと彼の横顔を見た。ほんとうに一瞬だったけれど、長いまつげとすっと通った鼻筋が印象的で、きれいな顔をした人だな、と思った。それからどんな風に私たちが親しく話すようになったのか、経緯は覚えていない。ただ、気づいたら同じゼミの友達を2、3人交えてこの小さな焼き鳥屋でよく飲み会をする仲になっていた。  
 ゼミ、サークル、就活、将来、恋愛、と、何の話をしても、川野くんが発する言葉の端々には、明るくて健康的なかんじが漂っていた。別れた彼女の話をするときでさえ、彼はその子の悪い所を一切言わなかった。明るくて、人懐っこくて、物事をどんどん前に進めていくことができる彼と話していると、とても楽しい半面、少しだけ自分のコンプレックスが刺激された。いや、ほんとうはすごく刺激された。
「吉村ってさ、人のことよく観察してるよな。飲み会の時とか」
「観察?」
「なんていうか、全神経を研ぎ澄まして相手の内面を見てるってかんじかな」
「気になって仕方ないんだ」
 何が、と彼は聞かなかった。空いたジョッキをテーブルの端に片付けながら、
「分かる気がする」
 とだけ言った。

「ラストオーダーのお時間ですが、ご注文はございますか?」
 12時半を回った時、私たちと同い年くらいの男性の店員さんが、二人に向かって尋ねた。私たちは互いに顔を見合わせて、もう注文がないことを確認した後、結構です、と答えた。
「あの、注文は無いんですけど、」
 伝票を持った店員さんを呼び止めて、川野くんが言った。
「もう少しいてもいいですか?」

『私と一緒にいて退屈じゃない?』
 もしも川野くんと二人きりで話す機会があったなら、聞いてみたいと思っていた。その言葉をぐっと飲み込み、二つのお冷だけが置かれたテーブルをはさんで、私はあらためて彼と向き合った。

卓球
小笠原寿夫

 ピンポン球の製造工程は、ひしゃげたボールに空気を入れるところから始まる。プラスチックのボールは、綺麗な球体となり、卓球場に送られる。
 ピンポン球は丸い。それだけにどこに飛ぶかはわからない。
 ただ、これだけは言える。
 打った選手の次は返す選手である。
 打った選手が勝てば、次も打った選手からのサーブになる。
 これが卓球のルールである。
 卓球は、作られた遊びである。
 まず最初にボールは止まっている。続いてサーブを打つ。この時点で、卓球は、一次元から三次元に変わる。返す刀で、卓球は、5つのうち、どれかの軌道を取る。縦から縦。縦から横。横から縦。横から横。空振り。
 サーブで、スマッシュを打つのも回転をかけるのも反則である。
 返す選手は、縦に回転をかけるも良し、横に回転をかけるも良し、勿論、ストレートに返すも良しである。
 ボールを縦に切る場合、ラケットを寝かせた方向とは、反対方向にボールはカーブする。
 ボールを逆に切る場合、ラケットを寝かせた方向と同じ方向に、ボールはカーブする。
 腕を振り上げ、頭にラケットを持ってくるようにすると、スマッシュが打てる。

 量子論は、全て卓球に集約される。

 科学者が必至で、練り上げた法則の上に、卓球選手は躍起になり、卓球選手が必至で追いかけるボールを科学者が研究している。

 フントの規則はラリー。パウリの排他原理はサーブ権。スピンはボールの動き。軌道は卓球台。

 フントの規則……ひとつの軌道にはスピンが逆向きの2つの電子しか入れない。
 パウリの排他原理……同じエネルギーの軌道が空いている場合、同じ向きの軌道がひとつずつ入る。
 スピン……電子の角運動量。
 軌道……ひとつの原子に入る電子のエネルギー量。

 多くの学者が紛糾し続けた命題の上にスポーツは成り立ち、スポーツ選手の一球に科学者は、太刀打ち出来ないのである。

※作者付記:
文字数が足りておりませんが、伝えたいことはのせてあるつもりです。
何卒、ご容赦ください。

神の鳥
石川順一

 駐車場の鳥は顎が外れ今にも微かな脱糞をせんとして居る所だった。
 祈祷師はふー間に合ったと駐車場に辿り着くと鳥を急いで保育器に収容した。鳥の顎が外れ、不自然な脱糞で鳥の肛門はかなり損傷して居たが、そのままほったらかしにして居たら絶命して居た所だった。
 鳥の保育器では天然の自然で最も生物の気を高めると言われる、オゾンデスを発生させ続ける事が出来る。
 鳥の出血を最小限に抑え、精神的にも活性化させる事により、鳥の致死をなるべく遅らせる事が出来る。その間になんとか治療出来ないだろうか。祈祷師の気は急いて来たが、急ぐ必要があると共に、急ぎ過ぎての荒療治は却って鳥の致死を早めて仕舞うかも知れない。慎重かつ大胆な治療を祈祷師はしなければならなかった。
 治療と言っても祈祷師には医学的な治療は出来ない。お祓いや除霊術などを駆使して鳥の気を高めて鳥の自己治癒力にかけるしかない。
 そこへ都合良く鳥専用の治療車もやって来てくれた。
 「へっへっへへ。虚報の祈祷師さん、今日はいの一番にやってきやしたぜ」
 「虚報は余計だ。今は一刻を争うんだ。神の鳥が虫の息だ。早く車を出してくれ」
 「分かりやした。それなら話が早い。さあ行きますぜ」
 治療車の運転手ゴローは車を発進させた。
 やって来たのは国立鳥獣保護センター。ここの神の鳥専門の医師カルパッチョさんの治療室へ鳥を運び込んだ。
 「これはひどい。しかもひどいだけでは無くて複雑微妙な症状も呈して居る。この鳥は顎が外れて肛門が破壊されているだけではありませんよ。この鳥は世界で3症例しか確認されて居ないと言うゲルググ病に侵されている。これは少し困りましたな。ここは国立だけあって最新の治療設備や治療補助具がそろって居る。鳥専用の人工肛門だって鳥専用の人口顎関節だってあります。でもゲルググ病の治療方法だけは確立して居ないのです。ゲルググ病は不治の病では無いのです。私が最初に複雑微妙だと言ったのは、このやまいにかかった鳥は癌の治療薬の開発につながるエキスを含んだ糞を脱糞してくれうようになるのです。しかし何回かに1回の割合で人間にとって劇毒薬である成分を含んだ糞も脱糞して仕舞う。しかしその成分が治療薬につながるエキスなのか劇毒薬なのかの判定が非常に難しいのです。その判定は鳥の症状によって判断しなければならないのだがその判定が複雑微妙にならざるを得ないと言う点でもう本当に複雑微妙なのです」
 果たして神の鳥は助かるのか、そして癌の治療薬開発と言う奇跡は起きるのだろうか(続く)

慈しみと親愛を持って
ごんぱち

「あたしのブログが児童ポルノに該当して遮断?」
「はい、所持と流布に該当致した為の緊急措置です。逮捕状はこちらです」
「あれはあたし自身の市議としての姿勢を示した、こう言っちゃなんですが、相当固くて面白味のないもので、ポルノなんて広告もありませんよ?」
「通報がありましたので」
「これ元データですけど、どこがポルノだか説明して下さい。写真は、選挙のポスター用の私の顔写真しかないでしょう?」
「ああ、これはいけませんね。児童ポルノは所持も禁止なんですから、考えないといけませんなぁ」
「なにが」
「ほら、首元から乳房が出ている」
「これ、タートルネックじゃないですか。乳房の『ち』の字も見えませんよ」
「あなたのそこは何ですか?」
「え? おっぱいですけど」
「ではここは?」
「ここもよ」
「それではここは」
「脇腹よ」
「では、その境目はどこですか?」
「この辺よ!」
「何か区切りのようなものは?」
「そんなものあるワケないでしょ。常識で考えれば、脇腹とおっぱいの違いなんて分かるでしょう?」
「その常識はあなたの常識です。明確な区切りがない以上、この写真に見えている肌が乳房ではないと証明が出来ません」
「だとして、児童ってのはどうなのよ!? あたしは五十二歳よ! 五十二歳の児童なんて存在する?」
「戦争で疎開し、終戦を迎えた尋常小学校で、六十四年ぶりに卒業証書を授与した事例が存在します。卒業していない以上、児童ですから、あなたは充分にその範疇に入り得ます」
「児童の定義が、その法律と学校教育法で違うでしょうが!」
「申し開きは、法廷でお願いします。開廷スケジュールはこのような予定になっています」
「……って、何よ、この開廷スケジュール! 三年間毎日って!」
「非常に難しい案件の為です。その代わり、日常生活に差し障りのないように、各時間は五秒と大変短くなっています」
「……でしょ」
「はい?」
「今度の……市民による警察監視制度の提案、取り下げれば良いんでしょ。分かったわよ、取り下げるわよ!」
「おや、この写真、よく見ると首までしか写っていませんね。乳房ではないようです、これは失礼しました」

「フフッ……チョロいもんだ」
「お帰りなさい、本郷部長。包みが届いてますよ」
「ん、なんだ? こ……これは写真!? 馬鹿な!」
「あーら、所持しましたね」
「受け取ってない、俺は受け取ってない!」
「すみませんねぇ。アタシ、藤岡部長派なんです、うふふ」