表紙へ

1000字小説バトル

1000字小説バトル表紙へ

1000字小説バトル stage3
第25回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
本作品は掲載を終了しました
2
相馬
951
3
ごんぱち
1000
4
小笠原寿夫
1000
5
石川順一
1020

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

コミュニケーション

QSHOBOU掲示板

(本作品は掲載を終了しました)

「生まれて」からすること
相馬

さて、こんな状況も珍しいのではないだろうか。いや、もしかすると故人皆シチュエーションこそ異なれども、私と同じような立場になっていたのかもしれない。私と同様数時間かそこら眠って、目覚める。最初は当然のように何がなんだか分からず途方に暮れるしかない。そうして徐々に何が起きて今どうなっているのかを悟るのだ……多分。だってそうだろう、私は「生まれたて」で曖昧なことしか言えはしないから。
私が目覚めたのは病院のベッドの上だ。背中にあるのがもしかするとベッドではなく、会議用の折畳机というなんとも粗末なものであったとしても、まあいいか。感覚が欠落しているから別に痛くもない。視界の限りここは病院で、だから私は背を病院のあの寝心地抜群ベッドだと信じている。周りの景色が見えるが瞼は閉じられているであろうと考えたのも一般的思考故だ。
周囲に家族が勢揃いしていた。皆が目を赤くして私を見る。見つめ返すが……お前たちこそ本当に私を見ているのか?目が合っている気がしないのだが。
なぜだかひどく冷静で、私は少しも悲しくなかった。いや、愛する妻と三人の子供たちの目に残る涙を拭ってやれず、尚且つ私が原因なのも……とても悲しいよ。しかし、どうしても私には自分がこの肉体から離れて天国や地獄、もしくは次の世か、分からないが家族と離れてどこかへ去って行く予感がしなかったのだ。
蝋のように堅くなってしまった身体はどこも動かない。表現を変えると、私の身体を型どった鉄の型に再度閉じ込められたような自由のなさだ。ああこれは結構堪えるな。分かるだろうか、意識があるのに何もできないのだ。もちろん心得ている、私は死んでいることを。意識が死んでいるのにフラフラ動きまわっている方が酷だろうか。たしかに、それはそうかもしれない。
結局動けるとすれば何がしたいのかだ。欲深だと報われないのが世の常だ。少し考える時間が欲しいと一瞬思ってしまったが、どれだけ考えてもきっと私はこれしか思い浮かばないのだろう。
「ごめんなさい、そしてありがとう」
そう言いたいよ。私の家族に沢山の思いを込めて、これだけを送りたい。きっと分かってくれるはずだ。私の最も愛した人たちだから。
さて、少し疲れてきた。もう一眠りしようか。瞼は閉じているのか、一体どうすれば……、ええと……
「生まれて」からすること    相馬

五十歩百歩によろしく
ごんぱち

 気怠い午後の昼下がり。
 四谷京作と蒲田雅弘はオフィスで二人、机を並べ業務を進める。
「すぅ……すぅ……」
 四谷の手が止まり、寝息が聞こえ始めた。
「……四谷、おい、四谷!」
 蒲田が四谷をつつく。
「は、はいっ、答えは七です!」
 いきなり立ち上がって四谷が叫ぶ。
 社員達の視線が四谷に集まる。
「あ……ええと、廊下立ってます?」
「仕事して下さい」
「ええ、はい、部長」
 四谷は椅子に座る。
「居眠りしてんなよ、昨日は嫁とフィーバーか?」
 小声で蒲田がからかう。
「ふざけんな、嫁ではフィーバーしないのがオレのジャスティスだ。エロパロとか冒涜以外の何者でもないね」
「でも画像とか見かけたら保存するんだろう?」
「見えてしまったもんは、仕方がない」
「五十歩百歩だと思うがなぁ」
「ああ、それそれ」
 四谷が蒲田を指さす。
「人を指さすな」
「五十歩百歩っておかしくね?」
「んぁ?」
 蒲田が四谷の方に向き直る。
「別におかしかぁねえだろ? 戦場で命令を無視して五十歩逃げた兵士が、百歩逃げた兵士を臆病だと笑う。恐らくは汚職などの責任を誰か一人に押し付けようとする政治家や役人への皮肉に使われたと思しき、有名な故事成語だろう」
「でも例えばだな」
 四谷はメモ紙を取って線を引き、棒人間を描く。
「チキンレースの時に、ガケまでが残り五十メートルと百メートルのとこでブレーキかけたヤツがいたとしたら、やっぱり百メートルの方が臆病なんじゃないか?」
「こう考えるんだ、四谷。この二人はちょっとしたグループ同士の争い事の解決にチキンレースで決着つけるか、みたいな流れになった訳だよ。けれど、ヤツらだって死ぬ事が人並みに怖いんだから、こんな危ない勝負なんかぜんっぜんやりたくはない。でももしもやらなかったら、自分のグループ内で舐められて虐められる。グループから足抜けなんてしたら、今まで自グループの威を借りて色々やっていた相手グループやカモにした相手に復讐されるかも知れず、外も怖くて歩けないし、そもそもその後学生に戻って勉強をしても付いて行けずに怒られる事は目に見えている。そんな訳で、始める直前までママとかお巡りさんとかが見つけて止めてくれますように、とか祈ったけど結局何もなくて、ガタガタ震えながら運転席に乗り込む訳だよ」
「なるほど、チキンが二羽!」
「……仕事をしなさい」
「あ、はい」
「ですよねー、ほら蒲田、喋りすぎだ」
「……君もです、四谷君」
五十歩百歩によろしく    ごんぱち

浦島太郎
小笠原寿夫

昔、あるところに浦島太郎という若者が住んでおりました。
釣りをしようと、浜辺へ参りますと、亀が子供達をいじめております。
「おい、亀吉。どうすれば、子供達と仲良く出来るのか。海へ帰ってよく考えておあげなさい。」
浦島太郎は、釣りを続けました。海からの眺めは絶景で、遠浅になっているので、釣れるといっても、昆布ばかり。諦めて帰ろうとした、次の瞬間です。
「見事だ。」
浦島太郎は、そう呟きました。
遠くの方から、やもすると、浦島太郎が、この世の中で見た事もないようなものが、姿を表したのです。
「ごぜんぜうな、と申します。」
それはそれは、見事でした。昼過ぎに、帰ろうとした矢先のことでしたので、浦島太郎は、ごぜんぜうなに目を奪われはしましたが、やっとの思いで、口を開きました。
「わ、忘れたとは言わせぬぞ。貴殿を拝見する度に、私は、あの頃を思い出す。」
白髪頭を、ぼりぼり掻き毟りながら、声を上げました。
産声を上げたかと思うと、ごぜんぜうなの腹から、珠のような男の子が、顔を覗かせました。
「あ、あの日、あの時の者か?」
「左様でございます。」
「達者になったのぅ。」
「お陰様を持ちまして。」
「で、そちは、如何様に。」
「深海に眠っておりました。」
あの玉手箱、開けてはならぬと、重々に念を押されていた手前、浦島太郎は、後ろめたさを感じておりました。
無人島で暮らしていたのが、功を奏してか、浦島太郎には、生活力がありました。
「今一度、お目にかかりとう存じました。」
ごぜんぜうなは、申し上げ賜りました。
「よかろう。そちの口から、それが聞きたかった。
この片田舎で、暮らすとあらば、まず間違いなく、ごぜんぜうなの身が持ちません。浦島太郎は、ある提案をしました。
ごぜんぜうなは、それを素直に受け入れました。
浦島太郎は、頷き、黙りこくりました。
「では、せいのでいくぞ。」
「かしこまりましてございます。」
「せい~ぃの!」
なかなか、動かないのですが、もう一度、浦島太郎は、踏ん張りました。
「力を込めて、いくぞ。せい~ぃの!」
まだまだ動きません。浦島太郎が、言いました。
「腹に力を込めて!」
その時です。蠢きが、響いたかと思うと、ようやく動き始めました。

「はぁ~い、カットカット! ごぜんぜっちゃ駄目、浦島ちゃん。要するに、表情に品がない。もうワンテイクいくよ。ごぜんぜうなちゃん、最高の笑顔見せてね。よぉ~い、アクション!」
浦島太郎    小笠原寿夫

小説を考えながら
石川順一

 7月26日(火)、21時45分ごろ、私はパソコンに向かってカルパッチョさんが出て来る小説に付いて真剣に考えて居た。もう直ぐ22時なのだが。最近サッカーの無料オンラインゲームのやり過ぎで、22時前後が気になってしょうがない。と言うのも22時を境にして、トレーニング中の選手をトレーニング終了にしておかないと、次の日一日中トレーニング枠が閉鎖されて仕舞うからだ。有料枠を使って回復させることも出来るが私は頑なに無料会員で押し通す事に拘って居た。まめに毎日トレーニングをさせる。一日一人だけだが、忘れる事による穴は大きい、筈だと私はこれまた頑なに信じて居た。どうせ2サイクル終われば選手は居なくなってしまうので、ほんの僅かしか数値のアップしないトレーニングの2つや3つ忘れたとてそう大差は無いと考えることも可能なのだが。
 とにかく私はカルパッチョさんが出て来る小説を真剣に考える事で、パソコンの前で腰を痛めて仕舞った。気のヤマイだろうか、そう思う事によって乗り切ろうとした。
 その日の夜は22時を過ぎてから大雨が降って来た。台風が近づいた前だったか後だったか、少なくともそんなに離れた日では無かったのだろう。夜の雨は私の心を和ませる事が多いのだが、まあ場合によりけりだ。とにかく短歌でも詠んで見ようかと考えさせると言う点においては、大いになごんでいる証拠なのだろう。和んでいなければ詠もうとすらしないだろうから。

 夜の雨私の心を和ましめ超特急の情報伝う
 夜に降る雨に読書の好機だと思うほどにも心なごめり
 急雨来ていよいよ和む我が心全ての事が所属し始め

 私はパソコンの電源を切る。雨のリズムに合わせて調子を取り始め心の調子を整えようとする。
 刑法の本は普段は私の心を逆なでする事も多いのだが、雨が降って居れば読めそうな気がしてくる。
 同様に普段なら無味乾燥な符丁しか持って居なかった、著名人の名前や地名などにも新たな息吹が吹き込まれ、調べがいのある生き生きと精気のある生き物のように感じられて好もしい。
 私はそんな時こそ次から次へと新しい着想が物になる様な気がして心の中で雄たけびを上げるのだが。
 結局その日は通り雨の様な大雨で、あっと言う間に止んで仕舞った様だが、家の中に居たので、雨音のしない霧雨の様な雨がずっと降って居たのかもしれない。何れにしろ私はカルパッチョさんが登場する小説は諦めなければならないかも知れないと思い始めて居るのだった。