第40回 1000字小説バトル

参加作品
1 我が名は、新太郎 小笠原寿夫1000
2 石芋リターンズ ごんぱち1000
3 はざま 深神椥892
4 アンニュイ アレシア・モード1000
5 過去より 石川順一971

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我が名は、新太郎
小笠原寿夫

シュールに逃げ込む若手芸人に、ベタを覚えさせるには、どうすれば良いか。
そればかりを考えていた。
我が家の大黒柱、小笠原新太郎の事である。
「寿夫、ラーメンでも食いに行かんか?」
私が、受験勉強に勤しんでいた、遥か遠い昔の話である。当時、車を持っていた、私の父、新太郎は、須磨の港に差し掛かる道を、スイスイと車を運転していた。
「このクラクション、聞いたら皆、びっくりしよるで。見といてみ。」
ファーっと大きな音のするクラクションは、明らかに、迷惑防止条例に、違反していた。
私は、助手席に座り、笑っていた。
「パトの付いた車、見つけたら、すぐ言えよ。」
ファー!
すかさず、父は、クラクションを鳴らした。
「な?おもろいやろ。」
馬鹿息子に馬鹿親父が、軽のワゴンの中で、はしゃいでいた。
複雑に、物事を捉えようとする私に、単純明快で、尚且つ、面白い事を、簡単に教えてくれる。
そんな父だった。

聞けば、若かりし頃は、ヤンチャばかりしていたが、九州から神戸に出てきた頃は、相当、苦労したらしい。
「婆ちゃんなら、おるったい。どーんと構えて、なんぼのもんやき。」
九州地方に、小笠原姓は多い。
家紋は、三段縦三菱。百姓の生まれだが、祖先は、源に使える武士だったそうである。
小笠原抜刀斎。
柳生新陰流に匹敵する、という居合抜きの達人だった。
即興を使える様になるには、瞬発力が必要になる。
「ベタでいい。何か言え。それがギャグや。」
父の存在が、デカ過ぎて、息子の私は、小さくなっていた。
「ビール飲んでまんねん。」
「どこで?」
「ビルの中で。」
そんな父が、まさか、あんな事になるなんて思ってもみなかった。
「お父さん、ありがとう!またなんぞあったら、よろしく頼むわ。」
「ツケといたる。」
「なんで?」
「お前の金やからや。」
父、新太郎は、そこに居て、我々を見守り続けてくれて居た。
「お前、煙草やめたんか。」
これ溜まるぞ。一瞬、親指と人差し指で、円を作った。
次の瞬間、父の猫だましが、飲み屋のカウンターで、炸裂した。
たった今、父は、スナックで、歌を歌っている。
「お父さんに定年なんかあるかいな。お父さんは、死ぬまでお前のお父さんや。」
嬲ってんのやないねんで。お父さんを尊敬すればこそや。だから聴いてください。

永遠の幸
朽ちざる誉
つねに我等のうへにあれ
よるひる育て
あけくれ教へ
人となしし我庭に
イザイザイザ
うちつれて
進むは今ぞ
豊平の川
尽きせぬながれ
友たれ永く友たれ

石芋リターンズ
ごんぱち

 昔、弘法大師様が諸国を行脚していた頃、とある村に立ち寄りました。
 村には芋畑が作られ、丁度収穫時でした。
 何日も山の中を歩き、空腹を抱えていた大師様は、畑仕事をしていた村人に声をかけました。
「そこの方」
「ああ?」
 面倒そうに村人は返事をします。村人も仏様の徒ではありましたし、もし相手が大師様だと分かっていれば、このような顔はしなかったでしょう。
「拙僧は旅の僧だが、山を越えるうちに食べ物を食べ尽くしてしまい難儀をしている。その芋を一ついただけないだろうか」
 けれど大師様の旅姿は質素でしたし、自分をひけらかすような事はしませんでしたので、村人は大師様を地位のないただの旅のお坊様で、そんな相手に芋をあげても自分の得にならないと考えてこう答えました。
「いやぁ、お坊様、この芋は石芋と言いましてな。石のように固く、煮ても焼いても人にはとても喰えないのです。差し上げても仕方のないものです」
 それを聞いた大師様は黙って立ち去りました。
 それからというもの、この村で採れる芋は、本当に石のように固くなり、牛馬しか食べられなくなってしまいました。

 それを聞いた隣の村の欲張りな男。
 戻る道で大師様が通りかかるのに合わせて畑に出ました。
 大師様は、男に芋をくれないかと頼みました。
「へへへ、お坊様、この芋はホクホクとして甘くとても良い出来でございます。ふかしても焼いても良い、粥にしても絶品、干せば甘味はぐんと増え、売ればたっぷり儲けられましょう」
 大師様に恩を売ろうと、男は芋を褒めちぎります。
「食べすぎれば少々出る物も出ますが、その後は腹もすっきり。これのお陰で病の伏せっていた村の女が元気になった事もございます。実に素晴らしい芋でございます。これほどの芋はどこの村でもとても出来はしないでしょう。さあ是非とも……」
 芋を差し出そうとする男の手が止まりました。自分で褒めているうちになんだか本当に質の良い芋だったような気になり、元々の欲張りも手伝って、あげるのが惜しくなってしまったのです。
「是非ともこのままお帰り下さい! もったいない、こんな良い芋をやれるか! 冗談じゃない!」
 大師様は黙って立ち去りました。
 それからというもの、この村で採れる芋はホクホクとして甘くとても良い芋になりました。
「……割と単純なシステムなんだな」
 男はそんな事を考えながら、収穫に感謝し、そこそこ幸せに暮らしましたとさ。

はざま
深神椥

「あー会いたいなー……」
雑誌に載ったある有名人の写真を見ながら言う。

 私には大好きな有名人、通称そうちゃんがいて、時々私をピンチから救ってくれる。
と言っても、実際に救ってくれるのではなく、ただ私がそうちゃんの顔を見て、それだけで頑張れるということなのだけれど。
今年に入って一度、イベントで会ったが、近々また会う予定。
もう待ち遠しくて、それだけで生きていける。
でも、私の「恋」に賛同してくれる人はあまりいない。
大学の友人の由香も理解してくれない。
「現実を見なさい」って言われる。
私としては見つめてるつもりなんだけど。
「あっ由香、来週そうちゃんに会いに行くんだ。楽しみー」
「会いに行くじゃなくて見に行くでしょ?」
「もぉ、そんな細かいことはいいでしょ。あぁー楽しみー」
 由香の呆れたような顔。
 こんなやりとりは日常茶飯事だった。
「あんたさぁーそうやっていつまでも叶わない恋追いかけるのやめたら?」
「叶わない?」
私の言葉に、由香は顔を引きつらせた。
「あっいや、そうだよね。あんたの場合そうだわ」
由香は、私の「想い」を壊さないように言っているようだった。
「まぁ、頑張ってよ。来週見に行くんだっけ?」
「うん、映画の舞台挨拶あるんだー」
「もしその時、目なんて合っちゃったら……」
「目?えーどーしよー合ったらー」
由香のいつもの呆れた顔。
私は本当に真剣だった。
馬鹿げているかもしれないが、私はこのひと時が楽しくて好きだった。

 待ちに待った舞台挨拶の日。
周りはそうちゃんのファンばかりらしく、黄色い声援が飛び交っている。
広い会場ではそうちゃんは十五センチ程にしか見えないが、何度見ても、テレビで見るより更に素敵だった。
 毎回のことだが、好きな有名人を生で見た後、その有名人をテレビで見ると、何だかものすごく遠い存在に感じる。切なくなる。
生で見た時はあんなに近くにいたのに。
由香の言う「現実」を見れば、こんな思いはしないのかもしれない。
 でも、遠くに感じても、近くに感じても、私はまた凝りもせず、そうちゃんに会いに行くのだろう。
そして、由香の小言に付き合う日々がまた始まるのだ。
 まぁ、お互い様なんだけど。

アンニュイ
アレシア・モード

 ドアチャイムの音がした。
(誰よ)
 私――アレシアは、アンニュイに髪をかき上げると取り敢えず立ち上がる。玄関に向かう前に部屋の鏡を覗いた。うんアンニュイ。よく分からないけどアンニュイな顔立ちだ。結構気に入っている。柔らかく膨らむ頬と不服そうな唇のコントラスト。眉を顰める。ああアンニュイ。良かろう。さて。
「どなた?」
「七階の伊藤と申しますが」
 上の階だ。穴から窺うと女が一人立っている。見覚えのある顔だ。私はそっと扉を開く。何の心当たりも無いけど、彼女の口元からは不穏な言葉の予感を覚えた。
「……何か?」
「首、返せ」
「はぁ?」
 女の姿を改めて足下から順に観察する。スリッパだった。その上は長いスカート。上半身は妙に大きなフリースをだらりと着て、汚れて染みだらけ。変な色のマフラー。顔は割と端正で、まあ悪いレベルでもないよねとも思われたが、黙っている私が不満なのか、その目は次第に吊上がっていった。
「首、返せ」
「いえ、結構ですから」
 私は扉を閉めようとする。そこへ彼女の腕がにゅうと伸びたので、私はその腕を扉で挟む事となる。ごっという音がして、私はつい扉を開き「あ、ごめん」とか口走っていた。私はそんなネガティブな言葉を吐く性格では無い筈だが、根は善人なのだ。
「結構ってなんだよ」
 中に押し入った女は、怪我しただろう腕を私の方に伸ばして叫んだ。
「首返せ首返せ!」
 声が廊下に響いてみっともない。私は扉を閉めてしまった。
「首ならあるだろ。恥ずいから静かに帰ってね」
「これじゃない、こんなんじゃない!」
「駄々っ子かよ、それで取り敢えず十分。さっさと帰れ」
「首返せ!」
 女は光る物を懐から取り出し、握り締めた。はあ、やっぱ包丁すか。私はアンニュイに嘆息した。特殊キャラとの遭遇率が高い私には低レベルな敵だ。
「……颱風おんなのアレシアをなめてるの?」
「殺してやる!」
「その程度かい」
 忽ち起こる戦戈の響き~!
 四海を圧する黒雲のッ、九天地を撃つ雷のッ、六蛮をして懼れしむぅ、熱帯生まれの低気圧……ッ!

(略)

 忙しいんだから、こっちは。
 女を追い返し、やれやれと鏡をみて頬に付いた血をアンニュイに拭う。傷は無かった。一応、私も相手の顔については傷つけないよう気を遣った。後で返してもらう大事な顔だからね。アンニュイに飽きたら……
 首を伸ばし、うっすら残る接合痕をそっと指でなぞる。
 うーんアンニュイ、アンニュイ。

※作者付記:
これはひどい。
[アレシア・モードは蛮人Sの深みから召還される連立人格の一つです]

過去より
石川順一

 私は4月11日に何が起こったか見た。調べた。知覚した。
 どんな事が私の意識をかき回すが興味深かった。見る度に印象が違う。
 だから毎回楽しみだ。Wikipediaでは欧米と日本で著しく違う。
 欧米語ヴァージョンをクリックすると日本人の項目は殆ど無いに等しい(と私は思った)が逆に日本語ヴァージョンでは欧米的な内容と日本の内容がほぼ等分かある意味欧米項目の方が多い(と私は思った)
 2012年11月5日(月)10時20分頃書いて居ると、9時45分に朗読の時間NHKFMを思い出した。「吾輩は猫である」。漱石が37,8歳の頃に執筆したもの。年齢が合って来る。大きな枠が中を破壊して来るような気がする。
 話がそれた。4月11日。小林秀雄が生まれて居る(1902年)。中村汀女が生れて居る(1900年)。汀女が秀雄より2歳お姉さんだったのだと思う。金子みすずまで生れて居る(1903年)。ソニーの井深大(1908年)。
13時10分頃右手の小指をパソコンラックに打ち付けた。すごい衝撃を感じたが痛みは無い。運が良かったのか。白い木製のパソコンラック。と言っても板を買って来て収納の為のとっかかりを前部に釘で(ネジで?)付けて引いたり出したり出来る様にしたもの。お手製で人工的だ。日曜大工で出来た見たいな。
 4月11日に戻ろう。亡くなって居る人で言えば俳人の嶋田的浦(しまだてきほ)が亡くなって居る。兄は嶋田青峰。兄の方が俳人として著名なようだが、弟の方も著名な俳人の様だ。生れは1893年1月22日。享年57歳。1950年4月11日没。
 今日の朝を思い出した。2012年11月5日(月)の朝。7時ごろ目覚めた。すごい戸の音。私は「戸田藩」と言う岐阜県大垣市にあった大垣藩の戸田氏を思い出していた。初代藩主戸田氏鉄。私は懸賞の応募にも「戸田藩」を使った(ニックネーム記載欄が合ったので)。パスワードも戸田氏鉄の生れた西暦1576年の「1576」を使った。今朝の私の目覚めの意識の発生と戸の音には必ず媒介するものが合った。そしてわたしは更に昨日飲みに行く前布団を取りこむときに母に前部を布団で食らった。ベランダに母が居て私が布団を受け取る側で部屋の中にいた時だ。そしてそれから姉が夕飯が要らないと言うので、布団を取り込んでしばらくしてから、今度は飲みに行く直前、母がトイレから出て来る時、自然に私がトレイの前を通るとトイレの戸が。