≪表紙へ

1000字小説バトル

≪1000字小説バトル表紙へ

1000字小説バトルstage3
第46回バトル 作品

参加作品一覧

(2013年 5月)
文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
脳天
1128
3
ごんぱち
1000
4
深神椥
1208

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

命の水
小笠原寿夫

あのな、アインシュタインくんがな、特殊相対性理論とかゆうて、光の速度測りよんねん。ええか?よう聞けよ。
「俺がペケ言うたもんは、◯でもペケや!」
だから、お前はペケやねん。わかるか?継ぎ足せ、継ぎ足せ。はよ継ぎ足さんと焼けてまうがな。右脳に描いとけ。な?ええとこで、ここ一番、肝心なとこやからな。
「ツッコミ間違うたら、タライが落ってくる。」
なわけないやろ!
言うて◯描かんかい。ペケじゃ、ペケ!お前もお前もお前もペケじゃ!で、お前は、◯や。
えっ?お前は、◯△×◯△~!
ゆうてみました。
空に放たんかい。願い事を夜空に放ってみぃ~。
わかるな?ごつごつゆうてな。娑婆に帰ったら、全て氷解しよるからな。ところで、君、光と運動の関係性を考えた事あるか?ない?え?何?ある?ないならないで、早よ考えとかんかい!この頭山くんさ、頭脳はな、使う為にあるねん。わかったら、さっさと挨拶しぃ~。
「えー、特殊相対性理論とは、光速度不変の原理と物理法則普遍原理を基軸にして、練り上げられた時間と速度の関係性を相対的に表したものでありまして、そこ行きますと、線形的な問題を微積分により、考え直したものであり、それによって、得られた結論が、ブラックホールといった馬鹿でかい重力を持った天体なんです!」
いいですか?今から、大事なことを言います。
「俺は、一人で右眼を描いたんです。」
こんなん、よそでは、教えませんよ。ただね、僕に教わった事は、密かに教えてあげてね。ぶぅ~わ、言うわこの子。石鹸に、恩返しされましたって。
恩返しされた男。
「やぁ~、ここが、天才の住む島かぁ。そこに過ちを冒したもの達が、現れるとはなぁ。で、九官鳥にゆうとけ!お前は、九官鳥やってな!」
でしたら、言わせてもらいますがね。刺激を求めちゃいかん。安寧を願いなさい。安寧を求めたらな、成長を求めなさい。成長を求めたらな、ふざけんな!

ダラダラしやがって、パッと出て、シュッと帰らんかい。漫才師の美学やろがい!

「どこぞの馬の骨かと思ったわ!」

だから、ふざけんな!真面目にやれ。モノづくりっちゅーのはな、壊すところから始まんねんぞ。

だから、俺にありがとうございましたを言いなさい。
量子やぞ、量子。量子文学じゃ!
僭越ながら、考えを示した文学をお届けしますが、分かりにくいものに仕上がっておりまして、誠に、お粗末様でした。
「結構なお手前でございました。」
と、彼らは一斉にお茶を。
命の水 小笠原寿夫

闇夜
脳天

それは深夜2時を回った頃。

何処かで言い争う甲高い悲鳴で、寝入っていた俺は起こされた。
(チッ!また始まりやがった…)
俺は布団を頭からスッポリと被り、必死に耳を押さえた。
奴らの怒鳴り声は聞きたくないのだ。
(毎晩、毎晩…よくやるわ…)
もう、3日連続でやりあってるのだ。しかも、決まって深夜。
近所のみんなが寝静まった頃を見計らった様に始めるのだ。
外は梅雨の時期でもあり今夜は小雨だ。
こんな日でもおかまい無しにやりあうのだ…。
それが30分…いや、1時間も続く事もあるのだ。
(イカレテル…)

近所の奴等も聞こえてるだろうに…何とかしろよ…
俺は不思議でならなかった。
こんなに毎晩怒号や悲鳴が聞こえても、
誰も家から出て来ないのだ。
もしかしたら、あの怒号が聞こえてるのは俺だけなんじゃないのか?
心配になった。
俺だけに聞こえる何かの幻聴?
それとも…!?夢?
夢なのか?

しかし、決まって数十分後に
「グゥワン! グゥワン! グゥワン!」
って、マロ(飼い犬)が吠え始めるから、
聞こえてるのは俺だけじゃないって事が証明される。

だけど…マロちゃんよぉ~…あんたもどんだけ寝入ってるんだ?
普通、第一声で気づくだろ?あんな甲高い悲鳴?
熟睡し過ぎ!

しかし、不思議だ…近所の連中はあの怒号の言い争いが気にならないのか?

もしかして!
俺と同じで、誰かが何とかすると思ってやがるのか?
「誰か~~何とかしろよ~~~~~」
って?

他力本願ってやつか?
はぁあ?
…。
分かったよ!
分かりましたよ!
やってやるよ!
ああ!やってやるよ!
俺が奴らを黙らしてやるよ!
俺にも限度ってもんがあるからな!

俺は階段をゆっくり降り、武器になるものを探した。
(奴らは、口で言っても駄目なら力で…)
金属バットが裏口にあったのを思い出して、裏口に廻った。
裏の戸を開けると、怒号に向かって吠えていたマロが寄って来た。
尻尾を嬉しそうに振ってる…。
マロは何か貰えると思ってるのか俺の手元ばかり見てる。
どんだけ食いしん坊なんだよ…マロ

そんなのはおかまい無しに俺はバットを探した。
すると、マロは散歩に連れて行ってくれるのだと勘違いしたのか、
しきりにハシャギだした。
そして、俺の左足にガバっと抱きついて来た。
「ちょっと待て…今はそんな時でも、時間でもないだろう」
どこのどいつが、夜中の二時、しかも雨の中を散歩に行く馬鹿が居るか?

そんなマロを振り切って、俺は金属バットを持って
暗闇で小雨振る中を、怒号のする方に向かって駆け出した!

ギャイン! ギャイン! ギャイン!
マロは放っとかれたのが不満なのか、俺に向かってエライ吠えた!

「お~ぉおおおおりゃ~~~~!」

数秒後二匹のオス猫は逃げた。
発情期のオス猫の喧嘩に参戦した俺だった。

マロは未だ吠えていた。

俺に向かって…

PC褒め
ごんぱち

「おとったんおとったん」
「なんだ与太郎、帰って来るなり。まずはただいまだろう」
「まずはただいま」
「まずははいらないよ」
「じゃあ、いっしょに包んどいて。あとで食べるから」
「このバカ、焼き芋か何かと勘違いしてやがる」
「いやぁ、こういう風に言っておけば、『ああ、与太郎さんは、おなかがすいているみたいだから、何かを出してあげよう。そうだ、うなどんの一つか二つ出してあげよう』と、こう来るだろう?」
「中食はもう喰ったじゃないか。喰う事以外の事も少しは考えろ」
「めし以外の事なら、そうだね、佐兵衛がパソコンを買ったらしいよ」
「佐兵衛じゃなくておじさんと呼びな。しかしほほう。あの兄貴がついにか。IT化の波は留まる事を知らないな」
「使い方を教えてやるから見に来いって言ってたから、行ってくるよ。ついでにお茶菓子をもらおう」
「やっぱり食い物か。待て待て、手ぶらで行くんじゃあない。お祝いに、ええと、この石鹸でも持って行け。それから、ただ突き出したんじゃ芸がない、きちんと褒め言葉を覚えて行け」
「分かった、さあ教えろ」
「……はっ倒すぞこの野郎」
「教えろ下さい」
「お前に口の利き方を教えてたらそれで日が暮れちまうな。まああいいや、まずはパソコンの外観を見て『これは良い色でございますね、部屋の中にあって浮きすぎず埋もれ過ぎず実に良い趣味です』、起動した時に『何と静かなファンの音! 無理な音が一つもない、これはさぞかし良い放熱効率でございましょう』、起動音がデフォルトであれば『なるほど上質なサウンドボードとスピーカーを使えばここまで良い音になるのですね』、何か別の音に替えてあれば『おお、なるほど、そのような音を使うと、実に作業をする気が起こります。実に考えられている』、そしてデスクトップまで表示されたら『背景の壁紙は砂刷りのようでございますな』、ウィンドウのデザインを変えていたら『ウィンドウ枠は備後の五分縁でございますな』、ソフトを何かしら起動するだろうから『起動の早き事風の如し』、終了の時には『素晴らしいマシンでございました、私も功立て名を上げ一財産築いた暁にはこのようなマシンにあやかりたいあやかりたい』と、こんな感じだな」
「ふうん」
「他に特徴があれば、何か付け足す事も出来るんだが、聞いてはいないか?」
「んとね、たしか、リンゴの絵がかいてあるって言ってたよ」
「……さっきのを全部忘れて、口だけ閉じてな」
PC褒め ごんぱち

星に想いを
深神椥

「今度お前にユミちゃん紹介したいんだけど」
「えっ……」
今まで色んな女の子紹介されたけど、今回は特に気が進まない。
「ダメかな」
「……ごめん」
「……そっか」
残念そうな顔してる。
でもボクにだって断る権利はあるし。

 急に思い出した。
 悩んでたあの頃。

「まさかお前、そっち?」
学生時代、同級生からそう言われた。
女っ気がないとすぐそういう方向に結び付ける。

好きになったのがたまたま男だっただけだ。

きっかけは、よくある感じ。

この人と居ると楽しい、素直になれる。
あれ、何だこの気持ち。胸がドキドキモヤモヤする。
まさか、恋?

とまぁこんな感じ。

何で男を好きになったんだろうと思春期にはかなり悩んだ。
でもこの人と一緒に居る内に、男とか女とかそんなことはどうでもよくなってきて、悩んでた自分が馬鹿みたいに思えてきた。

オレはこの人が好きだから好き。
ただそれだけだ。

「やっぱ会ってくんないかな」
「……悪いけど、オレの気持ちは変わらないから」
「でも、お前にもユミちゃんのこと知ってもらいたいんだ」
「……ユミちゃんユミちゃんてうるさいな」
ついボソッと言ってしまった。
幸い向こうには聞こえなかったらしい。
「……とにかくオレは会わないから」
彼女と会ったら、現実を受け入れることになってしまう。
それだけは避けたかった。

「しつこくてごめん。こっちの都合ばっかりで」
驚いた。
珍しく謝ってきたから。
やっぱ恋愛してると人って変わるのかな。
哀しいけど。

「そっち行こ」
ボクは言われるがままついて行った。
話すのはいつもの公園のベンチ。
明る過ぎない街灯が、二人をいい感じに照らしてくれる。

「オレ、お前のこともユミちゃんのことも大事にしたいんだ」
大事、か。
その言葉だけで充分だ。
「オレの気持ちわかってほしい」
わかってるよ、お前の優しさも厳しさも。
でも、オレにどうしろっていうんだ。

どうしようもなく、空を見上げた。
曇りがかった星空だ。
その時、光の筋のようなものが視界に入った。
「あっ……」
ボクの声に、キミも空を見上げた。
「わぁ、すごい」
「パンスターズ彗星、今年しか見られないんだって」

二人で夜空を見る。
静かに流れる二人だけの時間。
このまま、このまま……。

 気が付くと、涙が頬を伝っていた。

「決断」なんてしたくなかった。
ボクはただこの関係がずっと続けばいいと思っていた。

「……会うよ」
ボクはそっと涙を拭い、空を見上げたまま言った。
キミがこちらを見たのがわかったが、そのまま続けた。
「……彼女に会うよ」
「……いいの?」
ボクは顔を頷かせた。
「ありがと。ユミ、喜ぶよ」
少し声がかすれていた。

もういい、もういいや。
「大事」だって言ってくれた。

「彗星、キレイだな」
隣りのキミが言った。

曇りがかった星空が少し晴れていた。

隣りに居るけど、遠い存在になった。

 空ばっか見上げてると、首疲れるけど、やっぱり、やっぱり星空はすべてを忘れさせてくれる。


 ―いつもありがとう。

 これからもよろしくね。