表紙へ

1000字小説バトル

1000字小説バトル表紙へ

1000字小説バトル stage3
第47回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
ごんぱち
1000
3
石川順一
665
4
深神椥
977

結果発表

投票結果の発表中です。

※投票の受付は終了しました。

  • QBOOKSでは原則的に作品に校正を加えません。明らかな誤字などが見つかりましても、そのまま掲載しています。ご了承ください。
  • 修正、公開停止依頼など

    QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

コミュニケーション

QSHOBOU掲示板

夢のからくり
小笠原寿夫

「あれ、俺、ライターあれへん!」
「今日は、貸しやで。」
佐藤さんは、そう言うと、おもむろにライターを差し出した。
「ありがとう。」
私は、そう言うと、ゆっくり煙草に火を付けた。
佐藤さんは、言う。
「このライターは、貸しやで。その代わり、大人になった時、俺の願い事、ひとつだけ叶えてくれ。」
私は、二つ返事でOKした。
「ありがとう。」
佐藤さんは、そう言うと、満面の笑みで、ライターをポケットにしまい込んだ。
中学生くんだりが、煙草を吸うのは、生意気だし、校則違反であるのは、分かっていた。それを分かりながら、粋がっていた。

あれから、十数年が経った。
今となっては、良い思い出である。しかし、佐藤さんの願い事は、一体、何だったのだろう。
私は、その事を、そのときが来る迄、忘れていた。
その後、私は、コメディアンを目指し、佐藤さんを、その道に誘った。
「大変や、思うで。」
佐藤さんは、そう言いながらも、承諾してくれた。後に、これが、不幸中の幸いになる。何度も繰り返し、ネタを繰り、公園でネタの練習をしていた。
ある日、佐藤さんが、映画を撮りたいと言い出したのである。その頃、私の動きは、もうコメディタッチになっていて、歩き方から何から何まで、コメディアンの動きになっていたのである。
喋りは、半人前だが、プライドだけは、一人前だった。佐藤さんが、撮った映画が、どの様に、編集されているのか、私は、緊張と不安でいっぱいだった。
いざ、映画公開初日、佐藤監督の舞台挨拶が終わり、私は、スクリーンを注視していた。私が拝見したのは、映画「夢のからくり」。
そこに、映し出されていたのは、若き日の私だった。
「あれ、俺、ライターあれへん!」
ポケットを弄る中学生時分の私の姿が、そこには、映し出されている。佐藤さんには、佐藤さんの記憶として、その思い出が、映像として、蓄積されていたのである。
その後、どこからともなく、漲る自信と希望に満ち溢れた、コメディ映画に、終始、観入った私は、感極まって、嬉し泣きをしていた。
「ありがとう、佐藤さん!」
映画館の中で、歓喜した心の声は、たぶん、佐藤さんには、届いていなかったと思う。
「だけど、ありがとう。」
私は、そう呟いて、晴れ晴れとした気持ちで、映画館を後にした。
佐藤さんは、東京に行き、一花上げている頃だろう。
「夢は見るもんじゃない。叶えるもんなんだ!」
そんな言葉が、まるで魔法の様に聞こえてくる様だった。
夢のからくり    小笠原寿夫

お試し期間
ごんぱち

 硫黄の煙と共に、白スーツの悪魔、ヘッテルギウス氏が姿を現したのは、夕暮れ時の図書館だった。
「お呼びになったのは、あなたですか?」
「ん、図書館員さんか」
 男はびくりとしてヘッテルギウス氏の方を向く。
「あなた、目が?」
「ああ」
 その両目は閉じ、書棚には点字書籍が並んでいた。
「失礼いたしました」
「生まれ付きだ。どうという事はない」
 男は魔道書を閉じる。
「すまないが、これを片付けてくれ。棚を間違えて入れたのではないかな?」
「あなたのお手に取られたそれは、本の形を借りた悪魔召喚装置でございます。そしてわたくしは、それによって呼び出された悪魔、ヘッテルギウスでございます」
「悪魔か……奇妙に納得出来てしまう声だ」
「それはそうでしょう。悪魔の知覚は全ての生き物が魂のレベルで行えるものです。これも何かのご縁。宜しければ取引を致しませんか?」
 ヘッテルギウス氏は、男の肩を叩く。
「対価を頂ければ、それに見合った願いを叶えさせて頂きます」
「対価というのは?」
「魂でございます。ご自身だけでなく、他の生き物や分割など、自分に合ったプランで計画的なお支払いが出来ます」
 男は笑う。
「誰かを犠牲にしてまで欲しいものなどないよ」
 ヘッテルギウス氏はにやりと笑う。
「まずはお試しのご利用は如何です。例えばそう。あなたの目を開いてご覧に入れましょう」
「目……視力?」
 男の表情が一瞬変わった。
「お試し期間は一日、今から二十四時間。延長をご希望の場合、本契約といたしましょう」

「グラスホッパーズ!」
 地獄の四丁目のバーのカウンターで、ヘッテルギウス氏は殻ごとナッツを噛み砕く。
「お試しで済む訳がないんだ! 魂を集めるにせよ、出来ずに絶望するにせよ、境遇を恨み神を呪う魂は増えて、こちらの売り上げになる筈だったんだ」
 バーテンダーのニスシチは、ジューサーのスイッチを入れる。たちまち緑色のカクテルが出来上がった。
「で、実際はどうだ? あの人間、お試し期間できっちり終わらせやがった! その後も、神を恨む事すらなく天国行きさ!」
 ニスシチはカクテルグラスを置き、空きかけた皿にナッツを足す。
「畜生、あんな取引持ちかけなかった! 奴ら針ほどの経験を棒ほどに膨らませて、頭の中で全てを完結させやがる! あいつが小説家だと知っていれば!」
 ニスシチは小さく肩をすくめて笑い、この常連客の一番好きなカクテルの材料を冷蔵庫から取り出した。
お試し期間    ごんぱち

心に思い浮かぶ事ども
石川順一

  桜の木の下には草が青々として風になびいている。年を経た桜の木の樹皮ははがれかかったり、くさり落ちたりして内部の色を外にさらしている。おばちゃんの連れた白っぽい犬が青草に尿をしている。片足をあげて尿をする犬に表情の動きはあまり認められない。ここは俺の縄張りだとでも思っているのだろうか。あるいは犬に公共心を期待する方がおろかなのかもしれない。
 葉桜の葉々の広大無辺さを思う。必要以上に蒼穹をなしているかの様だ。葉桜の葉々は桜が咲いた後の桜の花が変じたものであると思うがゆえに、空を覆い尽くすほどに繁茂して居ると思いたくなるのだと思う。
 私が住んでいる市内を流れる六条川が大雨の後でもないのに、増水して奔流となっている。取水制限を解いたのだろうか。濁流の様に逆巻き、渦をなしあるいは奔馬の様に直進して居る。何時もとは違う色に激流を内に秘めた大水の威容を示している
 パソコンのシャットダウンが思うようにいかない。シャットダウン中にブルースクリーンが出てきたりするとシャットダウンしそこない、電源オンのまま夜から朝へと。再び通常起動して居るのを見逃してシャットダウン(電源オフ)はなったと信じ込んでしまうからだが、その点でもブルースクリーンの罪は重い。パソコンを何年も使って居るとどのパソコンでもブルスクリーンが出て来るようになるのだろうか。メモリー機能の脆弱さや、記録部の脆弱さに対する認識不足だろうか。
 但し電源切り忘れでもパソコン自体はスリーピング機能が働き、殆ど電源オフと同じ状態であったようだ。電源ボタン付近が全然熱くない。
心に思い浮かぶ事ども    石川順一

過去現在、未来
深神椥

 友達って不思議だ。
喧嘩をした時は、あんなに大嫌いになって、一生口きかないって思ってるのに、どちらかが先に謝って仲直りしたり、気付けば自然と元の仲に戻っていたり……。
それでいつの間にか喧嘩したことなんて嫌いだと思ってたことなんて忘れてて、お互い馬鹿みたいなことで笑い合ったりして時間を共有してる。楽しんでる。
ほんと友達って、友情って不思議。
 やっぱ友達っていい。


 私は兄姉の中でも特に父方の血を引いてしまったのか、ひどい天然パーマで、小中高は毎日のように三つ編みだった。
そのせいか、陰口を叩かれたり、直接言われたり……。
友達と言える友達も殆んどいなかった。
高校時代に唯一いた友達も中退してしまった。
 それからは毎日のようにひとりだった。
昼休みもひとりで食べるのが恥ずかしくて、折角母親が作ってくれたお弁当を食べないこともあった。
もちろん、帰宅後に食べはしたが。

 もう、早く卒業したくて仕方なかった。
 何も思い残すことはないと。

あんなに卒業したいと思っていたのに、卒業式の後、担任教師の涙を見て、もらい泣きしてしまった。
担任教師と別れるのは正直悲しかった。
同性ということもあって、話しやすく、勝手ながら友達のように思っていた。

 卒業から十年以上経つが、今でも思い残すことはない。
ただ、校舎がなくなったことは寂しかった。
いい思い出はなくとも、三年間過ごした大切な校舎だ。
あの更地を見た時は切なくなった。

 大学に入り、念願の縮毛矯正をかけた。
女子学生の少なさもあってか、友達は結構できた。
友達ができたことが嬉しくて、何でもいいから話したくて講義中も筆談したりした。
向こうは迷惑だったかもしれないが、折角できた友達を失いたくなかった。
大袈裟だが、私にとっては重要なことだ。

大学卒業後も関係を絶ちたくなくて、向こうからは一切こないが、こちらから年に数回連絡を取り、数年に一度会っている。

こちらからメールを送れば、久しぶり~今度会おうね~と返ってくる。
向こうは私ほど仲が良いと思っていないかもしれないが、連絡が取れる限り、このつながりを大切にしたい。

友達なんていなくてもいいと言う人もいるが、私はいた方がそりゃあいいと思う。
いて良かったなと思うことの方が多い。

相手にされてない感も時々あるが、私はそれでも連絡を取れる「他人」がいることは幸せだと思う。

そう、信じたい。