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1000字小説バトル

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1000字小説バトル stage3
第49回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
狂気乱夢
1483
3
深神椥
1091
4
ごんぱち
1000
5
胡桃
810

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コミュニケーション

QSHOBOU掲示板

星屑のペスカドーレ
小笠原寿夫

私は、電波時計を覗き込んだ。19:42を指し示している。次の列車に間に合う様に、目覚まし時計はセットしてある。手巻きおにぎりと缶コーヒーを胃袋に入れると、一服しながら、歩き出した。今朝の朝刊の一面に、「原子炉、手つかず」の見出しが、出ていた。
駆け上がる仕草が、まるで、仔犬の様で、かわいい。バフッとでも鳴けば、犬も動きを止めるかもしれない。負け犬になるか、勝ち組になるか、二つにひとつ、今日にかかっている。
「おはようございます。」
出せる限りの声を、振り絞った。題目、勤行を挙げてきたせいか、少し声が掠れる。
「おはようございます。」
そう言えば、漫才の夢を見た。
「オーソドックスで漫才させて頂いておりますが、公園で立ち稽古してた事が、あってねぇ。で、ゆうたらお客さんを芝生に見立ててね。」
「ほな、今日のお客さん、芝生か?」
「風が吹いたら、笑いが起こる。」
「あほかと思われとるで。」
「あほちゃうぞ!」
醒めた。
「オーソドックスで漫才やらせてもらってます。」
の譫言を言いながら、目を覚ました。
私は、走った。
赤信号で止まっては、また走った。急いでいる用事があるので。
掃除してから、また走った。
ポケットに携えた小箱と一緒に。
というわけで、小箱に入った、メビウス6mgを彼女に、手渡した。
そうして、私と彼女は、また走り出す。
部屋に帰った。
テレビをつけると、10:54の文字が左上に浮かんでいる。さて、何を見ようかと、面と向かって考えると、私は、鏡を見て、右と左がわからなくなった。
散漫とした、その風景は、砂漠の荒野に似ていたとかいなかったとか。
「社会人一年目、私は、自分を見失いかけました!」
その様なフレーズが頭を過った。
「そんな折、私を陰で支えてくれたのが、家族の存在でした。」
その様なフレーズが頭を過った。
「君、天才だねぇ。」
そのようなフレーズが頭を過った。幻聴を聴く事を余儀無くされた私の耳に、「いい耳」を掛けて、音楽室と解く心、聞くに縦しんば、聴くに耐えなば。
理解に苦しむのか、と考えると、考える程に、その理解の壁を超えた世界に罠があったのかもしれない。
もういいだろう、とまた嘆きの歌を歌いたかったのは、既に私のことではなく、既に別の誰かとは異なる、似て非なるものだったのだろうか?
私は、口の聞き方を知らない、奴をどつき回したろかえ、と思っていなかった事が、ただのジョークにすぎない事を、把握しつつ、彼を一瞥した。
敬具。
星屑のペスカドーレ    小笠原寿夫

悪夢
狂気乱夢

白に近い金髪を風になびかせた美少年が私に向かって微笑みかけた。私とあまり年が変わらないであろう少年の笑顔はひどく大人びていて、妖艶さをも帯びていた。
 気後れする私にかまわず少年は一歩、一歩私との距離を縮めていく。
 まるで、追い詰めるかのように。
 左胸が早鐘のように打つ。早く逃げろ、逃げろと警告しているのだ。
 何で逃げなければいけないのか私にはわからなかった。でも、私は知っていた。
 まだ会ったこともない少年なのに、どうして私は彼を知っているのだろう。わけがわからない。
 少年はもう目前まで来ていた。どんなトリックを使ったのだろうか。少年から私までの距離は数メートルとはいえ、あのゆっくりとした足取りでどうやって数秒でたどり着いたのだろう。
 少年から背を向け走り去ろうとした私はあっさりと少年の細い腕に捕らえられた。
 振り返ったその先には天使のように愛らしく、神に讃えられた美しい少年が居た。
 捕まれた腕から伝わってくる『天使』の冷たさが私を震わせた。
 滲む冷や汗が背中に嫌な感触を伝わせた。
 いくらもがいても捕まれた腕は私の言うことをきかなかった。どうあがいてもどうにもならないという絶望感が私の心臓を圧迫して呼吸が苦しい。
 逃げたい、逃げたいのに!!!
「やっと捕まえた。遠くまで逃げちゃうから捕まえるのに苦労したよ?」
 鳥が歌うように少年は囁いた。
 私はなぜかその先を知っていた。呪われたその言葉。
「嫌、やめて」
 お願いだから――――――
「さあ、『   』一緒にに帰ろう」

 ピピピピッピピピピッ
「・・・・・・夢か・・・・・・」
 いつもどおり目覚まし時計に起こされた朝は今までにないほど最悪だった。
 なによりあんな悪夢見たことがない。
 私は焼きすぎて固くなったパンをゆっくりと租借し、ジュースの手助けで何とか飲み込んだ。そして何時も通りに母親に文句を言う。
「母さん、パンを焼いてくれるその心遣いはうれしいんだけどこのパン固すぎ!! 」
 母さんは悪びれもせず笑った。
「いいじゃない、やわらかすぎるパンに慣れすぎちゃってもしもお客様に出された固いパンが食べられなかったら断れる?これも試練よ、耐えなさい」
 なんだか変な理屈だが納得できなくもなかった。
「確かに・・・・ごちそう様、学校行くね」 リビングの隅に追いやられた父親の写真に向かって合掌した。
「ああ、そういえば母さんね」
 玄関で靴を履き替える私にかあさんは私の常識の範疇に収まりきらない言葉を口にした。
「私、再婚するから」
「はあ!? 」
「っていうか、しちゃったから。籍、入れちゃった」
 嘘でしょ、ありえない。
 実際父さんが死んでから一年もたっていない。それなのにどうしてよくほかの男と再婚する気になれたものだ。それより何でその前に一言言ってくれなかったのだろう。
 母さんにはあきれてしまう。
「それとね、向こうの方にもあんたと同じくらいの息子さんがいるのよ」
「・・・・・・え?」
 一瞬、寒気がした。まさか、いやそんな、だって・・・・・・
夢の出来事じゃないの。
 嫌な予感を払拭するように努めて明るく訊ねた。
「ど、どんな子?イケメン?」
「ああ、写真も持ってるのよ見てみて」
 差し出された一枚の写真に私は絶句した。
「その子はね、あなたの弟になる子よ。仲良くしてね」
 母さんの言葉が残酷に頭の中に響いた。
 写真の中で華から蜜が垂れるように甘く微笑む金髪の美少年。しかしその笑顔のどこかが白々しく、恐ろしくみえた。
 夢の中で言った、少年の言葉が蘇った。あの恐ろしい、『呪いの言葉』が。
    「さあ、『姉さん』一緒に帰ろう」
悪夢    狂気乱夢

ココロめぐル
深神椥

「あれ、あんな奴いたっけ」
「えっお前知らなかったの?この前C組に転校生来ただろ」
「そうだっけ」

全校生徒が整列するその間から、そいつの姿が見えた。
前の奴と話して、笑顔を作っている。

周りの女子たちは、そいつの方をちらちら見て、何やら話している。
まぁ、確かに朝っぱらから校長の長話には飽きるが。

 初めて見るのに、何だか気になった。

 何となく、あいつのことを知りたいと思った。


自分から勇気を持って声をかけることは殆んどない。
でも、何故だか自然と体が動いた。


 HRが終わって、廊下であいつを待ち伏せてみた。

オレがこんなことするなんて、今まではありえなかった。
オレ、変に思われてないかな。

少しして、あいつが教室から出てきた。
オレは迷うことなく、そいつにかけ寄った。

向こうはオレに気付き、立ち止まった。

「あの、ちょっといいかな」
何故か、すっと言葉が出た。
「オレ、B組の江田っていうんだけど、転校生だよな」
「……うん。あっボクは及川。よろしく」
「あっあぁ、よろしく。あっもう帰るの?」
「……うん」
「あっじゃあ一緒に帰らない?ダメかな」
「……いや、いーよ」
笑顔でそう言った。

オレがこんな行動とるなんて、我ながら驚くことばかりだ。

二人で並んで歩く。
何だかこういう感じ、久しぶりだ。
「てか、家こっちでいいの?」
「あっうん」
「……でも、この時期に転校してくるのって珍しいよな」
「……うん……ちょっとね」
一瞬、表情が曇った気がした。
何だか胸の奥がざわざわする。
 何だ?

「あの」
及川がうつむき加減で言った。
「ん?」
「その、転校した日に、その、江田君のこと見かけて……何か気になったんだよね。だから、君から声かけてくれて、その、正直嬉しい」
照れくさそうな及川の顔を見て、何ともいえない気持ちになった。
「あっ江田でいいよ」
「……じゃあ、ボクも及川で」
「あぁ、じゃあ」
お互い照れ笑いして、下を向いた。
何だかこいつのペースに惑わされそうになる。
「あっゆっくり話したいから、どっか寄ってかない?ダメ?」
「うん、いーよ」
及川が笑顔で言った。
オレも自然と笑顔になった。
「どこ行こーか」

 及川の過去に何があったのかはわからないが、オレが及川を気にとめて、もっと知りたいと思ったのは事実だ。
そして、及川も、オレを気にとめてくれていたのも事実だ。
 及川の過去に何があったのかは、別に知っても知らなくてもいい。
もし、及川がオレに過去を話したいと言ってきたら、その時はその時だ。
何を言われても、全てを受け止めよう。
今はただ、お互いのことをもっとよく知って、色々話して……それでいい。

 お互いのもっとココロの奥深くを知るのはそれからだ。
ココロめぐル    深神椥

それのあるもの
ごんぱち

「いつまで寝てるんだい、この唐変木!」
 怒鳴り声と激しく揺さぶられる感触に、四谷京作は目をさます。
「おはよう、メイコさん」
「挨拶してるヒマがあったら、さっさと会社に行け!」
 やや歪んだ熟年女性の顔立ちと体型をした家事ロボットは、言い捨てて部屋から出て行った。

 午前の業務を終えた四谷は、昼休みに弁当を広げる。
 漬け物と煮たモヤシと生のピーマン。
「メイコさん作か?」
 同僚の蒲田雅弘がパンの袋を開ける。
「災難だったな」
「まあな。自分で作るって言ったら、メイコさん怒るし」
 四谷はピーマンをかじる。
「味も工業製品みたいだもんな。食い物以外の」
「まったく、酷い商品だよ」
「ああ、酷い商品だ」

「ただいま」
 四谷はドアを開ける。
「こんな時間まで、どこほっつき歩いてやがった!」
 家事ロボットは怒鳴り声と同時に、コップで水をかける。
「さっさと寝ろ!」
「お風呂……なんかは?」
「入りたきゃ自分で湧かせ。ただし、五デシベルより上の音を立てたら即刻ガス栓を閉める!」
「……入らないで寝る」
 四谷は水で濡れた顔を手で拭い、靴を脱いだ。

 ――厚生労働省庁舎内の会議室に、職員が集まっていた。
「本年度四半期の結婚数の急激な減少についてだが」
 白髪頭の課長が口を開く。
「やはり、あれでしょうな、家事ロボット」
「売れに売れていますから」
「統計上も、明らかな相関が見られています」
 職員達は話しながら、ちらちらと若い職員に視線を向ける。
「これは……何かの間違いです!」
 若い職員はこらえれなくなったかのように怒鳴る。
「事前対策は万全だった筈だ! 圧力で不細工でガサツに仕様変更させ、マスコミにネガキャンや事故の捏造もさせた! あれに魅力なんか感じる奴は異常者だ!」
「落ち着きなさい」
 課長が諫める。
「君達のチームは良くやった」
 会議室は静まり返る。
「ただアレに、我々の想定していなかった、人間のパートナーに勝る魅力が、どこかにあった、ということだ」

 しわくちゃのパジャマに四谷は袖を通し、微笑む。
「バカにしてんのか!」
 家事ロボットが怒鳴る。
「嬉しいんだよ」
「は?」
「ただいま、おやすみを言える相手がいる、それが嬉しいんだ」
 家事ロボットは眉を寄せる。
「なら結婚でもすれば良いだろ。バカじゃねえの? ったくお前はキモイしバカだし不細工だし甲斐性ねえし……」
「それじゃ」
 四谷はリモコンを手に取り、
「おやすみ」
 電源ボタンを押した。
それのあるもの    ごんぱち

放課後の私
胡桃

今までは全部駄目だった。
「先輩 私、先輩のことが好きです」告っても
「俺、彼女いるんだよね…」とか
またある日に
「好きです。私、平井くんのことが―…」と呼び出して告っても
「僕、他に好きな人いるからね…。」とか
また今日みたいに
「鈴くんずっと前から好きでした」と私にしては珍しい一週間の思い人に告っても
「ごめんね。」何かあっさり断られたり。
私はいつでもそうなんだ。でも、全部それは私のせいでもあった。
「菜々は好きな人に話かけられないから。」
昼休み、昼食中。
私は中学生から親友の玲美ちゃんからそんな私の駄目な所を聞いている。
「私、口下手なんだ…。」
今思えばそうだ。小学生の頃から。
「でも、菜々の良いところを生かせるのがあれば…」
玲美ちゃんがそこまで言いかけていた。
「うちの部活があるじゃないの!」
玲美ちゃんが進めた部活は「男子バスケ部」
そこなら、私の口下手を克服できるということで。
早速、放課後は体育館に行く。
「このたび、マネージャーになりました。緒川菜々です。よろしくです」
玲美ちゃんと一緒の私はマネージャーになった。
「菜々。あの7番と9番にスポーツドリンク。切れてるって。」
玲美ちゃんが指令係で私が行動係的な感じです。
「いってくるー」
スポーツドリンク入りのペットボトルを持って私はその人達を目指す。
すると、
「えっ!?」
ボールが私の頭上に―――…
そこまで目で追ってから聞こえたのは
「危ない」
私に覆いかぶさってその人はボールから私を守ってくれた。
バスケ部なのに、割と低い、黒髪の3番は
「大丈夫ですか」と言ってくれた。
私が「はい」と答えるとその人は「良かった」と言った。
あの人、どこかで見たことがある。
『菜々ちゃん』
はっ…
そうだ、あの人…
「日高碧くん…?」
あの人を呼ぶ。すると、
「…………菜々ちゃん、だよね。緒川さんって」
やっぱりだ、そうだ。小学校の頃の初恋の人話しかけられなかった人…
そこから私の数年前の片思いが
また、動き始めた。