第51回 1000字小説バトル

参加作品
1 (本作品は掲載を停止しています)
2 ビショビショビショービジョビジョン 大覚アキラ1000
3 争いが終わった後のこと 凛々椿1000
4 それからというもの 小笠原寿夫1000
5 冷凍人間 ごんぱち1000
6 ココロツタウ~feel reluctant 深神椥1080
7 ラブソング 待子あかね1000
8 一週間 蛮人S1000
9 ダイヤモンド 石川順一1001

掲載時に起きた問題を除き、作品内容の訂正・修正はバトル開始から終了まで基本的に受け付けません。掲載時の不備などがございましたら、ご連絡ください。

QBOOKSではどのバトルにおきましても、原則的には作品に校正を加えません。明らかな誤字脱字がございましても、そのまま掲載しておりますことをご了承ください。

バトル結果発表
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(本作品は現在公開を停止しています)

ビショビショビショービジョビジョン
大覚アキラ

「おいスヌ夫!これすげえな!」
 ジャーヤンが夢中で覗き込んでいるのは、スヌ夫の双眼鏡だ。
「いいだろ?100点のごほうびにパパが買ってくれたのさ」
「ぼくにも見せてよ!」
 のぴ太のことなど、ジャーヤンはお構いなし。
「うぉっ?おおおおっ!」
 突然奇声を上げるジャーヤン。
「なに?どうしたの?壊れてないよね?」
 ベソをかくスヌ夫に、ジャーヤンはニヤリと笑って双眼鏡を差し出した。
「うぉっ?おおおおっ!」
 スヌ夫は口を半開きにし、食い入るように双眼鏡を覗き込んでいる。
「スゲエだろう?おれにももう一回見せろよ」
 そう言うとジャーヤンはスヌ夫の手から、再び双眼鏡を奪った。
「ねぇ、いったい何が見えるんだよ!」地団太を踏むのぴ太。
「知りたいか、のぴ太?」
 興奮冷めやらぬスヌ夫が言った。
「向こうのマンションに、シャワーを浴びてビショビショになった美女が微笑を浮かべているのが見えるんだよ!」
「えっ!そ、それって、もしかしてハダカなの?!」
「当たり前だろ!」
「ホントに?!ぼくも見たいハダカハダカ!」
「のぴ太には見せないよ」
「えー!そんなイジワル言うなよスヌ夫!」
「ダメダメ!のぴ太には見せない」
 意地悪く笑うスヌ夫。と、そんなスヌ夫を小突きながら、ジャーヤンが鼻息荒く言った。
「おい。ティッシュ持って来いや……」

 家に帰るなりドうえもんに泣きつくのぴ太。
「ドうえも~ん、双眼鏡出してよ~!」
「ん?双眼鏡?あるけど何に使うの?」
「実は……」
 のぴ太は、スヌ夫の家での出来事を語った。
「なぁんだ、そんなことならいい道具があるよ」
「えっ!マジ?!」のぴ太の顔がパッと輝く。
「要するに、ビショビショで微笑している美女が見たいんだろ?」
「まぁ、簡単に言うと、そうかな」
「まかしとけ。えーっと……あ、これだ。『ビショビショビショービジョビジョン』~!」コンニャクでできた水中メガネのようなものを取り出し、のぴ太に手渡す。
「これをかけて」
「……な、なんかベタベタしててイカ臭いよ」
「気にするな。スイッチを入れてダイヤルは半径10キロでいいか」
 突然のぴ太が奇声を発した。
「うぉっ!?おおおおっ!」
「ふふ……すごいだろう?」
「うんっ!すごいすごい!」
「設定した半径内の、ビショビショで微笑している美女をサーチして映し出す機械なんだ」
「すごいすごい!」鼻息荒いのぴ太。
「すごいだろう!」
「ね、ドうえもん……ティッシュ持って来てくんない?」

※作者付記:
現代詩フォーラムに2006年3月30日投稿したものを、
文字数調整のため改稿したものです。
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=69772

争いが終わった後のこと
凛々椿

駅前の文具青井堂では今も子供達がシールに夢中だ。
向かいのバルMMは、大衆酒場の先代亡き後、留学先から戻った息子のヨダ・ツネミが開いた。
町に移り住んだ若者達に人気の店だ。
その隣はカフェ野薔薇。
地元の御曹司が趣味で営む。
彼の作るクッキーはテイクアウト可能で正午には売り切れてしまう、町の逸品だ。
同じカフェでも次の角を左に折れた先にある喫茶芝生は戦前からあるカフェで、当時この一角は遊郭だった。
裏手にあったソープランドが唯一、一昨年まで営業していたが現在では公園となり、当時の面影はもうない。
喫茶芝生にはそのソープランド夕楽の店主スガワが通う。
芝生の店主は三代目のマン・キヨコ、スガワよりも17才年下の64才で、芝生の休店日の火曜日には二人が手をとり町をデートする姿を見ることができる。
二人の間には子供が二人、長女ユキは5人の母の傍ら、マカオのリカーショップのワインソムリエをつとめる。
次女ミユは今も17才のまま、町の教会墓地に眠っている。
芝生を抜けると運河があり、谷田橋を渡った先にはベーカリーもものきがある。
店主のタケイ・ヨウは朝2時に寝床を抜け、5時には至高のブレッドを焼き上げ、軽やかな朝の匂いを川面にみたす。
7時に、新しい朝が来た、という音楽を流して店を開ける。
65年間この町に住む85才のシンドウ・モトは、四日に一度6時きっかりにやってきて、ブレッドを待つ。
もものきはその日は6時半に開店する。町の人はその日を「モトさんの日」と呼び、有志でモトにホットココアを差し入れる。
タケイの娘婿シンは正社員の傍らコーヒーの勉強のため、週一日喫茶芝生に通う。
タケイの婿養子の某は、一日中店の奥でバルタン星人の人形を抱き、モモ、モモ、と撫でている。
某にとってバルタン星人はモモノリである。
某の息子モモノリは今も17才のまま、隣町の寺院に眠る。
タケイが墓前の花が毎日替わっていることに気づいたのは2年前のこと、捧げているのはバルMMのヨダかもしれないと思うが、生活が合わず、彼とは未だ話せないでいる。
三軒先の西花苑の店員チカダ・トモコは、ヨダの妻が毎晩花を買いに来ることを知っている。
チカダの旧姓がアオイであることは誰も知らない。


9月18日午後7時、駅構内の階段でアゲハチョウが死にかけていた。
チカダがその時間にその階段を利用することは、誰も知らない。
そんな時間にチョウが死にかけている原因を、誰も知らない。


翌日、




それからというもの
小笠原寿夫

「お忙しいところ、すみません。私、アルバイト情報誌を拝見しました灰原と申します。」
私は、電話越しにそう言った。
「灰原さんですね。失礼ですが、下のお名前と生年月日を教えて頂けますでしょうか。」
電話の向こうでは、中年女性とみられる声が聞こえてきた。
「はい、灰原和俊と申します。生年月日は、昭和54年2月8日生まれです。母は難産で、私が、生まれる時、逆子になるかもしれないという不安もあったらしいのですが、何とか、無事、出産致しまして、小学校に入学します。それから、活発な友達に恵まれ、有意義な小学校生活を送りました。小学生の時のあだ名が、カズくんでして、クラスメイトからは、『カズくん、勉強ばっかしてたら、その内、頭から血が出るよ。』と言われるほど、勉強熱心な子供でした。それから、中学校に上がりますと、世間一般の中学生と同様、反抗期を迎えまして、親に怒鳴り散らすことも多かった様に思います。勉強も疎かになり、部活の方が忙しくなり、あっ、私、サッカー部に所属していたのですが、なかなか勉強にも身が入らなくなりました。それからというもの、サッカー部のキャプテンを務めまして、中学生活三年間は、サッカーに夢中でした。それも束の間、高校に入学致しますと、進学校だったせいもあり、勉強にも精を出し、がむしゃらに勉強し、何とか、二流の大学に入学できまして、親を安心させたという経緯もございます。その甲斐あってか、大手では、ないにせよ、企業にも無事に就職することができまして、ITの仕事を数年間、務め上げました。ところが、その企業も敢え無く、倒産し、どのように過ごせば良いのかわからない毎日に、自問自答しながら、ここまでやって参りました。無事に何とかやってこれたのも両親の支えと友人の温かい言葉だったように思われます。友人は、私を慰めるでもなく、励ますでもなく、今まで通りに接してくれました。その友人が、たまたま、『アルバイトでも探して、就職に結びつければ?』と言ってくれまして、再就職を目指して、見つけたのが、御社の求人情報でして、志望動機と申しますのが、今も話させて頂いた通り、求人情報誌を拝見した時に、私に向いているのは、この仕事だ!と思ったからです。一度、面接をして頂きたいのですが、まだ、未熟ゆえに熱意でしか、私の気持ちを伝えきれないのですが、いかがでしょうか。」
と、私は、一気に喋ると、すぐさま電話を切られた。

冷凍人間
ごんぱち

「博士、冬山の氷河の中から発見された過去の人間の蘇生に成功しました!」
「どうも、一九〇〇年代生まれの四谷京作です」
「ほほう、ようこそ二一〇〇年の世界へ、ヨツヤさん」
「――ごめんください」
「ん、どちらさま?」
「なんだね、君は、これから我らは過去の人間との文化交流を行うところなのだよ」
「そちらのヨツヤさんにお支払い頂くものがございまして」
「馬鹿な! アレだけの貯金があったのだ、返済は出来ていた筈だ! まさか、ひょっとして、リボ払いか! リボ払いだったからか!? 畜生、人でなし! インチキ商法! ぼったくりの高利貸し!」
「勘違いされているようですが、私はツタヤの者でございます」
「む! ひょっとして、登山時の心の支えに持って行った、このDVDのか!?」
「はい。その記録媒体の返却と、延滞料のお支払いをお願い致します」
「ぬおおお! 一〇〇年に渡る延滞料、一体幾らになるんだぁあああ!」
「……博士、なんで冷凍睡眠に、記録メディアなんか持ってたんでしょうね」
「なんか、ロクな情報が引っ張れない人間生き返らせちゃったかも知れんなぁ」

「ヨツヤさん、どうです。これが二一〇〇年の街並みです」
「うわあああ、鉄のイノシシだ!」
「ははは、過去の方にはそう見えるのですか。これは興味深い。これはただのアルミ合金のイノシシロボットですよ」
「え、ええと……博士、でしたか。なんであんなものが町中にいるんですか」
「これを配置する事で、人間の精神に緊張をもたらし、退化を防止することができるのです」
「人権とかないんかい」
「あなた方の時代でも、同じような機能を持つ『ジドウシャ』というものが配備され、外を歩いているだけで死ぬ可能性がかなりあったと聞きますが?」
「一周しただけだったのかぁああ!」

「――元の世界に戻れる!?」
「使い捨ての一方通行なら、タイムマシンはあります。言ってませんでしたっけ」
「全然聞いてねえ! この時代に慣れようとした一年がまるきり無駄か!」
「帰りたいんですか?」
「当たり前だ! 元の暮らしもあるし、友達もいるし、何と言っても」
「何と言っても?」
「DVDを、返す事が出来る!」

「――そんな経緯で、未来から返却期限日に帰って来たぜ、蒲田! さあ、ツタヤに行ってこれ返そう!」
「なあ四谷」
「なんだ」
「もしも、DVDを借りる前の時間に戻って過去のお前にそのDVDを見せたら、タダで見られたんじゃないか?」
「!!」

ココロツタウ~feel reluctant
深神椥

 最近、及川の様子が変だ。
あまり目を合わそうとしない。
時々うわの空だ。
聞こうかとも思ったが、心の中に土足で踏み込んでしまいそうだ。

でも、何となくわかっていた。
転校してきた理由、それが原因かもしれない。
もしそうでも、いつも通りでいよう。
アイツの為にも、その方がいい。

 そんなことを思っていた高二の冬。

オレはカラオケボックスの一室で及川を待っていた。

珍しく及川から日曜に会いたいと誘いが来た。
OKしたものの、何だか心の中がモヤモヤする。
いつも通りでいるはずだったが、緊張で落ち着かない。
ウーロン茶もコップの半分は飲んでいた。

そうしている内に店員と共に及川が入ってきた。
「遅れてごめん」
入ってくるなり、そう言った。
オレは首を振った。
店員は及川の注文を聞き入れ、出て行った。

二人で並んで座る。
何だかドキドキする。
オレから切り出すべきか。
「あの」
及川が言った。
オレは何も言わず、視線を落としたまま及川の方に顔を向けた。
及川は前を向いたまま話し出した。

「その、前の高校で、良くしてくれた先生がいて」
及川は言葉を選んでいるようだった。
「それで、その、最初は普通に話す程度だったんだけど」
そこまで言うと、目をつぶり、下唇を噛んだ。
「及川、言いたくないなら」
「いや、言うって決めたから」

強い口調に、込み上げてくるものがあった。

「その、先生は、いつからかボクに……」
「及川、もういいよ」
及川の顔を見れば、何となく察しはついた。

 その時丁度、店員が注文した物を運んできた。
タイミングの悪さに、拍子抜けした。
店員がこちらを一瞥した。

「及川、飲んで落ち着け」
落ち着かなくちゃいけないのはオレの方だ。
及川はオレンジジュースを何口か含んだ。

「その、先生はボクに、ただそばにいてくれるだけでいいって。でも、ある時、見られて……。もっとそばにいてあげたかった。もっと先生のそばに」

その先生が男か女かはわからないが、別に聞こうとはしなかった。
「その先生のこと好きだった?」
「わかんない。ただ先生の為になるならそれでいいと思った。先生もボクをどう想ってたかわかんないし」

すべてを受け入れる、そのつもりだったのに、何だか余計にモヤモヤする。

「こんな時期に転校してきたのは、そういうことがあったから」

及川は自分の中で納得したようだった。
オレはどうなんだ、それを聞かされて。
覚悟していたが、何だか腑に落ちない。
お互いにどう想っていたかわからないと言っていたが、もしかしたら、及川もその先生も……。

もしそうだとしても、オレにはどうもできないのに……。


 オレはただ三分の一程残ったウーロン茶を見つめていた。

ラブソング
待子あかね

 ずっとギターを弾いていました。憧れの彼女みたいに弾いていました。とはいっても、これは夢。夢だけど、確かに、ギターの響きが自分の中から出ていると感じているのです。彼女が奏でていたメロディを、そっと撫でいるように。

 憧れの彼女は短大で同じクラスでした。
 引っ込み思案なリカは、しばらく話しかけることができなかったけれど、1年を経て、2回生の時、ようやく彼女に話しかけることができました。
「今日、お昼、いっしょに食べませんか」
 同じ歳のはずなのに、どぎまぎする姿を隠せません。
「いいよ。今日、お弁当持ってきていないから、一緒に食堂で食べようか」
「あ、ありがとう」

 彼女は、真っ白いシャツであるけれど、カレーうどんが跳ねるかもしれないことに戸惑いもせず、美味しそうに夢中になってカレーうどんを啜っています。なにか、話したいなと思う一方、リカも夢中になってカレーうどんを啜りました。でも、彼女みたいにうまく食べられなくて、時々跳ねて、恥ずかしったらありません。
「そんなん気にせんと、食べたらいいんよ。跳ねて、汚れても、また、着替え たらいいやん。わたしは、着替え、持ってきてるよ」
 そっと、こちらを見て、そう云った彼女の瞳に、リカは吸い込まれていきました。

 毎週、水曜日になると、食堂の前から三列目の一番右のところにリカは待っています。彼女と約束をしたカレーうどんの日。初めて、一緒に食べた日も水曜日で、彼女の方から、「他の曜日はお弁当を持ってきたり、講義が長引いたりするから、水曜日に一緒に食べよ」そう云ってくれたのです。

 今でも、どうして彼女がそんな誘いをしてくれたのかはわかりません。ただ、毎週水曜日のカレーうどんの日は半年ほど続いて、その後は、彼女が出なければいけない講義が少なくなったからなどで、食堂で会うこともなくなって、クラスで会っても声をかけようと思ったら、姿が見えなくなっていきました。

 10月13日。学園祭で、だれよりも目立って、彼女はギターを弾いていました。オトコマエな彼女が弾く、歌うラブソングにリカだけでなく、たくさんの人が夢中になっていました。
 その日から後も、彼女はキャンパスに姿を見せませんでした。「かっこよかったよ」って話したかった。ギターの話、歌の話、色んな話をしたかったと思ったときには、彼女はいない。

 リカの心に残っているのは、彼女の奏でるきれいなラブソングだけでした。

一週間
蛮人S

0月0日(日)
 日曜日は『市場』に出かける。
 かつて六五〇余名の科学的生活を支えた貯蔵倉庫が、今や私ひとりの『市場』だ。市場の作法として商品の代価、硬貨は置いておく。儀式だ。

 本日の買い物、糸と麻の布。

 裁縫……
 巨大宇宙船『英雄』号――遙か地球を離れ、科学の頂点、人智の結集たるロケットの、一週間の始まりは今や針仕事だ。
 ヤ、ポテルャールシャ。

0月0日(月)
 三十二枚の麻の布貼りが奏功、三番パイプの漏洩が減る。『浴槽』の熱流値は漸増へ転じた。喜ばしい事だ。前もそう書いた気もするが。
 機関の長期的機能曲線は『事故』以来変わらぬ右肩下がり。私の右肩も重い。ひとりには厳しい作業だ。

0月0日(火)
 昨日の疲れか何もする気になれず。だが熱パイプの副効能として、私の浴槽にもお湯が貯まった。久々の入浴。この報酬の為に作業しているかのように。

 今日は明日の楽しみの為、明日は明後日の楽しみの為。
 ヤ、ポテルャールシャ。

0月0日(水)
 ニーナが来た。
 彼女はいつも通り――焦げた服、血塗れの、だが穏やかな表情で会いに来た。いつもの微笑みで。
 君は『事故』の日に死んだのに。

『ええ、だから変わらない。でもあなたは……』
(僕は……)
『何かを変えたいとか思ってるの?』

 ああ、そんな筋の映画なら昔に観た。ニーナと一緒に。
 ウオツカの新しい瓶を開き、今夜は彼女と過ごしてやる事にする。今は彼女は眠っている。

0月0日(木)
 映画のやり方に従い彼女を送り出す。何の疑いも抱かぬまま観測ロケットに閉じ込められたニーナは、泣き叫びながら闇に還った。
 八基のロケットを使い切り、また新しい手段が必要だ。または根本的解決を。
 ヤ、ポテルャールシャ。

0月0日(金)
 疲れている。
 慣性は日々地球を遠ざける。パイプ補修のワイヤーは、今日には回収すべきだったのに。
 でも来週にさせてくれ。もうどうせ同じだ。機能曲線マイナス2!

0月0日(土)
 『事故』から何日何年が過ぎた?
 いつか機関を直し地球へ帰る。それさえ今や漠とした夢と思える。
 機関は永久に直らぬかもしれぬ。今日直せずに、なぜ明日直る?


 白状しろ。
 私は、本当に変えたいか?
 糧はある。
 機能曲線に一喜一憂、得られる暖かい風呂。
 ウオツカを開けば、昔のままのニーナ……
 一週間、この繰り返す一週間の保守を!

 ニーナ、また話し過ぎたよ。
 この日記は処分する。

 何度目の事だろう。

※作者付記:
ヤ、ポテルャールシャ(露)『道に迷っている』ぐらいの意味

ダイヤモンド
石川順一

和島の家は外装がダイヤモンドで出来ている豪邸だが、外装に合わせて住んで居るダイヤモンド犬がうるさい事で有名だった。
「名前がダイヤモンドなの?」
「いや、ダイヤモンドの外装を持つ肉体、眼もダイヤモンドで出来たロボット犬だ。東都大学に委託して作ってもらったやつだ。防犯仕様に様々な仕掛けがある。光、音、匂い、接触、味覚など、五感には全て反応し解析する。五感を統括する知能システムが特に優れていて、捜索対象をすべて記録する。記録した上で理路整然と報告する能力に優れている。」
和島の家は執事もダイヤモンドでちりばめらていた。やつの趣味で、一月から十二月までの誕生石を身に付けなければならない。一月はザクロ石。二月は紫水晶といった具合に。つまりその価格に見合った人物で無いと雇い入れられないということ。嫌味な趣味だが、不思議と執事に嫌味なやつはいない。やつのスタンダードがそれを許さないのかもしれない
「歌会はどうだったの」
「ああ。今日開かれたダイヤモンド歌会は素晴らしかった」
「1月の部」 ・真実と友愛見せて彼は今断崖絶壁しに行くところ(ザクロ石)
「2月の部」 ・紫を私は寝ながら触れて居る装飾用に一つ貰おう(アメジスト)
「3月の部」 ・海の水一日見ても見飽きない「海」の漢字に「母」の字があり(アクアマリン)
「4月の部」 ・顔に来るダイヤモンドを払い避け眠られぬ夜を楽しんで居る(ダイヤモンド)
「5月の部」 ・コロンビアブラジルジンバブエそしてマダガスカルにパキスタンなど(エメラルド)
「6月の部」 ・養殖の真珠と天然争えり馬鹿らしいのは訴訟まで行く(パール)
「7月の部」 ・紅玉のルビー手に取り欠伸出る眠り居るまで鉱泉を掘る(ルビー)
「8月の部」 ・石言葉「夫婦の幸福」でしたよね緑色深く我が目を射たり(カンラン石)
「9月の部」 ・愛読書「リボンの騎士」と答えたらサファイア王子とホモ婚望む(サファイア)
「10月の部」・オパールの鉱脈ついにあきらめて寝る夢だけを追及して居る(オパール)
「11月の部」・トパーズは「誠実潔白友情」の石言葉なりこれはまじめな言葉(トパーズ)
「12月の部」・屋外に放置しますと日光と熱にやられますからやめよ(トルコ石)
「ダイヤモンド歌会は盛会の内に終了した。参加したければ翌月もやるし、小さいのなら来週もやるから楽しみに待っていて」
私は女と別れて居酒屋へと急いだ。
この世ではダイヤモンドが酒となる