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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第56回バトル 作品

参加作品一覧

(2014年 3月)
文字数
1
Gossow
1000
2
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
3
(本作品は掲載を停止しています)
4
深神椥
1000
5
ごんぱち
1000
6
野乃
1147
7
石川順一
1022

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Moment
Gossow

 このせかいはローラーコースターのようだ。
 あらゆるものが、ものすごい速度で過ぎ去ってゆく。それなのに、その出来事が脳裏に浮かびあがるとき、それはスローモーションのようにゆっくりとした映像で浮かび上がる。
 思い出とはそういうものだ。

          ∞∞∞∞∞
      ひとつ、ヒントを出してみよう。
君が湖のほとりに、一人座っている。君は悠久のかなたへ思いを馳せている。
そして、美しい女が君のせなかに手を置いた。君はその女のけはいを前もって感じていた。そのけはいが君のせなかにつたわってから、おんなの手が君のせなかに置かれるまで。
   その二つの行為のあいだによこたわる深淵。
          ∞∞∞∞∞

 今度は、昔の話をしよう。

 子どもの頃、近所に野良いぬがいた。
 老いぼれたいぬで、目が見えず、いつも何かにつまずきながら歩いていた。 わたしはそのいぬを、ひそかにかわいがっていた。

 「あの犬、目障りだよな」
 友達は、そのいぬを毛嫌いしていた。ある日、わたしの目の前でそのいぬを木の棒で叩き殺してしまった。
 いぬは悲痛な声を出して、許しを乞うた。
 「お前もやれよ」
 友達はわたしに棒を手渡した。わたしは嫌だと首を振った。
 「俺の言うことが聞けないのか」
 友達はいぬに近寄り、その痩せ細った足を掴んで不自然な方向に捻った。ほねが折れる、乾いた音がした。
 いぬは苦しんでいた。 「もう、やめてくれよ」
 「じゃあ、お前がとどめをさせ」
 その友達はわたしに木の棒を渡した。
 わたしは木の棒を持って、いぬと向かいあう。
 いぬは口から血を流し、わたしを見つめていた。
 わたしは両足がふるえだすのを感じた。

 「早くやれよ」
 友達はつめたい目で、腕を組み仁王立ちしていた。
 わたしは足が震えて、逃げ出すことも出来なかった。そのとき、わたしは悟った。
 わたしは目の前で傷ついている、いぬそのものなのだと。
 「早くやれ」
 友達の声が響いた。

 一歩、二歩…
 わたしはいぬに歩み寄っていった。
 その数秒は、途方もない無限の時間におもえた。
 事実、わたしの目の前には、ぱっくりと地の割れ目からのぞく、底なしの深淵が待ち構えているのが見えた。
 わたしは、いぬに木の棒を振り下ろした。そのときにおさないわたしの顔を濡らした、噴水のような血しぶき。

 その血しぶきは、いまでもわたしの眼前にアリアリと映し出されているのだ。

(本作品は掲載を終了しました)

(本作品は現在公開を停止しています)

ひげきのひろいん
深神椥

 私は、強く握っていたフォークを床に落とした。
 心臓がバクバクして、息は上がり、体は震えていた。
 目の前に倒れているモノを呆然と見つめる。

いい人だと思って、信用した私が馬鹿だった。

 田舎から上京してきて、右も左もわからない私に、とても親切にしてくれたアパートの管理人さん。
私を娘のように思ってくれて、私はすっかり信用しきっていた。
 それなのに――。

 うちにお茶でも飲みに来ないかい?と誘われ、部屋にお邪魔したら、急に目の色が変わった。
 抵抗できなかった。
力で押さえつけられて、怖くてどうしようもなくなった私は、ケーキの為に用意してあったフォークに手を伸ばし、思わず首元に刺してしまったのだ。
 首から血を流して、ピクリとも動かない管理人さんの前に立ちつくしていたが、急に我に返った。
「救急車」
私は声を震わせながら、そう呟き、息絶えたのか、まだ息があるのかも確認せずに、近くにあった電話の前に立った。
 受話器を持ち上げた時、ふと、思った。

 このまま救急車を呼んで、私がやったことだと知られてしまったら、逮捕されてしまう。
 駄目だ、絶対そんなこと。

 上京してきたといっても、親の反対を押し切って、半ば家出状態で出てきた。
もし、逮捕されて、ニュースにでもなったら……。
でも、事情を話せば、正当防衛ってことになるのだろうか。
そもそも正当防衛ってどこまで通用するんだろう。

 そんなことを考えている内に、頭の中がごちゃごちゃになって、涙が溢れてきた。

 どうしてこんなことになってしまったんだろう――。

そう思った時には、部屋を飛び出していた。

 逃げよう、逃げるしかない。
そうしないと、何の為に家出までしてきたのかわからない。
 幸い、お金はある程度持っていた。

 私は大通りに出て、道行く人の合間をぬって、歩道をひたすら走った。
 できるだけ遠くへ行こうと。
道路の反対側に、地下鉄の入り口を見つけたので、道路を斜め横断しようとした、その時、左から大型トラックが走ってきた。
 私は無我夢中で走っていたので、大型トラックに気付くのが遅かった。


 低く、鈍い音がした後、私の体は人形のように宙に舞い、そのまま地面に強く叩きつけられた。


 弱々しい心臓の音が、耳の中にこだましている。


 人が集まってきたのか、周りが騒がしいのが何となくわかった。

 朦朧とした意識の中で、私は、ふと、思った。


  管理人さんも、こんな気持ちだったのかな。
ひげきのひろいん 深神椥

永遠に次ぐ幸せを
ごんぱち

 地下の一室に、硫黄の煙と共に現れたのは、スーツ姿の悪魔・ヘッテルギウス氏だった。
 儀式用の蝋燭の明かりが揺らめく。
 女の目は怯えながらも、ヘッテルギウス氏から離れない。
「あなた望みを叶える者、ヘッテルギウスでございます」
 ヘッテルギウス氏は微笑む。
「相応の対価さえ戴ければ、如何なる願いも叶えて差し上げましょう」
 女は息を詰め、唾を呑み込もうとするが、乾いた喉の奥はただこすれただけだった。
「永……永遠の、若さをちょうだい」
「それは致しかねます」
「なんでよ!」
「人の持つ寿命は、神の作りし魂で決まるもの。終わる筈の魂を生かすとなれば、一日当たり人の重さの魂で三つは必要です」
「毎日三人!?」
「レディ、あなたは何故、永遠の若さを望んだのです?」
 ヘッテルギウス氏は電灯のスイッチを入れる。
「誰だって欲しいでしょう? 老いて、自分が何だかも分からなくなって、身体も弱って、自殺をする力もなく、惨めに管だらけになって死んでいくなんて」
「こちらなら、死後の魂一つでお譲りできます」
 ヘッテルギウス氏は握った手を女の前で開く。
 そこには、二ミリ程の大きさの虫が一匹いた。
「『死告虫』です。あなたの死にたいとの決意を感知して、ほんの数秒で絶命する毒を注入してくれます」
 虫は二本の足で立ち上がり、お辞儀のような動作をして見せた。
「思っただけで?」
「はい。事故で手足がすっかりもがれても、老いて首にかけるロープを結ぶ事すらできなくなっても、テロリストに拷問され舌一枚動かせなくなっていたとしても」

「ロー・ライフ!」
 地獄の四丁目のバーのカウンターで、ヘッテルギウス氏はカクテルを注文をする。
「ご機嫌ですね」
 バーテンダーのニスシチは、バジリスクの卵の白身をシェーカーに入れる。
「おう。死告虫商法が上手く行ったからな。今年度のノルマはこれで達成の目途が付いたってもんだ」
「いつでも死ねると思ったら、逆に安心して天寿を全うする可能性もありましたよね」
 カウンターに白濁したカクテルが置かれる。
「『いつでも』!」
 ヘッテルギウス氏はそれを一気にあおる。
「そこが決め手さ」
 ナッツ虫を二匹まとめて口に入れ、ぽりぽりと噛み砕いてからヘッテルギウス氏がにまあっと笑った。
「日曜日の十九時前、テレビの前にいる日本人のうち、あの世への『楽しいハイキング』に出かけたいと、これっぽっちも思った事のないヤツが、一体どれだけいるね?」
永遠に次ぐ幸せを ごんぱち

好きの隙。
野乃

好きな人ができた。
だから、バレンタインにチョコを渡そう思った。

自他共に認める内気で陰気な私がどうやって彼と出会うことができたかというと、
近くの道の曲がり角。そこで出合い頭、ぶつかった。それがきっかけ。
朝だったので、彼は学校に遅れてしまうと「ごめん、大丈夫?」と倒れた私を優しく抱き起すと、
もう一度「本当に、すいませんでした」と頭を下げて、走って行ってしまった。
ありきたりな、どこかの少女マンガのような出会いだけれど、
私にはそれで十分だった。

翌朝、偶然にもまた同じ場所で彼と出会った。
今度はぶつかることはなかったけれど。
「あ」私はびっくりして、立ち止った。
彼も、昨日の今日のことなので私のことを覚えてくれていたようで、
軽く微笑んで会釈をして、また走っていってしまった。

その日を境に、私と彼の距離はぐっと縮まっていた。
というか、最初から距離はかったのだ。これは物理的な話だけれど。
奇遇なことに、私と、彼の通学路は見事に被っていたのだ。
初めてぶつかった交差点からバス、そして電車まで。
「おはよう」
ある日私は勇気を出して声をかけることに成功した。
お互いに存在は認知していたので、彼は振り返ると驚いた表情で私を見、
そして「お、おはようございます」と声を裏返らせてぎこちない返事をした。
なんだか初々しくて、かわいい。
そのことが恥ずかしかったのか、次からはただ会釈をするだけだった。
それもまた、愛おしくてしょうがなかった。

あ、ごめん。さっき私はちょっと嘘をついた。
正直なことをいうと、彼に合わせようとして私がちょっと遠回りしたりしてた。
でも、それは恋する女のご愛嬌といったところで勘弁してほしい。
ほら、『恋は盲目』って言うじゃない?

彼はとっても照れ屋で、私と目が合うといつもすぐに目を逸らした。

彼と別れ、彼から目を逸らした目に映るのはバレンタイン一色のショーウィンドウ。
まさか、こんな日が来るなんて思わなかった。
今までチョコを渡そうと思ったことなんてない。そんな私をこんな風に変えてしまう。
それがきっと、「恋」というものなのだろう。
私は彼に渡すためのチョコを買った。
出来合いのものではない。やっぱり本命は手作りじゃなきゃ。
彼が食べて幸せになるようなチョコを作らなくては。
そう思いながら隠し味を、一滴。
ラッピングまで終えて、安堵のため息をついた。
ついに明日。勝負の日に備えて、おやすみなさい。

今日はいよいよバレンタイン。
私は下校時間を狙って、校門で待ち伏せをした。
きっと彼はびっくりするだろう。
そして、想定外のサプライズに歓喜するだろう。
そんな彼の姿を想像して、私は頬を緩めた。

彼の声がした。
私は、胸をときめかせながら彼の前に飛び出した。
彼と目が合う。
彼の表情が一気に変わった。

――歓喜ではなく、恐怖の表情に。


好きの隙。 野乃

短歌道俳句道
石川順一

  過去を回想して即小説になるのか、それは分からぬ、分からぬが、私小説と言うつもりでも無くて、ただ「わたし」の残滓が少しでも含まれている結果小説の様なものにでもなって居れば望外の喜びだと思うのだ。

2013年10月11日(金)
O確信は|脆くも崩れ|去りOOO|「重複」咎める|様に響きぬ
この短歌は推敲を怠ったために、「OOO」の部分を忘れて仕舞い、57577の三番目の「5」が字足らずになって仕舞った。その日の27時22分(2013年10月12日(土)3時22分(深夜))に印字投稿して居る。注意力散漫になって居たのかもしれない。
2013年10月11日(金)
O明け方に銃声の如き物響き「YOSHI」の想ひと胸に刻みぬ
「YOSHI」とは服部剛丈君の事だ。バトンルージュで暗殺されて居る。同じ愛知県出身と言う訳でも無いだろうが、「想ひ」は勝る。その日偶々テレビ「YOSHI」の特集をやって居たので、特に思い出したのだろう。この事件をきっかけに服部君の両親はクリントン大統領とも直接会って居る。私的にはドル‐ピーとスパイクが出て来るアニメ「最優秀ボーイスカウト」を不謹慎にも思い出して仕舞うが(あの話ではドル‐ピーは結局大統領に逢えませんでしたね)、記憶は誤魔化せない物だと謹厳実直な気持にもなる。
2013年11月5日(火)
山道で団栗蹴飛ばす程も無し
11月5日は詠んだ日だ。実際は11月3日(日)を回想して詠んで居る。
団栗

晩秋
櫟の実/団栗独楽/団栗餅
楢、樫、柏などのブナ科の落葉樹の実を総していうが、狭義では
櫟の実のこと。拾ってきて独楽にしたり、人形を作ったりする。

団栗や熊野の民の朝餉 凡兆 「荒小田」
団栗の寝ん寝んころりころりかな 一茶 「八番日記」
団栗の己が落葉に埋れけり 渡辺水巴 「水巴句集」

「朝餉」は広辞苑を引くと「天皇の食事」 と出て来るが、まあ普通に「朝食」の意味だろう「あさがれひ」と読む。



ここまで書いて来て自分の勉強と小説とは両立するのだろうかと
気分にさせられる、あまり高望みせずにそこそこの所で妥協する
のが人生訓とでも言うべきものであろうか。滋味掬すべき発想だと
自分ながら思いつつ今回の小説はここで終わります。

でもまだ寂しいので短歌2,3詠まさせて下さい
O三人の人間寄れば遠慮しあい結局付きしままの電灯
O歯ブラシは二本斜めに並びたりパソコンラックの白の土俵に
Oゆるキャラの目の所だけ似て居るとモンタージュ気分に浸る春夕