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1000字小説バトル

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1000字小説バトル stage3
第87回バトル 作品

参加作品一覧

文字数
1
石川順一
1000
2
深神椥
1000
3
サヌキマオ
1000
4
ごんぱち
1000
5
沼田笠峰
1059

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日々を短歌に
石川順一

 日々を短歌で彩ろうと思った。
 過去を回想する。五年程前の四月二十九日
 Oシーエムとドラマに衝撃的な物無縁仏がはっきりとある
 Oかすかなるエンジン音がシンクロし嵐の様な夜を切り裂く
 O不規則に降る雨の中建築の現場の音が夜を切り裂く
 O金の無い寸劇見れば少しだけ心が動く夜のしじまに
 O洗う前枝豆全部食べにけりそれから雨の不規則ぶりは
 O届かない夢にお菓子を味噌カツを図書館の本返却すれば
 O気が付けば二十三時の車来て上に行く時ガラスに映る 
 O戯れに母の布団の上に乗り恋のさや当てして居る様な
 O伝説が出ん説の様な夜に居てエヌエイチケーに全て伝わる
 O図書館の本を探せば未使用のビデオテープが四本出て来(く)
 精神の痕跡を見て安心するたちでは無いので、過去の短歌を書き付けてきょとんしたような感じを持ってしまう。でも短歌ばかりを詠んで居るとガス爆発を起こしそうなので詩作をするのもたまにはよかろうと思う。
 沖を目指す
 沖には湯が有る筈で
 千畝(ちうね)さんがウキウキしているのかもしれない
 機内はつまらない
 ハッピーな感覚が減るから
 田を力を込めて耕す
 ツリー状を嫌悪する
 内向化して行く自分を止められない
 田圃に土を運ぼう
 管理したい欲が増大する
 注意しておこう
 そろそろ短歌に戻ろうかと思う。2012年5月20日に詠んで居る。
 Oナメタケの炊き込みご飯ホルモンのみさえを食べて居る夕餉かな(5月19日(土))
 Oレモンティー飲み熱帯魚見に行けば母はセンサーライトを買えり(同日。コメダの後にエキスポ。母と姉と私と)
 O蕎麦食べる昼餉その後眠り行く十六時まで寝て居る午後は(同日。徹夜明けだったので)
 O自転車に乗れば写真を撮りに行く郵便局で申し込みをする(5月18日(金)。ピアゴと郵便局へ)
 0時33分とあります。まだ5月20日に成ったばかりの時刻で、ボーダーラインを意識させられますが、ちょっと俳句の方にも気を使いたいと思います。
 巨大な蚊顔の下方を刺されけり
 部屋に居る蚊は顎の辺(べ)を刺しにけり
 ルーム蚊に顎の後方刺されけり(以上俳号さぶそん)
 2012年5月19日に成って居ますね、送信日が。多分同日の体験でしょう。俳号の「さぶそん」は「与謝蕪村」から来ていますね。あまり複雑な俳号は用いたことがありません、全て有名な俳人の名前からとって居ます。短歌は詩作をしたり俳句を詠んだりしていく中で、時間を取れないのが、悩みですね。
日々を短歌に    石川順一

くぐりぬけて見れば
深神椥

 私が改札口を出ようという時、顔を合わせるなり、相手が目を大きくしたのがわかった。
 改札口を出て、私はそばにかけ寄った。
 私達は、お互い声にならない声を上げた。
「ちょっとー久しぶりー」
「久しぶりーあんま変わってないねー」
卒業以来、約十年ぶりの再会だった。
「リカ、痩せたね」
「えーそうかな。まぁあの頃よりは痩せたけど」
卒業後、ハルは上京したため、お互い中々会う機会がなかった。
そして今回、やっと会える機会ができた。
「どっか入って話そー」
ハルが言った。
「うん、そうだね」
私達は駅直結のショッピングモールに入った。
「そこ座ろっか」
フードコートの一席に隣同士で腰かけた。
「ほんと久しぶりだねー。十年ぶりだよね」
「うん」
「お互い元気なようで」
ハルがしみじみ言った。
「それで、ハルはまだあの人と付き合ってるの?」
私はすぐさま切り出した。
「あーその話か。うん、何だかダラダラ六年も経ってて。もうそろそろ潮時かなって」
 六年も不倫してるなんて、私には考えられない。
 友人としてやめさせるべきなのか。
「それより、リカは、彼氏は?」
「えっいないよ、そんなの」
「えー、じゃあ好きな人は?」
そう言われ、サカシタさんの顔が頭に浮かんだ。
振り払うように「いや、私は」と言って、ふと近くのファストフード店に目を向けた時、見覚えのある顔が目に入った。
 それは、幻ではなく、まぎれもなく、あのサカシタさんだった。
 約四ヶ月ぶりの再会、というのか。
私は、突然のことに、言葉を失い、動けないでいたが、隣の女性には気付いた。
あの時、車内でサカシタさんと楽しそうにしていた、あの女性だった。
行列の中、二人はあの時と同じように、何やら楽しそうに話している。
「リカ、リカー?」
その声で我に返った。
「えっ何?」
「ちょっとー聞いてんのー?」
「あーそれより何か飲まない?喉かわいた」
私は遮るように言った。
「あーうん、そうだね」
「じゃ買いに行こう」
私達は席を立ち、歩き出した。
私はそっと振り返り、もう一度サカシタさんの姿を確認すると、前を向き、その場を後にした。
 十年ぶりの再会に四ヶ月ぶりの再会が勝るなんて……。
 「恋の力」というのは、偉大なのか。

 きっと、もう一生、顔を合わせることはないと思っていたが、こんな偶然もあるんだなと。
 奇跡、というのは大げさかもしれないが、この時の私にはそう思えた。
 サカシタさんの笑った顔を思い出し、私もフッと笑った。
くぐりぬけて見れば    深神椥

天女浜物語
サヌキマオ

 昔、播磨国にニホゲケという男があった。男は独り身で、浜で和布や貝を採っては身過ぎしていたが、ある日風にのってこちらにふわふわとしたものが飛んでくる。走っていって捕まえてみると透き通った高貴なる織物である。えも言われぬ香が焚き込めてあって、ニホゲケは天からの授かりものに違いないと己の住む家に持って帰る。
 あくる朝、ニホゲケが浜でホンダワラを引きずっていると、波打ち際に見知らぬ女が蹲っている。女は着物を濡らさぬように裾を細帯でからげていはいるが、やはり高貴な様相で、ああ、昨日の布はこの女のものであろうと直感した。漁をするものはみな船で出払っていたので人っ子一人いない。女はニホゲケに気がつくと砂に足を取られながら小走りにやってきて、転けた。
「あなたですね、私の羽衣を持っていらっしゃるのは」
 ニホゲケは知らないと答えた。あんまりうるさいようならば力づくでどうにかなる、という自信があった。
「残り香が」女は意表をついてぐんぐんと近づいてきた。「あなたの服から香の残り香がします。あの羽衣は我々天女にとって天と地を行き来するのに大事なものなのです。どうにか返していただけませんか、なんでもしますから」
「残念ながら男にしか興味がなくてな」
 えっ、と天女はひどく心細い顔をした。こういう折には色仕掛けをしろ、と上つ方から教えられているのが通じない。
「では、それ以外で何でもしますから」
「じゃあ、この浜に金になるものをどんどん打ち上げろ」
「いや、そういうのもちょっと」
「なんでもします、って云ったじゃないか」
「御免なさい、なんでも、というのは私に出来ることであれば、なんでもです」
「じゃあ、うんこをしろ」
 天女の驚くまいことか。
「それは一体どういうことです」
「天女の糞というのは極楽の清らかな果物や水から生じているので、どんな傷にも効くというぢゃないか。生傷の絶えない身過ぎぢゃて、それを差し出せば返してやらんこともない」
「勘弁してください。私だって女でございます」
「何も目の前でひり出せというのではない。そこの草陰でいたせ」
 たしかに腰の高さほどもある叢である。
「ひり出すところに興味がないとはいえ、代わりに犬の糞でも握らされたらかなわんからな」
 天女はとうとう観念して蹲みこんだが、刹那はっとして青ざめた。
「ああ、こんなときに限ってお供え物の肉入り小籠包を摘んでしまうなんて!」
 刻は目前に迫っている。
天女浜物語    サヌキマオ

キラキラ
ごんぱち

「なあ、DQNネームの事だが、蒲田」
「のっけから、ずらして来たな、四谷」
「それが良くないという批判の中で、『読めない』は分かる。それに関わる事務処理も煩雑になるだろう。だが、『いじめられる』というのはどんなもんだろう。それはどこまで行ってもいじめる方が悪いんではなかろうか。逆にDQNネームが主流になったら、そうでない方がいじめられる訳だろうし、そうなったらこの部分の評価は逆転する訳だろう」
「多数派少数派というのなら、オンリーワンを目指すDQNネームはいつまで経っても少数派の筈なんだがな」
「はて……考えてみればそうだな。あれ? あれ? どういう事だ、そもそもオンリーワンのクセに、DQNネームとしてカテゴライズは出来てるぞ?」
「当て字にもなってない漢字配置だの、妙に画数の多い漢字を使うだの、一定法則は存在するからな。ルールに縛られたくないって連中が、揃ってリーゼントをしてロックンロールを聴くみたいなヤツだ。まあ、むしろマイノリティが故に、マイノリティ内では記号的統一が必要なのかも知れないが」
「とすると今後はDQNネーム派と、非DQNネーム派が分かれてお互いをいじめ合うという展開に」
「それはもうただの派閥抗争であって、大人の世界にも、どこにでもあるヤツだ」
「そっか、いや待てよ? どこにでもあると言うなら、いじめもどこにでもあるな?」
「うむ」
「だったら……割とどうでも良いのか?」
「ああ。そういうものだ、人がどんな名付けをされたところで、割とどうでも良い事だ。唯一、読めなくてはた迷惑という一点が残るだけだ」
「……やっぱり読めないのは良くなくなくない?」
「それは、そういうヤツが自分の会社とかに入って来た時にどうにかすれば良いんじゃないかな。名刺を平仮名にするとか」
「パワハラって言いそうだな、親が」
「そんな親が出てくるようなヤツは、面接で落とせば良いさ。人事部長なら、きっとやってくれる!」
「そうか、人事部長か!」
「そうとも、人事部長だ」
「名前は知らぬが人事部長か!」
「DQNネームではないと思うよ人事部長だし!」
「そうか、がんばれ、人事部長、がんばれ」
「ファイトファイトだ人事部長」
「会社の未来は」
「君の手にかかってる」
「「我々は、日本中の頑張ってる人事部長を応援します!」」
「……仕事をしなさい」
「「係長!?」」
「あと、うちの会社だと、人事は企画広報室が兼務して、部長職ありませんよ」
キラキラ    ごんぱち

自己の価値
今月のゲスト:沼田笠峰

 振りつづいた雨が止んで、眩しいほどの強い日光(ひかり)を見るようになりました。青々と生い茂った森の裏葉を返して吹く風の涼しさに、いよいよ夏の季節(シーズン)の音(おと)づれたことが知れます。涼子(すずこ)さん、あなたも晴れやかな気分で、足どり軽やかに校庭をさまようていらっしゃることでしょう。暫らくお音信(たより)を聞きませんが、いつかのお話はどうなりましたか。
 この前に頂いたお手紙によって、あなたがK子さんの所へお出でになったことを知りました。K子さんとのお話の模様は、あの御手紙で目の前に見るように想像することが出来ました。而(そ)して私は、あなたのために陰ながら心を痛めて居ります。斯(こ)う申しますと、あなたは『何故(なぜ)?』と訝しくお思いになるでしょう、貴女(あなた)はK子さんの言葉を、殆んど皆正直に信じていらっしゃるようですから。
 涼子さん、私は貴女の穏やかな心に、わざと石を投げ入れて波立たせようと思いません。けれども、貴女はこれから身を修めて行く上にも、さまざまの学芸を習うにも、今が一番大切な時です。もし貴女の心に、一寸でも緩みが出来たり、動揺(どよめき)が起こったりしますと、思いもそめぬ誘惑に見舞われはしないかと、私は人知れず心配して居ります。
 もとより貴女は、柔らかな清い心をもっていらっしゃる。学科もよくお出来になる。従って、それだけ貴女は暗い陰や毒を包んだ言葉を御存じないのです。常に世間の美しい所ばかりを見て、人のいうことにすぐ乗せられてしまう。更に言い換えて見ますと、貴女は貴女の心に投げ入れられたことの善し悪しを考えて見る閑(ひま)もなく、それを丸呑みにするという欠点がありはしないでしょうか。先日のお手紙で見ますと、私は貴女がK子さんにおだてられていらっしゃるように思われてなりません。
 涼子さん、人から褒められたり多くの望みをかけられたりする時には、誰しも悪い心もちはしないものです。けれどもその時、静かに退いて考えて見ることが必要なのではありますまいか、果たして自分はそんなに褒められるだけの価値があるだろうかと。
 涼子さん、私は貴女がこれから行こうとしていらっしゃる新しい道について、貴女にしっかりと考えて頂きたい。K子さんでなくても、あなたを褒める人は世の中に沢山あります。ただ私一人は、そんなに貴女を褒めたくないのです。何故かと申しますと、貴女の将来に望む所が更に更に大きいからです。どうぞ涼子さん、私の申し上げたことを悪く取らずに、静かに考えて下さい。左様なら!