第20回3000字バトルチャンピオンは、
津島修一さん作『銀の栞を持つ男‐‐ある管理者の手記』に決定しました。
3000字チャンピオン、おめでとうございます!
感想票をお寄せいただいた読者の皆様、ありがとうございました。
# | 題名 | 作者 | 票数 |
---|---|---|---|
1 | 衝撃の肉うどん | あきぶっく | |
2 | ミナモ | 高橋雄一郎 | 1 |
3 | 空き領域 | ラディッシュ・大森 | |
4 | No.22 | jaco | |
5 | 声 | 坂口与四郎 | |
6 | 夢、あるいは夢の続き | 青野 岬 | 1 |
7 | 地震女 | オキャーマ君 | 1 |
8 | 陽だまりの色 | 橘内 潤 | 1 |
9 | チョコレート・サマー | Ame | 1 |
10 | 猫弾きと街灯詩人 | 羽那沖権八 | 2 |
11 | 乗合バスにて | 紺詠志 | 3 |
12 | 銀の栞を持つ男‐‐ある管理者の手記 | 津島修一 | 4 |
13 | ヘテロ | るるるぶ☆どっぐちゃん |
夢、あるいは夢の続き/青野 岬さん作
話が現実なのか、夢なのか、いや夢の中の夢なのか・・。そんな不思議な気持ちにさ
せられました。亡くなった彼を強く思い続け、自分の生きていく方向さえも見失って
茫然自失の女性の、自分自身でも捉えようのない心情をうまく表現していたように思
います。
青野さんの情景描写は、私には持ち合わせていない視点からのもので、新鮮さを感じ
ました。
銀の栞を持つ男‐‐ある管理者の手記/津島修一さん作
図書館という所の不気味さ、本というものの魔力がうまく表現されていると思います。昔読んだ中島敦の「文字禍」という小説を思い出しました。鎧をつけた図書館員というのも、なんか想像してみて可笑しかったです。
銀の栞を持つ男‐‐ある管理者の手記/津島修一さん作
これしかないような気がします。
太郎丸さんも、これだろうな。
銀の栞を持つ男/津島修一さん作
本の持つ魅力をひとつのお話として楽しく表現している。時代は中世的なイメージがあって、まるで真夜中に、城塞の上で、本の怪物が夜な夜な咆哮しているような、ポーや、シェイクスピアや、そんな世界の一部分を覗くような楽しみを感じた。文章を整理し、言葉の選択や、些末ではあるが、句読点の位置などにもう少し気を配ってくれれば、文章そのものからももっと雰囲気を出せたと思う。
銀の栞を持つ男‐‐ある管理者の手記/津島修一さん作
いろいろとメタファや皮肉が含まれているように見えるけれども、ただ物語のみを追って読んでもおもしろい。退屈な文章も、逆に効果的だ。一箇所、「二一階」という不統一があった。なぜ本は、読者に牙をむいたのだろうか。そもそも「銀の栞を持つ男」たちは、なぜそうまでして本を読破するのか。この作品は、根本的にナンセンスなんだろうと思う。そして、私たちが本を読みたがる衝動というものも、根本的にはナンセンスなのかもしれない。なにやら、本を読むことが、むなしくなってきた。
乗合バスにて/紺詠志
ううむ、手堅い。
手堅すぎてバトルとしての面白味には欠けるが、作品は面白い。間抜けさが笑える
し、ラストにちょっとしたカタルシスもある。
――結局彼女が一体何を言ったのかは分からないが、極度に丁寧な言葉は最大級の
侮辱にも通じるというのは、あり得そうな話。言われたくない事だけは確かである。
乗合バスにて/紺詠志
この方のSFは大層好きで、「紺詠志SF掌編集」とかが出たら多分買ってしまうと思います。でも投票はした事がありませんでした。何となく。
三千字という短い字数ではストーリーと「表現を読む事そのものから得られる快
楽」というものが非常に大きな要素となると思います。私の個人的なスタンスに過ぎ
ませんが。で、今回は前者は元より後者が大きくある作品だったので、群を抜いて好
きです。
ああ、でも、SFも好きなんですよ…。
乗合バスにて/紺詠志
何よりも文のリズムが好きです。
内容がどうのこうのと言った話は抜きにして、これだけ勢いよく書かれた文には、
やはり投票したくなります。
ご婦人から発せられた恐るべき言葉に一票です。
次点に、5「声」(坂口与四朗さん)を挙げたいと思います。
この孤独な老人の独白はひじょうに印象に残りました。
ただどこか気になるのは、たとえば老人の語り口ですとか(「乗り合いバス」のよ
うな作品があるだけに…)それと作品の最後に記者の文があることです。(これ、必
要でしょうか…)
何かがこの作品が傑作になるのを邪魔しているような気が、そこはかとなく。
(余計なことを言って済みません。どうぞ聞き流してください。)
けれど「この作者の作品をまた読んでみたい」と思った作品でしたので、次点に挙
げさせて頂きます。
あと「チョコレート・サマー」も面白い作品でした。
自殺する人に理由なんてないでしょうし、それに勝手に理由をつけるのは失礼では
ないか、と日頃考えているもので。
ミナモ/高橋雄一郎さん作
今回の3000字の中で、一番リアルな恋愛の話だと思った。いや、20回バトルや、恋愛というジャンルに限定しなくてもそう思う。よくわからない痛みが伝わった。
陽だまりの色/橘内 潤さん作
感じのいい作品。読み易かったし、話の展開もなかなかうまいと思う
地震女/オキャーマ君さん作
面白かったし、オチも良かった。でもタイトルはもうちょっとひねった方が良かったかも。
猫弾きと街灯詩人/羽那沖権八さん作
街灯詩人の関西弁に萌え!です(笑)
享也を振り向かせたのが、街灯詩人の才能ではなくそのひたむきさだった、というのがイイです。これからさらに物語が続いていく、という予感の終わり方もまたナイスです。うーん。やはり私はこーゆーお話が好きなんだなぁ。
猫弾きと街灯詩人/羽那沖権八さん作
今回の3000字は不作だったような気がします。今回はこれで決まりでしょう。ストーリー展開も内容も及第点だと思います『猫弾きと街灯詩人』羽那沖権八さん
予想のつくオチでしたが『地震女』オキャーマ君さんの作品も面白かった
チョコレート・サマー/Ameさん作
「声」も老人の疲れた感じがでてて良かったけれど、結局「チョコレート・サマー」に一票です。
しっかし、なんでこんなにキレイに書けるんでしょーか? それが謎です。
該当作品なし
ものがたりとして完成度の高いものが見当たりません。特に事件は必要ないと思うのですが日常のひとこまを拾うのであればかなりの筆力が必要だし、作りすぎると文章として鬱陶しくなってしまう。難しいですね。次回に期待します。