第5回6000字バトル結果

おめでとうございます! あなたが栄光のチャンピオンです!

『安住の地』ながしろばんりさん



推薦作品と感想

○推薦作『安住の地』ながしろばんりさん
 私がながしろさんの小説のファンだからなのかもしれないが、これほどまでにわいせつなストーリーを、ここまで綺麗に(気持ち悪くなく?)書けるのはものすごい実力だと思う。ながしろさんは別のところでも御活躍だが、インターネット小説ではなく、もっと大きな、日本の文芸雑誌などに挑戦するべき人だろうと思うのだ。これは一人の読者としての願いだが、ぜひとも、文芸雑誌で、あなたの作品を読んでみたい。なぜかというと、ながしろさんは、みにくい女の人を愛らしく書けるからだ。インターネットの小説に出てくる登場人物はおおむね人間としての魅力に薄いけれども、ながしろさんの作品(タイマンバトルでもあったと思います)の女性は魅力的なのだ。
 これからも、是非がんばってください。言い方は悪いかもしれませんが、「遊んでいる」場合ではありません。


○推薦作『安住の地』ながしろばんりさん
非常に楽しく読ませていただきました。
「文章力」では、ピカイチだと思います。
が、小説の舞台を海外に設定する必然性がわかりません。
別に日本でも良かったのでは?


○推薦作『安住の地』ながしろばんりさん
QBOOKSは多くの線が並んでいる東京駅のようなものです。いつ、どこに向かって発車するのか、よほど注意していないと、見逃してしまいます。たまたまBBSに寄ってみて、6000字を知り、慌てて読み切ったところ。荒っぽい一読きりの感想です。

「安住の地」秀作です。港町の雰囲気もよく出ていて、内容にそぐうものとなっています。中心は巨体コッペリアですが、この女は聖母マリアの双璧として、カソリックに置かれていても不思議はありません。ということは、マリアが神ではないと同じように、コッペリアは魔女ではないからです。あの「罪と罰」のソーニャのように、卑しくなって救いをもたらす天の配剤となっているからでしょう。
「立ち止まる。ふと空を見上げる。ユイスマンのアパートの屋根の上、どこまでも青い空」
ここに暗示するように、女の上に女を支える神の存在が伏せられているところが、ミソ。

砂漠に降る雨
 タタ、タタタ。この拳銃の音と、沙漠の不毛さが、力まず淡々と語る作風とうまく重なっていて、見事です。こういった作品はどう閉じるかが、肝要で、難しいですね。

ほかは、もっとよい作品をこれまで読んでいますので割愛します。


○推薦作『安住の地』ながしろばんりさん
荒波にのせられる感じでうねうねできた。飾らない生々しさが、作品というより作者本人から染み出てくる印象。というわけで、最終的に安住の地があそこで終わってよかったのか、という点が気になる。




○推薦作『平山氏のある朝の出来事』ハンマーパーティーさん
一番楽しく読めました。

各話、気になったところ
「幻」  伊勢 湊さん
井戸って言う設定が不自然な感じ。それも中野のど真ん中。しかも携帯スコップで井戸を掘り返そうと考える人はいないんじゃないだろか。水が出る深さまで行くのに何メートル掘ればいいのか、土の処理とか考えると無理。
最後で大事になるはずの高槻とか、他の友人との関係の描写が極端に少ないので消化不良でした。

「欠片を手ずから、髪に編み込む」  るるるぶ☆どっぐちゃんサン
なんだか前衛劇団の演劇を見ている感じ。何がなにやらわけ解かんないけど、そこがいいんだと言う人もいるでしょう。

「砂漠に降る雨」  立花 聡
砂漠を行進する兵隊って現代の戦闘ではありえないと思う。敗残兵か傭兵の外人部隊。どちらにしても一時代前。主人公は日本人だからその線かも。そうすると暗視スコープなんか無いような。

「平山氏のある朝の出来事」  ハンマーパーティーさん
いろいろな話を詰め込んで最後はどうなるんだろうという期待が膨らむ。
でも、蛍光塗料をべったり塗ったんじゃあ満員電車ではえらい迷惑になる。関係ない人にも付くわけだから、そのOLは器物損壊罪に問われるのじゃ。この部分を完璧な方法に変えたらもっと面白かった。

『トラブルシューターズ』  橘内 潤 さん
外人が主人公の話って難しいと思う。ちょっとした箇所が気になるともう後の話がどんなに面白くてもだめになる。挨拶で頭を下げるのって外人同士でもありか?

「ハイエースで行こう」  ごんぱちさん
どじで間抜けでお人よしな誘拐犯が、電話を引く金も無いボケ老人を身代金欲しさに四国の松山まで行くなんてありえへん。話のテンポはすごくいいんだけど、そこまでは行き過ぎでしょう。フィクションと言ってしまえばそれまでですが。

「安住の地」  ながしろばんり さん
育ちは悪いが秀才の名をほしいままにした人が、知性も教養も誇りさえ感じられない「おらっち」ということば遣いをするものなのか。
これも外人主人公の話なので、薬缶という単語を見つけたらもうだめでした。ちゃんとティーポットとなっている所もあるんですが。
気合を入れて書かれているだけに、細かいところが気になりました。
あと、マグカップというのは日本だけで、あっちではマグというのが正式名称のようです。

以上、僭越ながら。


○推薦作『平山氏のある朝の出来事』ハンマーパーティーさん
とりあえず形になっていると思う。狙いも解りやすく、この作品が一番バランスが取れている(はず)。ながしろさんのもうまく出来ているなと思ったが、好みでは無かった。

それにしても何故Qの作品は六千字以上になると急に詰まらなくなるのだろうか。冴えないバトルだったなあというのが率直な感想。目が疲れたからだろうか(ネット小説の限界=六千字?)。




○推薦作『ハイエースで行こう』ごんぱちさん
 ハンマーパーティーさん「平山氏のある朝の出来事」とごんぱちさん「ハイエースで行こう」で迷っている。詳細は全感想にて述べたので省くが、どちらもトホホ感であれほのぼの感であれ、読者Mを作品世界に放りこんで、非常に面白がらせてくれたのである。これは迷う。どちらも設定に無理のあるところはあるし、でも、そういうところを「つくりばなし」としてしまえば目を瞑れるところではある。
 どっちかな。これは本当に同着。しょうがないから運を天に任せよう。奇数がハンマーさん、偶数がごんぱちさん。
 4。じゃあ、ごんぱちさんで。ハンマーパーティーさん申し訳無い!(M)


○推薦作『ハイエースで行こう』ごんぱちさん
今回はコレでしょう。流麗な会話に惹かれました。タイトルも好きです。




○推薦作『幻』伊勢 湊さん
「幻」「ハイエースで行こう」のどっちか、かな。
後者は展開がありきたりだった気がするんだけど、安心して読めた。
けどやはり、前者を読み終えての読後感の方が印象が鮮烈。
ので、こっち。


○推薦作『幻』伊勢 湊さん
 珍しくゆっくり読んだ。

 インパクトが強かったのは『安住の地』。グロに幾らでも流れるネタなのに、ユーモラスで読後感も悪くないんだからなぁ。『妖獣都市』に、そんな「あっち側」の人がいたっけ。アニメ版だけだったかな?

 印象に残ったのは『欠片を手ずから、髪に編み込む』。どういう感じ、ってぇのかなぁ。綺麗で退廃的、多分に映像的。好みって訳でもないけれど、今日の気分には合いました。

 『砂漠に降る雨』。この話は、イラクに行った自衛隊員とか、その辺の位置づけかなぁ。国籍不明だけど、「拝啓」って言ってるし。空気は悪くないけれど、「男」「彼」だとちょっと混乱するかなぁ。そのせいか、山場たる交戦場面がちょっとモタついて、テンションが上がりきらない。

 『平山氏のある朝の出来事』は、不幸な終わり方でなくて良かった。本がない時は、吊革か何かに両手で掴まるのが吉。しっかし実際、痴漢冤罪は「今そこにある危機」だ。自分で無罪を立証しないと有罪でしょ、あれ? 鉄道会社もそろそろ対策しておかないと、「オレが痴漢冤罪で人生を滅茶苦茶にされたのは、勘違いの起こりうる状況を放置した鉄道会社の責任だ」なんて訴訟が起こるに違いない。車内用監視カメラ求む。

 『トラブルシューターズ』前フリがながーい。話は面白くなりそうだけど、これはオープニングでしょう。

 『幻』は良い。正統ファンタジーの趣。高槻はちょっと都合良すぎるキャラって気がするけど。ああいう危険地域に生まれたカサレアは、やっぱり不幸だと思うけど。




○推薦作『砂漠に降る雨』立花聡さん
会話がとても雰囲気を出していて飽きることなく読めました。タイムリーだし、ほんと良かったです。冒頭、隊員が田舎の話をするところ、すごく効果がでてると思いました。


○推薦作『砂漠に降る雨』立花 聡さん
まず「欠片を手ずから、髪に編み込む」についてあまりに素敵だったのはワインにたいして雨の味がするというところである。もちろん僕みたいな貧乏人は雨の香りを喚起させるような(しかもそれは日本の雨の香りとは明らかに違う)高価なワインは自分で買って飲むことは無理だけどさらりとこういうことをいうところは粋である。作風からしてリアルさがさほど強い意味を持つとも思えないし効果的だと思う。
「砂漠に降る雨」については妙なリアルさを感じた。私も昔、砂漠での話を書いたことがあり「砂漠にいるにしては緊張感が感じられない」みたいな感想をもらったが、そのときは「ああ、実際に砂漠にいったことのない人の想像ってこの程度のものなんだなぁ」と思ったものである。猪が本当に臆病なのかは知らないが(うちの実家近辺に生息する猪はかなり獰猛である)、そういう話をしていないと逆にかなりきつい。というか精神状態に余裕がなくなったら容赦なく死ぬ。ちなみに十年位前まではある猛獣とかのいないといわれている国の砂漠でも日本人旅行者が毎年二人くらい砂漠で干からびて死んでいた。ニュースにはならなかったけど。話はそれたがそれでも砂漠というのは必ず終わりがあるものである。それがたとえそのまま砂浜になってその先が海だったとしてもそれは終わりには違いなく、また人生の中の砂漠も同じだと思う。僕は作品を無理やり理論的に誉めることはできないし、したくもないがつまりこれが作品を読んで考えたことである。「なにいってんのこのバカ」と思われるかもしれないが、これで票が一票はいるわけだし勘弁してください。
あと、余計な詮索だが「安住の地」の作者付記は作者が本当に掲載を望んだもの? まあ何でもありの世界でいけないというわけではないんだけど(というか私に基準を示す権利などないが)作者が自作の「作品のミソ」を語るなど見たことがなかったので。「○○という作家がやってますよ」といわれても困るけどね。






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