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第45回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1真夜中のピーチ藤原 けゐこ256
2贅沢有機機械303
3ため息人々211
4すべての根底に横たわるもの香月朔夜62
5パ音式トリップ歌羽深空720
6ろうかゆふな さき0
7sweet vertigo望月 迴155
8Fly Me To The Moon大覚アキラ1210
9うっとうしいわあ。蒼樹空436
10ウオノメ凜一176
11(作者の要望により掲載終了しました)
12バスガス爆発ぶるぶる☆どっぐちゃん347
13時空知恵の輪紫色24号648
14軌跡を遡って迎える今日にマリオが訴える儚さを悟りし者363
15爆発狂時代 QBOOKS特別編(グランドプロローグ)ヨケマキル2369
16世界はそういうもの柳 戒人107
17ねえ早透 影560
18地球儀箱根山険太郎,128
1911月の凪イグチユウイチ97
20無意味五月原華弥165
21さよならの準備大介346
22道人362
23百合空人532
24くたくたに佐藤yuupopic800
 
 
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エントリ1  真夜中のピーチ     藤原 けゐこ


白いベッドの上に冷たい君をそっと置く
君の服はまさに桃色
ボディーラインそのままのワンピースには
どうやって着たのかチャックが無い

僕は君ほしさにビロードのそれを裂く
真っ白な肌がほろりと見え
吸い付きたい衝動を必死に抑える
君は抵抗を試みる

とうとう僕は君を裸にした
デリケートなその肌に僕はむしゃぶりつく
君のジュースがとろりと僕を潤す
僕は君の全てを愛した

ワンピースだったかけらが散らばる
僕は君の全てを手にした
そう思っていた。

しかし それは間違いだった
固い殻をかぶった君の心が
僕の前にあった。

僕はさびしく 寝るよりほか無かった。







エントリ2  贅沢     有機機械


もしも僕たちが同じ世代に生まれていたら

もっと僕たちが違う形で出会っていたら

その届かぬ祈りをどこかに加速させるように

僕は車のアクセルを踏み込む

そして彼女への届かぬ想いを声に出してみて

あまりの絶望感に僕は笑うしかなくなる

僕は今まであらゆるものを手にしてきた

他に何が必要だというだろう

この決して叶わぬ恋は僕への罰

そして叶わぬが故のこのプラトニックな彼女への想いは

最高の贅沢

その快楽を抱きながら僕は朽ち果てるのみ






エントリ3  ため息     人々


白い息が 幻のように消えていった

それは
僕から出た「タマシイ」のようで

意味もなく笑った

「ため息つくと幸せが逃げちゃうよ?」

自転車のペダルがおもい

駅のホームのいつもの場所

満員電車は、空っぽで

そこには僕独りで・・・

「でもため息がつけるっていうのは、
今幸せだからなんだよっ」

あきらめたはずのパズルのピースが

頭から離れない

変わらないはずの日常の中で

もうもとに戻ることのない
そのピース(記憶の断片)は

ただ淡く・・・ため息のように・・・。







エントリ4  すべての根底に横たわるもの     香月朔夜


なぜ誰も気づかないのだろう?
それとも知っていて目を背けているのか。

こんなにも近くにあるのに。
まるで表裏一体であるかのように。

声は 音は とどまることなく囁き続けてくるのに。
雑音に遮られてしまうけれど
でも 確かに存在し続ける。

時に、現実にぶれて現れる『それ』は、
深い 暗い 霧に覆われていて全貌をさらすことはない。
ふとした拍子に垣間見えるだけ。

しかし その断片は、間違いなく揺るぎなきもの。
何者にも歪められない絶対の法則。

 
フィルター越しに見るかのような『それ』を本当に確かめたくて
僕は見えない闇に手を伸ばした。

包まれたオブラートの隙間を縫ってもっと向こうへ。遥か先にあるものへと。


やがて優しい言葉たちの割れ目から、『それ』は流れ込んできた。

『それ』は、強い光に貫かれたように痛く、
『それ』は、鋭利な刃物を思わせるほど厳しく過酷。
そして、純粋であるがゆえに泥のように醜く汚い。

とても耐えられる代物ではなかった。



僕は『それ』へと通じる扉を閉めた。

今 得たものを再び優しいオブラートに包みなおす。
フィルターの向こうへと押し込む。


僕は理解した。

この張り巡らされた黒く暗い霧の意味を。

これは『あれ』から僕らを守るためにあるのだと。

『あれ』は直視し続けるには、あまりに強すぎるから。
冷たく残酷な性質は受け入れがたいものだから。

『それ』を示す名は、ひどく簡単。
だからこそ そこに潜むものは絶大で、重い。

そう―……


彼の者の名は、


絶対無二の


『真実』







エントリ5  パ音式トリップ     歌羽深空


さらりトンタくるりトンタくるっクルッくつっクツッ
さらりドンタくるりトンタくるっクルッくつっクツッ

タージマハール引っ張って お月様からマル抜いて
お城も欲しいな ああ無いか!じゃあ絨毯で、代用だ

おうぃソッチを踏んでくれ!おうぃそっちを焼いとくれ!
おうぃおうぃと呼ばれても返事がしないよ仕方無い
通じないなら仕方無い

さらりドンタくるりトンタくるっクルッくつっクツッ
さらりドンタくるりトンタくるっグルッくつっクツッ

王侯貴族は皆おいで 薩摩の武士は呼んどらん
ゴワすゴワすと嘆いても 首切ったらおしまいだぁ

そぉらコッチはもういいよ!そぉらもうすぐ帰れるよ!
そぉらそぉらと言われても絵葉書なんかは出せないよ
チョコレイトウなら、出してやる

ミルクチョコっと珈琲チョコっとソースチョコっと
ん、ソース?

さらりドンタくるりトンタくるっグルッくつっクツッ
さらりドンタぐるりトンタくるっグルッくつっクツッ

馬にあげるよハイどうぞ 生憎これはいらんから
っとっと参った見つかった 仕方が無いから入れてやる!

まんまる月にタージマハール、王侯貴族が馬へ五羽す五羽す

さらりドンタぐるりトンタくるっグルッくつっクツッ
さらりドンタぐるりトンタくるっグルッぐつっクツッ

この前聞いた千夜と一夜
この際我慢だ二日と一日

のらりドンタぐるりトンタくるっグルッぐつっクツッ
のらりドンタぐるりドンタくるっグルッぐつっクツッ

夢見る魔法の、綺麗な絨毯
日本じゃタダーの桟敷でしたが

のらりドンタぐるりドンタぐるっグルッぐつっクツッ
のらりドンタぐるりドンタぐるっグルッぐつっグツッ

ナンの事だい?知らないよ!
とにかく前科ゴハンだなんて!

もういいかい、まぁだだよ!

のらりドンタぐるりドンタぐるっグルッぐつっグツッ!!






エントリ6  ろうか     ゆふな さき


こんな夢をみた。

まっくらなろうかをあるいている。
柱時計がぼおんとなる。
まっくら闇からこえがする。
「ここはどこですか?」
「わたしもわかりません。」
こたえて一緒にあるく。なんかなつかしい人だ。

気づくとその人はたくさんになっている。
みんなで一緒にあるいていく。
まっくら闇。
たのしいまっくら闇。
ほっとするまっくら闇。

まえのほうからあかるいひかり。
あたりをまっしろく染めます。
みんなは姿を現して、
どんどん、どんどんあるいていきます。
私は、もう、
あるけません。

そこで目が覚めた。






エントリ7  sweet vertigo     望月 迴


白いカンバスに真紅の絵具で

白い壁を真っ赤なペンキで

埋め尽くすような

愛の幻想は

甘い眩暈を齎してくれる?





無防備なカオで「愛してる」と云って?


差し出されたのは本当に愛?


絶望色のシュプールを残して?





私が待ち望むものは

白い部屋を紅く彩るような

白い身体を引き裂くような



そんな甘いファンタジスタ



貴女は受け止めてくれますか?






エントリ8  Fly Me To The Moon     大覚アキラ


眠るのが恐くなりました
夢を見なくなったからです
夢のない眠りほど
恐ろしいものはありません

眠っても
眠っても
一向に夢を見る気配が無いので
仕方無く眠ることを諦めました

あたしが夢を見なくなったかわりに
きっとアンタは
あたしの分まで夢を見ているんでしょう
あたしの知らないどっかのだれかのベッドで
あたしのことなんかこれっぽっちも思い出さずに
あたしのことなんか夢にも見ないで

ねえ
電話してもいいですか
眠るのが恐いの
一人で眠るのが恐いんじゃないの
夢を見ないで眠るのが恐いの
だから
ねえ
電話してもいいですか

馬鹿だなァまったく
なんて言いながら
アンタはきっと
まんざらでもない様子でやってくるの
真夜中の中央大通を
空気の抜けかけた自転車で
全速力で息切らしながら
きっと
アンタはやってくるの

いつの頃からか
大人たちの時間であるはずの真夜中は
得体の知れないルールで縛られるようになり
煙草一つ自動販売機で買えない世の中になって
おかげであたしたちは
蛾のように
亡者のように
深夜のコンビニの灯りを目指して
フラフラと歩かなくてはならなくなりました

きっと
アンタは自動販売機に
さっきまでテレビで観てた
K−1選手のマネして
重いミドルキックの一撃を食らわすの

きっと
アンタはあたしの手を
さりげなく握って
照れ隠しに乱暴にその手を振り回しながら
鼻歌でFly Me To The Moon歌うの

きっと
アンタはコンビニで買った
アイスコーヒーの缶
プルトップ開けて
あたしに渡してくれるの

きっと
アンタは信号待ちの一瞬に
ぼんやりと車のテールランプ眺めてる
あたしの唇に
ついばむようなキスをしてくれるの

運転手さん
7つ先の信号まで
どの車よりも速く
ブッ飛ばしてくださいな
この
中央大通なんていう
何のひねりもないネーミングの
無機質な道路を
アスファルト抉り取るみたいに
白煙上げて
ローギヤからトップまで
メーター振り切れるほどブン回して
その数秒間に
運転手さん
あなたの人生の残り全てを凝縮して
あたしに突きつけてみてはくれませんか
そしたら
あたしは
運転手さん
あなたを
あたしの
アンタにしてあげてもいい

馬鹿だなァまったく
なんて言いながら
運転手さんはきっと
まんざらでもない様子でアクセルを踏むの
真夜中の中央大通を
ちょっとくたびれたタクシーで
全速力で白煙上げながら
きっと
運転手さんはブッ飛ばすの

知ってるの
そう
ホントは
もう
アンタが
どこにもいないってこと

電話をかけても
メールを送っても
手紙を出しても
電報を送っても
狼煙を上げても
伝書鳩を飛ばしても
テレパシー飛ばしても
アンタには
もう
なにも
伝わらない
あたしの
この
ため息ひとつさえ
伝えることも叶わない

運転手さんゴメン
このまま高速道路に乗って
神戸辺りまで
どの車よりも速く
ブッ飛ばしてくださいな
あの
3号湾岸線っていう
ちょっとドラマみたいなネーミングの
無機質な道路を
アスファルト抉り取るみたいに
白煙上げて
ローギヤからトップまで
メーター振り切れるほどブン回して
その数十分間だけ
運転手さん
あたしに夢を見せてはくれませんか


※作者付記: この詩は、例の『Q;drive』で、佐藤yuupopicさんに朗読していただくために書いたものです。佐藤yuupopicさんが朗読した時点ではじめて“完成形”といえるこの詩を、ここでこういう形で公開するべきかどうか迷いました。ですが、単純に私自身この詩が気に入っているので、なるべく多くの方に読んでいただきたいと思い、投稿することにしました。





エントリ9  うっとうしいわあ。     蒼樹空


やれ仕事が忙しいだの、

やれ付き合いを大事にしろだの、

やれ世間体を気にしろだの・・・。

よう考えたら、めんどくさいことと、うっとうしいことばっかりや。

ええ歳こいて泣いてられへんし、すねたところでなんにも解決せえへん。

おっさんは、「ワシらの頃はなあ・・・」しか、いいよらへんし、

おばはんは、「わこうて、ええなあ・・・」しか、いいよらん。

おまえら他にいうことないんか。

まあ、ビビッとってもしゃあない。逃げても、どうせ追ってきよる。

あいつら借金取りみたいにタチ悪いから、噛み付いてでも、戦わなしゃあない。

今はピーピーゆうてても、喉もと過ぎたら全部笑い話や。

笑わしたら勝ちや。笑うたら負けや。

ここはそんなとこや。

情だけがやたら分厚いんや。理論なんかそっちのけや。

笑うとったらええねん。アホみたいに笑うっとたら相手も笑いよる。

それは、ええけど、どない考えてもうっとうしいことがある。

このパソコン、ちっとも上手いこと大阪弁を変換しよらへん。

また、すねそうになるから、はよ帰って寝よ・・・。






エントリ10  ウオノメ     凜一


やられたぜ

ずっと見られてたんだ

ウオノメに 俺はさ


道理で

なんか視線感じると思ってた

でも まさかな

ウオノメに見られてたなんて

何たる不覚

今が江戸時代ぢゃ無くてよかった

腹切りは御免こうむるぜ


おい!ウオノメ!

覚悟しやがれ

すぐに『イボコ○リ』買ってきてやるよ

そしたらお前なんて

ポンっと消えちまうんだ

いい気味さ


無様な俺の生き方見届けるのは

この腐った両目だけで十分だろ





エントリ12  バスガス爆発     ぶるぶる☆どっぐちゃん


「読みかけの本が」「書きかけの手紙が」「切りかけたケーキが」
今日もほら、街には黄金の雨が降るよ
「だから教えよう。
 赤い月の色は赤
 詩人の描いたものは詩」
バスに揺られながら手品師の言葉を聞く
遠くに見えるガス工場の吐き出す黒い大きな煙
街の真ん中では皆がダイス
「6だ!」
「最高の数字だ!」
「きみ、おめでとう、きみは最高の数字を出した!」
「ありがとう!」
「でもなぜ6が最高なんだ?」
「10は?」
「1000は?」
「隣の部屋のOLが殺されたね」
「その部屋はケーキ屋になった」
永遠に登り続けるエスカレータ
白い部屋に花を飾る
完全な絶望
絶望という名の絵画
「詩を書くのは楽しいかい?」
「詩を書くのは苦しいかい?」
あなたはあなたの名を書く
つまり詩は美しくない
おまんこは美しくない

皆で片目になろう
そして片目部隊に入ろう





エントリ13  時空知恵の輪     紫色24号


嗚呼
…空は…薔薇色

終わらない時計を探すと言って
出てゆく男に少女は訊く
「ソコニ 空イロノ薔薇ハ咲イテイル?」

結んだ口を斜めに
アシメトリーの笑顔だけを残し
男は旅立った

旅は



坦々と

日々を

食した

カントの森を越えて
ダ・ヴィンチ山を越えて
曙光を越えて月光を越えて
桜を越えて六花(りっか)を越えて
蝶を越えて虹を越えて…

歩き疲れた男は
一軒のバーに立ち寄る
「ソレポッチノ気概ト引換エジャ
すぴりっつハ売レナイネ」
バーテンはのたまう
彼はやはり
アシメトリーの笑顔だけを残し立ち去った

世界は対称性を欠いて
漸次カオスの色を濃密にしている
エネルギーの安売りは
タイムリミットを早めるだけだ

方位磁石は
もとより意味など持たなかったし
時間さえもが老獪な伸縮を企てているかに感じられた

それでも男は…

曇天が泣き翠天が綻び炎天が叫ぶもと



淡々と

日々を

歩いた

エウロパの海を越えて
阿修羅砂漠を越えて
ワーズワースの湖を
リーマンの丘を
ボーアの河を越えて
越えて越えて越えて…
嵐を樹氷を青帝を 津波を紅葉を赤帝を 鏡を神話を睡郷を
越えて越えて越えてミラージュをつきぬけオーロラを切りさいたその先で

男は

ついに

見つけた

そこは男自身の最果てで
終わらない時計を抱いて
彼は永遠の眠りに就いた

亡骸から 青い 碧い どこまでも深い
宙色の薔薇が咲いた

空は折りしも
ドミノが倒れてゆくように
妙なる薔薇色に染め上がっていった

嗚呼
…空は…薔薇色

終わらない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





エントリ14  軌跡を遡って迎える今日に     マリオが訴える儚さを悟りし者


たゆたう空に別れを告げて
一歩先の宵闇に杖を曳く

こそばゆい土瀝青のはにかんだ顔面に
二度と取れない夢つきの唾を吐き
十分生きた事を誰に感謝するわけもなく
道と路の狭間にまた途が在ることを講釈する太陽に嫌気を差す

今にも終わりそうな今日は
そこはかとなく意味ありげに
そう簡単に明日を創ってはくれない

時間とか時間とか時間というものは
いつも私を追っている様で
実は私が決めているのに過ぎないと
多分マンモスの肉を食べていた頃の私はそう言うだろう



私は言う
探し物はどこへ



見えない足取りに杖が優しく笑う



そう
過去の自分がいた
探し物をする過去の自分が

ほら今は杖を曳いては宵闇を歩いている

過去の自分がいた

もう今日が来たようだ
今日と言っていた昨日が今日を創ってくれたのだろう

ありがとう
探し物が見つかった



杖が優しく笑った

今日が始まる

太陽に照らされた今日という

みちが





エントリ15  爆発狂時代 QBOOKS特別編(グランドプロローグ)     ヨケマキル



「汝人民飢えて死ね。」

爆発物取締罰則1条・・・
治安ヲ妨ケ又ハ人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ
爆発物ヲ使用シタル者及ヒ人ヲシテ之ヲ使用セシメタル者ハ死刑又ハ
無期若クハ七年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス。

世界中のオルガスムスをください
真っ赤なフリーザーに
ゴキブリの束とハセガワマチコをぶち込んでシェイクしたら
世界一簡単な爆発物の完成だ
だって今日は日曜日だろ
はやくはやく
この世のすべての絶頂感を
おれにくれ

さあいいか はじめるぞ

[ 1 ]
1962年(昭和37年)1月31日午前11時ごろ
東京・承保市にある歌手の瀬尾洋子(当時24歳)の後援会事務所に
差出人名のない二重になった封筒が届いた

男性事務職員(当時23歳)が封を開けると
中からボール紙を二つに折って作った
長さ13センチ幅4センチの細長い筒が出てきた
筒の中には紙が入っておりその紙を引っぱると
シュッとマッチをすったような音がして筒から炎と白煙があがった
驚いた職員は筒を放り投げたが右手に2週間の火傷を負った

瀬尾洋子・・・1938年(昭和13年)1月10日真東京・憂亥市生まれ 
本名同じ
1955年(昭和30年)に『闇は禁じられる』で歌手デビュー
その後も『愛する人はドアを開けて』『盛夏の青の歌』など
出す曲が次々と大ヒットとなり
1957年(昭和32年)から年末ヒットパレードに連続出場
1960年(昭和35年)には早くも紅組のトリを務めるなど
人気歌手の頂点に立っており
40年以上経つ現在でも人気を保ち活躍している
この事件があった時は婚約が発表されたあとで
彼女が24歳の時の事だった

ボール紙の筒には花火から取り出した黒色火薬が詰め込んであり
筒から紙を取り出すと中に仕込んであるマッチがこすれて
火薬に引火するようになっていた
筒の表側には<祝>と<呪>という2文字が書かれ
裏には<桐咲十一>と<K>と書かれていた

封筒の消印はかすれているため、<無>という文字しか判別できなかった
前日の30日に投函されたことは判った


バクダンの名前はネオプラスティックピンク(NPP)
はらはらはら ヴ〜ん(爆発音)

行方不明の日常
歴代犯罪者のエピゴーネン

理由なんかないよ ただやってみたいだけだよ




不安を透過させた夜のひらひらが
優しい窒息のリズムが加速させる

けはいがあって
ごまかしようのないけはいがあって



最近は物騒な事件が多いですねえ
昔はこんな事無かったのにねえ
ほんとにそうかなあ
図書館で昭和犯罪史借りてみな



[ 2 ]
11月13日
真東京・聖耶市に住むクラブ・ホステス(当時41歳)宛てに
ボール紙爆弾が送られていたが不発に終わった
これにも<桐咲十一>というサインが残されていた
筆跡鑑定の結果一月の「桐咲」と同一人物であった


さてさて
夜の劇場のロビーってとてもいいもんだ

におい

ソファーの下にはNPP
腹腹腹ヴ〜ん 

さあ盲人の幻覚のために
世界中のジャズを破裂させよう



[ 3 ]
11月20日午後5時過ぎ
東京・神無市鮮明町の映画館帝都劇場で
アメリカ映画『湿式』
(監督・リチャード・ベルダー/出演・ロイ・二ールマン/1962)
を見終わった女性(当時19歳)が
廊下ロビーのソファーのすみにあった長さ10センチほどの紙筒を
何だろうと何気なく手にすると
何かがこすれるような音がして筒から火を噴いた
驚いた女性は筒を放り投げたが左手に火傷を負った
筒は火薬をわら半紙で巻きセロテープでとめただけの
簡単な構造のものだった
これにも<桐咲十一>のサインがあった


おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ
お前には役などやらぬ
おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ
おまえは傍観者をやれ


これがおれの音
カミソリの耳で聞け



[ 4 ]
11月26日午後4時半頃
帝都劇場近くの眼眼谷映画劇場で
2階の男性トイレを掃除していた女性従業員(当時47歳)が
掃除を終えて廊下に出ようとドアを開けたとたんトイレの中で
「ヴーン」という破裂音がした
通報を受けた神無署の調べで
女性従業員が掃除していた時
手洗い台の上に高さ15センチぐらいのボール紙の箱が置いてあり
同従業員がドアを開けたときに起きた風で筒が落下し爆発したことが判った
さらに警視庁で鑑定した結果ボール紙を折って作った箱には
しんちゅう製の弾丸1個と黒色火薬乾電池が詰められ
電気回路でつないであった
箱に衝撃を与えると電気が流れて発火する仕組みになっていた
これにも<桐咲十一>のサインがあった。




排泄が摂取を上回る薄っぺらな人体
さらにさらに皮膚を剥がされ
月の色に晒されるおれの人体




[ 5 ]
11月29日午後5時半頃
真東京・市下・玉瀬田町公衆電話ボックスに入った男性会社員
(当時25歳)が
棚の上にあったケース入りの『芳川鄭徳詩集』を発見した
同会社員は誰かの忘れ物と思い本を手に取り
ケースと本の間に名前が書かれたしおりのような紙切れを引っぱった瞬間に爆発し左手に5日間の火傷を負った
本の真ん中には縦10センチ横2センチ深さ1センチの穴がくり抜いてあり
その穴にニクロム線を配線した電池と黒色火薬が詰められていた
しおりのような紙切れを引っぱると火薬が発火する仕組みになっていた
紙切れに書かれていた名前は<桐咲十一>だった





雑多な音声がおれの耳に高まったり低まったり
笑うか嘔吐するしかないそれしかない
ハハハハハ ゲロ
ケケケケケ ゲロ
ククククク ゲロ
おおおおおれの音
こここここれがね
誰かに聞こえるまで
そう 
聞こえるまで何度も何度も
繰り返そうじゃあないか


息をすることを甘く見ていたため水のないプールに落とされた蠅である
内側でも外側でもない
まぎれもない「誰かが作った世界」である

どんな人の心の中にも
むなくそ悪い簡略な憎悪と
そらぞらしい批判的な負のエッセンスと
絶望的恍惚を与えてやる

桐咲十一をよろしく



誰がなんと言おうと
「つづく」







エントリ16  世界はそういうもの     柳 戒人


 ないと困るドアが

 ないんだ

 僕に限ってそんなことないと

 思ってたのに

 別に理由なんてないけど

 信じてたのに

 リセットボタンも

 裏技も

 ないのに

 ドアがないんだ

 そんなのって

 ひどい

 でも

 ないんだもん

 どしよ・・






エントリ17  ねえ     早透 影


  おじさん おじさん あたしを知ってる?
  おじさん おじさん あたしを買ってる?
  ねえ
  
  何を求めて ココまで来たのか
  わかんない
  抱いて欲しくて ココまで来たのに
  おじさん あんたは 抱いてくんないんだね
  
  小さい頃の あたしを知ってる?
  小さい頃の あたしを ねえ 知ってる
  自分に嘘をつく 子供だったの
  自分に平気で 嘘の吐ける子供だったわ
  
  でもね 人を信じてきたの
  
  騙された事って あったんだろうけど
  あたし 気付かない ふり してた
  知ってるのに 知らない振り してた
  怖かった
  なんか 騙されてる 自分を知りたくなかった
  ねえ おじさん わかるでしょ
  あたしの こころ わかるでしょ
  
  おじさん おじさん あたしを知ってる?
  おじさん おじさん あたしを買ってる?
  ねえ
  おじさん おじさん ねえ
  おじさん おじさん どうして あたし
  ひとりぽっち
  
  おじさん おじさん あたしを買ったでしょ?
  おじさん おじさん あたしを知ってよ
  ねえ
  おじさん おじさん ねえ
  おじさん おじさん あたし あんたを
  包んであげる からさ
  ねえ
  
  ほんの 少しでいいの あたし
  ここで 眠らせて ねえ おじさん
  いいでしょ ねえ   





エントリ18  地球儀     箱根山険太郎


酒に酔って地球儀を抱え
日本列島に指をあてる

指先の幅が完全に
日本列島からはみ出ている

エイッと地球儀を回して
ピタともう一度指をあてる

そこはまるっきり海

もう一度エイッ
今度は中国

またまたエイッ
指先は朝鮮半島
惜しいっ

アタシのいるのは
ここいらへん

だいたい
ここいらへんだ


※作者付記: そしてまた、グビリ。





エントリ19  11月の凪     イグチユウイチ


渋谷西武の屋上のベンチで 口元までマフラーを巻いて、
11月の 白濁の空を眺めながら
雪が降る故郷の景色を 思い浮かべようとしたけれど、
どうしても うまく思い出せない。

今年もまた 東京に、冷たい冬が来る。





エントリ20  無意味     五月原華弥


存在に虚無を感じ
全て無駄に思えて
何故生きているのだろうかと思う
この耳に音が届かなければ
この目に光が届かなければ
何かを感じ
全てに意味を思うのだろうか

冷たい北風は
いつしか暖かな南風となり
川が海に流れても
海は溢れることはない
流行は一定の周期でまた流行り
斬新かと思えば昔にあったこと

全て無意味だと思えるのは
どんなにしても
満ちることのない心


※作者付記: 伝道者の書1章1節〜11節






エントリ21  さよならの準備     大介


忘れられないこと、忘れたいこと
きみの笑顔、寝顔と泣き顔、怒り顔。
ねえ、ぼくらは本当に
さよならの準備、しなくちゃいけないの?

じゃあ、どこまでさよならしよう?
いっそ、なかったことにしようか。
さよならする範囲さえ決まらない。

顔を覗き込んできたきみに言いたかった
あの時、言葉にできなかった「約束」
それを嘘にしたくなかったから
言えなかったのは、臆病なぼくのせい。

長い日々はあっと言う間に過ぎて
いつからだろう
あなたから北風が吹くようになったのは。
いつからだろう
ぼくの南風がきみに届かなくなったのは。
もうダメなんだね、二人。
一緒に、いられないんだね。

進まない、さよならの準備を部屋に残して
会いに行かなきゃ。
最後に握り締めた、手のぬくもりが
消えないうちに
会いに行かなきゃ。
それに気付いたのは、今だからこそ。





エントリ22       道人


テレビの中で誰かが首を切られて殺された
フィクションではなく現実の出来事

僕は缶ビールを
のどをならして飲み
「かわいそう」と吐く

瓦礫となった自分の家
泥に流された幸せな日々
その家主は呆然と佇んでいた

僕はコンビニのレジの横にある募金箱に
上っ面の同情心と邪魔な小銭を押し込めて
「がんばれ」と呟く

今この瞬間にも飢えて死んでゆく子供たちがいる
今この瞬間にも親を放棄した大人の暴力に怯える子供たちがいる
今この瞬間にも灰色のイデオロギーに溺れる子供たちがいる

僕は三流の評論家に成り済まし
関心を示すふりだけで
何もせず
世の中のせいにする

自分の手の届かない世界のことは
ただのワイドショーのゴシップさ
自分の手の届く世界のことは
知らなければ痛くも痒くないさ

お前に何ができる
お前の正義など役には立たないだろう?

僕の腹の中にいる
僕の腹の中には
真っ黒い蛇がいる






エントリ23  百合     空人


雨の降る日は こうして
窓の縁に 肘をついて
外を見るのが好きなんだ
庭の百合は いつもより下を向いていて
何も気にしなくていいんだよ って
そんな風に言われてるみたいで

ときどき あの風見鶏も振り向かせない
おっとりとした空気が 顔をなでていく
土のにおい 水のにおい
そんなちょっとつめたい空気を
ゆっくりと吸い込む

そうすると いつも僕は
むかしのことを想い出してしまう
「男は過去を探る生き物なんだ」って
どこかのアーティストが言ってたけど
あながち まちがってはいないな
いや
僕に限っては その通りで
いったいどんな顔をしたらいいのか わからなくなる

むかしのことは 夢のようになってしまって
それが本当かどうか わからなくなって
どれも輪郭がぼやけてしまって
まるでプールの底から空を見上げるような
そんな感じなんだ

母親が死んだこと 飼っていたセキセイインコが逃げたこと
はじめて人を好きになったこと クルマを買ったこと
そして あの百合を植えていった人のこと

いまは僕にも 待ってくれる人ができて
しっかりとしたミライの輪郭を
いっしょに見ていきたいと思っている

何も気にしなくていい日々は 過ぎ去ってしまった
眠りにつく前に 過去を探るのは もうやめようと思う
たとえあの百合が
繰り返し 夢にでてきたとしても







エントリ24  くたくたに     佐藤yuupopic


くにがいちばんたいへんなそくめんに
いちばんたいへんなとちへ
いちばんにかけつけるくたくたのあなたを
ひとりのわたしは
いつもみてるのに
のに、
ぞくしたとたんにあなたを
とうめい、て、
ゆわなきゃならないの


がけがすべってうまってしまったいえ、
すくいだしてくれてありがとう。
ごはんがたべられないばん、
あたたかいスープのおおきなおなべ
ありがとう。
たくさんあめがふってながされたまち、
いっしょにたてなおしてくれて
ありがとう、
わたし、

わたし、ほんとうにうれしかった
あなたの。
ぬれてまえがみのへばりついたどろだらけのほお
くちびるふれたら、あつくて、なんだかすごく、むねが、
きゅ、てして、
それからなにかがともるみたく、あたたかくなったの


がっこうにかよってたころ、おそわったよ
あなたは、わたしのくににあってはならないあつまりのなかの
ひとりなのだ、
て、
おそわった

ひとりのわたしは、
ミルクにひたひた、ひたして
おさとうでくたくたにあまくしたパンみたく
あなたを
ひざによこたえて
だれもゆきたくなんかない
いちばんこわくてかなしいところへ
つぎに
また
とんでゆくまで
の、
すこしのあいだ。
ひえたからだ、
どうか、
わずかでもぬくもるように
かみをなでてあげたい、

あなたがしてくれたことにくらべたら
あまりにほんのささやかで、
けど
でも 、
でも。


かんがえたくなくて
こたえをだしたくなくて
わからなくて
ずっとみないふりで
さきおくりにしてきたの
ひとりのわたしと
ぞくするわたしと
あいはんして
たがいに
めをつむってきたの
そう。
かんがえたくなかった
だって。

かなしいの
ひどく
かなしくて
わたし、なんにも、できない
こんなにも、
あなたに、
ひとりのあなたに、 ありがとう、
うんと、すきよ

すきよ、て
ゆうしか、


ねえ。
くたくたに
くたびれたおとうとよ、
ねえ。しんじゃいやよ

くたくたにくたびれたしゅんすけさん、
あなた。
しんじゃいやよ。


しなせちゃ、
い、や よ。