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第57回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1ナイフと海羽間448
2His Death鯨井弘子212
3ピジョン ビジョン葉月みか999
4菊川椿月637
5AからKまで歌羽深空378
6重奏ぼんより234
7道を歩こう木葉一刀205
8充足相川拓也216
9(作者の希望により掲載を終了いたしました)
10 モスキート・ガイダンス ヨケマキル 369
11 ホメオパシー 空人 378
12 音圧 佐藤yuupopic 418
 
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エントリ1  ナイフと海   羽間


















闇極まり


すべて消え


湿った鉛


鳩尾(みぞおち)を衝き


鼓動開始
















ナイフを手にし
















稲穂の死骸の人形と















海へ
















波打ち際に膝をつき
稲穂死骸人形を刺す刃
瞳刺す月光の刃
海 心臓 ナイフ 音
人形を突き破り手のひらえぐり
痛みに鼓動沸き
波 鼓動 突き刺す 共振
灼熱の鉛
鳩尾を突き破り喉まで届き
水 血 鉄 交じり溶け灼熱の鉛色


































闇薄れ








視線は水平線へ








光の海の中から


太陽が空へ滴り


鳩尾にヒリヒリと沁み




波打ち際にうつ伏し


手のひらを浸し


波の間に間に血が漂い


ただそれが嬉しく




今や波と鼓動だけが


鳩尾をそっと撫で癒し




ただそれが嬉しく






















エントリ2  His Death   鯨井弘子


英雄が死んだ時 物語は始まる
平和は過ぎ去ってしまった 
私たちは 嘆いてばかり
震えながら 祈るばかり

彼の人は もう還ってこない
娘達の悲しみは 失恋の嘆き
男達の悲しみは 憧憬への失望

馬に跨り 颯爽と駆ける少年がいる
暗闇に輝く 黄金色の髪
瞳は星のようで さながらアポロンのように

彼はまるで神のように 闇を切り裂いて
逞しい腕に 嘆く者を抱き
自らも瞳を濡らしながら きつく抱きしめた
ふたたび 日が昇る
彼は帰ってきた
新たな姿に身を包んで





エントリ3  ピジョン ビジョン    葉月みか


色づき始めた欅のフレーム
合間
水色 こぼれ落ちそうな 空
長い永い飛行機雲
右目の隅から
拡散
透明な金色の光
風にたゆたい流れつけば
くしゅん
ジーンズの膝
パーカーの裾 に 緊急避難

腰 八十度に曲がった老女
紙屑のような掌
広がって放たれる 
パン屑
六分の一エックス二乗の放物線で
滑り降りてくる 鳩 に
視線 自ずと パン
トツトツと歩き
クツクツと喉を鳴らし
円らな黒い目 クルクル
小首を傾げ愛らしく餌をついばむ
色づき始めた欅
腰 八十度に曲がった老女
紙屑のような掌
トツトツと歩き
広がって放たれる 
パン屑
クツクツと喉を鳴らし
くしゅん
紙屑のような掌
広がって放たれる
長い永い飛行機雲 
パン屑
紙屑 のよう な掌
円らな黒い目 クルクル
広がっ て
小首を傾げ愛らしく
放た れ  る
こぼれ落ちそうな 
餌をついばむ
空 



表面張力 決壊


六エックス二乗の放物線で
滑り降りてくる 記憶 に
思考 自ずと パン
パックツアーのミラノ大聖堂前
「センエンセンエン ヤスイヨ」と叫ぶ
ジプシーの鈍く響く声
最後の晩餐 ポストカード
腰 八十度に曲がった老女
紙屑のような掌
広がって放たれる 
パン屑
六分の一エックス二乗の放物線で
滑り降りてくる 鳩 に
視線 自ずと パン
トツトツと歩き
クツクツと喉を鳴らし
円らな黒い目 クルクル
小首を傾げ愛らしく餌をついばむ
首から提げたキヤノン
小さな三角形の青い旗
紙屑のような掌
見ている
ヴァイオレットのシャネルスーツ
沈着した黴と埃の匂い
トツトツと歩き
広がって放たれる
足下に押し寄せる銀鼠色の波
クツクツと喉を鳴らし
見ている
子どもの私が見ている
真紅のハイヒール
パン屑
ジプシーの鈍く響く声
円らな黒い目 クルクル
聳え立つ大聖堂

耳を劈く金切り声

足下に押し寄せる銀鼠色の波
真紅のハイヒール

べっとりと絡む
黒い 血糊

見ている
最後の晩餐 ポストカード
腰 八十度に曲がった老女 
小さな三角形の青い旗
見ている
ヴァイオレットのシャネルスーツ
「センエンセンエン ヤスイヨ」
ミテイル
紙屑のような掌

ひきつる唇

ジプシーの鈍く響く声

円らな黒い目







小首を傾げ愛らしく肉をついばむ

見ている
子どもの私が見ている

トツトツクツクツクルクル


子ども の私 の 目 が 見て た


色づき始めた欅のフレーム
合間
水色 こぼれ落ちそうな 空
長い永い飛行機雲
左目の隅まで
拡散
腰 八十度に曲がった老女
六分の一エックス二乗の放物線で
滑り降りてくる
銀鼠色



そして

痛いほどに透明な
金色









エントリ4  菊川
   椿月


四辺が腐った部屋の
北西の隅にずっと隠れていたんだ
灰色のカーテンを開けることなど思いつかず
切れかけの蛍光灯をつけることも忘れて
地上の闇から
地上の光を盗み見ていた
あなたに僕の姿は見えなかったでしょう
血を流しては眠り
僕の周りはまだらに黒ずんで
ほらこんなにも きたなかったのに

炎天下の通学路で見つけた
大きな虹にちっちゃな両腕を広げて
その脇を
ちっちゃな子供たちが
僕の名前を罵倒して走り去っていった
過去夢
知らなかったでしょう
僕はあの時にはもう壊れていました

僕の過去たちが共鳴している
あなたのために泣いている

田舎道の路傍
かごを背負う老婆がよたよた
ゆるゆる坂を登り朝の茶摘みに出かける
もしも僕の祖母が
あの老婆のようによたよたと歩く人であったなら
やわらかなひかりを
知る人であったなら
僕は
なにも知らない人であり続けられたのかな
それはもはや虚構で
僕の半分を占める彼女の血は
いつまでも真実だった

僕の過去たちが共鳴している
いがみ泣き悲しんで叩いて何かが変わるなら
いくらでもそうするだろう
今 僕はそのどこにもいない
真白なカーテンのほんのわずかな隙間から
ふらり忍び歩く朝と
白く化ける雲を残らず握りしめている
泣きながら
望むものはひとつだけでいいと
今の僕は知っているのです
おばあさん

あなたの安らかな死に顔に一輪の花を手向けた時
僕はあなたを憎むことをやめました
でも許すことは出来ない
僕の体を冒す遺伝子が消えるその日まで
許すつもりはありません
そんな僕を許してくれますか
北西の隅
切れかけの蛍光灯
大きな虹
田舎道の路傍








エントリ5  AからKまで    歌羽深空


ぐろりらぐらりら 地面が飛ぶよ
ヒットチャートをかけてる間に 地面がぱあっとぱあっと そして
重たい石を乗っけられたら ひゅうんと言わずに風が来るのだ

風は波を呼んで、それから雲を呼んで
行き先は羽田のはずだけれども フィリピン越してゆきそうだ

ぐごりらぐがりら 地面が沈むよ
ビーフコンソメ飲みきるその時 地面がだんだんだんだん 迫って
柔い壁が背中を抱いたら びゅりりと鳴いて雨が来るのだ

雨は芝生とコンクリートを汚して、そのままにして
ここは羽田のはずだけれども なんだか時が止まったようだ

鉄が浮くのを笑うんならば 鉄が飛ぶのをお笑いよ
鉄の上の人を楽しむなら 鉄の中の人を可笑しがれ
笑っちゃえばいいさ 笑っちゃえばいいさ
中だって大きな声で笑うから 笑い声がそうしてジェットになるから
飛ぶんじゃないか、飛ぶんじゃないか。
船が浮くのはなんでだろう だれかが屁でもするのかね





エントリ6  重奏   ぼんより


それは
たった1800秒の
オカリナの
重なりで

倦んで
病むことなく病んで
ただ流れているだけの時間に
ただ流れているだけの肢体に
臓物に
脳に

大きな古時計が
愛の賛歌が
イエスタディが

少し皺のよった手に抱かれ
若き日と変わらぬ唇から
奏でられ

ただ
純粋に
響いた

響いた
それは
さながら
寂れた町に舞う
蜜柑と
少女のように
重なり
交わり
忘れさせる

そして
想う

なんということのない
たった1800秒の
ちいさな演奏会なのだ
世界中の音楽分の
ただのオカリナの
音色なのだ

そうして
それが
ただ重なっただけのことだ

ありがとう






エントリ7  道を歩こう   木葉一刀


新京極通りを抜けると
人の頭が波打っていた
話を聞くと祇園祭が
一番盛り上がる夜らしい

さて、と思い立ち
彼女の手を引いて人の波に乗る
人と人との間隙を縫い歩く

人生とは一人だけの一本道
そんな訳は無く
正にこの人込みこそが
ならば往かん我が道を

なんて悦に入って
彼女の手を引いていた

筈が

「車道に出たら危ないでしょ」
彼女の声に我に返る

いつの間にか
人の道を外れた僕
彼女が一段高い歩道の柵の中から
僕の袖口を掴み
引っ張り上げようとしていた





エントリ8  充足   相川拓也


死刑を言いわたされて小さな部屋に入れられた
その部屋にはろうそくが灯っていたが
しばらくすると消えてしまった
酸素が無くなったのかと思ったが窓が開いていた
何もすることがないから
俺はいつ死ぬのだろうなどと考えながら
ぼんやりと座っていた

看守が時々買い物へ連れて行ってくれた
必要なものはひと通り揃うし
金も看守が出してくれる
品揃えは単調だが大したことではない

俺は充足している
死刑囚として死を待ちながら
ぼんやりと生きている日々に
とても満足している





エントリ10  モスキート・ガイダンス    ヨケマキル


地下通路とチカチーロが
一字違いなのは偶然ではない

<モスキート・ガイダンス>  
           ヨケマキル

新宿世界主義者の足元深く深く
日常を欺きそれは繋がり
分裂されたニンフ
死体にはどのような比喩も与えられない
誰もいない夜
俺はユーエフオーを見る
幽遠なステートメントが虚無の森に響いた時
ボクは眠ってばかりいる
宇宙がかつて枯淡であったように
蚊のガイダンスに従え

ヒト科ヒトの最高峰エリルは
魂を猫に移植
世界を終わらせるために
その肉体のために葬礼は行われ
ヒッパルコスの月はついに剥がされ
琵琶はトレモロを鳴らし
焼け焦げた回廊
キルキレの踊りは開始され
予告編だけの映画
傷病者
ヒトとヒトはもう話をしない方がいいのかもしれない
それにしても
どうしてこうもこの町はドブくさいのだ

大量虐殺が殺人では無いように
地下通路とチカチーロが
一字違いなのは偶然ではないのです





エントリ11  ホメオパシー    空人


さみしさをまぎらわす薬は ありませんか
青みがかった夕暮れ
わたしは 椿油を買ったついでに
はじめて見る薬剤師さんに そうたずねた

そういう薬は ありませんね
わたしよりきっと若い薬剤師さんは
笑うでもなく 困るでもなく 青白い声で答えた

でも とわたしは言う
眠さは 本能ですよね
さみしさも 本能ですよね
わたし 知ってるんです
眠さを防ぐ薬があるのを 知ってるんです
だからきっと さみしさを紛らわす薬だって
あるんでしょ ありますよね

薬剤師さんは 小さなためいきをついて答えた
あなたは疲れているんです
疲れていると 考え方も後ろ向きになりますよ
滋養強壮剤を お出しします

くるりと後ろを向いて 立ち上がろうとする背中に
それなら あなたのさみしさを わたしに分けてください
わたしのここに 零してください

蛍光灯が切れかかって 不規則な点滅
やがて
差し出された掌には 青白く濡れた体液






エントリ12  音圧    佐藤yuupopic


20dB 木の葉のふれあう音
30dB ささやき声
40dB 図書館
50dB 静かな事務所
60dB 普通の会話
70dB 騒々しい事務所
80dB 地下鉄の車内
90dB 騒々しい工場内
100dB 電車が通るガード

20dB 休日出勤の朝、路地、しんと一人、葉ずれの音、かさこそ。
30dB 映画館「今のセリフ、すごいね」て、耳元、ひそひそバナシ。
40dB 雨上がりの午後の図書館。の、窓辺、光差して、
50dB 営業が出払った後の事務所、の一時。
60dB 目覚めて交わすいつもの会話、あなたと。
70dB それぞれの成果を連れて戻る夕方のオフィスのざわめき
80dB 家路急ぐ波に逆走。俺は夜勤の地下鉄の座席
90dB 様々な国から流れ寄る様々な人々の労働が織り成す工場内の、夜半の騒音。
100dB 帰りたくない、晩、ガード上を往き過ぎる、最終電車。
ががんががをががんががんががんががゎかんががんががんががんががんががががをんががんががをががんががんががんががゎごをんがががんががんがごをんががががをん……

100dB