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第58回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1赤い彗星大覚アキラ356
2ボロ靴のシンデレラyuki164
3神意検証香月朔夜192
4僕は何を飲んできたか579
5椿月194
6オオバコの詩(うた)小澤恒平321
7原子力ネコパンチながしろばんり981
8進化有機機械178
9バリスタ葉月みか370
10 末期少女ネヲン ヨケマキル 1772
11 かわいそうなひとたち イグチユウイチ 19
12 はじめから、丸い 空人 ※データ無
13 血がざわめく夜だ 佐藤yuupopic 1322
14 温もりの園 木葉一刀 247
 
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エントリ1  赤い彗星   大覚アキラ


我々はシャア・アズナブルだ

とか
そんな台詞で始まる
声明文読み上げてみたいな

ハイジャックなんて
めんどくさくって
あぶなっかしいことは
したくない
家族に迷惑かけるのも
ゴメンだよ

イデオロギーもないし
ポリシーもないし
地位も名誉も権力も
ましてや
覚悟もない
だから

我々はシャア・アズナブルだ

とか
とりあえずそんな台詞で
かっこつけてみたいんだ

願わくば
ジャンボ宝くじでも当てて
赤いメルセデスでも買いたいね

BMWでも
ポンティアックでも
なんなら
フェラーリとか
ランボルギーニでもいい

とにかく
赤いヤツ

そいつで
上司が最近買ったばかりの
白い新型カローラを
ブチ抜くんだ

我々はシャア・アズナブルだ

なんて
呟きながら
バックミラーなんか
チラっとも見ないで

助手席には
子供も女房も乗せてやらない
だって
赤い彗星はいつも
一人ぼっちだからさ

帰りに
コンビニで
牛乳買って帰る





エントリ2  ボロ靴のシンデレラ   yuki


ガラスの靴のシンデレラ

シンデレラはガラスの靴で舞踏会に行った

そしてシンデレラは素敵な王子様と出会った

ボロ靴の私

泥で汚れてしまった私の靴

だけど私のボロ靴は

私をいろんな場所へ連れていってくれた

私を素敵な場所へ連れていってくれた

私のボロ靴

他の人から見たらただのボロ靴だけど

私から見たらガラスの靴

ボロ靴よ

今日も私をシンデレラにしておくれ

作者付記:始めての挑戦ですがよろしくお願いします。





エントリ3  神意検証    香月朔夜


蟲毒の中に在る我々

優しき者はことごとく滅び
悪意ある凶暴な生命体が勝ち残る

それは脈絡と続く歴史が証明してきた事

今更そのシステムに何処に議論する余地があるのだろう?


問題とすべきは、そんな事ではない


わからないのは「神」の意図だ

「鬼」とも「化け物」とも知れない愚物を造り上げて何をしようというのか


軌跡を辿るなら、自らの苗床

物語を紐解くなら、唯の戯言



いづれにせよ記述を彩るその名は‥‥‥「悪魔」





エントリ4  僕は何を飲んできたか
   荵


 検査成績報告書(被験者用)
  カルテNo.2664
 
 血清総淡白 7.9 g/dg 基準範囲

 G O P  28 IU/ g 基準範囲

 G P T  74 IU/ g 高値

 なのに、

 γ -GTP  48 IU/ g 基準範囲

 軽い肝機能障害です。

 全く問題ないらしいです。

 僕は、お酒が全く飲めません。

 でも、飲まないといけない時もあります。

 僕は、ジュースが好きです。

 一日、に2gは飲みます。

 最近、太ってきています。

 体重が80キロになりそうです。

 最近、そういう人が多いみたいです。

 先日、僕が、

「アルコールなんて、この世から無くなればいい」

 と、友人に言うと、

「アルコールが無いと、傷口消毒できなくなるぞ」

 と、言われ、僕が、

「それでもいい」

 と、言うと、

「お前が無くなればいい」

 と、言われた。


 僕は慌てて訂正しました。

「僕もお前もジュースも、アルコールも無くなっちゃいけない」

 すると、友人に、

「いいかげんなこと言うな」

 と、怒られた。

 総コレステロール 203 mg/dg 基準範囲やや高め

 中 性 脂 肪  154 mg/dg 基準範囲やや高め

 HDLコレステロール  51 mg/dg 基準範囲

 尿 素 窒 素   17 mg/dg 基準範囲

 クレアチニン   1.1 mg/dg 基準範囲

 尿     酸  5.7 mg/dg 基準範囲


 血     糖   84 mg/dg 基準範囲内


QBOOKS付記:本作品は閲覧環境によっては表示できない文字を含んでおりますが、そのまま掲載しております。





エントリ5      椿月


光から闇を見ることの非力さ
闇から光を見ることの恐ろしさ
いじらしい道徳に生まれた日に殺される人たち
闇と光が分からなくなる
どちらにも属さない目が睨む
埋没する
詩集を朗読する暗読する


両腕は開かれた
赤い虫が体内に寄生する
日向のベンチに腰掛ける老人の刺殺体
正義の日々にさよなら
強風の中ひとりぽつねんと木偶のように立つとたちまち自分醜くなるのです
赤い電車が通り過ぎてゆくのです
がらんがらん
がらんがらんと







エントリ6  オオバコの詩(うた)   小澤恒平


彼は格別 目立つでもなく
いつもそこで生きていた
どんなに人になじられようと
どんなに仲間に罵られようと
彼は ただただ笑っていた
オオバコという花は
踏まれ踏まれてたくましくなる
漢(おとこ)の中の漢 我が良き友よ
お前は社会のオオバコの花

彼は格別 怒るでもなく
いつも涙をながしていた
どんなに人が憎かろうと
どんなに仲間に裏切られようと
彼は ただただ笑っていた
オオバコという花は
踏まれ踏まれてたくましくなる
漢の中の漢 我が良き友よ
お前は社会のオオバコの花

彼は格別 何思うなく
飾らぬ心をひらいていた
どんなに人が醜かろうと
どんなに仲間に笑われようと
彼の笑顔は絶えなかった
オオバコという花は
踏まれ踏まれてたくましくなる
漢の中の漢 我が良き友よ
お前は社会のオオバコの花

作者付記:僕の友達をうたった詩(うた)です。





エントリ7  原子力ネコパンチ   ながしろばんり


げんしりょく、ねこぱんち。

 げんしりょく‐ねこぱんち【原子力―】
 原子の力を利用して強まったネコパンチ。通常20パウンドだったものが2500倍の力を持つ。コンクリート塀も一撃。

げんし、かねこぱんち。

 げんし‐かねこぱんち【原子―】
 ボクシングの打法。明和中期のプロボクサーであるアトミック=カネコの独特の構えから繰り出されるストレート。当たると大爆発。

げんしりょく、ねこぱんち。

 げんしりょく‐ねこぱんち【原子力―】
 ゲイゲル系Q分子を比重の軽いほうから並べた語呂合わせ。「原子核ミロン」「力的均衡ミロン」「ネフロン」「コルボン」「パンタロン」「チヨリン」の略。
 医学生の間で流行した。

はらこかねこ、ぱんち。

 はらこかねこ-ぱんち【原子―】
 京都蛸薬師の理容店、「バーバー小森」の店長小森辰夫の義母であり理容師であった原子カネコが開発したパンチパーマ。関西パンチの王道を踏襲しつつ京風のニュアンスがあるのが特徴で、当時の常連だった指定暴力団屯村組若頭前島茂男の要請によって開発された。オリジナリティーの秘密はにしんそばの汁。

はらこ、かねこぱんち。

 はらこ-かねこ-ぱんち【原子―】
 当時文具メーカー大手だった日本廻船問屋株式会社(日廻)の技術部担当だった原子芳樹が開発したものを、原子の死後に部下だった金子正久が商品化した穴あけパンチ。通常の穴あけパンチとは違い、穴の外壁を切断する部分と、内部の削りかすを処理する部分の二重構造になっており、ベニヤ板から5000枚の普通紙までのスムーズな開穴を可能にした。

げんしりょくね、こぱんち

 げんしりょくね-こぱんち【原子力―】
 1985年、当時の南ヘンメリアの科学技術相だったB.コパンチが日本からの原子力発電所の技術協力のために来日していた際の記者会見での第一声が「原子力ネ!」であり、そのときの笑顔と気さくな性格が日本国民の感動と共感を呼び、コパンチ饅頭やコパンチ音頭などの社会現象となった。主にニューウェイブの方面でもてはやされる。
 →コパンチ

cf.) コパンチ【Bobby Robert Coppanch】
 南ヘンメリアの海相、科学技術相。1985年に日本から原子力発電所の技術を得て祖国にエネルギー供給と産業発展の希望を開いたことで、名誉国民の称号を得た。帰国後「日本徒然草」2巻を刊行。(1937〜2002)
→資料:コパンチさんのスマイル原子力(用川書店、1990年)





エントリ8  進化   有機機械


人類は不完全な生き物で
このままだと戦争で自滅するとか

脳の機能の30%しか使ってないから
もっとすごい能力が眠ってるはずだとか

そんなことがよく言われるけれども


あんまり欲張り過ぎないこと

あるていど他人を許すこと


たったそれだけのことで
僕らは完全な生き物に近づけるんじゃないかなあ

そして僕達みんながそうなったら
それは進化と言えるんじゃないかなあ

たったそれだけのことで






エントリ9  バリスタ    葉月みか


黒くて苦い液体を
眉間にシワを寄せてすすらなくてもいいように
一匙の嘘
一雫の秘密
戸棚の鍵は
誰に教えられたわけでなく
物心ついたときにはもう
この手に握りしめていたの

入れすぎた嘘が溶けきれずに
カップの底に沈殿したり
多すぎた秘密のせいで
せっかくのラテが冷めてしまったり
そうそう
お客様と喧嘩して
ついつい頭に来たから
何も入れないエスプレッソを出したきり
黙ってしまったこともあったっけ

それでも
鐘の音を鳴らして
この小さなカフェを訪れてくれた
家族や友人、恋人、同僚、先生、いつかすれ違ったあなた
そして
時々は自分自身
一人一人と飲んだレシピは
たとえ失敗作でも捨てたくはない歴史

今度あなたのカフェを訪ねたら
オリジナルブレンドをお願いね
言い忘れてたけど
最近少し苦くても
前より味わえるようになったのよ

私のところにもまた遊びに来てね
いつだって挽きたての豆を用意して待ってるわ





エントリ10  末期少女ネヲン    ヨケマキル


堕ちゲノムの詩的解読に失敗した「少女ネヲン」は
友人の「青キリコ」を殺害した

<末期少女ネヲン>
       ヨケマキル


ネヲンの家には友人の青キリコとソナァが住んでいて
森に繋がる庭があって
庭の片隅の小屋には牧羊神フォーヌがいる

フォーヌ「青キリコを殺しなさい」
ネヲン 「なぜ?」
フォーヌ「彼女は上海フィラリアホリックにかかったからです
     このままでは森が滅亡してしまいます」
ネヲン 「わかりました 死体は?」
フォーヌ「風葬です」

庭に放置される青キリコの絞殺体
ネヲンとソナァは話し出す

今日は空が青いね
風はどうかな?
風も吹いている 雲を吹き飛ばした
ボクたちはこれからどうなるのかな
とりあえず家を捨てよう
そうだね 捨てよう 何を持っていく?
テレックスとラセンきのこ
ラセンきのこ?
うん 昨日ようやく産まれたんだ
何に使うの
超人類と話をする時に使うんだ

フォーヌの預言通り
青キリコの皮膚の一部は
すでに象のようになっていた

青キリコ ボクたちのどちらかが死んだらさあ
ソナァ  うん
青キリコ 死んだ方の死体を食べよう
ソナァ  なぜ?
青キリコ 食べた方の体の中で再生するの
ソナァ  うん
青キリコ そうすれば永遠に生きれる
ソナァ  約束する
青キリコ うん 約束だ

上海フィラリアホリックを患った者の死体を食べた場合
3時間以内にアシッドプールに入らなければ
死亡スル


庭に並べられた青キリコとソナァの死体
手を繋いでいる

家と小屋に火を着けるネヲン

大きなカバンの中には
テレックスとラセンきのこ

ボクの足の下には地が広がっていて
その下には無数のれき断死体が埋まっている
それは地球の果てまで広がっていて

今日も空は青い

美しく白く奇妙にらせんを描いている
笠の部分は壊れたテレビ色
特殊A型リキッドの中で泳いでいる
水槽はテレックスと繋がっていて
超人類と会話が出来る

らせんキノコこと
スパイラルマッシュルーム

少女ネヲンは友人二人を失った
そして明日封印された自らの記憶を取り戻すために
この街、ヒミライ市のエンドラインへ向かった

ヒミライ市のエンドラインに
巨大フラワァは咲いていた



牧羊神フォーヌが作ってくれたヒカリ階段をのぼり
巨大フラワァの花弁へたどり着いた
中心部には少女ネヲンの記憶が封印されている鏡球があった

鏡球

それは死んでしまったこの街の海のかけら
きらきらの卵
光を反射させながら回転している

ネヲン 「ボクの記憶は?」
フォーヌ「きっとその鏡球の中です」
ネヲン 「回転していて触れない」
フォーヌ「球をじっと見ていたらナニカ見えるかもしれませんよ」


鏡球を見つめるネヲン


ネヲン 「見えた 海が見えたよ」
フォーヌ「それはきっとあなたが見た海です」
ネヲン 「それじゃあ。。。。」
フォーヌ「そう その鏡球はあなたの眼球なのかもしれません」



エンドラインの向こう側の暗闇に誰かが立っていた

ヒミライ市のエンドラインの向こう側の暗闇に
人が立っている

「こんにちは」

絶対病者の華宮であった

エンドラインの向こう側から華宮は話し掛けてきた

華宮 「この世界では空間と時間は決して交わる事は
    ありません」

ネヲン「あなたはどこにいるのですか?」

華宮 「私はこちら側の空間のトウゲン市にいます」

ネヲン「今は何時ですか?」

華宮 「ここには時間はありません
     時間はトウゲン市のエンドラインの向こうの
    ダエン市にあります」

少女ネヲンは夢を見た記憶があって
鏡球を眺めていたらこんな風景が浮かんで来た

友人の青キリコとソナァが花を植えている
そして青キリコはこう言う
「この花をこの街のエンドラインの目印にしよう
 そして花弁の中心の鏡球にネヲンの記憶を封印しよう」


少女ネヲンは上海フィラリアホリックに感染していた


巨大フラワァの根元に横たわるネヲン
左手が象の皮膚のようになっている



<上海フィラリアホリック>
ネヲンも青キリコの死体を食べたのだろうか

さよならフォーヌ
そして死んだ友人たち
もうヒミライ市にはいられない


ネヲンは立ち上がり
時間の無い空間都市トウゲン市に入って行った
暗闇の中では華宮が待っていた

セ氏マイナス273度
すべての分子は停止
ここには時間が流れていないので
キオクは必要ないのです





ボクの命は封印されている
テレビから貧しい国の子供が ボクを見て笑った

空間と時間が今目の前で分裂

ボクは誰かの体温に包まれて

眠りについた







エントリ11  かわいそうなひとたち    イグチユウイチ


何も失ったことがなくて、
ごめんなさい。





エントリ12  はじめから、丸い    空人


もしも カメラのファインダーが
丸い形をしていたら
あの大統領のしかめっ面も
すこしはやさしく見えるのかしら

もしも カメラのファインダーが
丸い形をしていたら
飢えに苦しむ子どもたちも
すこしは笑ってみえるのかな

この世のすべてが 丸い形に切り取られたなら
この世のすべての人に その写真が届けられるなら
世界は変わるのかな 変わる のかな
いや やっぱり変わったりはしないだろう
角張った心で 見ているかぎりは

でも この世界を覗くわたしの目も あなたの目も
海のような 広い湖の上に暮らす人の目だって
富士山より高い場所の学校に通う 子どもたちの目だって
そもそも
はじめから丸いのだから
まるいのだから






エントリ13  血がざわめく夜だ    佐藤yuupopic


建築途上の住居は薄い膜を垂らして骨組みの中で眠っている

眠れないんじゃなくって
眠らないだけ、てうそぶいて
薄着のまま町に出る
十一月の夜半

今宵、
満月のちょっと手前
丸くて
でっかい


生まれた時からこの眼は不良品で
両眼を開いても
右眼をつぶっても
左眼をつぶっても
輪郭、
幾重にもぼやけて
本当の形、
一度も見たことがない
両目をつぶって
瞼の裏
網膜に浮かぶ
残像も
にじんでいる
光の形
何かに似ている、
ていつも思うけど
的確にあらわす言葉を見つけることが出来ないで
いる

救急車のライト
赤く
フルスピード
背中から
追い越し
往き過ぎる時
どうか
どうか
名も知らぬあなたよ
無事、
再び
愛する人の待つ
家路へと
帰り着けますようにと
祈る

わたしに出来るのは祈ること
願うこと
望むこと
ただそれだけ


大切な友達が、
もうじき
随分遠くの都市で暮らすことになると云う。
今までだって頻繁に会っていた訳じゃない
私鉄JR乗り換えて最後バスで一時間半。
でも、会いたい時に、
ひょいと
会おうと思えばいつでも会える距離。

身体の内の悪くなった処をよくするために
空気がきれいで穏やかに過ごせる浜辺の家に引っ越すのだと云う。
家族みんなで越すのだと云う。
滅多に会えなくなるのがさみしいなんて、
もやもやした思い、
翻訳するとエゴ、
手のひらからにじみ出ないように、
心がけて細心の注意で手を握り返す。
「遊びにゆくよ」
なんて笑いながら
強く、強く握り返す。

よだかの兄さんが訪ねてきた時
遠くの山焼けを眺めながら
弟の川せみは何を思っていたんだろう
「いいや、僕は今度遠いところへ往くからね、その前、一寸お前に遭いにきたよ」
「兄さん。往っちゃあいけませんよ。蜂雀もあんなに遠くにいるんですし、
 僕一人ぼっちになってしまうじゃありませんか」

彼はさぞかし心細い思いをしていたことだろう

昨日、
会社で、
不意に
川せみを思って涙がこぼれそうになって
モニターにじんで
困った。

わたしは一人ぼっちではないから
なおさら
この思いを越えてゆかねばならないのだと思う
わたしの真ン中の奥底からの
本当に本当の気持ちで
「遊びにゆくよ」

手をふって送り出さねばならないのだと
知っている


も、一度
救急車のライト
どうか
どうか
名も知らぬあなたよ
無事、
再び
愛する人の待つ
家路へと
帰り着けますようにと
祈る
心の中で
両手を組んで
祈る

本当に会いたかったらいつでも会いに往くから
そして時々は会いに来てよね
電話もメールもあるしね
どうか友達よ健やかであれ


傍らにいる
あなたよ
わたしのえらんだ未来に
どうかこのままずっと健やかにい続けて頂戴と願う

そして
わたしもこのまま
ずっとあなたの傍らに健やかにい続けられますようにと願う

静かに
静かに
だけど
強く

わたしの中に
平凡でかすかだけれど
燃えている


炎の外側の青く透明な部分は
一見儚げだけど
その実、一等高温
わたしの中にも
平素、決して激しくあらわすことはないけれど
ささやかでちっぽけだけど
たしかに燃えている


いつまでも
あなたの
内に
灯り続けられたらよい


眠れないんじゃなくって
眠らないだけなんだ

ざわめく血よ
静まれ
でも
決して
絶えるな

薄着のまま町に出た
十一月の夜半

わたしに出来るのは祈ること
普通の言葉で
願うこと
望むこと
愛すること
あなた方を愛おしいと思うこと
ただそれだけ








エントリ14  温もりの園    木葉一刀


手が重い
足が重い
次の一歩が進まない
果てない家路

疲弊した体にのし掛かる
満員電車の隣人の肩
朝は眠い足が動かず
夜は棒の足が動かず
それでも僕は帰るしかない

一分一秒早く
柔らかい布団に抱かれるために
家路の時の階段を上がる
動かなくても疲労は蓄積され
動かなくても時は流れゆく
寧ろ僕が緩慢に歩むほど
時は矢のように過ぎてゆく帰り道

徐々に削られる安らぎの時

そんな僕が救われたのは
ドアを開けると漂うカレーの香り
すでに畳まれた洗濯物
蛍光灯よりも明るい笑顔

背骨を包む闇が晴れた

二人で潜る布団の安心感は
二時間分の睡眠に勝った