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第73回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1川上光純255
2黒猫矢凪祐309
3花のある生活ながしろばんり277
4足音クロオ174
5自殺のエクリチュールトノモトショウ369
6マインスイーパー大覚アキラ416
7運命佐藤yuupopic※データ無
8くもりなくかがやくヨケマキル421
9再解空人411
10爆死したLOぶるぶる☆どっぐちゃん854
11地下鉄を待ちながらイグチユウイチ338




 


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エントリ1      川上光純


時を刻み続ける限り
白は汚れてゆく
例えば
病室の壁
例えば
額に巻いた包帯や
現実に目を向ける限り
それとなく美しく語られた白は
虚構に過ぎないことを知る
例えば
病室の壁
汚物や鮮血を浴び
例えば
額に巻いた包帯は
細かな繊維にかさぶたやフケをこびり付けている
しかし白は白であろうとする
陽の射さない部屋に光を与えようとする
まるで自分の存在を疑わないかのように
やがて
病室の壁
陽光に黄色く焼かれ
やがて
額に巻いた包帯も
血や垢で黒くくすぶらせていく
しかし白は白であろうとする
まるで自分の存在を疑わないかのように
白であることを忘れるかののように





エントリ2  黒猫    矢凪祐


暗闇をさ迷う両腕
何かを求めて…
それは無意味な行動

深い海底に沈みゆく船
鮮やかな色彩は届かない
自ら招いた悪夢
取り戻せない光を望むのは
愚か者

彼等の真実は偽善と矛盾
美徳は干からびた自尊心
箱詰めされたモラルと礼儀
背徳者を笑えばいい
お互い様ね

楽になる薬も持っているけれど
必要ないでしょう

少し冷静になって
道化師たちを眺めてみる
黒い太陽が堕ちて
きっと世界は終わり

狂気が潜む心の隙間
取り出した結晶は
闇の星屑になった

曖昧性を否定する筈だったものが
それを誇張する
眠らない月が膨らみ始めた

用意された無数の鳥籠が
彼等を待っている
私は傍を擦り抜けて
嗤ってあげるわ

あらゆるものを超越した
彼の手にも掛からない
あまりに俯瞰的で
闇に溶け込む
私は嘲笑う黒猫





エントリ3  花のある生活    ながしろばんり


長い長い坂をくだると
海の器見えまして
県道沿い東へ小田原の方へと往くと
あの人のマンション見えまして

月曜日には花を買って
テーブルの中心、化粧の瓶に活けている
坂の上の駅から崖縁の住処まで
一軒の花屋もないのに

ぼう、おう、ぼう、おう
夕日が墜落するあたりで
連絡船の汽笛
湊にはいくつも鳥が旋回しているが
ほとんど鳶だったり、
ほとんど砂糖菓子だったり、

ふきえさん、山育ちなので
菜蕗から名前をとられました
潮風はベランダから
玄関に向けて吹き抜けていくです

東京へと帰るまでの間
しばらく花のことを考えていました
海の青を背にした、オレンジ色の花は
いったいなんという名前だったかしらと





エントリ4  足音
    クロオ


どこかでチャイムの音がした
誰かが昔話を始め
色の足りないクレヨンで
絵本を全部塗り替えた

どこかでチャイムの音がした
消毒液の作り笑い
永遠に続く点滴に
魚に戻ったままになる

どこかでチャイムの音がした
おもちゃの箱は行ったり来たり
沢山の靴が雨降らし
階段の歌は聴こえない

どこかでチャイムの音がした
そのうち猫もぐっすり眠る
冷めたスープを温めて
残りは明日の朝食べよう






エントリ5  自殺のエクリチュール    トノモトショウ


あなたの文学的な自殺の背景には
高尚なる倒錯が存在しているのであろうか


【 自殺のエクリチュール 】


私はラジオから流れる現代的な言語に当惑し
突き抜ける青い空に隷属する世界の反対側で
ひっそりと死のパラダイムを構築した
また それらを糾弾することにも成功した 

「アヴァンギャルドな週末を生き残るのは非常に難しい」

地下鉄で迷い人は白熱し 発狂し
恐怖とメランコリーしか持ち得ない人生を嘆いている
背中を押すのは私によく似た亡霊の透明な腕
つまり 私自身ではない

そうして分割された肉体美は
論理的解釈を拒むドキュメンタリーと化すだろう
多くの人々はすんなりと直線を通過し
いくつかの希望を忘れていくというのが本来のルールだ

連続を支配する魔神の掌の上では
実存も虚無も同様の扱いを受けているのだ

それでも

あなたの文学的な自殺の背景には
高尚なる倒錯が存在しているのであろうか





エントリ6  マインスイーパー    大覚アキラ


傷つきやすい
ということは
他人を傷つけやすい
というのと同じこと

地雷原のど真ん中で
諸刃の剣を振り回す
全裸の子ども

彼(あるいは彼女)が地雷を踏む可能性
踏んだ地雷が爆発する可能性
爆発によって彼(あるいは彼女)が足を失う可能性
爆発によって彼(あるいは彼女)が命を失う可能性


可能性は無限だ


そう
きみには
無限の可能性が
秘められている

素敵な響きじゃないか

だから
地雷を埋めたひとにも
地雷を埋めることを命令したひとにも
おなじだけの可能性を
与えてあげてください
傷つきやすいあのひとたちにも
どうか
無限の可能性を
与えてあげてください
神様


よく晴れた
ある冬の日の午後

伸び放題の雑草が枯れて
灰色と茶色で塗り潰された地雷原を
誰かと誰かが
手を繋いで歩いていく

繋いだ手のひらと
手のひらのあいだの
小さな空間だけが
安全地帯

だから
何があっても
そこだけは守りたいんだ
傷つくことも
傷つけることもない
その小さな空間を

息を止めて
動かないで
死んだふりをして

死んだふりをして


死んだふりをして





エントリ7  運命    佐藤yuupopic


それは、
いつくらいからだったか。

先一昨日
いや
もっと前か、
定かでないけれど
わたしの身体
から
毛糸に似ているけど
素材が何だかはっきりしない
ひも状のやつが
伸び出している
のに
先刻
気づいた。

はじめはセーターの裾ほつれてるのかと
思ったけど
違うみたい
どうやら
ほどけているのは
わたし自身で
どうしてこんなことになったのか
全くわからなくって
考えるほどに
アタマの糸ぐっちゃぐちゃにからまって
考えること自体すぐに止めた
けど
とにかく
わたしの端がほどけて
いるようで

それも
どうやら
日増しに
その長さが
伸びているようで
考えるのを放棄しはじめてから
伸びる速度も急速になって
びっくり
不思議
意味がわからなすぎて
ちょっぴり
いや
かなり
怖い

ひも状の
やつは
日の加減によって白かったり
銀色だったり
して
小学校の授業で育てた蚕の吐く
糸のきらきらに
似ている
伸びた先は次第に色が薄くなって
端っこは透明になって
何処にどんなふうにつながっているのか
はたまた
何にもつながっていないのか
すら
わからない
ただ
日増しに伸びた
ひも状のやつは
もうかなり
長くなっているようで
ひきずって歩くわたしからは
振り向いても
透明になっている部分が
すっかり見えなくて
どれくらい
長くなっているのか
さっぱりわからない

他のひとの目には
全く見えないみたいだから
ご迷惑はおかけしてないはずだけど
電車のドアにひも状のやつがはさまって
窓外にはためいている様は
見ていてあまり
気持ちが
よくない

なんで
わたし
こんなふうに
ほどけて
ほつれて
ひも状のやつが
長くなるにつれ
心が
ざわざわ泡立って
落ち着かない

元来考えなしで
最後までひとつのことを
考え抜くことが出来たためしがなくって
いつしかあきらめて
全てをあるがままに受け入れて
なんとなく心地よい流れに
身をまかせゆられて
ここまで生きてきたけど
胸のざわざわが
高まるにつれ
今回はいつもと同じじゃ
ダメなんじゃないかって
思う
ようになってきて
理由はわからない
全然
わからないけど
ざわざわが
急き立てるから

ひも状のやつが何処まで
伸びて
何処に向かっているのか
何かにつながっているのか
つながっていないのか
ただほどけっぱなしのままじゃなくって
わたし
たしかめに
ゆかなくっちゃ
きっと有休は
そういうことに使うために
残っているに違いないって
ざわざわが
急き立てるから


たぐる
たぐる
たぐりながら
進む
たぐる
たぐる
寄せる
わたしが
いった場所

歩いた町中
電信柱と電信柱の間
うねうね
ぞろぞろ
道の
端から端まで
うねうね
だらだら
だらしなく伸び放題の
ひも状のやつ
どこまで
どこまで
たぐる
たぐる
寄せても
どこまでも
どこまでも
ああ
もう
しんどい
これ以上歩けないや
いい加減にして
もうやだ
やだやだやだ
やっぱりもうどうでもいい
ダメで結構
以上、
終わりッ!


疲れて果てて
途方に暮れて
ファンデーションも
くちべにも
はげはげで
みすぼらしく
座席に崩れ落ちるように
入ったカフェ
からっからの喉
鳴る程
お水一息に飲み干して
アタマ上げた、

先に。

むやみにきらきらしている
奥の座席が
目に飛び込んできた

座っている
男のひとに向かって
ひも状のやつは
のびて
ぐるっぐる巻きに
蛇みたく
巻きついて
光の加減で
白かったり
銀色だったりする
やつが
強烈に
発光して
男のひとの形の糸巻きみたく
まばゆく

コーヒーカップを
がちゃんと
激しい音を立てて
置いて
こちらを凝視している
男のひと
表情は影になってわからないけど
わたしを見ているのだけわかる
テーブルと椅子を
さらに
がちゃんといわせて
靴音
床を踏み鳴らして
こちらに近づいてきた
男のひと。

背丈がでっかくて
怖い
白くて銀色の
きらきら
迫りくる
人間糸巻き

仏頂面
「一体どういうつもりか皆目見当もつなかいけど」

眼鏡の奥の色閃かせて
「きみが全ての根源だった訳か」

それはとても冷たい色で
「やたらきらきらまとわりついて」

睨みつけられて
「どんどん勢いを増してきて」

身体すくんで
「いくら振りほどこうとしてもどうしようもないから」

身じろぎできず
「最近はすっかりあきらめていたんだ」

うちのひも状のやつがご迷惑をおかけして
本当にごめんなさい。
しか云えなくて
また喉からっから
汗ばむ手のひら
握って
自分のつまさきだけ
眺めている他なくて、

鼻が触れるほど
「本当に」

近づいて
「迷惑なんだけど」

不意に
くちづけられた、

瞬間、

ひも状のやつも
周りの景色も
店中
全部
消し飛んで
世界に
二人だけに
なった。





エントリ8  くもりなくかがやく    ヨケマキル


或るざわざわの夜である

木々がこよなく小揺るいで
光がいっそう流れたり
風がいよいよ動いたり
千の星座の爆発や
満艦飾のいろいろや
森へ森へと急ぐのです


ほの白き くすぐりの森で まやかし蛍の羽音狩り

チンチロガチャガチャチョンギース

鳥がすこぶる啼いていて
うしゅるうしゅるる啼いていて
アーリーバードという名です

眉月弓月玲瓏と 
陰と陽とのセパレート
いえいえ 月や星やはほんとうは 
わたしが突付いた空の穴
その限りない穴からね
むこうの光が見えているんですよと
アーリーバードが啼いている

くもりなくかがやく
くもりなくかがやく

そんなようにも聞こえてる



やがて祭りのあとのよに

いびつな記憶のぎざぎざや
ちぎれた想いのざらざらや
すべての悲しみそんなものを

森はしんしん隠すのです

ひっそりかん ひっそりかん

あのあでやかな鳥たちも

森に静かに眠るのです

しんしんしん
しんしんしん


ばらばらの 鏡の裏のいたずらの 光の奥の戯れの
ハルニレの下で眠りなさい

そして目覚めたら
元来た道を戻りなさい 





エントリ9  再解    空人


いつまでも続くものはない
ということを
あの夏は教えてくれた
そして
どこまでも続く 暗く冷たい空がある
ということを
あの冬が教えてくれた

君は 僕に会うことを
じつは後悔しているんじゃないか と思っている
君の 淡雪のようなやさしさ
捕まえようとすると ひらりひらりと舞って わらう
でも
熱を帯びた 僕の皮膚に 降りてしまえば
それはたちまちに溶け
涙に変わってしまうのだろう と
君はきっと そう思っているんだろう
僕もたぶん そうなんだろうと 思っている

いつまでも続くものはない ということを
僕は
あの夏から学んだはずなのに

でも

窓の外に 一筋の雲が
光かがやき
それはもう まっすぐと
はるか彼方にのびている その先を想うと 僕は
どこまでも続く 暗く冷たい空も
きっと ないんだろうと思う

あのやさしげに ひらひらと舞う雪でも
いずれ溶け
その代わりに
雲をつくり 光を受け かがやく

僕は

窓の外
はるか彼方に続く 一筋の雲の先を
じっと じっと
消えるまで 眺めていた






エントリ10  爆死したLO    ぶるぶる☆どっぐちゃん


ろろろろろろろろ
LOLOLOLOLOLOLOLOLOLO
ロロロロロ
ロロロロロロロロロロロ
爆死したLOの
うたが
きこえる

LOのうたは
ようするに
「ええ、まあなんていうか、わたしには、わかりませんでしたね」
「すばらしかったんじゃないかな。すばらしかったよ。多分ね。まあ、でもうたなんて、そんなものだろう?」
「うたなんて、そんなものだろう?」
「うたなんて」
「そんなものさ」

「うたなんて、そんなものさ」
LOはまっくろなスピーカーの上に座っていて
どこか遠くを見ていて
その視線をなんとかこちらに向かせたくて
ピアノを弾いたりギターを弾いたり
くだらない冗談を言ったり
(でもそんなこと、あるだろう?)
(くだらないと知ってても)
(届かないと知ってても)
(むしろ届いてしまった後も)
(そんなことって、あるだろう?)
「うたなんて、そんなものさ」



爆死したLOの左手は
今はグランドキャニオンの彼方に
突き立っているらしい
それは
だいちの樹のように
ミサイルのように
虹のように
虹のように
虹のように虹のように虹のように何処までも伸び続けていて虹のように
虹のように虹のように虹のように
(ゆめから、さめた)
(なないろの、ゆめ)
(もう、ゆめから、さめた)
虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹のように虹の虹の虹の虹の虹の虹の

ゆめから

さめた

もう

ゆめは

みない




大地に突き立ったLOの左手に
語りかける
ピアノを弾いたりギターを弾いたり
精一杯の冗談を言って


ようやく


精一杯の冗談を言って
ピアノを弾いたりギターを弾いたり
語りかける
大地に突き立ったLOの左手に


きちんとプロットを立てて
キャラクター管理表やコード進行や
歌詞の符割りやペダルポイントをちゃんと考えて
指の気分に任せないで
ああそうだそうだそうだ(でもジンは飲んでる。ごめん。ごめん)


そうだ そうだった


そこには

ただの


あおぞらだ







わたしはかたりかける


かたりかける


かたりかける


そうだ

わたしは
かたりかける






エントリ11  地下鉄を待ちながら    イグチユウイチ


都営 大江戸線 六本木駅で人身事故――
と、赤羽橋駅の電光掲示板が 右から左に流れる その真下で
来ない電車を待ちながら、約束の時間に遅れる、とメールを打つ。

この真っ暗な地下鉄のトンネルの先に今、誰かの死がある。
けれど、その方向から吹いてくる風に 臭いは無い。

名も知らない誰かの絶望が、結果として電車を止め、
こうして俺を 約束の時間に遅れさせている。
名も知らない誰かの絶望が、俺の行動に影響を与えたのだ。
それならば、その絶望を生み出した ひとつひとつの出来事もまた、
電車を待つ全ての人々に 影響したということだ。

そんな風に、全ては 全てと 繋がっている。
こんな所で、こんなきっかけで、世界の秘密を知ってしまった俺は
あいかわらず 死の臭いがしない風に吹かれながら、
来ない電車を 待ち続けている。