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第12回詩人バトル Entry52

Lesson

違う姿形で生まれたからこその
ただの人の一部で終わらぬ命を
求めて 求めて やみません。

だからでしょうか
才をとうに逃したわたくしは
気が狂れた指をも支配する
その奏で人に焦がれてしまいます。

そうしても
羨望など穢らわしく

独りあぶれおぼれる貴方
なんと哀れな楽人でしょう。
蔑みにもよく似た敬愛の言葉で
幾重もの位と隔たりをめぐらす。

それきり断ち切る筈でしたのに
惹く音(ね)にその場へ留まってしまう。
貴方の耳には無でしょうか
無表情な指先と腕でしたから。

過ぎ行くだけの筈でしたのに
悔しさにその場へ留まってしまう。
伝った響きは無などではなく
わたくしにはひどく愛惜しいうた。

穢れた羨望を引き剥がし
その旋律をいただきましょう。
才を見捨てたわたくしの
喉が欲しているのです。

貴方の指になど見蕩れない。
わたくし自ら風はゆれ出す。
貴方の傍にも縛られない。
わたくしを両脚がせき立てる。

そうして
人の一部では終わらぬ命は
わたくしの手中へ舞い降りる。

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