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第120回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1売れ残りボジョレイ金河南155
2happy again凛々椿517
3泣く少女千早丸1337
4痕跡石川順一33




 


 ■バトル結果発表
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詩人バトル読書会
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エントリ1  売れ残りボジョレイ    金河南


 パルメザンチーズが

 気違いのように降ってくる

 粉チーズにまみれて
 パンツェッタ色のコートを トマト色のブーツを
 放り投げてまみれて

 君はなんてパスタのような肌をしているんだ!

 あ、 あはは

 このチーズは甘いよ
 水のように舌で 肌で 唇でとけるよ



 浮かばない雪が欲しかった

 冷めた料理を
 まだ食べずに舞っている





エントリ2  happy again    凛々椿


今日 静かに雪が積んだ
僕は I'm singing in the rain を小さく歌う

 I'm singing in the rain
 Just singin' in the rain


楽しい思い出は悲しい思い出に生まれ変わった
もう戻ることはない
理解した時 僕は何の言葉も発せなかった
背中には殴られた痛みがしばらく残り
それでも笑う癖がついていた僕はただただ笑った
そう 楽しい思い出は悲しい思い出に生まれ変わったのだ
そしてもとに戻ることはなかった
二度と

目をつむっている
なのに思い出はふいに目蓋からしみ込み そう今日の雪のように
悲しいので
僕は毎日死者のふりをする
光かがやく新しい日々に添いながらも
何ひとつ変えられないまま 
積んだ雪の道のすみで 言葉を発せずにいる
それでも あとふたつきもすれば
あの丘のさくらが咲きほこり 
僕のいない町にはなやかに降り積もるのだ
潮風に乗って
気がくるうようになっても
それは それはとても美しく思い起こされるのだ
あの人とともに


雪はやがて雨へと生まれ変わった
オレンジの錠剤を噛み
僕は I'm singing in the rain を歌う
あの日のことを思い出して歌い続ける

 I've a smile on my face
 I walk down the lane


すべて 夢だったら


思い返しながら
灰色の雪解け道を跳ねながら歩く僕は
まるで ピエロのように






エントリ3  泣く少女    千早丸


「死にたい」

彼女は、そう言って泣いている

掃除を放棄した部屋の隅につっぷして
気を使って整えたはずの服は、もう何日おなじだろう
梳かせばベルベットのような光沢を持つ髪はグシャグシャ
鈴を転がすよう、と言われていた笑い声はなく
内臓を引きずるような悲鳴が止まらない

「死にたい」

彼女は、そう言って泣いている

「どうして?」

聞いたところで答えはない
彼女はいま、とても忙しいのだ
 ――嘆くことに 蔑むことに 哀しむことに 拒絶することに
とにかく、色々なことに

忙しくて、とても忙しくて、忘れている
  食べること
  眠ること
  お喋りすること
  興味を持つこと
  笑うこと
みんな、みんな、みんな忘れて

「つらい」
「もうイヤだ」
「死にたい」

彼女は、そう言って泣いている



通りすがりの身奇麗な紳士は、彼女の様子に眉をひそめた
(形のいい眉だ)
(きっと念入りに手入れしている)
紳士はつっぷす彼女の前に立つ
距離は70cm
そして、高説を唱えだす
曰く

「おまえより悲惨な人間は山程いる」
「彼等は頑張っているのに、おまえは努力すらしていない」
「その程度は不幸でもなんでもない」
「世界の中心は自分だと思っているだろう」
「その思い上がりは傲慢だ」

紳士は立ったままで言い散らし
鼻先で「フンッ」あしらうと
くるりと踵を返し
立ち去った

「思い上がった傲慢」な彼女は
さらに声を上げて泣き続けた



次に来たのは親切そうなご婦人
嘆く彼女を見つけると、笑顔で踊るように駆け寄った
そして楽しそうに世話を焼く

どうしたの、顔を上げて
まぁそんな辛いことが!
可哀想に、ひどいわね
さあ元気を出して、気分を変えましょう
お食事作ってあげるわ 着替えて、散歩してらっしゃい
この本おもしろいわよ 映画もいいわね

いくら言っても、構っても
彼女の涙は止まらない
なにしろ彼女は忙しく、他に気が回らない
  回らないし
     回せないし
        回す余力がない
次第に婦人のネタも尽きてくる

ねぇほら、暗い顔しないで 女の子は笑顔が大切
泣かないでよ、もう誰もイジメないのに
ねぇ、ほら、さぁ――
――――いい加減にしなさい!
これだけ私が尽くしてあげているのに、その態度はなに!
そんなに死にたいのなら、勝手に死になさい
この恩知らず!!

婦人は怒鳴り散らして立ち去った
「恩知らず」の彼女は、頭を床に叩きつけて悲鳴を上げた



「死にたい」

彼女は、そう言って泣いている

   「死にたくない」

    そう聞こえるのは間違いか

   「生きたい」

    そう聞こえるのは間違いか

   「ちゃんと生きたい」
   「生きてるって実感したい」

    そう、泣き叫んでいるように聞こえる
    聞こえるんだ

それなのに、彼女はおなじ言葉を繰り返す

「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」
「死にたい」

「死にたい」

悲鳴のような声だけが、ズルズルズルズル続いている



ズルズルズルズルズルズルズル
ズルズルズルズルズルズル
ズルズルズルズル
ズルズル

ズルズル

ズルズル



ズル





……さすがに、疲れた?
ごめんね
あなたを救う一言もない
あなたを癒す術もない

でも一つだけ、思うのだ

「死にたい」と泣き叫ぶ君は
泣き叫ぶ分だけの「生きる意志」があるのだと

後でいいから、気がついて






エントリ4  痕跡    石川順一


左手の手首に細い縞状の饐えた様な色の痕跡が出来たのは何時からだろう