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第152回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1人間の好き嫌いナツオ534
2風の子の弔う凛々椿916
31+2+3イコール何石川順一243
4留まる金河南439
5カサンドラヨケマキル342
6スタートライン待子あかね261




 


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詩人バトル読書会
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エントリ1  人間の好き嫌い    ナツオ


人間が凄く好きだから凄く嫌いなんだと思う。
(ただ、ゆく川の流れのごとく取り留めもない今一瞬思っただけのことだと
断っておく)
自分がなりたい人間をすごくすごく好きになるんだと思う。
けどその人はその人でその人になることはいけないことなんです。
だから今度は自分を好きになってもらいたいと思う。
でもそれってすごく辛いことなんですよ。
好きになってもらっても、ある一定以上は入ってはいけないのですよ。
それを制限してみたり、その人に気を遣って人付き合いをしたり
もう本当に本当に辛いことばかりなんですよ。
だから好きだけど、いっそ嫌いだというんです。
自分にはムリだと証言しとくんです。
その人になることも、その人に好きになってもらうことも無理だと。
他人を中心に生きることはしんどいことなのですよ。
けれど、自分を中心に生きることは虚しいことなのですよ。
結局どちらも辛いのです。
結局中間なんてありません。
夏目大先生もおっしゃるように知に働けば角が立つ
情に棹させば流されるああこの世は生きにくいものなのです。
果てさて、つらい。
そんな人間がどこに行けばいいかと、
どこに行けばつらくもしんどくも虚しくもないかというと
死んだ人間、会えない人間、遠い人間を慕っていればいいのですよ。
ああこの世は生きにくい。





エントリ2  風の子の弔う    凛々椿



父ちゃん
あんお地蔵さん毎日こっちば見よるとよ
戦火でむごう焦げた左っかわ
今日もハンサムよ 
父ちゃんに似てよか男ばい
いたばり出てみれば秋ん風のすーっとすると
こん前どか雪降ったつ思うとったんにもう夏の過ぎようとしようとよ
時ん経つの早かねえ
早かね


あんときのお葬式 あらあどっから来よったとね
孫が黒か猫ばつかまえてきよってこんいたばりで見せぶらかしよったき
そらとんだ騒ぎやったとよ
みなして不吉や不吉やこきよってからに
ばってんあれは小んか子んしたこっちゃろうも
父ちゃんなら目ば細めたに違いなか
あれは風の子の
弔いよ
ひゅるるひゅるるう ひゅ
ひゅるん て


あげん小んか孫やったとが 今年でもう二十になったとよ
来月から東京さ住むて
べにでめかしようて もう立派な大人ばい
うちの腰もひん曲がるわけよ
もう野菜もよう作らんちゃ
なさけなかね
なあ父ちゃん
うちなもうずうっとカレーば食べてなかよ
もうずうっとよ
父ちゃんの作るカレーはほんなごつうまかった
うちん庭で採れたトマトとたまねぎに
娘婿んこしらえた煮干しばしゃげて息子の採ってきたきのこばくつくつ煮て
あげんうまかもん もうこん世にはなか
どうせなら十五年がとこさえてのうなってくれたらよかったとにねえ
そうこいたら娘にも孫にも笑われよったばい
そげなこつ無理よ



こぎゃんひかり
こぎゃん風の
指になんもかからん空の
さよなら言うて息の乗せきらんと
ひゅるるひゅうる
死に寄る父ちゃんの泣きよう声のごたあ


ああもう
ポチのまーたごはんーごはんてやって来ようとよ
正午前5分にいっつも来んしゃる
しょんないなあ
よか野良やけんしょんないわ
肉じゃがの残りばってんよかかいね
近頃ん若いもんは 人でも犬でも鳩でも猫でも舌がよく肥えとうとよ
孫はハンバーグ
ポチはかしわ
鳩は伊東屋さんがたのコメ 猫は菅野さんがたのサバ
うちは父ちゃんのカレーばい
今日のごはんはトマトカレーにしようよ
孫のそう言うて 駅前さいトマトば買い出かけとるとよ
もうぼちぼち帰ってくっちゃろ
夕飯作っちくれるげなけん
そしたら 父ちゃんも一緒に食べようえ
たまにはよかろうもん
きっとうまかばい
風の子もほめよったよ
父ちゃんのカレーおいしかったって
指になんもかからん空に
ひゅるるひゅるん 風の鳴きよる





エントリ3  1+2+3イコール何    石川順一


1少しでも散らかれば
 足で動かされるA4コピー紙を
 最大限に憐れんで居ると正月に使う大袈裟な塗り椀に
 ほんの僅かな豚汁が注がれて
 10分の1も占めて居ない
 その占有率に可笑しみは計り知れない

2風呂前のトイレで右の二の腕の裏側の
 脇よりに近い位置が瞬間的に痛い
 普通につねられるよりは痛いと評価する

3豆とヒーローには渋柿とブックが配られたのに
 皮だけには渋柿だけとは
 サルカニ合戦ではなかろうかとヘッドクォーターから
 クレームが入ったそうだ

1+2+3=123なのか321なのかを議論する会議が今日開かれる






エントリ4  留まる    金河南


 秋、深まり
 たわむれている、80本目の線香を立て
 なくした笑み、ゆがむ足音から思い出をめぐり
 気が付くといつも、また
 今日が終わっている
 息子が、呼んでいる

 いつの日も、どうしようもなく写真のあなたを見つめるだけで
 ひとつだけ、両手を合わせて願うわたしの目に水も
 なくて

 暮れ、訪れる
 ゆらゆれている、片方だけのロウソクを立て
 愛の形を、ついにつかめずに閉じてしまうひとみ
 どうかこれだけは、まだ
 持っていてください
 わたしと、対の輪を

 銀のベール、なつかしい声が永遠を誓う記憶の果てで
 そのうちに、わたしもそこへ行ける時がきたならもう
 いちど

 孫、ひ孫と
 わたしに笑顔、かけて走る元気をだしてと
 あなたのよう、どこか面影が似ている子供たち
 続いてくいのち、また
 明日が始まるまで
 夢でも、会いたいと

 いつかまた、どうしようもなく泣きじゃくることができたならば
 あなたの手、かけてくださいと写真へ向けて語る
 ほそく

 障子をしめ、心残したままあたたかい食卓へ
 ゆっくりと
 むかう






エントリ5  カサンドラ    ヨケマキル



それこそ頭が変になりそうであった
丁寧に体をなでくりまわすように苦しめる
誰にでも体を開くあの少女のことは
今でも慎み深く思い出すが
なだめすかされた心がぐちゃぐちゃにはみ出してくるようで
まるで学校のにおいがする
それは不確かだが
あまりにあからさまに不安定過ぎて
あの夏の日のこと
名を呼ぼうとも
それはそれがさも健全な事であるかのように
森の木にぶるさがったゴミのように
押し黙るように振る舞うので
死はとても静かです
用意されたように
なにもかもが
暴力のように
少女はきふれのふりをして
朗朗と語る
日曜日のなにかの発表会のように



思ったのですが
人間以外のいきものはもう根絶やしにしましょう
残された道はそれしかないのです

戦争などというものを行っていた平和な時代を
いつか懐かしく思い出すことでしょう

あの夏の日とともに







エントリ6  スタートライン    待子あかね


いままで どこをみて走っていたのかしら
そんなの うまく説明できないわ
行きたいところは どこですか
そんなの 口に出したくないわ

ずっと長い間 なにを欲しがっていたのかしら
そんなこと だれにもいえないわ
なりたいものは なんですか
そんなことを話すことができたのは
ただ いつもの場所にいる可愛い子猫

マリコという名の可愛い子猫
いつもの帰り道に
いつものように待っている

マリコが なくと
なにもかも たいしたことではないように思えて
こっちまで なきたくなっちゃうよ

いままで どこをみて走っていたのかしら
それは このスタートラインに立つためね