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第16回詩人バトル Entry32

呼んで欲しい

朝から機嫌が悪くて
待ち合わせにちょっと遅れた彼に
当たってしまった・・・

これが間違えだった

なんとか機嫌を取ろうと私の後ろを歩く彼
「美咲」
と後ろから私を呼んでいる
そんな彼を見て自分が恥ずかしくなった

どうして私は素直になれないのだろう?

すると後ろから大きなブレーキの音が聞こえた
彼の着ていた真っ白なTシャツは赤く染まっていた・・・

もう私の愛する人はいない・・・
私の目の前でいなくなった

私は何もできなかった
救急車に電話してくれたのも
周りの通行人だった・・・

私はただ彼を見て涙を流すしかできなかった

「美咲」
「美咲」
「美咲」
あの日からいろんな人が私を呼んでくれる
でも、なにか違う気がする・・・

「美咲」
母が私を呼ぶ
・・・違う、あなたに呼んで欲しいんじゃない

「美咲」
学校の友達が私を呼ぶ
・・・ごめんね あなたでもない・・・

いったい、私は誰に呼んで欲しいの?

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・『美咲』

・・・そうだ。この声だ。
あなたの声だ。

もう聴けないと分かっていても
あなたの声が聴きたい・・・

たとえ 叶わなくても
あなたに名前を呼んで欲しい

望む事は罪ですか?

いけない事ですか?

たった1回でいい

『美咲』と

あなたに呼んで欲しい

やさしいあなたの声で

もう2度と聴けない

愛するあなたの声で・・・

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