第19回詩人バトル全作品一覧

Entry No.題名作者
1夜中のゴミ捨てーションテト
2死を見つめて麻貴香音
3老犬に石を投げろやす泰
4遠い手紙東郷
5過ち瑠宇
6涙…xei
7地球有機機械
8言われに行く葉子
9真実北海未来
10大切なアナタに、花に添えて贈る詩伊都百
11つながり
12私の通り過ぎた風景 〜不可思議の少女時司 龍
13微笑みを忘れて加賀 椿
14行こうよ。名坂 潤
15
16赤と白の幸福(さいごのうた)沙汰
17夏の部屋伊東春日
18永遠大覚アキラ
19なつやすみのにっき楽太郎
20個人的日常フォニックス
21(作者の要望により掲載終了しました)
22ヨケマキルジゴクヨケマキル
23クマクマ
24言葉たくろう
25風祀り木葉一刀(コバカズト)
26ミカラデルコビモク
27依存れん
28いちごの時間ユキコモモ
29月見草の追憶芽萌里
30足萎えの朝OP
31だいじなことば結奈
32準備はオーケィ?氷月そら
33アリなんて居ませんよ夏ぶるぶる☆どっぐちゃん
34磁石空人
35夏なんて橘内 潤
36秋夏(Syu-Ka)YamaRyoh
37はやっ(゜ロ゜ノ)ノまだ8月の半ばだよ春九千
38欲情choina
39夜、空、星、まんげきょうてこ
40あんなにも遠い、目も眩む数字男へ向けて今晩私は電波を飛ばすのだ佐藤yuupopic

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Entry1

夜中のゴミ捨てーション

あぁ忙しい

今日もまた忙しさですることを忘れていた

あ・・・ゴミ捨て行ってないや・・・

午前2:49 木曜日
私はゴミを両手に下げて
近くのゴミ捨て場
通称ゴミ捨てーションへ
秘密の暗号は324680
カチャリと鍵が開いた
足を踏み入れたそのとたん
私は闇に吸い込まれた

あぃたたたた・・・

どだんッ・・・と落ちた
そこは何処かのステーション

何でゴミ捨てーションの底に駅があるんだろ?

プァップァーー
「え〜〜毎度ありがとうございマス。こちらゴミ捨てーションでございマス。」

男の車掌さんのアナウンス
とたん私は電車に引きずりこまれた

電車の中は何処かのゴミ捨て場
向こうから一人の男が
両手にいっぱいゴミを抱えてやってきた
男はそのまま落ちていく

私は男の落とした金の時計を拾い上げ
ゴミ捨て場に投げ込んだ
私は耳を澄ませたが
音は何も聞こえない

ゴミ捨て場の底は何処にある?
駅はいったい何処にある?


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Entry2

死を見つめて

明日死ぬかも知れない
そんな恐怖に襲われた時
私の周りの緑に
少し救われた

一面に広がる稲穂の緑...

ここの生まれたことを疎ましく思うことがあった
でもその度に目にする
赤々とした
あの夕日がくっきりと目の裏に焼き付いて

いつしか誇りに思うようになった...

死が間近に足音を忍ばせてくる
この光景を
失うのが恐い

愛する人の記憶と共に
残しておきたいのに...


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Entry3

老犬に石を投げろ

(Gのブルースで)
おれ達が詩人だったころ
学校に行けばランボーさんがいた
生真面目なリルケさんがいて
ジャムさんは女の子だから許されていた
イエ〜イッ
(語り : ランボーさんといったって
ランボーがいたわけじゃないよ
自分の詩の中に
『酔いどれて』 なんて書いちまうやつ)

ヘヘへイェ〜ッ 誰かがマラルメさんになると
岩波文庫が売り切れちまう
彼女がブルトン読んでいたので
おれはアポリネールのポルノを読んだ
イェ〜ヘェへェ〜イ
(語り : ロートレアモンの時は泣きたくなったね
あの本高かったんだぁ)

学生服の藤村さんは
『初恋』を暗誦している 白秋さんがいたおかげで
バラモンなんて漢字で書けた
イェ〜〜イェ〜〜〜
(語り : もう書けないけどよ)

朔太郎さんとはいわないが
せめてなりたや達治さん(心平さんもいたな)
都会っ子には通じないぜ犀星さん
高村さんはお人好しのぼろぼろぼろぼろ
ウ〜イェー
(語り : あれみんな童貞だと思ってたんだよな?)

西脇さんが
おれ達には最後のきらめき
寺山さんは死んじまった
谷川さんはもうジジィだぜ
ヘェ〜ヘヘへヘヘへェヘィ〜
(語り : 父っちゃん坊やとは呼ばせないぜ
だけど、もうわかんねぇだろうなぁ〜)
爺っちゃん坊や
イェ〜〜〜〜イ
ジャ〜ン


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Entry4

遠い手紙

花を救った。
枯れそうな花も
満開の花も
まだつぼみの
まだ芽だけの
全てにおかまいなく
生きているからと、救った。

まだ足りない
まだ生きてるのに

そう言って、悔やんで泣いた。
救えずにいた花のことを 悼んで、泣いた。

遠い日本で生まれた、
あなたの知らない、この私は
あなたのことを知って、
小さく涙を流しました。

誰かを愛することに、
何の恐れも要らないと。

あなたの愛した花たちは、
絶えず生まれ変わって、
あなたを知っては愛すでしょう。

あなたの植えた木が、
また、大きくなったそうです。


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Entry5

過ち

当たり前のことが
当たり前で無くなったとき
ヒトは何を想うのだろう

下を見るばかりで
うつむいてばかりいたとき
何を見過ごしてしまったのだろう

自由を追い求め
大事な存在を失ったとき
後悔が何の役にたつのだろう

夢と現実が
曖昧なこの瞬間に
一体何を失っているのだろう

誰か 教えてください
この 永遠の謎を
どうか 教えてください
犯した 過ちを


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Entry6

涙…

 ぽろぽろと、流れる涙はとめどなく…

 小さな、本当に小さな男の子が泣いています。
 その男の子はまだ3歳で、その背たけはまだアナタの膝までしかなくて。

 モミジと重なるほど小さな手を「ぎゅっ」と握って泣いています。
 小さな身体をもっと小さくして泣いています。

 どうしたの?

 足をとめたアナタの言葉。
 けれどその子は答えません。

 大丈夫?

 前にかがんだアナタの心配。
 けれどその子は泣いています。

 悲しくて、哀しくて泣いています。

 お母さんは?

 そうっとアナタは問いかけます。
 チラチラと、道行く人の、目を気にしながら。

 ママ…

 小さな男の子の、もっと小さな、言葉。
 その声は切なくて、その言葉は哀しくて。

 わかりませんか?
 アナタには、わかりませんか?

 男の子が泣いています。
 アナタの前で、泣いています。

 灰色の、街を木枯らしが吹きぬける季節の中。
 真っ黒な雲が降らす、雪の匂いに鼻が痛い今日の中。

 男の子が、泣いています。


 ぽろぽろと、亡くした母の、遺影を胸に…


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Entry7

地球

エラトステネスは
遠く離れた場所に
棒を立て
影の長さの違いから
地球の大きさを知った。

僕は海を眺め
僅かなカーブを描く
水平線を
頭の中で延長し
大きな球を感じとる。

この宇宙に浮かぶ
大きな大きな球の上に
僕達みんなが乗っかってる。
世界の全てが乗っかってる。
それを僕はこの目で見て実感する。
地球の上にいながら実感する。


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Entry8

言われに行く

無理があるよ、セイジ。
今夜何言うつもりか、もうわかっちゃったじゃないか。

でも言われに行かにゃならんのね。

すぐに終わるさ。
注射みたいなもんで、横向いて目つぶってればすぐ終わる。

うん、と言う。
わかった、と言う。
さよなら、と言う。

  腹いっぱい恋してた。
  あたしというあたしが総動員だった。
  蟻がくしゃくしゃの絨毯の上歩いてるみたいに、
  昇ったり下りたりの毎日だった。

・・・やばい、泣きそう。


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Entry9

真実

地図にさえ載らない島があった。
涙がどよめいて、いったん静かになって、
たどりつきたくても
たどりつかない想いがあった。

沖に出れば黄色い魚たちが

陸に着けば黒い動物たちが

肺を濡らして待っている。

指で砂に描いても
心で空に描いても

<居場所も棲家も忘れたよ>

枝から枝へ伸びてきて
雲から雲へ
つなわたり
この島のあの赤い木は
いつまでも
赤い実付けて待っている。
待っている時間を忘れてしまうほど
小鳥たちのさえずりはさりげなく

それでも真剣に 時は
流れてく。


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Entry10

大切なアナタに、花に添えて贈る詩

ちいさく咲いている
きれいで可憐な白
でもそれは
実は、花じゃないんだ
よく見てほしい
その白く咲いている
真ん中にひょっこりと飛び出した
黄色くって
ぼうっとしてるそれ
見えたかい?
それが、実は花なんだ
でもそれが
なんだか奥ゆかしくって
とっても愛らしいんだ
僕がいつも、愛でている
それを、貴方に送りたい
貴方の体のためにも、ね
花言葉は、白い追憶
いつもひっそりと咲いている
そう、それが
ドクダミの花さ


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Entry11

つながり

――ユメ――
創まりは
いつも
愛よりも深い
‘眠り’から

――夢――
はじまりは
いつも
愛よりも深い
‘努力’から


(HAPPY/Y.K.In positive/PEACE/)


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Entry12

私の通り過ぎた風景 〜不可思議の少女

あなたは しあわせ?
君には 夢がある?
街行く人々に 少女は問い掛ける

不安に 追い立てられていた___
___認めたくなかった
そんな時 そんな少女に 出会った

「あなたは しあわせですか」
問い掛ける少女に 答えられなかった
「Yes」と
何も言わず 擦れ違った
心まで 見透かされそうで・・・

でも 答えてやれば よかった
「私は今 しあわせです」 って

誰かが そう言ってやれば・・・
少女は・・・
     救われ・・・・


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Entry13

微笑みを忘れて

あたしは嫌いだ
友人 恋人 家族――
大切な人を失っても いつかは笑う人達が
あたしはそんな人達とは違うんだ

 あなたの気持ちに応えてあげられなくてごめんね
 でもあなたは
 恋人でなくても あたしにとって一番大切な人だったんだよ

あたしは笑わない
あなたが望んでいなくても
いなくなってしまった人を忘れてへらへら笑うような女には なりたくない

あいそ笑いはするかもしれないけれど
心からは笑わない
あなたへの想いをあらわすため
あなたを一人で逝かせてしまった償いのため
あたしは笑わない
決して


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Entry14

行こうよ。

冷たい風に吹かれてさ
黄昏たりなんてしてみようか
腕なんて絡めてみたりして
最後なんだから
楽しく過ごしてもいいだろう?
儚い夢だって事位
僕にもわかってる
だから最後位
儚い夢を見させてよ


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Entry15


宗教上の理由で自殺をなされた方々と
妄想家の肥大した生き様を称えるため、
鈴の音に合わせて踊ります。


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Entry16

赤と白の幸福(さいごのうた)

 真っ白な部屋の中で
 あなたは星へ向かったわ

 わたしは
 真っ白な部屋の中で
 始まりのうたをうたってた

 あなたが星につく頃
 わたしもあなたを追いかける

 あなたの
 真っ白な部屋の中に
 赤い夕日が射したとき

 あなたの影は
 真っ赤に染まっていた

 わたしの
 真っ赤に染まった腕に
 深紅の涙が流れて

 きっと朝には
 わたしも星へ行けるはず

 わたしは
 真っ赤な部屋の中で
 さいごのうたをうたってる


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Entry17

夏の部屋

天井のしみを数え、
窓からの光を浴び、
カーテン越しの風を感じる。

布団の中のぬくもりと、
枕の上のわずかな寝息。

きみはここにいる。
夢の中で、走っているのか。
繋がれてる手を
きみは離さない。

大丈夫。
ぼくはここにいるよ。


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Entry18

永遠

鮮やかな青紫の羽根を
ゆっくりと羽ばたかせながら
鏡のような水面の上を蝶が飛ぶ
きっとあの軌跡には
永遠という言葉の意味を読み解く
複雑な方程式が隠されているのだろう
蝶が羽ばたくたびに
私の傍らを流れてゆく時間が
ほんの少しだけ揺らぐ
気のせいだと解ってはいても
でもそれは
とても素敵な時間だった


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Entry19

なつやすみのにっき

8月15日 木ようび

おじいちゃんは
おばあちゃんの
おそうしきの
日から
ちょっとぼけちゃったみたいで

えんがわでニコニコと
しろくてまるい
かけらを
ぬのきれでみがいている

おとうさんもおかあさんも
そのことを
はなそうとしない

わたしはあのしろくて
まるいかけらは
きっと

ごし     ごし

   ごし            ごし
          ごし
ごし

おかあさんが、
けしごむで

けしちゃった

あのかけらは
なにか、って

かいちゃだめなんだ、って
せんせい、ごめんなさい。


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Entry20

個人的日常

洗濯物が
風に揺られて
チークダンスを踊る

日がな一日ぶらつくだけの
非生産的な日曜日
とりあえずまあ、音楽でもかけようか

いつのまにか眠っていたらしい
マクラ代わりの参考書
シミのついたページを見て思わず苦笑いをした

いきつけのイタ飯屋に行き
いつものボンゴレを注文する
つくづく日本人だ思う

誰とも口をきかない日がある
いつになくじょう舌なときもある
人間、器用には生きられないもんだねぇ

禁煙を決意して
一時間がたった
灰皿にはいつもどおり灰が積もっていた

穴のあいたジーパン
弦が切れたままのギター
中途半端な俺

君からのメールを読んだ
文字が踊っているように見えた
元気を分けてもらったような気がした


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Entry22

ヨケマキルジゴク

前書き
「あなたは首を絞められた事がありますか?
僕はあります。」

本編
体には発疹で日中には蝦蛄(しゃこ)の泳ぐとこ見たかんなあ
気味が悪いよお

隣人のバイクの鍵穴にセメダイン入れて脅迫ハガキ一枚分の復讐成功せり

あそこの壁なあ兵隊さんの敬礼しとるとこみたいなシミ着いてんなあ
見えない見えない見えない見えない

狂った彼女は旧商店街を学生かき分け上から下まで走り抜けたのだ
追わない追わない疲れるもん

手紙を捨てられるくらいはかまわないのだよ写真をやぶられるくらいは
女の服が掛けてある部屋で別の女とセックスするくらいだからその程度の人間だから

学生の夜の花火に迷惑し警察に電話したのだけれどそしていっしょうけんめい説明し
たのだけれど来てくれると言ったのだけれど言った気がしたのだけれど足音は聞こえ
たのだけれど聞こえた気がしたのだけれど来てくれずに次の朝仕方なくその人の家の
ドアに「夜の花火は迷惑です他でやって下さい」とはり紙をはったのだけれど何か心
が晴れませんでした

あの人僕の精液をビンに入れて持ち帰って
オレンジジュースに入れて飲んだんだってえ
君はどうするう?飲めるう?
なに飲めない?そっかあ
え?なに?
うん。そうそう。自分の罪を自己主張に転化してるだけなんだよねえ
今日からボク自分の罪を自己主張に転化しますボク
ボクこれで安心して眠れますボク

狂人がアパートの僕ちんの部屋に入り込んできてのお
御飯茶碗やらファックスやらカーテンレールやらぶち壊しよってん
こわかったです。ええ。
でもほんとにこわかったのは
次の日の夜アパートの前に誰かが立っていて
またあいつが来たのかと思った時
結局となりの部屋の人の友達がその人を訪ねて来たのだけど
いなかったので外でタバコを吸って待っていただけなのでした

あのですねえ今回の生理中のセックス強要事件においてですねえ
人間性のすべてをですよ否定されるなんて事があっても
よいのでしょうかねえあなたにお聞きしたい
恥ずかしかったってあんたもっと恥ずかしい事いっぱいしてきてますがな
ですがそれは私の身勝手な論理なのです
この事件においてのみならず
私の基本的な物事の取り組み方においての大きな問題なのです
1996年8月某日

エレベ〜タ〜エレベ〜タ〜怖いのは〜エレベ〜タ〜
イツノヒカ〜ソレヲ〜よろこびに〜かえられる〜
装置が出来て僕を救ってもらいたいです

今から自殺しますってわざわざ電話しないでくださいよお
お金があまりないので御葬式は行きませんよオ
服も無いし
え?じゃあ土曜日の約束は?
死体とセックスするの嫌ですよオ

ぼうやたちぼうやたちうちの前で大声出したり狂人のふりするのおやめなさいぼうや
たちぼうやたちその狂人のふりが伝染しそうですぼうやたち
伝染してしまいますぼうやたち

なに?私は人を差別しませンだって?
ちょっと待ってそれ
笑わせないで
あなたはセックスしないの?
するでしょ?
セックスイコール差別
OK?

いやあアパートが線路のとなりに建ってましてですねえ
電車の音がうるさくてうるさくてですねえ
房総の田舎町に引越したんですが今度は耳鳴りがしてうるさくてうるさくてですねえ
結局また都会に戻ってきたのですがもう耳鳴りはしなかったです はい
してるんだけど聞こえてないだけなんだよねえ


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Entry23

 私 


私は物思いに耽るのが好きな二十歳の女性であり、自分で言うのもなんだけど、なか
なかの美人だと思います。

私はよく麦わら帽子(農作業のおじいさんが被るような)を被り、お庭のベンチにち
ょこんと座って、最近吸い始めたタバコを吹かしています。

私の母がタバコの煙を嫌うので、お外でしかタバコを吸うことが出来ない私なのだけ
ども、
この間 庭に10センチ位の小さい穴を掘ってタバコのお墓を作りました。
いつもタバコを吸い終えるとその穴に吸殻を放り込んで埋葬するので、穴の中は沢山
のタバコの亡骸でいっぱいです。

私は最近、この詩人バトルに投稿するのだけども、一度も投票した事がないという不
束者です。
しかも、この「不束者」と言う言葉の意味を調べるために、タンスの奥にしまってあ
る辞書を 今、慌てて探すような人なのです。

こんな私ではあるけれど、

私は、こんな私の事が結構好きです。


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Entry24

言葉

忘れられない言葉がある

“恋人みたいだね”

君は何ともなく言った

二人だけの時間 二人だけの空間

あの時、あの瞬間だけ

全ては二人だけのものでした

忘れられない言葉がある

万物は流動的です

それでも、忘れられない言葉がある


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Entry25

風祀り

 やまぬ風
 やまれてならぬは大気の微動
 誰が為にそよぐのか
 誰とて知らぬ風祀り

風に散り
風にそよぐは梅の花弁
その花びらは微紅なりて
ゆく風に微香を乗せる
其の微紅なる風は春に吹く

風に舞い
風とそよぐは柳の葉
その薄葉の夜の舞いは
ゆく人の頬を撫で嬉々とする
悪戯なりける其の風は夏に吹く

 風はゆく
 止まる事無く彼方まで
 ひたすらに
 ただひたすらに生きるが命は
 風の如く

風が奏で
風とそよぐは秋桜の色
その足元より虫々が
薄紅花弁に恋語る
想いを秘めし其の風は秋に吹く

風が呼び
風とそよぐは紅き烏瓜
その軽き身を枝に繋げ
振り落とされぬと懸命なる
命を削りし其の風は冬に吹く

 風と戯れ
 命を凌ぎし草花も
 時の流れに戯れることもできず
 ただ時がままに朽ちていくのみ


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Entry26

ミカラデルコビ


ヲンナウルコビ
 ヲトコホコロビ
  アイハハビコリ
   ウメラレヌヒビ

   イキヲツクタビ
    シトヤカニサケビ
      シビレユクユビ
       スベルヨニハコビ

       アイノトモシビ

       ヲンナノヨロコビ


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Entry27

依存

小さいころから、1人で生きてきた。
だれのちからもかりずに、すくすくと育った。
だれかが言った。「いい子だね」

はたちになったわたしは、依存する大人になった。
男の身体にふれていたかった。

にじゅういちになって、大事な人ができた。
かれをあいしていたし、いまでもあいしている。
彼もおなじようにあいしてくれているだろう。
けど、
日々の生活は、ぬるま湯につかっているみたいだった。

そんな中、一本の電話があった。
いちねんまえの自分に、すこしだけもどりたかった。
飢えていくからだ
焦燥感
あのころ大事だった人に抱かれた。
「いい子だね」
彼は言った。

今、大事な人にこころをあずけ、
あのころ大事だった人にからだをあずけ、
依存したわたしのからだは
やっぱりいまも1人だ。


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Entry28

いちごの時間

いちごのじかんは やさしい時間
ひとくち ぽいっとほお張れば
じゅう、と染み出るやわらかな味
わたしは いちごのじかんが大好き

いちごのじかんは たのしい時間
もひとつ ぽいっとほお張れば
ふわあぁと広がるやすらかな香り
わたしは いちごのじかんが大好き

わたしは いちごのじかんが だいすき


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Entry29

月見草の追憶

月見草の揺れる丘
夜空を眺め たくさん話をしたね
その日あったこと お互いの夢
何度も聞いた未来のこと…
一生懸命話すあなたが
キラキラ輝く瞳が
とても好きで

あなたがいればそれだけでいい

そう思っていたあの頃

駆け足で時間は過ぎ行き
思い出の丘はもうどこにもなくて…
おぼろげな記憶の中
あなたを思い出させるように
一輪の月見草が
少ししおれた月見草が
ゆらりゆらりと揺れていた


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Entry30

足萎えの朝

ウダラァ シカトしときゃぁよかった
朝っぱなからカンユウだ
信じゃしねえョ
見なよゥ この面
三日酔い
勝手に足が折れやァな
体の重さにたえかねりゃ
ツチクレかぶって懺悔だろうよ
立たねえのサ  足がぁよ
あんたもそだろう ばあさんよ

ああん オテントサマじゃたりねえで
他ぁ信じても足りねえで
それで俺とこくんだろう
二つよりも三つ 三つよりも四つ
あんたも足萎え そなんだろうよゥ

食ったもんにまみれて 目がさめて
しかたねえ 立たねんだから

陰気くせ
勺一丁
肩抱かせてクりゃ
別になんでもかまわねぇ
ネエネエチャンて呼んでやるさ

別にそのまま ひっくり返っても
イヒヒィイイイイイ気持ち良いだろサ

行け もう
オラァ さっさと行け
もう 体が重いから 蹴りとばす前に行きやがれ


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Entry31

だいじなことば

だいじなことば

あなたに贈るだいじなことば

あなたに贈ることばだから

私のすべてがつまってる


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Entry32

準備はオーケィ?

うしろむいてばっかり
下むいてばっかり
そんなだいっきらいなあたしは
めためたになるまでけっとばして
ぺったんこになるまでふんづけて
ぐしゃぐしゃ丸めて昨日へぽーん!
あースッキリした。
バイバイ、あたし。
あんたなんか、二度と会いたくないわ

さて、
あたしの行く道はどうやら険しいらしい
だからこんなふりふりひらひらのスカートは
邪魔くさくってしょうがない
スカートはゴミ箱へぽいっ
ショートパンツにはきかえよう
こんなに足むきだしてたら
ズタズタ 傷だらけになっちゃうかも
ま、いーでしょ
動きやすいのがいちばん
傷なんてツバつけときゃ治るわ

獣道ってことばがあるけれど
あたしの行く道はどうやら獣も通れないらしい
ふーん、そう。
だから何だって言うの?
ちょっとぐらいの草なら踏み倒してやるわ
背より高い草だってかきわけて
なんとしてでも進んでやる
あたしはあたしの道を
何があったって突き進んでやるんだから

さあ、
準備はオーケィ?


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Entry33

アリなんて居ませんよ夏

が通り過ぎていくその傍らで
アリが水を汲んでいる

もう良いのだ、そう言いたげな太陽の下で
アリが水を汲んでいる

それは良く見ると錯覚で
アリは既にひからびていた
他の蟻たちの行列がそれを運ぶその前に、冗談みたいな風が吹いて
高くそれを飛ばしていった

確かに君の言うとおりに
街は、ビルや駐車場やサクラダファミリアは
ひからびてしまった虫のようだ
きっともうすぐ風が吹いて
全部悪い冗談だった、と吹き飛ばされてしまうのだ

だから
だから風の行方へ私は問うてみた
虫はいつか蝶に成るのか
醜いアヒルは果たして白鳥なのか
そんなふうに問うてみた

風の中のアリを私は見失ってしまった
黒い小さな塊は、空中で開き、飛び去ったようにも見え
バラバラに砕けてしまったようにも見えた

私は公園で水を飲んだ

ぬるい水は私に余計に汗をかかせ
それでまた、涼しくなりもした


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Entry34

磁石

磁石って 黒い石
見た目はおんなじだけど
じつは ちがうんだ
仮に ノボルくん と スミエちゃん
って名前にしとこうか

このふたりはとても仲がいいんだ
だんだんね こうやって ふたりを 近づけて いく と
ほら くっついちゃうでしょ
ふたりの間を邪魔しようとして 指で さえ ぎって も
ほら くっついちゃうんだ

どうしてくっつのかって?
それを説明するには
宇宙のなりたちから話さなきゃいなけないなあ
うふふ つまり わからないってこと

このふたりの間には 何があるんだろうね
何があると思う?


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Entry35

夏なんて

夏なんて嫌い
 知らぬ間に 蝉が黙ってしまうから

夏なんて嫌い
 夜 ふいに涼しい風が吹くから

夏なんて嫌い
 気がつけば いってしまうから

夏なんて大嫌い


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Entry36

秋夏(Syu-Ka)

もう 暑い夏は私から
消えていく予定だったのに
部屋を出たら揺れる景色
まだまだ夏は終わらない

そんな中 優しげに
生ぬるい 秋風が

でも今は 迷わずに
コンビニで ソフト買う

桜吹雪 椿の花
本当にココで見たのかな?
車にチェーン クリスマスイヴ
本当にちゃんと来るのかな?

そこに流れ雲

もう 少しだけ夕焼けが
秋らしい色をしてきたよ
テレビ点けたらナイター中継
まだまだ暑い季節かな


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Entry37

はやっ(゜ロ゜ノ)ノまだ8月の半ばだよ

コンビニが
肉まん売り出す
もう秋かぁ ( ゜-゜)トオイメ


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Entry38

欲情

洗面器の水が 

すごくしつこく 誘ってくるから

おもいきり息をすいこんで

あたしは思わず いきそうになる

ねえ

向こう側の世界が

見たいの


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Entry39

夜、空、星、まんげきょう

みえぬ夜空はみあげぬと
星のふる夜とかさねては
まぶたの裏にまんげきょう
とらぬ世界の皮ざんよう
さみだれ多くこぼれても
星はみえぬとまんげきょう

空のなみだはかかえぬと
みたまよ泣くな愛するな
もしも世界にむすあれば
えもいわれぬと母がいう
あめはふりふり玉はかち
みたまよ玉よ泣くことは

天にましますわれらがかみよ
空からぴかと落ちられも
空からずどとうちられも
泣きたくないよお父ちゃん
死にたくないよお母ちゃん
天にましますわれらがかみよ

みえぬ夜空をみあげても
何もみえぬとだれがいう
空にめされた星ぼしが
雲のむこうにあふれだし
夜をたちまち昼にかえ
ぼくらをそっとかかえこむ

ぼくらをそっと


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Entry40

あんなにも遠い、
目も眩む数字男へ向けて今晩私は電波を飛ばすのだ

炎の内側の青く透明な部分のように
身体が焼けついて眠れない
否定も肯定もできず
確信ばかりが大きくなる一方で
私の中が大変なことになっている
ふすま越し、隣の部屋、あの人が寝息をたてている

勘違いしてはいけない、
勘違いしてはいけない
砂を吐くように呟いては
じっとり汗ばんだシーツの上
数え切れぬほど寝返りうって
何度も何度も、
他ならぬ自分に云い聞かせている
たしかに連日記録的な熱帯夜が続いていると云う
でもそんなのは全く関係ないこと、
誰よりも気づいている

午前3時の自動販売機
コッカコオラで
かきむしった頭を冷やす
水銀灯の夜

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