Entry No. | 作者 | 題名 |
---|---|---|
1 | さゆり | 次のひとへ |
2 | 五月原華弥 | Your xxx |
3 | クマクマ | 僕がいる |
4 | 鹿嶋里緒 | 腰掛ける人 |
5 | 清田拓郎 | 「平和」というパズル |
6 | ヨケマキル | 5ブンノ1カゼナイフ |
7 | 蜜 | 5月9日22時。 |
8 | 加賀 椿 | 傘よりも |
9 | 今井将 | 言葉の牢獄 |
10 | 東郷 | あの日のブルース |
11 | 有機機械 | その場所 |
14 | 本作品の公開は終了しました | |
13 | にーつ | 青 |
14 | 本作品の公開は終了しました | |
15 | 美禰子 | 回復 |
16 | 花 | そしてさようなら。 |
17 | 佐藤yuupopic | 永く久しく像を結ぶと、好い |
18 | 木葉一刀(コバカズト) | 太陽光の杜 |
19 | 棗樹 | 雪中酒 |
20 | 林薮 煌 | 雪 |
21 | フウソウ アカネ | あなたを 知らなければいい |
22 | 小松知世 | 幻想雪 |
23 | ctt | 地上 |
24 | 橘内 潤 | 『レンブラント』 |
25 | 凛 | ために |
26 | YamaRyoh | 初夢 |
27 | 七威 | 無題 |
28 | haruwo | 十四行詩 |
29 | 植木 | ストーブ |
30 | 日向さち | アンモニアの海 |
31 | ぶるぶる☆どっぐちゃん | ガンズアンドローゼス |
Entry1
次のひとへ
さゆり
行数(文字数)18
私は私だ
と、思う
持ち合わせない
美しさや才気を
羨んだとて
なんになろう
私は
祖母の祖母の
そのまた祖母の
幾世代にもわたる
祈りと願いを受け継いだ
かけがえのない
私は私だ
と、思う
いつかは
次のひとへ手渡す
私がそうして
貰ったように
Entry2
Your xxx
五月原華弥
http://www7.ocn.ne.jp/~kakuu/ 華空羽 -Imagenary Poet-
行数(文字数)18
あなたのキスを受け止めて
ひとつひとつ数えましょう
星の数より多くなるまで
そっとそっと唇を重ねて
永遠を誓うと簡単に言うあなたを
ときどき疎ましく感じてしまうわたしは
あなたを愛し切れていないから?
好きだ好きだとよく呟くあなたを
ときどき嫌になってしまうわたしは
あなたを心から好きではないから?
全てを否定する
あなたのキスを受け止めるのは
もっともっとあなたを愛するため
星の数より好きになるまで
ずっとずっと唇を重ねましょう
だけど
永遠を簡単には誓わない
好きだとはめったに呟かない
Entry3
僕がいる
クマクマ
行数(文字数)13
君はどこで泣いてるの?
今日も独りで泣くんだろう?
君は独りで抱え込む、孤独も、涙も、哀しみも。
それは君が強いから?
それは君が弱いから。
泣く場所が、無いというのは辛いよね。
泣き顔を、見せれる相手がいないのは、
とっても、とっても寂しいね。
それでも君は抱え込む。
独りで背負って泣いている。
僕の胸で泣いてくれ。
僕に泣き顔見せてくれ。
僕は逃げずに、包み込む。
悲しむ君を抱き締める。
Entry4
腰掛ける人
鹿嶋里緒
http://etc2.freespace.jp/hituzen/ 必然
行数(文字数)136
子供になれない大人
大人に見えない大人
倒れた椅子に
倒れたまま
腰掛ける
子供のような大人
大人らしい大人
倒れた椅子を
起こして
腰掛ける
子供になりたい大人
大人になってしまった大人
倒れた椅子を
蹴り飛ばし
床に腰掛ける
Entry5
「平和」というパズル
清田拓郎
http://members.aol.com/takuroworld/home.html タクロウワールド
行数(文字数)8
パズルのピース(PIECE)は一つ一つ、色も形も並べられる場所も違う
けれど、それらがうまく組み合わされたとき、ある1つの絵が完成する
・・・それが、平和(PEACE)だ
だからこそ、無駄なピース(PIECE)などなく、すべてが必要といえる
お互いに励まし合い、手を取り合えば、やがてはそれが平和(PEACE)につながる
とても小さなピース(PIECE)に見える僕らは、実は「最大限の力」を秘めているのだ
手と手をつなぎ、この世界(ほし)を1つに結ぼう
僕は、そういう日が来るのを信じている
Entry6
5ブンノ1カゼナイフ
ヨケマキル
http://www5.ocn.ne.jp/~yoke/ ハサミ
行数(文字数)20
酸素5分の1 テレグラムにカーブ
極上やい刃つれつれてテルルテルル
ひゅうと吹く日でありまして
ボクのほほぼね裂けました
風はひよるんキルひよるん
ひよるひよるんキルひよるん
目はいらぬンか - いるですよ
耳はいらぬンか - いるですよ
ぶったぎれたまたちゃんぎれたびゃんぎれた
イルッチュートルンガァ叫んだですよ
ほんとこわいの薄昼(うすひる)のしらしら音
しーらしらしらって音するですよ
町が逆さん見えよって
こんどぁのどぼね裂けまして
ナイフひよるんキルひよるん
ひよるひよるんキルひよるん
唖唖盲盲 順順と巡巡と痛い痛い
白らむ白らむで見え見えず
さささあさあと聞こ聞こえず
描出される盲唖なのです
Entry7
5月9日22時。
蜜
行数(文字数)24
携帯の画面
君のTEL番
6分眺めてた
かけようか迷って
ようやく決心した
気がついたら
祈るように握り締めてた
2年間の付き合いのこの携帯
呼び出し音が
すごく長く感じて
お腹が痛くなって
携帯の向こうから
君の元気な声が聞こえたとき
なんだかすごいホッとして
僕にとっては
こんなに勇気がいるんだよ
君は知らないだろうけど
プツンって切ったとき
不思議と手が震えたりして
今もまだ震えてたりして
Entry8
傘よりも
加賀 椿
http://members5.tsukaeru.net/ryna/ 朝凪村
行数(文字数)28
重く暗い灰色の 煙が空にたちこめる
やがてそこからは大粒の
銀の水滴が降ってくる
歩いて来た私の方を見ながら
数人の男子が 何か言い合っている
傘を手にして
私の手にあるのは
小さなプールかばん
すでに濡れた髪 冷えた身体
小さいタオルを取り出し
私は足を踏み出した
髪をふくために持って来た 小さなタオル
それを私は
頭にではなく 口元へ持っていった
紅い炎 濃い煙
あの時
上から降り注いでいたのは 確かに水だった
誰かが私を抱え ハンカチをマスクにして
青い空のもとに 連れて行ってくれた
水は好きだ ただ 寒い
うつむいて タオルに顔をうずめる
それは湿っても 私の息ですぐに乾く
柔らかい布の感触に 安心感を覚え
私は帰る
誰もいない家へ
傘よりも タオル
なおそうとも思わない
小さなトラウマ
Entry9
言葉の牢獄
今井将
http://www.asahi-net.or.jp/~bq5k-imi/ THE NOT FOUND
行数(文字数)9
血と肉よ骨よ 高級菓子から産まれた糞は世界が家の勇者。お前だ。
普遍の片割れや 未来型と詰まらない奇跡で動物園を創れ。お前だ。
石になった同一性 健康とトマトの旅にでも旅立つがよい。お前だ。
雑色の中に溶け入り 左右対称の思出を殺せ殺せ殺せ殺せ。お前だ。
サラダと回れや回れや 孤独と凍り付いた夕飯の仕度だよ。お前だ。
僕を売って子供になあれ 僕を引き千切って子供になあれ。お前だ。
楽しい嬉しい淋しい苦しい なんだかとてもとても不安定。お前だ。
駆け回りながら老婆になあれ 服を着替えて老婆になあれ。お前だ。
カゴメさんや僕のカゴメさんや 籠に入ってるのはだあれ?お前だ。
Entry10
あの日のブルース
東郷
行数(文字数)37
あんな時代でも
私はブルースを、歌っていました。
あの日も、いつものように
舞台の上から見えたのは
少年のようなあどけなさの
若い若い、特攻兵達。
こんな所に来て良いのかしら
怒られや、しないのかしら
そんな気持ちで
歌っていたのを、憶えています。
すると、歌の途中で
男が彼らに
何かを、告げに来たのです。
それを聞いた彼らは
うなずき立ち上がり
にっこり笑って、私に頭を下げました。
彼らが出て行っても
私は歌わなくてはなりません。
けれどもどうしたって
涙は溢れて、歌えないのです。
次の日も、私は同じ場所で
同じブルースを、歌いました。
この戦いが終わるまで、
そしてその先も、
私は歌を、歌うでしょう。
だけど
あの日の彼らはもう、
どこにも、いません。
Entry11
その場所
有機機械
http://www.d2.dion.ne.jp/~syuki ORGANIC MACHINE
行数(文字数)14
都会の人込みの中から夜空を見上げる
そこに浮かぶのは
大きな月
円い月
その表面の様子まではっきりと見える
そしてそこは人類が勇気と叡智を持って辿り着きしるしを残した
確かにこの世界と一続きの場所
僕が今確かに目にすることができ
手の届きそうなその場所は
遠く離れた僕のふるさとよりもずっと近いように思えるけど
僕は重力に捕われて
そこには辿り着けない
僕は人の流れに抗いながら
そっと涙を流す
Entry13
青
にーつ
http://k.excite.co.jp/hp/u/shungo252 路上に咲く華
行数(文字数)198
誰も知らない遠くの海
限りなく続く…。
崖の上で
棒立ちのピエロ
空と海の境界線を
眺めていた。
こんな晴天に恵まれても
悲しみがつきまとう
僕は肌色なんだ。
僕は…。
空気との一体化
この青との融合
星になる…
できっこない…。
だから悲しいんだ
なにか足りないんだ
孤独なんだ
繋がってないんだ…
こんな時
波音は僕を包むよ
優しく包むよ
存在に
意味なんか求めないで
ここで生まれて
ここで消えるんだ
すべてと
一緒なんだから
僕は
実は
青いんだ
Entry15
回復
美禰子
行数(文字数)19
浮かぶお皿は脆く儚げ
映す灯りは暖炉の温もり
白ごまも黄ごまも黒ごまも
お行儀よく座ってる
あの子が言ってた
「何も見えない。暗くて寒くて、私はなくなる」
涙を流して縮こまって
いつかはココまでこれるよね?
私は笑った。 嬉しかったの
私は止まった。 振り返るため
私は知った。
白も黄も黒も、ホントは何もないんだって。
大きな大きな。 大きな大きな・・・
Entry16
そしてさようなら。
花
行数(文字数)21
すれちがい今は
遠くに在る
あの人
あの人
あの人も。
しあわせでいると願って
しあわせであると信じて
見えなくても
知らなくても
そう信じて。
しあわせでいてね。
しあわせでいようね。
しあわせでいるね。
ありがとうありがとうありがとうありがとう
ありがとうありがとうありがとうありがとう
心の底から思えるように
何よりも望むのは
今あなたが
しあわせと云って笑っていること。
Entry17
永く久しく像を結ぶと、好い
佐藤yuupopic
行数(文字数)58
わたし 絶望的に 写真が下手
戻りの現像袋 開けて またうちのめされる
学校で習ったこと
ニ限目の暗室 薄暗さ オレンジの明かり 現像液 酸っぱい匂い
なんの役にも立たない
せめて
わたしの目
カメラに レンズに なれば好い
永く久しく像を結ぶと、好いもの
それは
朝みたいな夕方の空
こんな処に豆腐屋 あったんだ
ぶらさげたビニール袋 したたる水滴
ガードレール 並んで腰かけて
手づかみで もっちり 分けて食べる
舌 指 かじかむ
手袋 片方 ちょうだい
塀の上 三毛猫の毛づや 声かけても無視
垣根のてっぺん 朱い花
手 伸ばして こっそりむしる
あなたの髪に挿す ちっとも似合わない
マフラーにひそめた襟
7時から11時までのコンビニエンスストア
熱い缶コーヒー じゃなくてバニラアイス 銀色の包み紙
息 ますます白く
遊具のない公園 壁の落書きの 焼けたするめ
予想外 雨が 来る
合図みたいに
名も知らぬ鳥 いっせいに羽ばたく
逃げ入った ぬるい 湿った 温室
くもった 窓 似顔絵 人差し指 ちっとも似てない
通り雨 あがる
工事中 アスファルト ほんのり暖かい
スニーカーの中 つま先 ゆるむ
さっきの三毛猫 声をかけても無視
休まず歩いてゆく
踏み切り かんかん かこん
昼と夜が交代する 町 ぼんやりにじむ
きらきら きら きら
レールを はねる光
あなたのまつげに ともった光
うんと ささやかなもの
しあわせ に どうしても慣れない
急に かなしくなる
ちょっと 泣いてしまう
今日がずっと
ずっと続くなら
好きとか 嫌いとか そう云うことじゃなくて
ああ
残せるものなら
せめて
せめて
わたしの目
Entry18
太陽光の杜
木葉一刀(コバカズト)
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/7952/ 鉱石のRevolution
行数(文字数)47
灰色の鏡が歪む
一滴の雨水に
また降り出した
煩わしくて切っていたケータイ
電波が俺を探している
俺の縛るものはもう無い
電波のネットに
がんじがらめになんて
されはしない
時間が経つにつれ
少しだけ涼しくなった首周り
赤い紐が灰色の鏡に沈んでいる
いつの間にか差しはじめた光
今はこの微光も眩しい虹
幾筋もの光の柱
太陽光の杜
いつか読んだ寓話のように
あの杜の中に或いは先に
その名の楽園があるのなら
今すぐに歩き出したい
タバコに火を付ける
ケータイを開き
鏡の中に投げ捨てる
フィルターだけのタバコが
ヒンジの上
ケータイに落ちた
1cmの踵で鏡ごと踏み潰す
スーツの裾が濡れても
気にしない
晴れて束縛から抜け出した俺は
虹に背を向けて太陽光の杜へ
辿り着けないと分かっていても
歩き出した
割れた鏡に取り込まれた
沈黙したケータイたちに
一瞥をくれてから
Entry19
雪中酒
棗樹
行数(文字数)13
干した肉を囓り
燻した鱒を飲み下し
醍醐を舌に載せ
離れていった者 出会えた者
相見ることもなく逝く者を思い
柵(しがらみ)を肴に
咳(しわぶき)を友に
酒と水の混じることを厭った
亡父の言に背き
盃に雪を掬い入れる
仄かに香る
凍れる酒を飲み
濁る盃を透かし見る
Entry20
雪
林薮 煌
http://nigiwai.net/kagaya/ Light of Moon
行数(文字数)27
庭の隅にしゃがみこんでいる 一匹の猫
その背中は 何も言わない
頭上は濁った灰色の雲
足下は真っ白な雪
降り注ぐ粉雪にまみれ
彼女は一人 涙を流す
ただそこに立って 嗚咽の声を漏らさずに
人形のように 何にも反応を示さない
「ごめんね……」
その一言が 聞こえたと思った瞬間
彼女は雪の上に倒れ
そのまま 白く なっていった
Entry21
あなたを 知らなければいい
フウソウ アカネ
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/5009/ 少女的扇動者
行数(文字数)9
あなたが誰かにしか見せない笑顔を 知らなければいい
あなたが誰かをいとおしく思っているなんて知らなければいい
あなたが誰かにキスするなんて 知らなければいい
あなたが誰かを抱くなんて 知らなければいい
あなたが誰かに想いを寄せているなんて 知らなければいい
あなたが 今 幸せに暮らしている それだけを 知っていればいい
私があなたを 好きでなければいい
あなたが幸せでいてくれればいい
全てが今のままでいい
Entry22
幻想雪
小松知世
行数(文字数)51
わあ、ちょっと。
雪が降ってきたよ。
しかも大雪。
すごい雪。
これは絶対に大雪警報だね。
そんな感じで外を眺めて、
そしたら誰かが雪の中で踊ってた。
それはもう、
見事なくらいに夢中になって、
誰も通らない道路の真ん中で、
嬉しそうにくるくると回ってた。
ねえ、ちょっと。
あそこで誰かが踊ってるよ。
女の子。
私と同じ年くらいの。
何だかちょっとおかしいんじゃない?
そう言って振り返ったら、
雪だけが私を見つめていた。
そうだったんだ。
踊ってたのは私。
私自身だったんだ。
くるくる回って嬉しそうに、
でもそれは私だったんだ。
無邪気な雪が映し出した幻想みたい。
たくさんの雪は不思議をくれる。
空から舞い降りただけなのに、
私の心をほんの少しだけど解放してくれた。
そうだよ。
私、踊りたかったんだ。
心を悩ませる色んな出来事から逃れたくて。
そんな私を自由にしてくれた雪は、
悩みと一緒に溶けてくみたい。
雪は私に幻想と勇気をくれた。
だから降り止む前に飛び出さなくちゃ。
そして真っ直ぐ歩き出すの。
自分を見失わないためにも。
「心、軽くなった?」って、
雪に聞かれたら、
きっと大きく頷くわ。
そして全てが溶けてしまう前に、
両手を広げて雪を受け止める。
悩みは自分で解消しなくちゃね。
Entry23
地上
ctt
行数(文字数)26
神様はいなくても生きていけるのだ
地に生える草の緑や枯れかけた茶のあばたや
風や光がその上で踊る姿は
誰も再現できないよう作り上げられた精妙な細工なのだ
生き物が誰にも教えられず命を繋ごうとするように
今このときも幾億の細胞が体液を呼吸するように
僕が君の髪をなで頬を寄せそれでも足りず甘えるのは
信じるものが僅かでも耐えられるからなのだ
人の心が通じ合うのは生まれてきた幸福の証なのだ
その証を立てるために憎みあうのもまた摂理なのだ
それを不幸と思うときに天上に助けを求めてはいけない
奪い合う時には奪われる者が誰もいないことに気づくがいい
もとからあるものは全ていまでも等量にそこにあるのだ
ただそれを収める入れ物が変わるだけなのだ
今は砕け散ったものを集めるまでもない
真実はつねに可聴的な倍音として地上を満たす
それを聞くためには立ち止まり
耳を澄まし
自分のものではない音を聞こう
Entry24
『レンブラント』
橘内 潤
行数(文字数)54
僕はね、絵が好きなんだ。
「あら、なんで?」
この白いキャンパス。君にはこれがなにに見える?
「……なにもない、真白な布ね」
そう、真白だ。僕はここに絵を描く。どんな絵だってかける。どんな絵でもいい――僕が描く、僕だけの絵を、僕は描くんだ。
「そうね。あなたのいうとおり、真白な布はいいわね。びりびりに破いて火にくべてやったら、きっと美しく燃えるでしょうからね」
そうだろうね。そうしたら僕は、また新しいキャンパスに絵を描こう。
「じゃあ、あたしはそっちの布も燃やしてあげる。そうやって、世界中の布をぜぇんぶ、燃やしてあげる」
そうしたら僕は、真白な岩に絵を描こう。
「あたしは、世界中の岩を粉雪みたいに砕いてあげる」
そうしたら僕は、真白な氷に絵を描こう。
「あたしは、世界中の氷を海に溶かしてあげる」
「あなたの描くものぜぇんぶ、あたしが消してあげる」
そうしたら僕は、真白な君の肌に絵を描こう。僕だけの絵を、君に描こう。
「あたしは――あたしは、あたしを消してあげる。世界中であなただけ、残してあげる」
そうしたら僕は、なにもない真白な世界に絵を描こう。僕だけの世界を描こう。僕だけの君がいる、世界を描こう。
「生まれたあたしは、またこうやって、あなただけをとり残していくんでしょうね」
ああ、きっとそうだろうね。
「……ねえ、なんで絵を描くの?」
僕はね、絵が好きなんだ。
Entry25
ために
凛
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Shikibu/4054/index.html as a crystal
行数(文字数)14
鼻水が止まらないのね
紅茶がのどにいいって聞いたから飲んでるのね
とりあえず薬は飲んだのね
明日 友達と外出する。
落ち込んでるみたいだから
美味しいもの食べようって
誘ったのは、私。
きっと味なんてわからない
けれど
行くしかないんだ
落ち込んだ友達の気持ち
味わうしかないんだ
Entry26
初夢
YamaRyoh
http://presents-yr.hp.infoseek.co.jp やまりょう波紙報聞所
行数(文字数)28
あなたは今年
どんな初夢を見ましたか?
楽しい夢 哀しい夢
嬉しい夢 儚い夢…
私としては
願わくば
貴方と過ごす夢が見たい
それはそれとて
夢物語
現実にはない
虚空の空想
正夢になるような夢ならば
どうせ良い事ない夢の筈
これは運命の仕業か
それとも不景気の為せる技
とにかくそれでも少しでも
「いい事あれば」と願っているのは
夢が夢とて為せる技
今年もいい年でありますように
心からお願いしています
Entry27
無題
七威
行数(文字数)10
詩を書けばいい
詩を声に出して読めばいい
幻想や戯れ言だった言葉たちが
あなたにやさしく微笑みかけて
いつでも少しだけ力をかしてくれる
Entry28
十四行詩
haruwo
行数(文字数)14
君と身体を離した時に持っていかれた何処かの部品のせいで、
僕の身体はバラバラに散らばってしまいそう。
本当はもう、1メートルだってまともに歩けやしないんだ。
君のために頑張っているよと言ったら、
君は面倒くさい気持ちになるかもしれないけど、
そうじゃないと僕はクタクタになってしまいそうなんだ。
夢の中で月へ旅行した時の話をもう一度聞かせて。
最近はどんな仕事を任されているのか話して欲しい。
そうじゃないと、
本当はもう、1メートルだってまともに歩けやしないんだ。
大したことじゃないと切り捨てていったものがたくさんあったけど、
それ以上大切なものなんてこの世にはないことに気付いた。
外はどんどん寒くなって、空がどんな形をしているのかも分からない。
君の付けていた香水の匂いだけを頼りに、僕は通りを歩いている。
Entry29
ストーブ
植木
行数(文字数)13
「つえ」になり
「うし」になり
「との」になり
「くろ」になり
「ひる」になり
「ね」 になって
「ぬ」 になって
「め」 になって
「あ」 になって
「を」 になって
「**」になった
Entry30
アンモニアの海
日向さち
行数(文字数)21
まるで
刺激臭を放つアンモニアの海だ
飲み干そうというのなら無理に止めることはしないが
弱塩基であるからと
下手に気を許してはならない
奴の心は腐りきっている
深入りは禁物だ
性善説を信じるというが
奴はもう生まれた時の名残など全て捨ててしまっている
腐敗の渦で巧みに笑顔をこしらえて
お前に一歩ずつ近付いてくるのだ
ともかくも
お前は清く正しくあるべきだ
奴を体に触れさせてなるものか
そうだ
私の勝手な想いなのだ
お前が聞き入れなくても仕方ない
奴はアンモニアの海だと
こうして告げることが私の義務だとしておこう
Entry31
ガンズアンドローゼス
ぶるぶる☆どっぐちゃん
行数(文字数)20
少年は銃を手にしたけれど
彼は庭の片隅へ
震える手で一度だけ引き金を弾くのが
やっとでした
少年は銃を引き出しの奥にそっと仕舞い
そしていつの間にか大人になり
年老い
あの少年が誰からも忘れられた頃
庭の片隅にひっそりと開いた
あの銃創から
水色の花が
咲きました
あの時死ねなかった少年の花を
一人の少女が
無邪気に汚れた手で
手折りました