第27回詩人バトル
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 エントリ 作者 作品名 文字行数 得票なるか!? ★
 1 香月朔夜  僕のゆく道  6   
 2 遠木道也  ぼくらはみんなうそつきだ  13   
 3 詠理  明峰  179   
 4 葉月みか  密やかな内面的愉しみのささやかなる外的露出  2400   
 5 若桜満  しんじること。  352   
 6 :空人  青信号、点滅  43   
 7 瑠璃  フラッシュ  29   
 8 沙汰  ライカ犬  34   
 9 (作者の要望により掲載終了しました) 20   
 10 棗樹  避雷針(ネオ・ユニヴァース)  47   
 11 木葉一刀(コバカズト)  野生の赤  24   
 12 有機機械  問題もしくは欠陥  15   
 13 月見里星維  春のおとずれ  168   
 14 日向さち  眩惑  3   
 15 岩田直子  ヌリエ  90   
 16 小松知世  ある一人の天才ライダーに捧ぐ 〜Daijiro Kato  85   
 17 小原小也  「尻を見て何思う、卵を塗られた感じだろうか」  15   
 18 宮田義幸  夏の音たち  46   
 19 大覚アキラ  歩く  60   
 20 土筆  流れのほとり  26   
 21 凛  おしまいだから大丈夫  25   
 22 五月原華弥  傍ら  10   
 23 ヨケマキル  ざわざわ虫が神をたずさえてやってくる  64   
 24 佐藤yuupopic  アタマが冴えて  59   
 25 ヒヨリ  責任転嫁  24   
 26 タロ○  流れのままに  0   
 27 ながしろばんり  安心  14   
 28 さゆり  春の夕暮れ  17   
 29 さと  あたしの2ページ目  339   
 30 あずま  夏の日に・・・  26   
 31 YamaRyoh  今の目標  14   
 32 WAKA  ルビー  56   
 33 橘内 潤  『月闇どろ り』  17   
 34 ぶるぶる☆どっぐちゃん  咲楽沙  0   
 35 IONA  ひこうき  23   
 36 inja  君へ  14   
 37 8148(略)ソラン  写真機に写るもの  39   


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バトル結果ここからご覧ください。




Entry1
僕のゆく道
香月朔夜

まっすぐに強く輝く太陽は、僕には眩しすぎて痛い。


だから高く澄んだ青空のような君とは共に歩むことはできないんだ。



僕は月と歩むことにするよ。


あの淡く優しい光と共に。


時に暗い闇に心が飲まれそうになるけれど。


それでも僕はこの道を行くよ。


Entry2
ぼくらはみんなうそつきだ
遠木道也

ぼくらはみんなうそつきだ うそつきだから どうなんだ
ぼくらはみんなうそつきだ うそつきだからむなしいんだ
てのひらをかえすように とぼけてみても
まっかによごれた ちまみれの て
せいじかだって かんりょうだって べんごしだって
みんなみんな うそをついてる うそつきなんだ
 
ぼくらはみんなうそつきだ うそつきだから いきるんだ
ぼくらはみんなうそつきだ うそつきだからたのしいんだ
てのひらをかえすように とぼけてみても
まっかによごれた ちまみれの て
てれびだって ざっしだって しんぶんだって 
みんなみんな うそをついてる うそつきなんだ


Entry3
明峰
詠理

更に昇ろうと 言う
或は進もうと 聞く

あれは 何だろう
私が 尋ねる
見たとおり 生きる指標の輝きだ
と 言う

自然と 日の出を思い浮かべ
天と地の間を別つ線を 目指す

ふいに 線が消え 面が現れる
ふと 遥峰の線が従う

線が力を帯び 色を放つ
色か 意志か
蝕むよう 呷るよう 増す

現出したのは 何だ
形は 見えず
色は 留まらず
先は 知れない

気づいているか
お前の目は 色を成している
輝き 曇る

感じているか
お前の身体は 拡散している
崩れ 壊れる

今初めて お前は 意志を 示している

あれが 侵蝕したのではない

ただ 懐かしんだ
少し 思い出した

昇り進んだ 果てを
お前は 知っている

お前は 破壊され 粉砕し 散る

生きる指標と お前は言う
生きる死標と お前は言う

追う 目は 揺らめいている
ゆらめきが 万物を 映す

転化する


Entry4
密やかな内面的愉しみのささやかなる外的露出
葉月みか

焼却の際、塩化水素などの有害なガスが発生しないポリエチレンを使用いたしておられるらしいビニール(本当にビニールなのかはこの際問題としないでおこう)袋が、キチキチと歯を食いしばって、あたしの指を壊死させてしまうくらいに食い込むまで、たくさんたくさんたくさんたくさんそれはもうたくさん、食べ物を詰め込む。詰め込んで詰め込んで押し込んでぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう、もうすでにビニールとは分子構造が違うに違いない半透明の袋の底でフナとイチジクがコンマ5秒差で断末魔を上げちゃっても、ぎゅうぎゅうぎゅう、ふう、あたしは鼻歌を歌いながら、手首に
輪ゴムをはめたおばちゃんの視線を爽快に浴びて、脱臼しそうになりながらマイスウィートスウィートホームに帰る。そう、帰る。追記しておくと、還るところはないのだよ、そこのポチ。いや、ジロ。むしろジョリー。アスファルトの真ん中でここ掘れワンワンでもやってくれれば、あたし感動のあまり卒倒しちゃいそうなんだけど、あそう、やってくれないわけ、つまんないわね。だからあんたは犬なのよ。そんな微笑ましい信号待ちの合間に、袋の歯軋りがキチキチからギチギチに変わって声高に疎ましく媚びるように変わって、刹那ラッシーに奪われていたあたしの意識を呆れるくらい鮮やかに奪回することに成功。袋成功。おめでとうおめでとうおめでとう。ありがとうありがとうありがとうございますました。そしてあたしは閃いた。盲人誘導音のファンファーレが鳴り響いたと同時に閃いた。このビニールと断言してしまうにはどうにも納得がいかないけれど、化学なんて忘却の彼方に追いやった今日この頃だからビニールでないと断定するのは背中に虫が這いずり回るぞろぞろと這いずり回るくらいに気持ち悪いから、ビニールではないのではないかと思しきビニール袋あたりでお茶を濁したくなる気持ちにさせてくれるこれコイツ。お前、燃やしたら還れるんだね。すごいすごいいや本当にすごいようんすごい。パトラッシュよ、お前も次生まれてくるなら、幼児や子供の手の届かないところに保管してください。(かぶった場合窒息などの危険が伴うことがあります。)と断られた袋になれ。なれと言ったらなれ。おっと大家さん、こんにちは。かなしみよこんにちはbyサガン。掃除ですか大変ですね、この辺りはカラスが多くて多くてカラスカラスカラカラカラですからねご苦労も耐えませんね、こんなに生ごみ出されちゃね、参っちゃいますよね。じゃあ、いつかええそう遠くないいつか、まあ時間の遠近なんて人それぞれなんですけどね、お手伝いするかもしれないという可能性をふんだんに残すという含みを持たせたかもしれない会釈でゲートスルー。

中略

食べる食べるあたしは食べるひたすら食べる上品に美しく斜陽のおかあさまみたいに食べる食べる食べる。テーブルの上は夏休み照りつける太陽木霊する蝉時雨じりじりと焦げ付く思考ぬめる足元知らない誰かの肌イエス今日も大盛況ここはとしまえん流れるプール! ってなくらいにごった返す食べ物食い物食料品。嫌いなもの嫌いじゃないけど気分じゃないものたちが、アメリカのイヤーブックばりの胸がムカムカいえドキドキ、頭ガンガンもといクラクラしちゃう伸縮性に乏しそうな笑顔をぴっちりばっちり張りつけちゃって、テーブルの上でオールスタースタンバっちゃってくれちゃってあたしをウェルカムベイベーイエイカモン。唐揚げシュウマイ餃子にコロッケ天ぷら掻揚げ海老グラタン(ブレス)酢だこイカ下足ヌタししゃもそれからメカブに子持ち昆布(ブレス)ドリア炒飯リゾットちゃんぽんカルボナーラDE皿うどん。あんたたちとは電光石火の愛撫ですぐにお別れ。ああん、アディオスとばかりかどうかは知らないけど、中学MVP三井君並みの成功率であたしは椅子に座ったまま流しの脇のゴミ箱に厳かにセッティングされた半透明の東京都推奨炭酸カルシウム30%混入ポリエチレン45L用ゴミ袋目がけてうっとりするようなフォームでスリーポイントシュートを次々に決めていく。もちろんべったべたに甘いプリンティラミスチョコレート大福カステラビスケット羊羹タルトショートケーキにだって口付けは一度だけ容赦はいたしませんわ行くわよヒロミ! とお蝶婦人の華麗なるサーブでスウィートスウィーツたちも東京都推奨炭酸カルシウム30%混入ポリエチレン45L用ゴミ袋に勢いよく叩きつけていくのですわおほほほほ。なんてやってる内にあたしのはちきれんばかりに充実した一日も暮れなずみ、果汁10%未満の炭酸オレンジジュースのような淡くやさしい夕方の光がシュワシュワと360度全方位死角なしに気高く美しいあたしの横顔を照らして目から怪光線を出しそうになっちゃったのを合図に東京都推奨(略)ゴミ袋の口をキチキチキチキチキバンバンと縛り上げてその重さに閉口しながらゴミ捨て場に笑顔でデリバリー。レレレの大家が生ゴミの日は木曜日&今日は木曜日だから困るから持って帰ってよなんて訳分かんないことを甲高くまくし立てるもんだから、心優しいあたしは清らかな心の中で今日が木曜日なら文句ないでしょ馬鹿じゃないのコンコンチキと呟きながらもこんな風に先天的に頭が弱い人はなんてかわいそうなのかしらとそんじょそこらの聖母じゃ太刀打ちもできないような慈愛のこもったまなざしを差し上げて再びゲートスルー。軽やかに階段を上って電線に鈴なりになってるカラスたちに極上の投げキッスをプレゼントしてマイスウィートスウィートホームのドアを開ければ何て幸せな一日の終焉! 混沌とした胃袋の匂いをママのドレッサーから5年前にくすねてきたパフュームで撃退すれば、隙間だらけのお腹ゆえに満ち足りた気持ちになってあとはいい夢見るだけ無問題。素晴らしきかな、質素でささやかなあたしの愉しみ。それでは皆さまおやすみなさいお後はよろしいようで。


Entry5
しんじること。
若桜満

好きだ

なんて言われたって

愛してる

なんて言われたって

それが本当かどうかなんて

わからない

ただ

相手を信じるしかない

信じているからこそ

好きだ

なんて

愛してる

なんて

本当に想われているんだって

そう思うことができる

信じなきゃ

相手を信じなきゃ

何もかもが

ウソに聞こえる

悲しいね


友達だよ

なんて言われたって

本当に友達と思っているかどうかなんて

相手にしかわからない

ただただ

相手を信じて

自分も友達だと思わなきゃ

友達としての関係はなくなっちゃう

だから

信じる


人は何かがない限り

人を疑っちゃいけない

生きたいのなら

人を信じろ

1人では

人は

生きていけないのだから


僕は

人のためにも

自分のためにも

信じることは

やめない

疑うことは

いけないことではないけれど

気持ちのいいものでは

ないでしょ

人と人が信じあう

これって

キレイで

羨ましい関係じゃないかな

僕は

おもう


Entry6
青信号、点滅
空人

両手いっぱいに 荷物を持って
赤信号
佇んでいた

荷物は 見えない重力

両手の平を
ぐいぐいと 引き下げる

 だけど
 この荷物を 置いていくわけにはいかなくて

両手いっぱいに 荷物を持って
青信号
渡れずにいた

向こうから 男の子と女の子
それぞれの
片方の手に 軽やかな鞄を持って
空いた
もう片方の手で
お互いの手を握って

僕はひとり そんな何気ない風景を見ている
片方には 自分の荷物 もう
片方には 大切な人の 手 か……

 飛び立った 鳩の群
 仰ぎ見ると
 彼らには 持つべき荷物はなく
 両方の翼で ただ
 飛び続けるだけで

青信号の交差点
僕は 知らぬ間に 重くなってしまった
重たくなってしまって
動けなくなってしまったのだ

男の子と女の子は 通り過ぎていった
鳩の群は かなたに消えてしまった
青信号は 点滅をはじめた
僕は 向こう側へ渡れるだろうか
どうやって 渡ればいいというのか


Entry7
フラッシュ
瑠璃

光のchainがあたしの身体を包みこむ
まぶしくて、痛くて、でもそのフラッシュはとても心地良い

恋をした時に、こんな痛みは起きなかった
愛した時に、体をつらぬく光は見えなかった

cokeを限界まで口に含んで、
喉を通るsparkに支配されるように、
失ったものが光を帯びる

恋は、失った瞬間に恋じゃなくなる
愛は、消え去る時が一番美しい

奪うとか
追うとか
殺してしまうとか、
全部meaningless

さよならも言わずに
昔「恋」だったはずのものは消えた
突然で、
1秒の予告もなく

でも
あたしは悲しくない

悲しくなんてない

たぶん


Entry8
ライカ犬
沙汰

 ぐるぐる ぐるぐる

 浸透していく白い闇

 ぐるぐる ぐるぐる

 いつまでも いつまでも 回り続ける

 鋼鉄の扉 閉ざされ

 ひからびた皮と骨ばかりのからだに しがみついて

 ぐるぐる ぐるぐる

 可哀想だ と 同情する 人が居て

 虐待だ と 騒ぎ立てる 人が居て

 みんな みんな わかってる

 ぐるぐる ぐるぐる

 いつまでも いつまでも

 でも みんな わかってる

 ぐるぐる ぐるぐる

 それは ぼくらの 記号なんだ

 ぐるぐる ぐるぐる

 きっと ぼくらも ライカ犬なんだって


Entry10
避雷針(ネオ・ユニヴァース)
棗樹

雨後。

西日を浴びて
すべてのビルの上
銀色に
すっくとのびて光り

無数の水滴にまみれ
無数の世界を映し
無限に反転し
    捻転する

原点がゆるみ
補助線が崩壊し
解き放たれ
上空を目指し
さらなる上空を目指し

雲を縫い縮め
雷を呼びこみ
星を刺し留める

成層圏を突き抜け
シャトルの脇腹をかすめ
衛星を貫き
月を目指し
群れなして
熱く
どこまでも
針のごとく
いっせいに!!!

  混線――。
    □□□避雷針□ガ
    □□□避雷シ●ンヲ
    □□□避ライ□シン□ニ

  失速――。
    ▼▼▼清掃圏●ハ
    ▼▼▼精巣◎軒ヲ
    ▼▼▼正▲装権ヲ▲モ

重力に逆らい
引力に導かれ
軌道に乗り遅れまいと

  憤激――。
    ▲▼▲避雷針▼が
    ▲▲▲避雷針ばり▲▲に
    ▼▲▼避雷針な▲ぞ▲が★

限りない浮力とともに

  突出――。
    △△△星霜剣▲とか
    △△△聖争権ま▲●で
    △△△戦争圏▼▼▼さ▼え

越えて。


Entry11
野生の赤
木葉一刀(コバカズト)

黄昏を過ぎ空に帳が下りる頃
夕焼けは西の空へ追いやられる
そこを狙うんだ

野生の獣のように
夜の帳から逃げる夕焼けの赤

その赤を捕らえるには
極西に追いやられた所を一網打尽に
瓶詰めにしてしまえば良い

言うに易いが行うに難い

夜の帳も野生の赤を追い詰めるのに
必死だから
漁夫の利を狙うには厳しい

そして今日も
野生の赤が極西まで追い詰められたとき
僕より一歩早く夜の帳が
野生の赤を覆ってしまった

この夜も瓶詰めの中には深い青だけが
静かに捕われている


Entry12
問題もしくは欠陥
有機機械

僕は悩む。
僕は落ち込む。
他人を傷つけ、自分を傷つけ、
僕は一人になる。
高層ビルの上を流れる白い雲を見て、
夜の海に揺れる月の光を見て、
僕は涙を流す。
僕はとてつもなく孤独になる。
だから近所の野良猫のためにキャットフードを買って与えたりもする。
猫がおいしそうにそれを食べている姿を見て、
いつかはそんな希望の光が僕をも照らしてくれそうな気がする。
でもきっと僕が抱えているのは、
野良猫に餌をあげたりすることで解決する種類の問題ではないのだ。
世界はそんなに単純にはできてはいないし、
それは僕の自己満足にすぎないのだ。


Entry13
春のおとずれ
月見里星維

白い雲のあいだから
青く澄んだ空が見える

冬の白い大地に
茶色くあいた穴がある

小枝の先はふくらんで
地球(ほし)を彩る準備をしてる
そばでは動物たちが
お客さまへの歓迎の踊り

雲が逃げ 空がだんだん晴れてきた
さぁ、お客さまがやって来た
ずぅーっと 待ってたんだ

ほぉら
雲に隠れてたお日さまが顔を出した

“おはよう!お日さま。ねぇ、聞いて!
春が来たんだよ!!”


Entry14
眩惑
日向さち

天から舞い降りた童のように
あなたはふわりふわりと笑うので
わたしの心もふわりふわりと揺れ動くのです


Entry15
ヌリエ
岩田直子

 全部嘘だったのに。
 全部嘘だったのに。
 お化けを見たのも、タロー君が水槽を割ったのも、歯を磨いたのも。
 全部嘘だったのに。
 みんな私を信じる。疑わない。
 そうゆうの、すごく窮屈。


Entry16
ある一人の天才ライダーに捧ぐ 〜Daijiro Kato
小松知世


だった
寒いくらいの
冷たい雨
だった
君を送り出したのは
春の長い雨
それは君のための
涙雨
だった

沢山の人を魅了し続けた
君の
屈託のない笑顔と
ライダーとしてのプライド
全てが君の
魅力だった
君が君でいるだけで
それだけで
パワーを貰えた
それが君の
不思議な力だった


もう
過去形にしか出来ない


あの瞬間
あの取り返す事の出来ない瞬間
涙で
溢れる涙で君の姿がかすむ

君の身体が空へ向かう日は
うって変わって空は晴れ
飛行機雲が
哀しく一筋の道を示す
まるで君を誘導してるみたいに

青い空は
残酷なまでに青くて
君はきっと
いつもの
悔しいくらい飄々とした笑顔を抱えて
あの空の向こうへ

取り残された
私達は
悲しみを抱えたまま
君を思い出す

空は
晴れ渡っていた
それはきっと
君が
最後にくれたプレゼント

夢や
憧れや
希望や
誰かを愛する事を
自分を愛する事を
一生懸命に生きる事を
見せてくれた
唯一の君が
未来を指し示してくれたんだ

早すぎる
君との別れに
まだ涙が止まらない
空から
いつだってこの空から
君は微笑んでくれてる
君のための涙と
永遠に残る君の勇姿を
決して忘れない
これから
どんなに歩みを続けても
決して忘れる事は無いだろう

今日この時から
この空も
降り注ぐ冷たい雨も
君を思い出す
そのためだけのものになった


Entry17
「尻を見て何思う、卵を塗られた感じだろうか」
小原小也

頭の鈍い子が
渡ろうとしているけれども
なかなか渡れない。

それを見ている僕は
声をかけてやろうと思うが
なかなか声をかけられない。

僕は、頭の鈍い子の
優位になんかいないのだと
そこであらためて思う。

僕は一人で傷ついた。
思うべからざる敗北感を
味わっている自分に

僕は思っている。ただそれだけだ。
痛めつけて言えば
そういうことだ。

H.15.4.25


Entry18
夏の音たち
宮田義幸

空き缶・水たまり・ダンボ−ル
ホース・軽トラック・シャッター
雑草・蛇口・空気入れ
自動販売機・ボール・壊れかけのバスケットゴール

そこにはそれしか見当たらない
それしか無いのかもしれない
ただ乱雑にちらばっていた

10分間の休憩の後で
再び始まる
ボールをつく音・ネットがゆれる音
歓喜・叫び・怒号・無言―

今は無い
音音音……

―ジュースを賭けて勝負しよう―
誰が言い出したか?
ケンかヤスダかマコトか
まあ誰でもいいか

蛇口から水が流れ続けてる
奴らもみんな就職しちまった
宙ぶらりなのはオレだけ
そんな人間も一人くらいいてもいいだろう?

しかし
ここはいつから猫しかいなくなったのか
異物のようににらまれた
おいおい先住民はオレらだぜ

蛇口から直接水を飲んだ
何の味もしやしない

セミが鳴いている
さわがしい
―セミが鳴きやむ前には東京へ戻ろう―
ふとそう思った

あのときの音はもう聞こえない
思い出せない
もしかしたら知らないのかもしれない

腹が鳴った
コンビニでもよるか
空と雑草だけは青い


Entry19
歩く
大覚アキラ

突然
だけど
さりげないカンジで
手をつないでみたりして
そんなことには
深い意味なんかないや
とか
ぼんやりと考えながら
やっぱり
手は離さないままで
歩く
陽が当たっているところは
暑いぐらいなのに
日陰に入ると妙に肌寒くて
ぼくの
二の腕に触れている
君の
胸のあたりのカンジが
それはそれで悪くはない
なんて
冷静ぶってみながら
歩く
どこか
目指す場所があるわけでもなく
ただなんとなく
こうして二人
歩く
だけで満たされる時間
交わす言葉もいらない
景色さえも必要ない
歩く
という行為に
二人で没頭することに
意味があるのだ
なんて
そんなふうに
考えていること自体
歩く
という行為に
没頭してない証拠だよな
とか考えながら
歩く
そもそも君は
歩く
という行為に
没頭しているのだろうか
それとも
ぼくの
二の腕に胸が触れる距離を
さりげなく保つことに
ただひたすら
没頭しているのかも
しれない
なんて
そんなワケないよな
とか考えながら
歩く
あまりのバカバカしさに
苦笑いを浮かべながら
歩く


Entry20
流れのほとり
土筆

谷川のほとりには涼しい風が吹いていた。
細い柳に子馬が繋がれて立っていた。

母馬を待っているのか
人を待っているのか
旅の者には
とどまって確認する時間はない。

子馬の鼻先を川風が冷して通っていた。
せせらぐ音も聞えていた。
子馬は母馬を待っているのだろう。

母馬を連れた人間は
子馬を連れて行けないわけがあった。
母馬を置いて
一人で帰って来るつもりであったから。

といって、子馬は人間を待っているのではない。
やっぱり子馬は、母馬を待っていた。

たとえ人間が一人で戻ってきても、
彼は母馬を連れてきてくれる人間だから、
鼻面を伸し、母馬の匂いのする手を舐める。  

川風が子馬の鼻先を通っていた。
せせらぐ音も聞えていた。


Entry21
おしまいだから大丈夫


すべてがスローモーションで流されて行く
ルームミラーのむこうのむこう
メジャーコードが飛び散り跳ねる
出口のない質問を自分にして苦しんでいた自分が
力尽きたらしい

おしまい
おしまい
意味のない自問自答は
これでおしまい
考えたところで
自分で選びなさいという運命に従っているだけなのだから
おしまい
おしまい
堂々回りは
これでおしまい
悩んだところで
十中八九明日はやってくるのだから

大丈夫。
ルームミラーのスローモーションは追いかけてきやしない
大丈夫。
世の中はもっと、いや、最も
ハイスピードで駆けぬけているんだから
思うよりずっと、そう、ずっとね


Entry22
傍ら
五月原華弥

あなたの傍らにずっと居たいんだけど
それはすぐに叶うことのない願望で
いつか叶うかもしれない願望で
頬寄せて腕絡めて体温を全身で感じて
そうやって傍らに居たいという願望は
どんな因果かいつも叶うわけではなく
しばしの別離が訪れる時間に追われて
全てを伝えきれないもどかしさに苛立って
それでも唇を合わせずにはいられない
そうやって時間の限りあなたの傍らに


Entry23
ざわざわ虫が神をたずさえてやってくる
ヨケマキル

ヒエちゃんニワトリ集落に住んでいる
ニワトリ飼ってる人いっぱいいるので そう呼ばれてるのです
でも本当は飼ってる人そう多くもないのです

ああ、ヒエちゃん好きなのです
好きの意味わかりますか?
ヒエちゃんのかたいとこ僕の押しあててねじ込んで
血液逆流したら昼と夜がかわりばんこにやって来て
そしたらその時ひとつになれる思うんです

あ、今 正午です
ニワトリ集落 行ってみましょう
ヒエちゃんの洗濯物干してあったら 盗もうかな、なんて思って


ニワトリ集落 12:30
迷路のように路地が入り組んで ぐるぐる目が回る
道がグニャっとなって汗が出る
「なんかこの辺りはやっぱり臭いねえ」 なんて聞こえて来て
でも、ヒエちゃんはいい匂いだよ
ぐにゃぐるぐにゃぐる 気分が悪い なんだか気分が
よく考えたらヒエちゃんち知らないので
うん、帰ろう
そしたら急に空 暗くなって 13:00
人の声聞こえなくなって
ボクの目のせいでも耳のせいでもない
ほんと暗くて静かで ざわざわざわざわ
神様もう悪い事考えないからゆるしてゆるして

曲り角からざわざわ虫の大群出て来そうで 暗い暗い 空も地面も
あ あ あ 駆け出したひたすら駆けた駆けた 足がだめになって 
集落中を這いずり回った
土地の空気が急激に濃密になり
おふざけが終わった事を 
暗示する
終わったんだ



13:20ニワトリ集落 袋小路にて
首無しニワトリを右手にぶらさげた神に遭遇
その声は非常に聞き取りにくい小さな声だが
異様なほど独立的な音声で
正確に的確に私の脳に届いた       



そこにあるのが見えないの?        
いいんだよ言われた通りにやれば       
これ以上は感情論になるから 明日削除します          
態度がでかいと言う事ですよ
インチキはインチキらしくね    くだらない
だからこの道じゃないっていったのに もうやめる                 だから何ができるの  痛いよオ よくわからない
とてもいいと思うけどでも僕はいいです
もうやらないって言ったくせに
その考えは    とても変な考えです
忘れちゃったそんな事
だめだこの人自分のちんちんの事しか考えてない 
あんな風にそのままにされたら困るんだよ         
なんだかずいぶん細かい事言うね 正直なつもり?
もういいもういい
悪い意味で子供 構想が甘い
貴方にされた事日記に書いてしまいそうだわ
終わりだ もう面倒になっちゃった
なんでいつもそういう風に笑うの?
しょせんは君だ そうやってふざけるんですね              先生もう知りません なんでこんな事が怖いの
いいよN君に頼むから
まったくだめだな 逆に言ってるんじゃないの  
だから痛いって 
あの人の方がいいじゃない 自分で言ってたってダメだ。
血が出てるよ
意味がわからない


さ さようなら


Entry24
アタマが冴えて
佐藤yuupopic

アタマが冴えて眠れない
イイ考えが浮かぶでもなく
ただただ
冴えゆくだけ

身体、重く

沈み込む寸前
こんなに
眉間まで
みっしりと
眠いのに

蛍光灯が
切れかけで、鬱陶しい
仕方がないから
蝋燭になって
部屋を照らしてみるコトに
した

マッチを擦った
時の
匂いが
好きだ

天井から
小さき
モノ
落ちてくる

イメーエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエジ
して
手のひらを
ゆる

ひろげる

当然
何も
落ちてこない

身体ますます
粘土製
的に
重く

いっそ
薄銀の
煙にでも
なって
気づかないうちに
消えてしまえばいい

でも
自分からは
消えたくない

おや
もう

窓枠が
光っている
開いていたのだ
ユれる
カーテンの
隙間から
射し込んでくる

朝が
またくる


Entry25
責任転嫁
ヒヨリ

二本の街灯が、
雨に滲んだアスファルトに
私の影を二つ落として、
暗い夜でも息は白くて、
私はあなたに会いたくなった。


(トオクノホウニ)
          私の髪はここにあり、

(ハナノカゲニ)
          私の腕はここにある。

(トキノムコウニ)
          けれどあなたが居ないのならば、


(――ウタタネユメノ カゲロウノヨウニ)


雲一枚で隔てられた
遙かな国を仰ぎつつ、
ゆっくりのんびりてくてくと、
私はどこかへ逃げてしまおう。


Entry26
流れのままに
タロ○

ぷかぷかと漂っては あっちへ行きこっちへ行き
渦に巻き込まれても沈むことなく ひきこまれる事もなく
かといって逆らって どこまでも川上に向かうこともない
流れのままに 流るるままに

少しづつ染みこむ色は 赤く染まり青く染まり
太陽の温かさであれば 月の静けさでもあり
かといって暗闇の どこまでも続く闇の色はまだない
流れのままに 流るるままに

いづれは沈む木っ端のように すぐには沈まぬ木っ端のように
渦に巻かれて沈むことなく ひきこまれもしない
陽射しの強さに目を被い 月の優しさに目をみはり
暗闇の静けさに 胸打たれキョウキする

流れのままに 流るるままに

流れのままに あるがままに


Entry27
安心
ながしろばんり

お前の母ちゃん 巨根
お前の母ちゃん 無精ひげ
お前の母ちゃん ガソリン臭

 でも、コロッケ好きなんやろ

お前の彼女 M型ハゲ
お前の彼女 しわしわの首筋
お前の彼女 宮刑

 でも、子供二人おるよな

お前の兄ちゃん つるつるの子宮
お前の兄ちゃん リボンのマスコット
お前の兄ちゃん ラクタフィリア

 でも、よく一緒に銭湯行ってたやん


牛乳瓶の底で 俺とお前二人だけ
いつ いつ でやる


Entry28
春の夕暮れ
さゆり

慌て者のスズメが
窓から飛び込んできたので

大捕り物の末に
昆虫網で捕まえて
空に放してあげました

安心しきって
飛んで行ったね
仲間のところへ

その夜の
スズメのお宿は
きっと 
かのスズメの独壇場

生まれてはじめて
人間と触れ合った
恍惚と恐怖の体験談を
得意になって仲間たちに
披露したことでしょう


Entry29
あたしの2ページ目
さと

 あたいの好きなこと やらせておくれよ
 あんたに 迷惑なんか掛けないからさ
 あたいの好きなこと やらせて

 いいかげん あたいを解き放してよ
 好きで生まれたんじゃない けど 生まれて良かったよ
 感謝してるさ あんたにね
 けれど けれど
 だから だからさ
 あたいを解き放しておくれよ
 あたいの好きなことやらせて

 飛び出したいんだ ここから出たいんだ
 わかるだろ? ねえ わかってよ
 待ってるんだよ 何かがあたいを待ってるんだ
 だから 行きたいの ひとりぽっちでも 生きたいのさ

 『雨だよ』 『風だよ』 『水たまりだよ』
 嬉しかった 温かかった 知ってるさ 憶えているよ

 あんたが好きだよ 変わらないよ
 でもさ でもね   お願い。
 あたい したいこといっぱいあるんだ

 愛してる から


Entry30
夏の日に・・・
あずま

あなたの長い髪が初夏の風で揺れた
あの丘の上に立って海をみていた あなたの後姿を今でも覚えている

夏がやってくると同時にやってきて夏が終わると
去っていくあなたは一体誰?

後ろ姿しか見たことないのに話したこともないのに
名前も知らないあなたに惹かれてた
僕はまだ 恋とか愛とか理解できない少年だった

あなたを見てるだけで、ドキドキしてた
あなたのことを考えるといつも切ない気持ちになった
夏にしか来ないあなたをどの季節のときも思ってた

今年の夏 あなたは来なかった
夏がはじまったのにあなたは来ない
まわりには夏が来たのに僕の心には夏が来なかった
なぜか 涙が溢れた
あなたの姿を見れないだけでこんなに苦しいなんて・・・・


あなたは来なくても 夏はやってくる
あなたがいつも立っていた丘には 一輪の花が咲いていた
小さくてとても可憐な花
その時、長いの女性がこっちに来るのが見えた
すぐにわかった あの人だって

僕はなんの迷いもなく花をちぎりあの人のところへ走った
5年ぶりに逢うあなたは全然変わっていない
花をあなたの髪にさした 黒い髪に白い花がとても似合っている

あなたは少し顔を赤くしてありがとうと言った
あれから5年僕は青年になった
少年の時 言えなかったことを今 あなたに伝えたい
自分の言葉で 好きだって・・・

あなたは僕の言葉に笑顔をうなずいた
僕の心にまた夏が来た


Entry31
今の目標
YamaRyoh

うつろな気分で どこまでも
夢見うつつに 時を超え
流れついてく現実は
必ず不満に満ちている

夢はなくとも お金はいるし
翼が無くても 空を舞いたい

だから僕らは 席を立って
終着駅で降りるのかな?

もうこの先にレールはない
だから自分で目標定めて
己の足で歩むべし!


Entry32
ルビー
WAKA

気付かなかったら
僕は ずっときっと勘違い
うるさく感じた道路沿いに
耳元で囁いた
聞いた事もないはずの
一匹のウサギの声
ふっと 後ろを振り返ると
涙を流す君がいた

その時は 昔のままだと思ってた
君が 走って僕に抱きつくまでは
腕のなかにいる 温かい君が
耳元で囁いた
「私が泣いてるって思ったでしょ?」

彼女の光る瞳は
確かにさっき紅かった
だけど 気付いた勘違い
彼女はずっと笑ってた
でも彼女の瞳は紅く紅く光っていた


Entry33
『月闇どろ り』
橘内 潤

 なみだかと思えばえがおが こぼれるこの 顔がにくったらしく て

 爪たてて ぎゅってして び ってして あわれむ鏡 に

 むか えい ぱりーん いたっ 血が黒いの で

 なけてきた かと思うたら けたけた と哄笑 おかしい な

 見あげれば 月 まんまるマンホール あければ泥水 ながれて夜になっ て

 きたない なって思うたら めそめそ と やはし笑えて なきたく なっ て

 きれいな水はしらないのでコーヒーあじの泥をすすって すぅって吐いて て て

 もう いいや

 月のきれいなうちにもう い いや


Entry34
咲楽沙
ぶるぶる☆どっぐちゃん

五月も初旬だというのに桜が散らない。七日連続の晴天。今年の春は自殺者も例年を大きく割り込んでいる。
「桜の改善を要するところは自らが美しいと思いこんでいることです」
とある学者が言っていた。
「それが勘違いなのです。桜は美しいから好かれているのでは無く、散るから好かれている。散ることが桜の全てなのです」
空いっぱいを桜が埋めていた。何も遮るものが無い五月の空に広がる散れなかった桜の花は馬鹿げた桃色で不格好なことこの上無かった。滑稽そのものだった。間も無く世界は夏でその中でこの桃色の花が生き残ればそれはとてもおかしなものになるだろう。そして冬まで生き残ってしまえばそれはもう悲劇的で笑えなくなり、そして。
(そしてまた春を迎えたならば)
もしそんなことがあるならば。そんなに醜く力強いことがあるならば。
「そろそろ行くよ」
「うん」
あたしは呼ばれて身を起こす。錆びた線路は早くも夏草に覆われていた。
(散ることが桜の全てなのです)
そう言っていたあの学者ももう死んでしまった。五月七日まで生き残ることもなく死んでしまった。どこまでも続くこの線路の途中から彼は永遠に姿を消してしまった。
桜は満開だった。まるであたし達の行く手を遮るかのように咲き誇っていた。
あたし達はその中を進む。散ることの出来無かった桜とあたし達は再びの春を目指して歩き始める。


Entry35
ひこうき
IONA

飛行機が やっと離陸したころ
昔 転校する前にいた
小学校の 鉄棒を思い出した
低いの、中くらいの、高いの。
みんな 錆びた梯子を上るように
あの鉄棒を 順番に逆上がりしていく
生きるって そういうことだと思った

雲の上 3000フィート
このマシンに 割れないものは無い
初めて握った 祖母の手は
そう信じていても 冷たかった

皺だらけ
になる

生きるって そういうことだと思った

空というものは
どこから見ても 青にしか見えない
雲なんか ただの気体であって
こうして今も 僕は窓から
空の向こう なにがあるのかを見てる

もともとあおいだけの空に なにかをうかべて
そろそろぼくのひこうきも おおきな海へ


しわだらけに
なる。


Entry36
君へ
inja

ずっと浸ってる 自分の中の世界に
痛くてもすぐ消える ホンモノは最初だけ
そのうちに包まれた君は 多分気づかない
みんなそうだから 許してるだけだよ

やめなよその顔 誰も泣いてくれないよ
傷を見せて横目で見れば みんな優しく笑うから?
ずっとカラッポでいたら きっと消えてしまう
知らないことも たくさんあるのに

ずっと届かない 世界も君もいないから
風が過ぎても 草一つ揺れない
狭い街に君がいる 誰もいない街
誰の声も 今は届かない


Entry37
写真機に写るもの
8148(略)ソラン

彼女の眼から伸びるレンズは、
真っ直ぐに僕へと向けられていた。

いつもの小さなベットの上。
見上げる僕と、
見下ろす彼女。
今日は、二人の最後の日。

大きなカメラに隠れて、
彼女の表情はわからない。
レンズの奥を探しても、
それは同じ事。

まるで真夜中の水面のようなレンズの奥。
そこに映るのは、
歪んだ自分の顔だけでは無いような気がして、
そして気付く。
彼女が、見ていると。

二人の距離が、
レンズの焦点が、
互いの視線が、
心地悪い均衡を保って、
時間は流れていく。

"もしかして、わかっているのか"

やがて、戸惑いに耐えきれず、
僕は眼を逸らしてしまった。
それは、僕が逃げ出した瞬間。

「…何だよ。」

しばらくの後、
彼女は部屋を出ていった。
表情は見せないまま。

そう言えば、
彼女は最後までシャッターを切らなかった。