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詩人倶楽部

第3回詩人バトル
poem15

僕の夏

作者 : hukuson [フクソン]
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その日は並木の陰さえ蒸すようで
進める歩に足らず思いを巡らせ
日がな一日さまよい歩く僕の気持ちは誰にも知れない。
(羽虫のごとくふらふらと無価値なものを憶え)

滴り落ちる汗の雫を数えつつ、
道に浮かべるかげろうに視線は捕らわれ、
捕らわれたものの卑しさは僕を包み込む。
鈍くなる感覚は、僕の夏、それ自体、
どこか懐かしさを匂わせていた。

感覚を推し測る空気だ、空間だ。
僕の隙間にねらいを定め、
しのびよるそれらの飽和した物理法則は、
肉体に満ちる懈怠ともなり、
不自然な方向へ僕を揺さぶる

やがて太陽が、きしむ音を立てて絶頂に至ろうとするとき、
僕の背を押す者がそこにいて、
ぼさぼさの頭と野太く低い声と、
引きつった笑いで僕を見ているが、
そうだ、もう、僕に見えるものは何もない。

(覚まされた遠い記憶)
(矛盾と、理由を知らぬ脱走)
(緑樹の安らぎから遠く)
(安息の群れも離れ)

白昼夢が僕を冷たく包んでいた、
落ちてくる陽光にさらされた真っ白な空間は
女性のもつ優しさとけだるさで僕の感覚を卑しめ、
泪で心が滲む時、
やがてそれはふらつく僕の影を
単調な連なる石ブロックの上に、明快な色取りで描き出した。

分割され並ぶその影は、僕の夏、
虚栄を身にまとい遠のくかげろうを背に
踊る、静かな舞手だった。






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