第34回詩人バトル

エントリ 作品 作者 文字数
1 すべて変わりますように 天内日月 540
2 名前を書き忘れたテストの点数は、マイナス5点だってこと知ってるかい? 凜一
3 まどろみの中で 香月朔夜 9
4 風景 有機機械 127
5 雪の涙 佐賀 優子 375
6 ヘビの作った林檎π(パイ) 歌羽深空 546
7 深神椥 6
8 死詩画人 佐藤yuupopic 1000
9 探索鉄道デ ヨケマキル 743
10 返事 小松知世 460
11 泡沫 武流 436
12 雨天の蛾 相川拓也 118
13 (作者の要望により掲載終了しました)
14 手紙 ながしろばんり 38
15 「あざみ」 さと 205
16 逃避行2 鈴矢大門 259
17 祈り鶴 108
18 ワタシハカモメ 〜BGM天国と地獄に寄せて〜 木葉一刀 333
19 日向さち 123
20 失恋 麻葉 441
21 秋雨 詠理 49
22 ボレロ ぶるぶる☆どっぐちゃん 136
23 冬に咲く花 8148(略)ソラン 253
24 『八月の味』 橘内 潤 81
25 チョコチップクッキー 大覚アキラ 469
26 日常 葉月みか 197

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エントリ1  すべて変わりますように     天内日月


僕の余計な一言で全てが台無しになるのは
僕は悲しくて 僕は僕が厭になって
僕は自分を捨ててでもそれを消したくて仕方が無い

けど起こってしまった事は戻せやしない
僕がどんなに後悔したとしても 無駄なだけだろ
だから もっと良いことがあるように頑張って生きていこう
僕の歪んだつまらない人格は 多分あんまり人に理解されないけど
それでも頑張って生きていけば いつか充実した日々が来るだろう

そんな事を考えながら 後悔を打ち消そうとしています
過剰な後悔など いらないんだ 本当にいらないんだ
この世の憂鬱な思いが すべて杞憂に変わりますように

僕の余計な一言で厄介ごとが増えてゆくのは
僕は切なくて 僕は僕が厭になって
僕は誇りを捨ててでもその性格を消したくて仕方が無い

けど起こってしまった事は変わりはしない
僕がどんなに心を病んでも 無駄なだけだろ
だから もっと厭なことが無いように頑張って生きていこう
僕の歪んだつまらない人格は 多分あんまり人に理解されないけど
それでも毎日笑って生きていけば いつか充実した日々が来るだろう

そんな事を考えながら 心の病を癒そうとしています
怯えた遠慮など いらないんだ 本当にいらないんだ
この世の憂鬱な思いが すべて杞憂に変わりますように

僕の憂鬱な思い全ても 杞憂に終わりますように




エントリ2  名前を書き忘れたテストの点数は、マイナス5点だってこと知ってるかい?    凜一


高い空見上げて
思い浮かべるヒトの顔

タカハシ:50点
アイザワ:30点
ウエムラ:80点
フクナガ:10点

一息ついて気付いたことは
これが1000点満点だったってことかな




エントリ3  まどろみの中で    香月朔夜


目を開けたら闇の中に光が見えた。

夜の帳が下りた部屋。
見下ろす電灯。
 
手をゆるゆると伸ばす。

伸ばす。伸ばす。伸ばす。伸ばす。
必死に伸ばす。
 
‥‥届かない。

やがて手は痺れ、力なく下ろされる。


起き上がれば届いたのに。






エントリ4  風景    有機機械


この惑星はこんなにも雄大で美しいのに

僕はなぜ

そのごく一部分でしかなく

その本質でもない

この社会の片隅で悩み苦しんでいるんだろう

ああ

この惑星はこんなにも雄大で美しいのに


でも僕は耐えなければならない

昔からみんなそんなことは気付いていて

昔からみんなそうやって生きてきたんだから






エントリ5  雪の涙    佐賀 優子



できるならば、
貴方のぬくもりに溶けて、
『涙』になりたかった…


空に放たれた人間の息―すさんでしまった大気
 それを 真っ白の中に閉じ込めるため 私は生まれた

こんなに汚れてしまった私の体は、真っ白。そして冷たい。暖かいものが苦手。

それでも私を 綺麗だねと言ってくれた貴方…

貴方が凍えないように貴方をひらりと避けて
大地へ降りよう

でも

できるならば、
貴方のぬくもりに溶けて、
『涙』になりたい





少し思い起せば、
私が人間だった頃、
―生まれ変われるのなら夜空の星より
   大地に舞い降りる雪になりたい―
そんなことを願っていた気もする


「ごめんね 先に死んでしまって、
もう泣かないでね、お願いだから」





かざした貴方の手のひらに受け止められた




貴方の手のひらがこんなにあったかいから
こんなに懐かしいから
涙が止まらない…

春になればサヨナラだけれど…

貴方に素敵な出逢いがありますように





エントリ6  ヘビの作った林檎π(パイ)    歌羽深空



三・
一四苺国老後三 五八七草二三八城
二六四三鞘三二   七九五〇二八
八四一九七一六 九三三九三七五一
〇五歯   二 〇   九無シ串
至極二 三 〇 七 八 一虫〇六
二八 六二〇八 九九八六 二八〇
三 四八 二死 二良 イナ 〇六
七 九八 二石 八百 屋六 五一
三  二八二三 〇九五五  〇小
屋二 兄サン一 七二五産 後急死
親一  二八四 八良イ  否四五
〇二橋  一〇 二七  〇一九三
箱二一一  〇 ゴゴ  ゴ苦労四
四浪人内四 八 九 五四九三〇三
三八一九六  九  四四二八八一
〇九七五六六五九三三獅子六一二八
四七五六四八二三幼子野郎七八三一
一六五二七一二〇一九〇九一三二八

エチレン薫って体ぐるっとヒト廻り
 シチ年通ってからは来ると先回り
  浅切り 朝霧 嘲りアナコリズム
   並べて萎えて習ってそう光栄
    詳しくは聖書をば参照せよ
     何が何で何に何を何だ。
      我にかえるは無数の塵
  イブに  エチレン 薫る鼻腔
   あの   麻薬症状スレスレ
  実をと    嗚呼さすがだと
    頭     禁断の果実よ
    脳をと    蛇とリンゴ
      差     私ヘビ年
    し出し   〜  相性は
    た     蛇   良好
    林檎を貴方にも    了




エントリ7      深神椥


恋ってなんだろう

恋ってどんなものなんだろう

僕は恋をしたことがない

あなたはきっと笑うと思います

街であなたと出逢ったとき

これが恋だと知りました





エントリ8  死詩画人    佐藤yuupopic


むろんいつもと変わらず仕事は終わらなくて
モニタの前で突っ伏して
いつの間にか眠ってしまっていて
起きたら
イギリスの
男の
とうの昔に死んだ
詩人で画家に生まれ変わっていた

ずっと以前わずかな時間一緒に暮らし
そして別れ
今をどう過ごしているのか
あの店で今夜も明け方まで働き
休日には草サッカーで汗を流しているのだろうか
想像すらもつかなくなった人の本棚に整然と収まっていた
一番好きな詩人だと云っていた、でも彼自身一切自分では書かなかった
その
詩人で画家に

怖がることはない
俺はこうして
幾度となく
国も時間も速度も彩度も明度も性別も才能も
何の区別もなく
何処かの誰かの身体を借りて
死んでは生き
生きては死に
こんなふうに
生まれ変わってはまた死んできた

おまえは眠ったまま死に
速さのない流れに舟に揺られるごとく漂ううちに俺と出会い
そして
俺として生き返った
おまえの身体は素晴らしい
本当に素敵な気分だ
この腕におまえを抱き、その内に挿し入られないのが
惜しくてたまらぬ程だ

ごめんなさい
せっかくやってきてくれたのに
イギリスの男の偉大な詩人で画家
わたしには書くべきものなんて
何にもないの

案ずることはない
しごく当然言葉は欲する者の下におのずと訪れるもので
おまえが書きたいものがない限り
いつまでも
何も書かぬが好い
俺に無理に合わせることはない
詩人とて書くことだけが往くべき道ではない

理由はわからないけど
あなたが酷くかなしい、のが
かなしい
こんな気持ち、抱えて書いていたなんて
本棚を眺めていた時にはちっとも気づかなかった
知らなくてごめんね

俺はおまえの眼の純度の高さが気に入って選んだ
何も知らず書かずそのままのおまえであれば好い
そしてそのうちにまた死ぬが好い

も、一度起きたらもうわたしの内に声はなく
たぶん夢だったのだろうと思う

また朝がやってきて
電車が走り出して
事務所には向かわず
自分では決して知り得ぬような
駅側の小さな映画館のバネの利いた座席に沈んで
自分では決して選ばぬような
音があるのに聴こえなく思う
新しいのに古く思う再演目を
みじんも意味がわからぬまま
紙コップのコーヒーが手の内で熱を失ってゆくのに気づきながらも
一口もつけられず
ただスクリーンを見つめていた一時間三十六分

モノクロームの画面は
本当は
白と黒の連なりより成るものではなく
鮮やかに
色で満ちあふれていると
気づいた

映画館を出ると外はさらさら雨
先刻までの映画の続きのような灰色
傘がないので
ぬれて歩くことにする




エントリ9  探索鉄道デ    ヨケマキル


燐火のプラットホーム
漆黒の列車
柔らかに柔らかに
滑り込む


やみ
きれて
きれきれて

ぼく
つれて
つれつれて

地下へ
地下へ




ぼくの通った小学校見えてきました
校舎の窓から誰かが手を振ってますねえ

ぼく自身のようです

その心のままの笑顔が
少し辛く
色々な出来事
思い出しました

ランドセル引きずられ
そう
同級生にです
お寺の境内を泣きながら追いかけました
大事なランドセルでしたよ
好きなシールが貼ってあったものですから
母が名前を書いてくれていたものですから

その日の夜
母がその同級生に蹴飛ばされ
死んでしまう夢を見ましたよ

母は許してくれましたかね
そんな弱いぼくを
許してくれましたかね

小学校で
あの教室で
神がいないこと学んだのだ
救い主などいないこと学んだのだ
ひとりぼっちでいなさいと
ほんとうのひとりぼっちになりなさいと
教わったのですよ
それがとても恐ろしいことなので
知恵が無いふりをしているんですよ
そうですよ




校舎は塵に 人も散り
列車はさらに
ひくひくく




今度はぼくが殺してしまったあの女の人の姿
黒を背にして麗々とありました

あの頃のぼく
物事のすべてを
差別の物差しでしか計ること出来なかった
なぜでしょうね

あの人弱い者でしたので
きっとぼく存在していられたのです
あの人の弱さを
自らの強さにしていたのです

今は見える
あなたの輪郭でなく
本質でもなく
ましてや弱い強いでもない
あなたという人間そのものが

ごめんなさい

眠り顔が本当にやさしい人でした





少し光見えて
そしたら群衆の中で
横顔の老人が散歩していました

まさか父ではあるまいな
顔が違うのですが
どこか母にも似ている



鬼火
きえて
きえきえて



ほめられた記憶
無いのです

やさしい記憶も

ですが
なにかとても神聖な匂いがしたので
その父か母かわからない人に
感謝したのです

手を合わせたのです

ぼく
ひしと
ひしひしと
探索列車は
地下へ地下へ





エントリ10  返事    小松知世


いえいえ、そんな。
わざわざありがとうございます。
そんな事を謝らなくてもいいのです。
あなたが私を選ばなかった事なんて。

蝶が宙を舞い踊るように
人の心は揺らぐのです。
羽が風に浮かぶように
私の心も舞い上がるのです。
あなたがくれた優しさは
私にとって宝物になりました。
だからいいのです。

空に飛び出した綿毛は
再び地上に降りた事を後悔しません。
私はそんな存在になりたいのです。
あなたを思いそして沈んだ気持ちを
悔やみはしません。
決して消したりしませんから。

種から芽が息吹くように
人は強く生きられるのです。
凍える冬を越える木のように
私は春を待つ事が出来るのです。
どうかもう謝らずに。
あなたはあなたの思うように
真っ直ぐに生きていいのです。

そっと振り向き手を振る私に
どうか気付かないで下さい。
私は私の道があるのです。
そう思えるように
どうか私を見ないで下さい。
涙など
見られたくはないのです。

あなたがくれた最後の言葉に
ただ頷くだけだった私の
届く事のない返事を
私は胸に抱いてしばらくは生きていきます。
いつの日かそれが糧となり
綺麗な花が育ち咲く時まで。





エントリ11  泡沫    武流


毎年恒例    花火大会    飽きたよ


そんな気分    じゃない 
なんとなく    反対方向    走らせる
すれ違う人    反対方向    閑散として


前方    見える    花火    あれは?    校舎
小学校    僕    通ってた    小学校


そういえば    統廃合    今年    廃校    小学校


窓    映る    花火
一夜限り    浴衣    纏う    母校


  そういえば    デジカメ    最新式


きっと最後    晴れ姿    収めてやるか  
シャッター切る    上手く撮れない
シャッター切る    あれ?    どうしても    暗い学び舎


そうこうしているうち    終わる    花火大会



魔法    解けた    学校




しばし沈黙




余韻    酔う




まあ   いいか



連綿    流れる    時間
いつか    押し込められる    思い出
形無く    決して    思い出すことない    思い出



今夜    花火    さながらに 










エントリ12  雨天の蛾    相川拓也


死んだ蛾のような
いちょうの落葉が
何匹も
雨にうたれ
アスファルトのうえ

還る場所もなく
疲弊の羽たれる
つぶされて
濡れている
灰色の昼

冬の雨に嬲られ
その黄色の羽
死んだのか
雨後に咲く
天の花を知らず

 飛んでみろ
 太陽色の羽で
 一ミリ残った生命を
 燃やせ




エントリ14  手紙    ながしろばんり





 (全略)


__

Banri Nagashiro(MAO)
http://www5a.biglobe.ne.jp/~banric/xenon/





エントリ15  「あざみ」    さと


 あたしは 秋咲く
   アザミ
  あなたから忘れられた
   赤紫 色 色 々
   
  枯れ葉の中に 唯ひとり
  棘を纏い 傷つけられる事を恐れ
  首垂るる
     秋季の花
   
    
 あの子は 春咲く
   あざみ
  地味なれど艶やかに彩る
   紅紫 色 色 々
   
  しっかりと 上を向き
  あなたを守り続ける為の 棘を持つ
  心 優しき
     春季の花
  
  
  あたし あの頃に
  帰りたい    



「第53回1000字小説バトル」に投稿した作品から、一部編集を加えた詩です。
是非、1000字バトルへもお越し下さい。



エントリ16  逃避行2    鈴矢大門


ねえ、空が綺麗だよ
一緒にどこか行かないかい
部屋にいるだけじゃ腐っちまう
新鮮な空気って大事なんだよ
考え事なんかほったらかしてさあ
今はまだ見ないようにして
消えようぜ

ここから

寒いだろ、外は
そんなことも忘れていたのかい
コートを忘れるなんてさ
風が吹く、雲が舞う、散る、散る
さあ飛ぶのさ地面蹴って
悩み事なんて月並みすぎる
忘れちまえ

全部

意識飛ばして、上へ
空っぽになっちまおうぜ
放て心の中全て吹き飛ばせ
見上げれば空が、ほら
綺麗だろとても
それだけで十分なのさ
君には

休みが必要だ

青色の下解き放たれた君は
こんなにも美しいんだ

それを

忘れるなよ




エントリ17  祈り鶴    陽


足先がじんと泣く炬燵の上で

願いと祈りを折り込めた
鶴をたたむ

悴む指が不恰好な頭を

震える手が波打つ羽を

容作る

願いを
祈りよ

その小さき身体に宿り
羽ばたいておくれ

羽根亡きこの身体の代わりに
あの冷たい青を放つ空へ

羽ばたいておくれ





エントリ18  ワタシハカモメ 〜BGM天国と地獄に寄せて〜    木葉一刀


イングニッション!!

みんなのその声でロケットは
白煙を上げて浮かび始めた
固唾を飲んで皆が見守る

飛べっ! 飛べっ!

誰もが祈っている
発射ボタンを押した偉い人は
人一倍苦い顔をして見守っていた

飛べっ! 飛べっ!

上昇気流を切り裂いて
大気の外側を目指して
第二宇宙速度を持って
引力を振り切って

今の大空は君だけのもの
君はカモメだ
カモメになるんだ

そしてロケットが
成層圏に届いたとき
みんなは叫んだ

落ちろっ! 落ちろっ!

家族の無念を晴らすため
世界の平和を守るため

突き刺されっ!
汚れた大地に

燃え上がれっ!
全てをやり直すために

今からその大地は我々のもの

一瞬だけ墓標となったロケットが
火柱を上げた

発射ボタンを押した偉い人は
報道陣に囲まれて
人一倍苦い顔をしながら
机の影で小躍りする
両の掌を拳に固めた




エントリ19      日向さち


ミルクの匂い
空気に混ざって 少しずつ
私の体に入っていく

あなたの声を思い出して
目の前を落ちていく雨粒の
アスファルトにぶつかる音が
聞こえなくなる

胸に掬って 熱を含み
固まってしまわないように
深呼吸を繰り返し
仰いだ空は溶けていく

ミルクの匂いを
顔面に浴びる




エントリ20  失恋    麻葉




感情を出す前にぶった切られたなって感じ
前にも似たようなことがあった
これが好きだ
ずっと追う
って思った時には遅かったんだ
それはなくなっちゃって
いつ戻ってくるかもわかんない

好きかも 好きかも
ずっとそう思ってて
そのまま思ってて
いつか消滅しちゃえばいいんだけど
そうは上手くいかないから

変化はいらなかった
でも変化が欲しかった
早く楽になりたかった
早く安心したかった
早く幸せになりたかった

望んでいたかもしれない
本当はこれが望みだったのかもしれない
薄々気付いていたから
本当はわかってたから

ただ自分から答を出すのが嫌だっただけ
バカだね
本当にバカだね
でも少し満足だろ?
本当に少しだけど満足だろ?

また同じこと繰り返すかな
また同じ子と繰り返すかな
今度は違うこと好きになるかな
今度は違う子と好きになるかな

わからない
わからないから楽しみで
わからないから不安で
わからない

好きが好きにならない前に
変化していく感情を
徐々に伝えていけばいいのかな
答だけじゃなくて
そこに辿り着くまでの正直な気持ちも
全部 全部
全部
ゆっくり





エントリ21  秋雨    詠理


秋雨はいつも迫りくる雨だった。

ざあざあとねじれた機械音をたてて、
ときどき思い出したように火花を散らす。

雨粒は突然ネオン色ににじむ。
そして眠たげなしろい地面に落ちる。
霜は一段と凍った。

粒、粒、粒のなかに、
僕はかたい結晶をみつける。

おいていかれた公園の影や、ちぎれた蝶、ハンカチのにぶい皺。

捕われたまま、球体のまま禁じられて、
弾けることができずにいる結晶。

花のないカンパニュラ、沈んでいく靴に、すれちがう紅い唇。

粒は次々と僕の手に触れて、そっと透りぬける。
音はない。
とてつもなく静かに落下していく。

僕は結晶を掴みながら、よろめいた空気のあいだを歩く。
氷結したつつましい樹々のあいだを、
生ぬるい息を吐きだして歩く。

なにもかも黄色につづいていく丘、
おおきな黄色い斜面を登る。
堪らなくはかない丘だ。

ぱちん、ぱちん。

軽やかな破裂音で、目の奥がいっぱいに眩しい。

ぱちん。

仰げ。
黄色く燃えあがる銀杏の下で、
僕はたしかに聴いている。

弾けていくのはちいさな身体。
燃えていく潤んだ身体。

ぱちん。

秋雨はとおくから迫りくる。

僕は振り向いてもいいだろうか。
頷いてもいいだろうか。




エントリ22  ボレロ    ぶるぶる☆どっぐちゃん


女が踊りながら 自らのスカートに火をつける

「つまりは、こういうことよ」

「なんだ、そういうことか」

男はライターを取り出し 煙草に火をつける

乾いたアスファルトの上を子供達はかちゃかちゃと
まるでガラスを割るような
そんな音をさせながら
楽しそうに駆け回っている

雨は間も無く降り始める




エントリ23  冬に咲く花    8148(略)ソラン


走り続けろ、マリー。

空が鉛色に曇る日も、
切ない北風が吹く日も。

お気に入りのヒールで、
歌うようなリズムで。

走り続けろ、マリー。

そうする事でしか、
その痛みは忘れられない。

白い息と共に吐き出して、
清らかな涙で流し尽くすまで、
踏み込み、蹴り出す事を止めてはいけない。

冷たい季節に心が萎れそうな時は、
口ずさむ歌がお前を支えてくれるだろう。
同じ心で走る友がその手を取ってくれるだろう。

だから、だから、
今は走り続けろ、マリー。

乱れた髪を束ね直し、
コートの襟を立て、
強い眼差しで向かい風を進め。

永い冬が終わる、その時まで。




エントリ24  『八月の味』    橘内 潤


初雪をすくって口にはこぶと 八月の味がした

「メロン味?」

 ――ううん ブルーハワイ

「この キーン ってのがいいんだよね」

 ――うん そうそう


もう帰れない 八月の味




エントリ25  チョコチップクッキー    大覚アキラ


チョコチップクッキー
ひたすら食べ続けて
気分悪くなって
悲しくなってテレビつける

そしたら
チョコチップクッキーのコマーシャル
チャンネル変えても
チョコチップクッキーのコマーシャル
変えても変えても
チョコチップクッキーのコマーシャル
テレビ消しても瞼の裏に
チョコチップクッキーのコマーシャル

ゲロ吐いた
んでモップで床掃いた
チョコチップクッキーが虫歯に詰まって歯痛
歯医者行くのに大慌てでパンツ穿いた

歯医者は
まるで祈祷師のように
診察台の上の女を治療している
おれは向かいの10階建てのビルの屋上から
使い慣れたライフルで
歯医者の眉間に照準を合わせる
そもそもおれは
歯医者に虫歯が治せるなんて
ハナっから思っちゃいない
引き鉄は軽く
鼻歌交じり

不思議だなァ
指先一本動かすだけで
一人の人間の命をお終いにできるなんて

しかし
歯医者を狙うおれの後頭部を
背後の20階建てのビルの屋上から狙うヤツがいる
なんてことをおれは知る由も無く
おれが引き鉄を引くよりほんの一瞬早く
ヤツは引き鉄を引いた

そいつはふざけたことに
チョコチップクッキーを頬張りながら
おれを撃ちやがったらしい

まァ
そんなもんだよな




エントリ26  日常    葉月みか


不器用って言葉が器用に使われて
やさしいが誉め言葉じゃなくなって
誰かが他の誰かを好きだと言うのも
キンモクセイの香りのようにありふれたことで
そういう諸々のせいで
グラグラしちゃう今日この頃

コンビニのレシートで
飲めないブラック缶コーヒーが当たって
ただ困ってしまったけれど
自動ドアをくぐってふと空を見上げたら
眩しい青に飛行船が泳いでいて
ちょっと嬉しくなって
嬉しくなったことにホッとした
そんな水曜日の昼休み





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