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第39回詩人バトル

エントリ 作品 作者 文字数
1香月朔夜28
2戯言細きん腐とた365
3淡い星ゆうな さき146
4僕と優しい子霞洋介403
5惑星スープ紫色24号78
6時は流れる有機機械163
7へルター・スケルター大覚アキラ769
8さよならの人ヨケマキル234
9戦火のあと箱根山険太郎123
10Foolishkei102
11ペパミントグリンブルー佐藤yuupopic607
12smail伊理518
13マリコ45
14(作者の要望により掲載終了しました)
15葉月みか51
16空三景相川拓也377
17風呂場で嘔吐 そしてガンガン0
18こころに、触れただけの指の跡空人442
19太極図木葉一刀243
20今年もブルーベルが詠理1012
21オールザットジャズぶるぶる☆どっぐちゃん381
22スタートさと808
23二人羽織りの極意イタリアン・ラッシュ126
24霧雨の降る←8ソラン(いぐ)397
25生きるそして生きる児島柚樹75
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ1       香月朔夜


雪が降り積もる
音もなく
刻が凍ったかのように
静寂に包まれて
ただ しんしんと
世界を白く染める

その世界を一匹のモンシロチョウがゆく
白い世界に同化するかのように
遠く はるか彼方へ 羽を広げる

しかし
その直後
ひらひらと舞い落ちる
まるで桜の花びらのように

美しく ゆるやかに
蝶は 堕ちる

雪のように冷たくなって
雪に溶けて 消える
音もなく 声もなく
雪はその痕跡を隠す

そして
ただ しんしんと雪は降り積もる


最期に蝶は何を想ったのだろう?








エントリ2  戯言     細きん腐とた


何で俺がこんなことやんなきゃいけなくてそんでもって馬鹿みたいにこんなに時間かかって俺の人生を何だと思ってるんだっていいたいけどあいつは馬鹿だからすぐに理解できないだろうしあほだからおれに対して怒りしかもたないんじゃないかななんて考えたりするんだけどやっぱりむかつくから机の引き出しの中に小便でもぶちまけてやろうかなんて考えてたんだけど開けてみたらそこはドラえもんの出てくる引き出しで俺はびっくりしてその場に立ち尽くしながら「ドラえもーん。おーーーい」なんて言ってみたりしてそのうち中から丸くて青くて明らかにドラえもんらしきやつがこちらに向かってやってくるから俺はドラえもんにあんな道具出してもらってあんなことしようかななんて考えてでもやっぱりそれって違うんじゃないのかって引き出ししめて席に戻って再びくだらない作業をやりはじめる。








エントリ3  淡い星     ゆうな さき


小さな窓に 暗い星ひとつ
淡く やさしく 光っている
ねえ こっちへおいでよ
さそうけど星は答えない

暗い星ひとつ
だまって私を照らす
ねえ そっちはたのしいの
星は答えず 雲に隠れる

ねえ、またやってきてくれたね
雲が流れ、ちりぢりに星は光る

ねえったら 一緒に話そうよ

淡い星はぴかりと光って
さよならと言いながら

消えた








エントリ4  僕と優しい子     霞洋介


夢を見た
でも、朝起きたら忘れていた

約束をした
でも、昼ごはんを食べたら忘れていた

喧嘩をした
でも、夕ご飯を食べても覚えていた


夢を見た
起きても覚えていた
優しいあの子の夢だ

朝ごはんを食べた
でも優しいあのこのことは覚えていた

ドアを開けた
かばんを背負った
小さな自転車に飛び乗って僕は走り出した
太陽は元気に働いている
大きな声でがんばれと叫んでみた
返事はかえってこなかったけど、なんか幸せだ

公園に着く
僕の遊び場はいつもの場所
灰色の砂がたくさんあるところ
そこに優しい子はいた
灰色の砂をたくさんのせて山を作っている
僕は、気がつかれないようにそっと近づく
そして、横に座ってみると、優しい子は驚いて僕を見た
僕は、その子にこう言った

「昨日は、約束をやぶってごめんね。」

僕らは、それぞれ砂をもって山を作り始める
大きな大きな山だ
あの、富士山よりも大きな山
その山を作って、頂上から大きな声でがんばれって言うんだ
今度はきっと返事をくれるよね








エントリ5  惑星スープ     紫色24号


このスープには
何やら得体の知れない
沢山のあやしげなものが
凝縮されている
だから美味しい

この地球には
俄かには理解し難い
数多の面妖な者が
群れ集っている
それで面白い








エントリ6  時は流れる     有機機械


時は流れる

たかが数週間でも

たった2、3日でも

流れる時は全てを彼方へ押し流す

一見何の変わりがなくとも

何かが決定的に変わっている

例えば夜空に瞬く星達の座

例えば打ち寄せる波達の姿

例えば彼女を取り巻く状況

例えば彼女の気持ち

それに気付かずはしゃぐ僕

そして恋は破れ

僕は知る

時が流れるということは

時計の針が回ることなんかじゃないということを








エントリ7  へルター・スケルター     大覚アキラ


明日のために その1

 一人でいると
 寂しくて気が狂いそう

 二人でいると
 思わず相手を殺してしまいそう

 三人でいると
 口が滑ってほんとうのことを言いそうになるんだ


明日のために その2

 ほんとうのこと話してやる
 ここだけの話だぜ

 終わりと始まりは永久にループしていて
 その回転は徐々に減速しつつある
 遥か大昔
 まだ回転が速かったころは
 ロデオの荒馬から振り落とされるように
 いろんなものがループの外に吹っ飛ばされた
 恐竜はみんなループの外に飛んでったんだよ

 ここ最近は回転がゆっくりになる一方だから
 外に飛ばされるヤツもほとんどいない
 おかげで終わりと始まりのループの中で
 だんだんみんな不機嫌になってきてるのさ
 だから殺し合いや戦争がいつまでたってもなくならない

 いいかよく聴けよ
 ここからが肝心だ
 ループの外から戻ってきたヤツは一人もいない
 ループの外のことは誰も知らないんだ
 でもおれは知ってるのさ
 ループの外こそが
 ほんとうの世界
 ここは
 終わりも始まりもない偽物の世界だ

 ループの外に出るんだ
 それだけが唯一
 偽物の世界を脱出する方法
 削ぎ落とせ
 何もかも削ぎ落とすんだ
 ループの外に出るには
 究極まで身軽になるしかない


明日のために その3

 そこでオススメなのが
 このスーパーアストラルダイエットドリンク
 あの力石徹も使っていたという
 幻のダイエットドリンクです
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明日のために その4

 ここだけの話というモノほど信用ならないものはない


明日のために その5

 もう一度言う
 ループの外に
 出るべし
 出るべし
 出るべし








エントリ8  さよならの人     ヨケマキル


小夜鳴鳥の泣いている
奇妙な水の満ち満ちる

さようなら さようなら
生ける私はさよならの人

銀の鼠の飛んで来て
頭ににょきりと乗っかって
滑稽であり滑稽であり

わたしは かの時 さみしかった
わたしは かの時 絶望でしたが

ひゅうひゅうと
風に泳ぎ
けれど木を見た
ひゅうひゅららと
宙に迷い
けれど森を見た

あれこれと考えてはみたのですが
今度は会えない
今度はもうお会いできませんが

ざわめきの
おいてけぼりのかなしみの
かなしみのかなしみのかなしみの
そこにわたしはいないのです

生けるわたしはさよならの人








エントリ9  戦火のあと     箱根山険太郎


そんなにビシッと
気を付けしなくていい

君みたいに小さい子は
泣いてもいいんだよ

おぶってる弟
死んでいるんだろう

焼いてもらいに
ここへ来たんだろう

降ろして泣いてもいいんだよ

でも
少し泣いたら帰れ

こんなにたくさんの死体

まとめて焼いてるとこ

俺も見られたくないから








エントリ10  Foolish     kei


何回やっても

直せないんだよ

ただ

僕がバカなだけなのか

やろうとしていないだけなのか

もう解らない

もう頭を調べ尽くすのはやめてくれ

もう疲れたよ

解ったよ

ママ

僕が悪かった

こんな奴

消えちまったほうが

いいよな

解ったよ

ママ








エントリ11  ペパミントグリンブルー     佐藤yuupopic


くちびるだけ、

(いろんな モノから 未だ 醒めやらぬ
起き抜け、)

熱い


わたしが生まれる三年前にニューヨークで死んだマーカス・ロスコヴィッツ
の一九六一年作無題、的に朱赤オレンジにクリームのシャツ
似た色のスカート
メキシコ生まれのブーツ
バッグは会社
ポッケにケータイ
歯ミガキ粉、口ン中残る味、うちのと違う、
鮮やか
ペパミントグリンブルー
(キャラメル煙草、切れた あア、吸いたい)

宮下公園のガード下を渋谷から神宮前方面へ
しん、と

しん、と
しん、と
した
朝を

わたしのじゃないスピードで
(ほンの
先刻まで
わたしの中にいたKタロウッ、
憑依したみたく)
抜ける

いま
そオ、
この
瞬秒、
ああ、
Kタロウ


シャツのボタンの裏側
滑り落ちるみたく
薄れ消えてゆく
わずか
前の
気配

愛してるとかそうじゃなイとか
そんなクッダらねエ思い違いとかじゃ
なくッて
Kタロウが
わたしから
全部去って
ゼロになる
のと
それまでの
コンマゼロゼロイチのイチの百乗との
境目が
酷く
やで
もオ、
どしても
やでやで
やで、
たまらないだけ、

(それだけ)


一九六一年作無題、的に朱赤オレンジにクリームのシャツ
似た色のスカート
メキシコ生まれのブーツ
バッグは会社
ポッケにケータイ
キャラメル煙草、
吸いたい

何処をとっても
(ちょっと前、ガム噛むみたく、キスした)
わたしのじゃないスピードで
(Kタロウが好き、かも)

ペパミントグリンブルー
歯ミガキ粉色の
朝を

明治通りを、渋谷から神宮前方面へ


(会社まで、そう、
 あと二分)








エントリ12  smail     伊理


気持ち悪い。



アレを、考えると気持ち悪くなった。




アレを、考えるとお腹が痛くなった。頭が痛くなった。






アレを、思い出すたびに、心の臓が出てきそうになった。






アレを、思いだす度に




ココロが




傷んでいたんだ。









そのことに、周りの人達が気付き、気遣い始めた。








ゼツボウのハジマリ。。。。。









「あなたの力になりたいんだ。」










「私に出来ることはある?」










ワタシハシッテルヨ。










ミンナ、、、、、、ギゼン、、、シャ、、、、ナンダヨ。。。。。。










シンジラレナカッタ。










アナタがワタシをタスケテどうなるの?









ナニ? アナタにお金が入るの? それとも、ワタシより優位な立場につけるから?







ナニ? それともワタシがあなたに感謝するとでも思った?









ワタシは、人にヨワミを握られるのだけはゴメンだ。






なぜ、わざわざそんなことを言わなければいけない?







でも、周りの人たちのことがタイセツだから、ワタシはワラウ。







ワタシはアイソワライをして過ごすんだ。







ウソのナヤミを、周りの人たちに言って、そのナヤミをイッショに考えて、でもワタシは考えるフリをして。







最後にはあなた達は笑う。私も笑う。






でも、ワタシはアイソワライだけれど。







もう、疲れた。 体も、もう限界がクルみたいだ。








だけど、ワタシはワライツヅケルでしょう。






※作者付記: 事実だったり、そうじゃなかったり。。。(苦笑)




エントリ13       マリコ


旅はいいねぇ。
自由を一番感じやすい。
旅に出て涙が出たら、もう帰りな。
もう君は許されてるよ。








エントリ15       葉月みか


私は闇

星を連れて
明るくひろがる
果てしなく漆黒に近い濃紺

誰にも染まらず
すべてを包み
何より透明

私は闇になる




※作者付記: 私が15歳の時に書いたものです。あれからもう10年近く経つんだなぁ……(しみじみ)
変わったところ、変わらないところ、あるけど、これ、まだ、コア、に、あるんじゃないかな。




エントリ16  空三景     相川拓也


ぬるい夜
星少なく
ぼうっと月が
虚空に浮かぶ
月よ
お前だって
他人の光を借りているだけだろう
上から下界を照らしていたって
おまえ独りでは
なにもできないんだろう
(俺は?)
おい 月よ
他人の光を借りているだけじゃないか

真っ青な昼
風そよぐ春と夏の間
雲がゆっくり ゆっくり流れていく
ああ
翼があれば
あの空へ舞い上がれるだろうか
いや
青で満ちたあの空では
風がひしめき
氷塊が飛び回る
翼があったって
どうにもならない
志ばかり
肥え太っていく


ひゅるるんと
遠くの空でとびが鳴く
おまえは
悩まないのか
悩む頭がないのか
(頭だけあって翼がないのと
 どちらがいいのだ)
足下
割れたアスファルトの隙間で
蟻がもがく
いつかは登れるのか
非力な足でもがいたところで
だが
何もしなければ
何も起こらないことを
おまえはわかっているのだろう
それでそうして
もがき続けるのだろう?
小さなシーシュポスよ
悲しくないか
悲しくないのか








エントリ17  風呂場で嘔吐 そしてガンガン     庭


たとえば肉の音

金属こそ遥かに
銅鑼の音を懐かしく
踊る日々
踊った日々
日輪の咲くあなたの心
底知れぬ深い穴 黒い瞳
虹彩を見据えて発情する私の弟
女の虹彩を汚す 少々フェティッシュな騒乱
邪悪に映る無垢

貴女に責められて俯き ぽつぽつと歩く
うなだれた頭からは脂じみた髪がだらしなく伸びていて
虹彩を覗き込む前に7割の女から絶交される
無精ひげが悪臭を放ち ヤニで黄ばんでいるが
汚いことは現代においては悪で 愛からは遠く離れていくばかり
しかしこの垢
   この脂
   この精
確かに邪気が溢れ返ってはいるのだが
こちらの都合としては
貴女に非がある
喉笛を食い千切りたいほどに悔しさがこみ上げるのだが
現実には未消化の烏賊だけが喉の奥からせり上がる
喉に詰まったその足を引きずり出そうと指を突っ込むと
まだ吸盤が生きていて 指までが喉の奥に吸い込まれてしまう絶望
嘔吐もできず

ただ錯乱したリズム

指はさらにディープスロートを望み

まぶたの端から涙ひとしずく

何も出てこない
望みはひとつ
ショックの連鎖

垢の連続性
脂の連続性
精の連続性

木酢の匂い漂う浴室で
具合の良いエコーに酔いしれながら
謳うメタル嘔吐の鎮魂歌

定まらぬ視線の先に
犯された虹彩のかけら わずか








エントリ18  こころに、触れただけの指の跡     空人


下弦の月が しずかに佇むとき
僕はひとり こころの疵を数えてみる

目を閉じると 体はうすい青色に透きとおっていく
かすれた疵 海溝のように深く ささくれた疵
くろい染み しろく消した痕
何もかもが 違ってみえた朝
くもる視界
やがて


こころには疵だけじゃない
あの日のいたみまでが
すすり泣いていた

消えかかる 月の光にかざしてみると
ところどころが すこし光った
かすれた疵 海溝のように深く ささくれた疵
さっきまで見えなかった
やさしく触れただけの 指の跡まで

目に見えないこころに
名前をつけてしまったそのときから
みな 僕のこころにさわろうとした
ときどき 爪を立てられた 誰もこない街角に忘れられた
僕も みなのこころにさわろうとした
ときどき つよく握りつぶそうとした すくい上げることをあきらめた
丸い輪郭をもったそのときから
こころに
内 と 外 ができてしまった

いたみは消えない
疵を磨いて消したとしても
その痕が残るのみ
僕は
そっと触れただけの 指の跡を
懸命に守って眠ることにしよう
そのはかなさだけは
消さないように








エントリ19  太極図     木葉一刀


翌日を思い浮かべながら
心、沈む夜に
思い浮かべた太極図

光の中に闇あり
闇の中に光あり

そっと手と足を比べる

いつのまにか日に焼けていた手
こんなにも黒かったのか

いつまでも日に焼けぬ足
こんなにも白かったのか

手の黒さの中には光が見出せない
足の白さの中には闇を見出せない

そう心にも
心の闇の何処に
光があるというのだ

翌日を思い浮かべながら
心から溢れた
瞼に滲む叫び声の跡

腹の底
肝が震える
吐き出した叫び
今日を生きた糧

吐瀉物の中に
蹲り
おちる
日々に幕を落とす

こうすれば
楽になれるはずだから
心の中に射す今は唯一の光明








エントリ20  今年もブルーベルが     詠理


今年もブルーベルが咲くのか
まだ梅雨のかおりただよう丘にとり残されて
私はかなしそうな本を手に思いにふけっている
まだしおれていない肖像のような視線をまっている
けれどそのすがたがみえない
もやにまぎれてしまったのは石化した珊瑚ではないのに
いちめんで花ほどにあたたかい砂がないている
しだいにしっとりとしずんで
まずしく荒廃した情緒にびっしょりとぬれて
ここちよさのほかなにもない
かしげて見守っている寓話のような
目のまえの木立ちのうねりがさっきから
私はとっくにむこう側にわたってしまったのだと考えさせる
なみだぐんだ季節にながめられている
みどりのとぎれたらしい奥ゆきをじいっとみつめて
そういく度もくりかえし感じたりしたが
ふたたびうしろを向くことはできず
よろよろとしたつぼみを背におりていくことができず
まだのぼっていきたいのかもしれないと感じもする
まんまるい共鳴たちがとりとめもなく追跡してくるようだ
どうしてか決してつかまることはない
おいていくこともできない
予感が自らすれちがっていく
というのはどういうことなのだろう
むかしの眼がさきのほうをさぐってもとらえようもない
ながいこと静かに濃密に暮らしすぎたせいだ
はじめて別れをかなしまなかったのは
いつだったかもう思い出せない
ただ遠ざかったはずの終わりは
いまでも永遠そのものとして寄りそっている
六年もわかいころはつたなく草むらに座りこんだり
教室につづく道にまようことはなかった
足踏みする胸もいさぎよい暗さをつきぬけて
しずかな夜明けをむかえた
ほんとうにそうだっただろうか
はるばると装っていたという気が
夜の満ち潮のように燐光をふくんでよせてくる
あしもとの水たまりにぶよついたしあわせがちらつく
ちぢれてしまった和解もそのすぐそばでひざまづいている
ふたつのきらめきだけがこの丘のあかるさだった
けれどこの草はらはいっこうにむなしくはならない
かすれたかぜがながれる つむじかぜ
あどけないはばたきが失われていく眼をこえて
私のふるえる水滴をつれていく
ほこりもたてずにかくれた静脈の感触をおとす
まるはだかのがらんどうの露
いまだ海のようにうす明るいこの憧れを
きかずにはいきられない
つりがね草のように垂直に
息をふきかえしつづける湿地でききながら
私はおだやかにおだやかにまつ
おとなびたブルーベルが咲く
今年も日にやけきった本のなかから
ひとひらのことばが純粋なそら色へちかづいていく
ずっとやすらかに寝つかせていたはずの
夏がはじまる








エントリ21  オールザットジャズ     ぶるぶる☆どっぐちゃん


なんとか痛みを共有できないか
白く光る聖なる蛇が絡み合うみたいに
お互いのもつ傷を
なんとか共有できないか
カラスは次々と地面へと墜落していき
鍵盤を鳴らしている
ジャズ ジャズ ジャズ
オールザットジャズ
問題は本当に速度なのか
光でさえ一秒で地球を七周だとかそれくらいしか出来無いのに
なんとか痛みを共有できないか
プラットホームで踊ろう一緒に
絵の具がこんなにあるのに
どうしても一色足りない気がするよ
問題は本当に速度だった
単純な色のスポーツカーで
ああたったの時速300キロで
のろのろと長い道を地平線まで
戻っても何も説明しないと思う
そして それで解って欲しいと思う
のろのろと伸びたキラキラ光るビル群に
囲まれた道の真ん中で
あなたはあの色のワンピースを着ていてくれればと思う
わたしは単純な色のスポーツカーで
ああたったの時速300キロで
あなたは道の真ん中で
ジャズが
カラス
オールザットジャズ








エントリ22  スタート     さと


  電話なんか切っちまえ そんなに話していたって 無駄さ
  雨が降ってくる前に ここを出るんだ さあ
   
  靴なんかどうだっていい そのサンダルを持っていきな
  今は裸足で 足音なんか させちゃいけない
   
  夜風が二人を迎えてくれる 星はどこにもないけど いつかは見れるさ
  物置の奥 シートをはがして シャッターは静に そっと そっと
  赤いタンクが裸電球に輝いた お前の頬も輝いた
   
  アスファルトの道に出るまで そっと そっと
  雨が降らぬよう ずっと ずっと 祈るのはお前の役目だから
   
  黒いアスファルトに風が流れる 西から東へと 風が道を知らせている
  中央線の黄色いラインが途切れる所まで お前は裸足のままで
  そっと そっと ずっと ずっと
   
  二人で夜を抜け出すのは何度もあった だけど今夜はいつもと違う
  お前もそれを知っている 俺だって分かってる
  ここで エンジンをかけてしまえば ここで こいつに乗っかれば
  風が俺達を薄暗い未来の光の中に 連れ去ってくれる
  戻る事など ありえない
   
  セルが軽やかに回る バルブが16ビートを奏でる 振動が二人を一体にする
  アクセルは走る為にあるんじゃない 未来に向う為に回すのさ
   
  軽く二度 ふかし 後ろを振り向いてみる
  黄色いラインの向こうに 昔の自分が立っているようで
  知らないうちに 自分が大人になっている事に 気付いたようで
  軽く二度 ふかし 後ろを振り向いてみた
   
  お前の輝く黒髪は しっかりと 俺の背中に埋もれていて
  お前の微かな鼓動は しっかりと 俺の背中に響いていて
   
  正面を見て 薄暗い闇の中に向って アクセルを回す
  振り落とされぬように お前は俺にしがみつく
   
  「もう、もどれないぞ」
  「なに? きこえない」
   
  16ビートの奏でる夜風の中 お前と二人 スタートした








エントリ23  二人羽織りの極意     イタリアン・ラッシュ


極意をつかんだので
あしたあのコに会いに行こう

二人羽織りを持って
あしたあのコに会いに行こう

ときに恋は盲目だけど
心配ないさ
何も見えなくたって
この甘いケーキはしっかり君の口の中
ほっぺに生クリームつけたりしない

だから
あしたあのコに会いに行こう
二人羽織りを持って








エントリ24  霧雨の降る     ←8ソラン(いぐ)


例えばそれは、南国の蝶のように、
甘い香りを発し、
闇に伏せた光を好んだ。
夜の東京が好きだと、そう言った。
確か、雨だった土曜日。

こいつを買ってみたものの、
どこか白けていて、
そんな気不味さに雨は良く似合っていて、
サーッと言う雨音を聞きながら、
ろくな話もせずに、歩いて国道沿いまで。

ぼんやり明るい自販機の前で、
温かいジョージアを渡す。
微笑。そばかすだって、悪くねぇ。

お前を選んだのは大した理由なんか無くて、
ただ、綺麗な青いシルクが、
モルディブの海で染めてきたような青いワンピースが、
お前の痩せた胸や濡れた足元で
儚く揺れたから。

アルコールで滲んだ俺の目に、
南国の青はまた揺れる。
マタドールに挑発された思春期の雄牛は、
多分こんな感じ。

うっとりするぜ。
うっとりするぜ。

45rpmで世界が回り続けるなら、
それはきっと素敵な事。
ネオンも汚水も光の雨もピアノの音も
みんな綺麗に混ざればいい。

俺とお前も、そうなればいい。








エントリ25  生きるそして生きる     児島柚樹


生きるということ

起きる

食べる

歩く

寝る


笑う

怒る

泣く


見る

聞く

触る


生まれる

生きる

死ぬ

腐る

分解される

世界が廻る

物が循環する


何かが消えて

何かが生まれる


喜ぶ

葛藤

座捻

それでも

生きる











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