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第40回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1錻力家族児島柚樹537
2無為の涙 香月朔夜20
3フランスパンと蝗歌羽深空610
4赤道直下をとおっていく詠理1846
5ハンドレッド有機機械172
6梅雨、或いは其れに続く鮮血凜一151
7ゆふな さき144
8ねとりとヨケマキル548
9愚鈍児kurbt198
10火色の天紫色24号77
11青の世界マリコ131
12赤と黒佐藤yuupopic1230
13友愛蒼樹空243
14(作者の要望により掲載終了しました)
15素晴らしい世界大覚アキラ304
16初めまして。村上かおる187
17250
18カン・ケリさと1109
19僕は夢を見る。霞洋介358
20カウンター・カウンター カルチャー←8ソラン(いぐ)137
21お風呂場氷月そら412
22マリリン・モンロー ノーリターンぶるぶる☆どっぐちゃん519
23まだ見ぬ夜に空人452
24タマゴをチンイタリアン・ラッシュ98
25夜の侵食木葉一刀(コバカズト)263
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ1  錻力家族     児島柚樹


家族



あなたはそれを信じますか

父親は単身赴任
もうそろそろ顔が思い出せなくなるほど帰ってこないで
私はもう父に甘えられる術を忘れました

母は仕事
もうそろそろ暖かいゴハンの味がわからなくなりました
私はもう母に甘えられる術を忘れました

狭い家から
広い家に
私はひとり

家族って何だろう

少し前
ポストに入っていた父からの手紙
テーブルに乗っかった母の手料理
暖かい空気がかすかに残ってた狭い家

あぁ繋がってるんだなって思ってた


ポストに入っているのはダイレクトメール
テーブルに乗っかっているのは一枚の夏目漱石
冷たい空気がひしめき合ってる広い家

もう繋がってないんだ

なのに家族

金鍍金も勿体無い錫で充分
私たち家族は錻力

ある日
学校から帰ってきてそのままベッドにダイブ
起きたのは夜中

家は多分私一人だろう
窓から見えた三日月が私を笑ってた

階段を降りて見えたもの

テーブルの上には苺のケーキ
横にはラッピングされた箱が二つ
父と母から私に当てたもの

そうか今日は私の誕生日だったのか

広い家

微かに解る

暖かい空気

食べた苺のケーキは
少ししょっぱかったのは何故だろう


ねぇまだ繋がってますか?
信じてもいいですか?

私たち家族は絆がありますか?
バラバラでも繋がっていますか?

戻ってくるのを信じてます
この広い家で例え一人でも

私たちは繋がってる







エントリ2  無為の涙      香月朔夜


ひとすじの涙が流れた。
これは怒りか。悔しさか。
それとも悲しみか。喜びか。
そこに込められた感情を読み解く事さえ出来ず
なのに 止まらない

その雫は熱くもなく、冷たくもなく、
常温に満ちている。
ただ 頬を伝いゆく感覚だけは真実。

何を伝えたいのか
何を訴えたいのか
心は語らない。

わからないまま、あぶれ出した想いだけが、
静かにつたい、
流れ落ちて、


………―――消える。







エントリ3  フランスパンと蝗     歌羽深空


パリジェンヌがクネクネと東京のマチを歩いてる
此処じゃあ東京タワァもエッフェルさんに見えるってか!
私にはどうもその格好がエスカルゴに見えるんだけれども。
こりゃまた失敬。

パリジャンがスタスタと東京の街を歩いている
此処じゃあ東大赤門も凱旋門に見えるってか!
私にはどうもその格好がグラスホッパァに見えるんだけれども。
こりゃまた失敬。

フランスパンちぎって食べたら ちぎった手からフランスの匂い。
(しかしフランスってのはこうも柔らかい香りがするモンかね。
私はもうちょっと毒々しい花の匂いかと思ったけれども。)
赤白青の旗がパンの煙の向こうで揺れてる

なんてこった!

実際のところあんまりフランスじゃあこのパンを食べないそうじゃあないか!
畜生
畜生

蝗の佃煮恐る恐る食べたら ちぎった手から独特の青草臭。
(しかし日本ってのはこうも若々しい香りがするモンかね。
私はもうちょっとしつこくて苦い匂いかと思ったけれども。)
赤白の旗が茶色の瓶の向こうで消えてゆく

どう思ったのか、そんな夢をみた。
英語が駄目なら、仏蘭西語なんて、如何?と
言われたからに違いない。

ベッドから降りて思った事は
現地のカフェで緑茶飲んで羊羹食ってやりたいなって。
そしたら、現地の奴はこう思うんだろうな。

ジャパニィズがフラフラとパリのマチを歩いてる
此処じゃあエッフェル塔もFUJIYAMAに見えるってか!
私にはどうもその格好がテンプラに見えるんだけれども。


・・・・・・こりゃまた失敬。







エントリ4  赤道直下をとおっていく     詠理


王と王子が沈潜している
八月のスコールは大粒だ
夜にのろわしい雷雨となって
火葬場を準備させる
燃えるつもり
横顔の女がわらいながら
松明をふる
燃えたつようなさびしさをもって
ゆるされた悪意のどよめきをもって
自らのゆるしについて
考えながら
火をつける
雨はいっせいに夕日色になって
わらう祈りがすきな女の
肌がゆるやかにぬれる
赤土にしめった椰子の葉の一枚になっていく
私は大粒のなかに雨宿りをしながら
つまずくような葉脈の心拍をきいて
おだやかな生命かと思うのだ
横顔をてらす十字路の幻燈の
方向がなくなるように結合して
肉のにおいがきえる
ああ
受け継がれるべき王冠はようやく
燃えたようだ
私はもうろうとカーテンをひき
焼ける水滴をひろいつづけて
まだ路ばたの熱帯草を
そだてている
肺の手前までだった十二の煙草は
物置小屋の奥で
四人だった
心裏では一人だった
おびえた生霊がおどっていた
祈りのようだったライターの明りに
こごえてわらうしかなかった
耳をかすな
幻燈は嘘ばかりいう
いまに椰子の葉が落下する
あきらめたように落ちる
水はながれていく
丘をのぼって
突端でなみだをながす
そのとき私の感情は
祈りと祭りとのあいだを覗いている
ちりばめられた骨片が
ゆだりあがって
地面が煮えついてしまう
ながいながい晴天だ
すぐ下に蒸発していく滝がある
これは南国のめまいだ
過去は
いま歩いている
人とはなれてたち
にぎやかな歌をうたって
かえろうとしている
ちいさな流れに浮いている記憶は
海のような土壌の片隅を目指しているのだ
けれどその足もとのあたりに
原色の花はない
モンスーンの重みをかんじない季節がやってくる
さかしまな夏が噴きあがる
しかないというのは残念でならない
さっきから通りぬけている
種子のように生りつづけている鐘の音の
決して仮想ではない親密さが
憎らしい
重たそうに
瞬きが手をつなごうとしている
その繋ぎ目に
欠落を
なげているのは私だ
追憶の両眼は目覚めることのない眼だ
霧がかかりはじめた水面に
うらぶれた背をのこし
私は死んでいくよろこびに支えられて
ちからなく
小さな川をたどる
信頼が間近にあるというのに
うな垂れもせずにほうっておくとは
誰のための慎みだろう
かぎりないうるおいが
ながれこんでいく暗みがある
子守唄であやされている黒光りの子が
生まれた九番ホームは
傾いていたのだった
しゃべろうとしても方言をしらないから
言葉はだされないし夢はみない
のではなく
夢は暗みに耳をかして
かなしくてすっ飛んでいってしまった
だんだんと日が暮れつつある
校庭の様子をみていたはずの
私の四人の先生は
いつのまにか望遠鏡のむこうで遊んでいた
レンズにうつった黄色い裸体は
こなごなの陶器のように割れていた
かれらが昔
本心でまじわろうとする思いは深い欲求なのだ
といったことを忘れていた
私のからだは
蒸し暑くなってきている
雨がふる
高揚していくためいきが
いきどおる鼓動をうってふる
けれど水をはらうように
得るよりも失いたがる手のひらに
脈はきこえない
と考えはじめると
私の世界はしずかだ
こんなつよいおもいが求められてはいけない
浴びているということは
つまらないことである
そういって
ただ歩くように立ちどまっていると
萌黄色の善意がみえてくるような気がする
が善意に色があっただろうか
もうここは
汗ばんだ波打ち際だ
ためらいの実がうちあがる
人間の境にいる
生垣の棕櫚はとっくに枯れてしまった
情熱は純粋になりそこねてしまったと
生身の道がささやいている
まじわろうとして私は
まるで息をひそめたランターンのように
ゆらいでいる
ふいに
父母のよび声にさらわれて
心が驚いて風化する
こげくさいアルバムを閉じる
なみはうすいページだった
からからにかわいているのだった
なにも燃えて
いなかった
けれど私はたちのぼる蜃気楼の先で
ひとつの震動をみつめて
燃えている
燃えていく
よどんだディテールであり
火傷した存在である
私は
ああ
どこまで矛盾するのだろう
すこしも
本心から純粋を捧げたことはなかった
たゆたう暗みを突きぬけていく
みちあふれる実体が
煙たい
けむたい
ということはいえないのだ
空はあおすぎて灰色で
なにも燃えていないとあえいでいる
しかしどうして
ひかれあう暗みからたちあがれるのか
と考えてはいけない
目をとじて
ねむたいねむたいといって
ひとりでに燃えつづける蒸気からころがりでて
とおざかり
のどかに
夜明けのふるさとへ
寝がえりをうて
ゆりかごが湖面を抱いて
永遠をめぐっている
また朝がくる
水底はうすくひかりだす
そのまんなかに
一本の枯れ木がたっている
淋しい
さびしい
ほら
私は
水鏡のうねりのなかで
うたたねしている
地軸だ







エントリ5  ハンドレッド     有機機械


いつからだろう

百万円がそれほど大金ではなく

時速百キロがたいしたスピードではないと知ったのは

それから

百様の夜を越え

百度の恋をして僕らは大人になり

百発のボディーブローをくらい

百遍の後悔を繰り返し僕らの心は鍛えられた

だから

百万円を握りしめ

時速百キロで突っ走っても僕は何とも思わない

それでも

通りを駆け回る子ども達や

まぶしく輝く夏の海を見て百粒の涙を流す







エントリ6  梅雨、或いは其れに続く鮮血     凜一


三月の悪魔、が
六月の夢魔になって再来
左手には虹色、の渦巻きキャンディ

凡庸な僕の心、は
住宅地にそびえる億ション
管理費ばかり、が脳髄に積もるんだ

爽やかに見えるもの、は
煙草の広告だけ


「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」


精神は損なってくれないの、かい?

僕、は一生
煙草、は吸わない







エントリ7       ゆふな さき


とろとろ うごめく 黒に近い 透明
さらさら 流れる  金に光る みどり

学校をさぼって 歩く川の岸辺
シンとする 暑い空気

 学校終わる  私は言う
 知ってるんだ 心が言う

 この景色はもう最後

昆布みたい その黒髪 
風にたなびいて ゆらゆら
だってこれが、消えちゃうのでしょ?

川みたく私たち 流れ。







エントリ8  ねとりと     ヨケマキル


隣家の一年中出しっぱなしの風鈴が狂いだしたのは
ここらでは珍しくないキツネ火を
我が家の窓まで吹き飛ばした 
あの雑風の仕業だ

その隣家の虐母は
今日も赤子にハッカ煙草の焼印を押す
泣け赤子よ泣け
母はあの やけに蒸し暑い春の日に
お前という肉塊をうんしょと捻り出したのだ
おまえはやがて大人になり
その憎しみをね
慈に悲に哀に変えればいいんじゃあないか
それでいいんじゃあないか

あそこのだんなさんいつも家におるで
奥さん夜中まで働いて大変やわあ
と、となりのとなりのとなりの家の奥さん
お宅のだんなは黒酢にウォーキングかえ
私はね
憲法第二十二条にのっとってね
ここでこうして暮らしておるんよ
じゃませんといてたのむわ
どこへもいける
なんでもできる
ですがそれは
ものすご孤独な事でもあるわけです
どこへもいけへん
なんにもでけへん
そんなしあわせもあるわけですが
ところで
赤尾敏は終生山口二矢のデスマスクを傍らに置いていたというね
ほんとかうそか知らんが
泣ける話だえ
ほんとの孤独っちゃあそういう事やっちゅう話や
わかるか奥さん
まあとにかく
私かてニコチンに負けへん強おい体作ってね
お宅の働き者のだんなと長生き競争やっちゅう話や

うわあごの内側に
ねとりとした感触あって
それ炭酸水で洗い流し
風鈴の音に抱かれ
今日も眠る

あん子が産まれた時みたく蒸し暑い夜よのお







エントリ9  愚鈍児     kurbt


くだらねぇ毎日
と、言ってみたところで現状は何も変わらねぇ
毎日を妄想に費やす生活
でも、現実を見るのは怖えぇってんで詩を書いた

辺りを見回してもまともな人間なんていやしねぇ
なんだ?
今日はキチガイのお祭りか?
それとも俺が狂っているのか?

無政府主義者の行進を妄想し
曖昧な境界線から見える景色を淘汰せよ

悪夢すらも及ばない最凶のロック地獄

そこから何が見えますか?

そこから世界が見える

今、立っている場所こそが地獄







エントリ10  火色の天     紫色24号


そんなチープなプライドなんか
夕日にくべて燃やしてしまえ

ホラ燃えた

炎をまとってゴージャスだ

火星に嫁いでゆく花嫁みたいだろ

コングラチュレーション
どうぞお幸せに







エントリ11  青の世界     マリコ


コンビニで買った青いビニル傘は、
汚れたこの街を、ほんのちょっとキレイに見せてくれる。

何を見ても、もう心は痛まない。
青の世界は、すべてを浄化する。
軽快にリズムを刻む雨粒が、あたしの心を静めていくから。

それでも、
黒い雲に映る不自然な青空は、
あたしの心によく似ていた。







エントリ12  赤と黒     佐藤yuupopic


(自分の墓碑にさ、
「書いた、愛した、生きた」なんて刻ンじゃって、いいじゃン。
 文学としてどうの、とか以前に、ドラマチックでさ、
 ね、あなたの生き方、最高だったンじゃない)


(赤と黒)

通勤途中の電車。
吊革につかまってるわたしの前に座ってる
大学生みたいな女の子
ケータイのストラップ、ジャラジャラ、キャラクタひしめき合ってるけど、
ブックカバーもつけずに読んでる、
古い装丁の文庫
(スタンダール)
なんて
読むんだね
ああ、そうか、ふウン
読むんだね

(あなたも、ジュリアンが好きでしょ)
だってそんな顔してるモノ
たぶんあなたと同じくらいの年の男の子
今の世の中に
あんなカンジはそういないでしょ
はじめはちょっと笑っちゃうけど、
でも、じき、キュうンて、なっちゃうの

(今、どの辺まで逢いに往ってるの
 もう、公爵の秘書になったくらいかな)

ねえ、
わたし、あなたの名前も知らないし
本当に大学生かすらもわかンないけど
たった今、わたしの目の前で「赤と黒」、読んでる女の子。
すっかり忘れてたけど、
わたし、ジュリアンを取り巻く運命や日々が大好きで、
パリなんて映画でしか観たことないくせに、
次に彼が
何処に往くのか
何を云うのか
誰を愛すのか
眼がど、しても離せなくて、
授業中の教室の、教科書の陰で、通学中のバスの窓際で、
真夜中のベッドで、時には、歩きながらすら、
昼となく夜となく、
逢いに往った
あの、
端から見たらきっと心配になるだろう、くらい夢中だった
十六歳のわたしを、
ほんのちょっと、だけ、
思い出したよ

もう、彼がどんなふうに笑うのかさえも朧気過ぎて、
ちっとも像を結ばないけど、あの気持ちは何にもまして強くて
本当はいないなんて、もちろんちゃンとわかってたけど
他の誰よりも、その時は本当に、そこにいたの

わたしは、たぶん
もう
逢い往くこともないだろうし
彼自身も、
もうyuuは来なくても、いいよ、
て云ってる気がして気後れしちゃうし、
何よりも、わたしはもう、お別れしたから。
いっぱい泣いて、もう逢いに来ないよ、て
お別れしたから、

(だから、
 ジュリアンによろしくね)

美しくて聡明で意地っぱりでプライド高くって嫉妬深くて野心たッぷりで
洒落モノで細身の服を呆気にとられるくらいサラッと着こなして
ホレっぽくて本当は弱っちくてちょっとバカな彼に
バカだけどうんとカワイイあのヒトに
よろしくね

お別れしなきゃならない、
「その時」がくるまで、
どうか、
どうか逢いに往くのを、途中で止めたりしないでね、
彼を、最後まで、ちゃんと見守って、
見送ってあげて欲しい
最後まで好きでいてあげて欲しい

(わたしの声なんて聞こえないだろうけど
 約束だよ)

わたし、こうしてまだしばらく、
ページを繰るのももどかしそうに先を急ぐあなたを見ていたいけど、
乗り換えの駅に着いちゃった。
十六歳のわたしがうンと大好きだった
ヒトを
きっと今、大好きでいるはずの、
女の子
一方的だけどあなたに会えてよかった

(バイバイ。
 ありがと。
 あなたに今にもまして素晴らしい日々が訪れますように。)







エントリ13  友愛     蒼樹空


 友よ・・・。
 
 清らかで、愚かな愛すべき同志。
 「喧騒と共鳴し、乱舞疾走したあの日を思い出せるかい。」

 友よ・・・。

 実直で、誠実な羨むべき同窓生。
 「光を拒み、闇の道を盲目に生きた僕を笑うかい。」

 友よ・・・。

 野心家で、貪欲な抗うべき夢追い人。
 「想像の限りを尽くした、あの広大な絵空に値を付けるのかい。」

 友よ・・・。

 混沌で、無希望な同時代を生きる仲間。 
 「前途は多難だ。しかし、生まれてきたことを決して、悔やむな。
力一杯踏み込み、高みへ跳べ。そして、美しく果てよ・・・。」







エントリ15  素晴らしい世界     大覚アキラ


いま
この瞬間
どこかのだれかが
すべてを終わりにするためのスイッチに
その指をかけているとしても

この世界が素晴らしいことに変わりはない

雨上がり
鮮やかな緑の葉
蜘蛛の巣についた水滴が太陽を映して輝く
細い糸に絡め取られた蜂の死骸さえもが
神々しく輝いている

増水した河には
ペットボトル
長靴
コンドーム
鮒の死骸
ホテイアオイ
ぬいぐるみ
あらゆるものが流れていく
汚らわしいものも
醜いものも
すべてが太陽を浴びて
輝きながら流されていく

アスファルトの道路には
通り過ぎる車のタイヤの軌跡が
艶やかに輝くラインを描く

叫び声
ざわめき
クラクション
風の音
歌声
サイレン
ささやき
爆音
泣き声
シュプレヒコール
笑い声

時よ
とまれ

この
美しく光に満ちた
素晴らしい世界よ







エントリ16  初めまして。     村上かおる


仲良しこよしは疲れるな
だけども一人は耐えられない
つまんないけど笑ってあげる
間違ってるけど黙っている

友達つくるの下手だから
あの人がうらやましい
誰とでも話できるんだよ
あの人みたいに生まれたかった

今夜も電話をかけている
鳴らない電話は怖いもの
愛していると言ってくれたら
あんたのために何でもするよ

ほめられて嬉しかった
だからまた詩を書いた
だからまた詩を書いた
だからあんたを好きになった 







エントリ17       庭


重く
低く
プラズマの放射が瞬く暗雲の間に
全裸であまりにも無垢なジョーカー

轟 轟 轟
叩きつけ押さえつけるような
拷問の痛みと共に
逼迫し追いつめられる精神
その中心には
確かに存在する激烈な優美
確かに存在する残虐な煽動

唯一無二の誇りを掲げ
他眼の干渉を引き裂くその名に 私は揺れて
ただ垂れ流れた 涙
鮮明に明滅して心に反射する私の 憎悪
                因果
爛れてしまったがそれでもそこに存在するあなたへの想い

圧され 潰され
全身から滲む水分に泳ぐ私の心に蘇るのは
やはり

白く 白く
ただ白く

唯一無二の 誇り



※作者付記: <struggle for pride>
私は彼らを間近に聴いた最初の夜、そのあまりの音圧に思考が停止したのを覚えている。
だがその瞬間、私はまっすぐに自分の心が見えた。
いかに汚れてしまおうと、無垢は誰もがそこに持っている。
彼らは音である。言葉さえ音としてそこにはあった。




エントリ18  カン・ケリ     さと


  「さっちん、みーっけ」 カラン コロン カラン
  
  カンケリなんて この歳になって
  やるなんて 思ってなくって
  
  それに
  あたしが鬼だなんて カンを守るなんて
  思ってもみなくって
  
  なのに
  ちゃっかり探すなんて
  こんな人いるんじゃないかって いるんだろうって
  
  やけに
  所帯じみてるなんて 言わなくったって
  いいんじゃないかって
  
  たまに
  携帯見るなんて 信じてないなんて
  嫉妬深いって うざいって

  どこに
  隠してるのって あたしをあざ笑って
  そんな人って どこに隠してるのよ
  
  絶対に
  みつけるの あたしを脅かす あんな人
  絶対にみつけるのよ
  
  あんたに 操られ 戻っては探しに 戻っては安らいだつもりで
  あたし一人が踊り続けているだけ それに気付いたのが 今だなんて
  
  誰かがあんたを奪いに来る 誰かがあんたを誘惑する
  あたしはじっとしていられなくって あんたの傍を離れなきゃいいのに
  あたしはじっとしていられなくって あんたを優しく抱きしめてりゃいいのに
  あいつらが気になって 邪魔くさくって 仕方がないの
  あんたの隠してる あいつらが 気になって 気になって
  
  
  カンケリなんて この歳になって
  やるんじゃなかったって 後悔したくって してるって
  
  あたし
  あんたが缶だなんて あたしが守るなんて
  出来もしなくって 出来ないって
  
  あんた
  ちゃっかり知ってるなんて そんなこと出来はしないって
  出来っこないって 知ってるって
  
  あの娘
  所帯じみてるって あんなにうざったく
  言わなくったって あたしに言わなくったって
  
  その娘
  あたしを誘って 騙して誘いだすなんて
  それ見て逢ってるなんて 逢って抱いてるなんて
  
  どの娘
  隠れているのは あたしをあざ笑ってる
  そんな女 どこに隠しているのよ
  
  絶対に
  みつけるって あたしを脅かす
  あんな女 絶対にみつけ出してやるって
  
  
  「させ娘の さっちん みーっけ」 カラン コロン カラン
  
  カンケリなんて あたしが鬼だなんて あんたが缶だなんて
  カンケリなんて やるんじゃなかった あんたのお守りなんか
  もうね うんざりなんだって そう言って あたしはあんたを 蹴って
  けって けって 蹴り上げて ぐっちゃぐちゃになるまで 踏みつけて
  形なんか必要ないって 心なんて必要ないって
  白々しさの愛なんて そんなの いらないって
  
  そう言って あたしは あんたを ポイって 捨ててあげるわ
  分別ゴミの 薄暗い 箱の中へ







エントリ19  僕は夢を見る。     霞洋介


夢を見る。
何も無い世界を孤独に飛ぶ一羽の鳥の夢を・・・
そこは、終わった世界。
そこは、始まりの世界。
一羽の鳥は、静かに飛び続ける。
その羽に、孤独を乗せて。

夢を見る。
大勢の生命の中を歩く一つの生命の夢を・・・
そこは、終わりへと向かう世界。
そこは、始まりが過ぎ去ってしまった世界。
一つの生命が、静かに歩き続ける。
その背中に、無限の可能性を乗せて。

世界は夢を見る。
人間の夢や、鳥の夢を・・・
そこは終わりがある世界。
そこは始まりがある世界。
そこは不幸がある世界。
そこは幸福がある世界。
さまざまな可能性が行き交う無限の数の世界。
自分もその一部だという、認識を世界はもつ。
同時に、世界は願う。
全ての生命が幸福であることを・・・
同時に、世界は嫌悪する。
全ての生命が不幸になってしまうことを・・・
自らの体が、どうなろうと・・・
世界は、ただそれを願う。

僕は、夢を見る・・・・・・・・
永遠に続いていく長い長い夢を・・・







エントリ20  カウンター・カウンター カルチャー     ←8ソラン(いぐ)


髪を短く刈って、
爪もきれいに切り揃えた。
磨き上げた靴を履き、
学生服の襟を正した。

パパ、アイ ラヴ ユー。

僕は最高の敬意を持って、あなたを叩き潰します。

鋼鉄の薔薇が、ひしゃげるように強く。
双頭の鷲の、翼を千切るように強く。

本当にごめんね。だけど、
ここから先は、僕らの時代なんだ。







エントリ21  お風呂場     氷月そら


いつもいくショッピングセンターの
エスカレータであがったとこの正面に
香水のお店ができてて

無意識にきみがつけてた香水さがしてた
カルバン・クラインってことしかわかんなかったけど
そこにあったやつ全部嗅いでみたらすぐわかった

 くらくらした
 心臓ぎゅう、っとして、
 体の奥のほうがしゅわって、
 炭酸に溶けたみたいな感じして、
 
 きみに抱きしめられた感じ思い出して
 体の奥がもぞもぞ、して

つよい香りがしみて目の奥がつんとした

当然 いちばん大きいビンを買った

家に帰って、袋あけて、
ビンあけて、

 飲んでしまいたいくらいだった
 でも死ぬかもしれないからそれはやめとく

それから
お風呂場に飛び込んで、

 昔ここで、きみとセックスした
 あのとき、お風呂場は
 きみとあたしのにおいで、いっぱいだった

びんを、タイルの床に、
いきおいよくたたきつけて、割る
お風呂場、きみの、におい、で、
いっぱいに
なって、

くらくら、して、


しばらくあたしお風呂場で暮らそうと思う。







エントリ22  マリリン・モンロー ノーリターン     ぶるぶる☆どっぐちゃん


マリリン・モンロー ノーリターンなんて
ひどすぎる
マリリン・モンロー ノーリターンなんて
絶対に御免被る
マリリン・モンロー ノーリターンなんて
許せない
マリリン・モンロー ノーリターンなんて
ふざけるな

星条旗 音も無く燃え落ちて
ジャズ 音も無く燃え落ちて
ダンスホールの中を
人々 音も無く歩いて行く

マリリン・モンロー ノーリターンなんて
「ふざけるにゃ」
マリリン・モンロー ノーリターンなんて
「ばかにするにゃ」

マリリン・モンロー ノーリターンなんて
「いやだわん」
「駄目だぞう」
「信じられないキリン」
「そんなの嘘だタイガー」
「断固抗議だざうるす」
「がおー」
「わんにゃんにゃんにゃんにゃん」
「ぶるるるるる、ひひーん、にゃー、ちゅー、ちゅー、ぱくっ」
「くるっくー、くるっくー、くるっぽー」
「ばさっ、ばさっ、ばさっ」

吉祥寺のツタヤにある彼女のビデオは全てノイズがひどくて
住民は誰一人として見ることが出来無い
それでもいまだに人々は街を歩いていると
地下鉄の風に白いスカートを巻き上げられる彼女の
歓喜に満ちた幻を見るのだった

マリリン・モンロー ノーリターンなんて
マリリン・モンロー
ノーリターンだなんて

鳥達は無言のまま帰らざる河を越えていく

「ばさっ、ばさっ、ばさっ」







エントリ23  まだ見ぬ夜に     空人


汗ばんだシーツの感触を 背中で感じながら
わたしは 薄暗い天井を見つめている
不規則な荒息が 左の耳をくすぐり
ベッドを かすかに揺らしている
そんな夜に

唇で感じる生臭いにおい
秒針が刻む 時の音

このヒトは いつまでわたしを求めつづけるのだろうか
わたしは いつまであなたの重みに 耐えられるだろうか

沈黙の天井
薄く付いたキズは たしかシャンパンの コルクの跡
かすれていく あの日

あなたの呼吸は
しだいに ゆっくりとしたワルツを踊り
わたしの知らない世界へ 行ってしまうようで

いつかふたりで ベッドに入って
あなたの唇が わたしの鎖骨をなぞらなくなっても
あなたの背中を 見つめるだけの夜が続いても
わたしは

わたしはあなたを問い詰めたりはしない
気づかれないように 涙を流したりも しない
ただ

ときどき あなたの手だけは握らせて
強く 優しく握らせて
あなたの悲しみを
追い払うことは できないかもしれないけど

そして
もし 想いが届いたら
一度だけ 強く握り返してくれたら
わたしは うれしい

ただ それだけで
わたしは 目を閉じることができるから







エントリ24  タマゴをチン     イタリアン・ラッシュ


偉い博士が言った
「電子レンジではゆでタマゴは作れません。爆発しちゃうから」
あれから四半世紀
僕たちも今では電子レンジでゆでタマゴを作る

そう、僕たちに不可能はないのだ
ニワトリがタマゴを産みつづける限り







エントリ25  夜の侵食     木葉一刀(コバカズト)


遠くに見える四角ばったビル群も
時と共に夜が角を削り消し去ってしまう
そして一番近くのビルが徐々に姿を消したとき
僕は涙を流していた

次は僕の番なんだ

やがて僕は僕を見失った
慌てる僕を余所に僕の中に夜が忍び込んでくる
夜に蹂躙されそうな僕は
出来る限りの意識で押し戻そうとする

やめろ
僕の体は僕のものだ
お前なんかに好きにさせるか

夜は獣の時間
本能の時
さぁ解き放て
自分の正しき姿を晒すんだ

僕と夜が今夜も鎬を削る
理性と本能の争いは常だ
まだ僕が押さえつけている
でも僕が正しいのかは分からない

暗い夜の時代
光しか見ない僕に
真実を語ることは
出来ないのだから










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