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poem28
池永考志
断片詩

そういうわけで、祖母を殺したのだが、この事については、誰も何も言わなかったのは一体どういうわけだ?

俺は目立つ服(銀とオレンジのラインの入ったアルミスーツ)を着ていたし、
大声で演歌(天城越え)を歌っていたし、
何より、俺は警察に出頭したのだ!
なのに、なのに、追い返しやがったのだ、あいつらは!
日本の警察が駄目だということは知っていたつもりだが、殺人犯を目の当たりにして、よもや追い返すとは・・・。
さすがの俺も、呆れてしまって、悔しいやら、悲しいやらで、泣いてしまった。
そうして、俺はおめおめと家に帰ったわけだが、クソッタレの家族の連中は、祖母の死体を見ても、何の反応も示さず、居間に祖母の死体が転がっているというのに構わず食事をしていた。
俺はいい加減に頭にきて、
「おい!ばあちゃんの死んどうのが見えんとか!何でのんびり飯食いようとやっ!」
 と叫んだのだが、家族はみんな、
「おかえりなさい」
と言ったきり黙ってしまった。
俺は何だか怖くなってしまって、家から逃げ出した。
しかし、玄関から一歩出た途端に、家族が全員で俺を追いかけ始めた。
俺は本当にびっくりして、全力で走ったが、小学校3年生である弟が、驚くほど速いスピードで走り、俺のT−シャツの裾をつかんだ。

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!離せえええぇぇぇぇぇっっっ!」

―――――断片ゆえ、途切れる―――――

片桐医師「ですから、死体ですよ、死体!手に入るんでしょ!」
電話の声「え、ですから、こっちと致しましても、出来る限り、全力で・・・」
雑音が入ったかと思うと、電話は切れた。

ああ、電話線を切られたのだな、片桐医師は直感できた。
わかるのだ、彼には。なぜ、

―――――断片ゆえ、途切れる―――――

「次のニュースです。長崎県佐世保市における・・・」
 僕はテレビを消した。
 ねえ、メアリー、聞こえるかい? 僕は約束通り帰ってきた。
 この街で僕は、君の墓を掘るよ。大きな大きな墓にしよう。
 花もたくさん飾ろう。きれいな鳥が来るように。
 そうだ、墓に刻む文字はどうしようか?やっぱりオシャレなのがいいだろう?
 僕の友達で彫刻がすごく巧い奴がいるんだ。そいつに頼んでみようか?

―――――断片ゆえ、途切れる―――――

貝殻が足に刺さり、血が出た。
それだけのことを説明するのに1時間も費やした。
これだから人間というやつは。
その点、我々は、

―――――断片ゆえ、途   ― ――







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