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第1回高校生1000字小説バトル
Entry1

セシリア・レポートより

作者 : 佐伯維端
Website :
文字数 : 997
報告書

惑星ヨナにおける生命反応について

 形状は粒子で、砂に酷似している。移動はほとんど行なわず、特
殊な場合(獲物の捕獲)のみ集団で行動する。

 『惑星ヨナ』と言うのを知っているかい?109星雲にある惑星
だよ。
 宇宙大航海時代。あんたも覚えているだろう?あの星中が沸き立
つような熱い熱気に包まれていたあの頃を。皆、宇宙へ飛び立って
いった。初期には何の手続きもしないで勝手に出ていく奴もいたも
んだ。あの時の僕みたいに。
 君はどうしているかな、セシリア。君は僕の出発を止めたよね。
僕は笑い飛ばしたけれど、きっと君が一番正しかった。
 事故が起きたのは、この星の大気圏内まであと少し、地球を発っ
てから52日目だった。その原因が砂だという報告を聞いた時は我
が耳をうたがったよ。事故は、復旧不可能のレベルに達していた。
 それでも、この星に希望を託してボクはヨナに降り立った。けれ
ど、見なよ。砂漠とヒカリワタが支配する世界だ。ヒカリワタはこ
の砂の星に唯一住む植物でさ。夜になると、それはキレイに光るん
だ。ここに君がいれば幸せだと思うのに、ここには、僕しかいない
んだ。独りは淋しいよ……会いたいよ、セシリア。 
 ……セシリア! 何でここに……? ああ、そんな悲しそうな顔
しないでくれよ。僕には君が必要なんだ。ずっとずっと好きだった。
大学のキャンパスで君を見た時から。
 笑ってくれよ、セシリア! 宇宙船も壊れて僕はもうホームには
帰れないけど、君がいれば、君が笑っていてくれるなら僕は大丈夫
だから。だから、こっちへおいで。

え? 何だって? よく聞こえないよ。
君の姿も見えない。
変だな、真っ暗だ。
でも、君がいるのを感じるよ。
夢にまで見た、君の腕の中だ。
ひんやりして気持ちがいい。
今、きっと君はすごくキレイで、
薄く光る砂丘を背に微笑んでいる。
何だか眠いよ。
眠っていいかい?
明日になったら、
種を植えよう。
水もまだ少しだけ残ってる。
二人でここに住もう。
そして、
君と
ずっと――

 また、この星の生命体は時にタンパク源を求める。思考を読み取
り、その人物が固有する記憶を元に集団を作り、その姿で対象を錯
乱させる。そして分泌物により器官をマヒさせ、その人物の意識が
完全に途絶えた時点で補食する。
 宇宙飛行士たちの間で、俗に『フールス・ドリーム』と呼ばれる
この生物に、ユニバーサル・スクウェアは正式な学名を付ける方針
である。 

以上、報告。






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