インディーズバトルマガジン QBOOKS

第6回高校生1000字小説バトル
Entry3

作者 : Ruima
Website :
文字数 : 995
 夏休みの初め、僕の父さんと母さんは死んだ。「お土産買ってく
るね」って言ったきり、2人とも帰って来なかった。交通事故。
 僕が理解するより早く、黒い服の大人によって父さんと母さんは
冷たい墓石に変わっていた。そこで初めて僕は泣いた。父さんと母
さんはもっと温かいよ。こんなんじゃない。2人はどこ?

 両親のいなくなった僕はおじいちゃんとおばあちゃんに引き取ら
れた。休みの間はどこにも行く気がしなかった。みんなの中にいる
と孤独さを感じてしまいそうで。
 でも新学期になっても学校に行こうとしない僕を見かねたんだろ
う。9月半ば、おじいちゃんと田舎に行くことになった。「田舎」
は新潟の山の方で、普段はおじさん――おじいちゃんの弟が1人で
暮らしている。おじさんは僕をいろいろな所に連れて行ってくれた。
楽しかったけど、楽しくなかった。前に来た時は、父さんも母さん
も一緒だったから。思い出して涙ぐむと、おじさんはちょっと困っ
た顔をした。

 ある晩、僕はふらりと家を出て歩き出した。ただ、なんとなく。
秋になり始めた田舎は、すでに夜は半袖じゃ寒い。しっかりとブラ
ウスの前を止め、僕は気の向くままに歩いた。夜の静かな空気を伝
い、川の流れる音が聞こえてくる。

 橋の上から川を見下ろし、ふと考えた。
 死って何だろう? 父さんと母さんはなぜ僕を置いて消えちゃっ
たんだろう?
 その時、視界の隅で緑白色の光が点滅した。何だろう? 僕は辺
りを見回し光を探した。
 すると、川岸の草の陰から再び光が現れた。点いたり消えたりし
ながら、ふわふわと漂うように飛んでいる。その数は僕が見ている
うちにだんだん増え、たくさんの光が暗闇の中を舞い出した。その
光景を見て、僕ははっとした。
「ここにいたんだ……」
 光の一つ一つは、きっと死んだ人の魂。ここは死者の魂の集う場
所なんだ。
 ああ、何て美しいんだろう。
 思わず涙が込み上げてきた。
 光が2つそばに寄って来て、僕の周りを飛び回る。
「父さん、母さん。僕、もう平気だよ。安心していいよ」
 だって、父さんも母さんもここにいたんだ。僕を置いて消えちゃ
ったんじゃない。僕は1人じゃないから。
 僕は光に向かって笑ってみせた。

 翌日、急に元気になった僕にみんなびっくりしていた。例の光の
ことを話すと、おじさんは笑いながら「それはホタルだよ」と言っ
た。でも、昨日の晩、僕はあそこで確かに父さんと母さんに会った
んだ。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。