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第7回高校生1000字小説バトル
Entry2

鍵泥棒

作者 : Ruima
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文字数 : 993
「ここまで自転車で来たんだ。ほら、その青の」
「へえ、綺麗だね」
「新品だもん……って、あれ?」
「どうしたの?」
「一瞬のうちに盗まれた」
「これ、あんたのじゃないの?」
「違う。鍵だけ無いの……」

「奥さん、どうなさったの? 家の前で」
「鍵を無くしちゃって。娘が持ってるから、待ってれば入れるんで
すけどね」
「大変ね。よろしければ、それまでうちにいらしたら?」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「……あら? やだ、うちの鍵も無いわ!」

「先週から続いてる鍵盗難、今日だけで17件よ! 一体どうなっ
てるの?」
「これでみんな偶然落としただけ、だったりしたら笑えますね」
「笑えないわよ。金庫の鍵なんかも盗まれてるのに」
「あ、やっぱり?」
「冗談言ってる暇があったら捜査」
「はいはい。でも本当に鍵なんか集めてどうするんでしょうね。鍵
マニア?」
「さあね」
「……あ! 先輩、鍵泥棒ですよ」
「今更何言ってるの? 今からそれを調べに行くのよ?」
「そうじゃなくて、僕も盗まれました。手錠の鍵を」
「……もうあんたは! 何やってるの!」

 少年は家に帰ると、玄関からまっすぐ2階へ駆け上がった。
「お姉ちゃん、ただいま!」
 1番奥の部屋をノックする。返事は無かったが、少年は迷うこと
なく中に入った。
 部屋のベッドでは、17歳くらいの少女が眠っている。横には点
滴が置かれ、その管は青白い少女の腕へと伸びていた。
「今日はこれだけ見つけたよ」
 少年はランドセルを下ろすと、中からいくつもの鍵を取り出し床
に広げた。形も大きさも様々なそれらを、少年は1つずつ順に、見
せるようにして少女の顔の上にかざす。
 少女は眠り続けている。微動だにしない。口元に耳を当てなけれ
ば、呼吸をしているのかも怪しいほど。
『君のお姉ちゃんはね、自分だけの世界にいるんだ』
 最後の鍵を少女の目の前で揺らす。やはり少女が全く反応しない
ことを確認し、少年は溜め息をついた。
「……今日もダメか」
 鍵の山を持ってその部屋を出ると、少年は隣にある自分の部屋へ
入った。ドアの鍵は少年が南京状を改造した物で、彼にしか開けら
れない。
 部屋の壁には、大量の鍵がオーナメントのように掛けられていた。
少年は今日集めた鍵を、新たにそこに鋲で留めていった。

『どうすればお姉ちゃんは帰ってくるの?』
『心の扉を開く鍵が見つかればね』

 最後の1つを留め終えて、少年は呟いた。
「明日もまた、探さなきゃ」






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