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第1回中学生1000字小説バトル
Entry1

my regret

作者 : 松山愛媛
Website :
文字数 : 954
「はい、岩崎ですが」
 リョウのお母さんの声…。やっぱり恥ずかしいな…。やっとのこ
とで覚悟を決めた
のに、いざとなると、心臓が叫びはじめる。「無理だよ、リョウに
は彼女がいるん
だ」って…。
「あ、え…っと、リョウくんは…」
「あぁ、お待ちください」
 受話器の向こうで、リョウの名前が呼ばれる。でもリョウは、私
からの電話だとい
うことは知らない。予想もしていないはず…。
「…もしもし」
「あ、ちわーす !」
 少し声が裏返ってしまった。でも、もうあともどりはできない。
私は言葉を続け
る。今まで秘めてきた、この想いを伝えるため…。 「ごめ〜ん、
いきなり電話し
て。ちょっとね…」
 はにかんだ笑顔を浮かべる私。無意味な笑顔。リョウには見えて
いない。私にも、
リョウが一体どんな表情で電話に出ているのか、見えるはずなどな
いのだから…。
「あ〜…、う…、ん、えっとね…」
 頑張れ、朝美、しっかり… !心の中で、自分にエールを送る。し
かし、ここで頑張
らなければならないのは、他の誰でもなく、自分自身なのだ。…で
も、言葉が上手く
まとまらない…。
「…リョウ、森沢さんにコクられたんだって ?」
 私の口調は、こころなしか、リョウに対する冷やかしのようであ
った。私が言いた
いのは、そんなことじゃない… !
「…うるせーよ、バーカッ」
 眠たそうな声で、リョウは笑いながら言った。
「………」
 やっぱりダメだ…。言葉が続いてくれない。声が震えないように
保つことで、も
う、精一杯なのだ。リョウ、何か言って、お願い…。
 イブの夜だというのに、神様は、私の願いをあっけなく無視して
しまった。二人の
間に流れる沈黙は、外の空気よりも冷たい…。
ただ、私の身体だけが熱い…。
「…てゆ〜か、ね…。何が言いたいか、わかる… ?」
「…何となく…」
 リョウの声は、私の中に重く流れ込んだ。きっと、迷惑に思って
いる。そう、本当
は言うべきじゃないのかもしれない。何度も言う機会を逃して、森
沢さんに先を越さ
れて、その関係を壊すかのように、想いを伝えるなんて…。後悔し
か残らない告白な
んて… !
「…まぁ、ずっと好きだったわけなんだけど…。森沢さんのことを
聞いて、なんてい
うか、言っておこうかな…って思って」 
 私はまた笑った。くもった窓をこすってみると、頬に涙を伝わせ
ている私が、ぼんやりと映っていた。






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