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第2回中学生1000字小説バトル
Entry2

リフレイン

作者 : 隠葉くぬぎ
Website : http://www.geicities.co.jp/PlayTown-Denei/1955
文字数 : 999
 私は店の中に居た。黒と白と銀。それが店の中の全ての色だと言
ってもおかしくない位に統一されている、シックな店だ。
 友達から貰った目覚まし時計を、昨日、弟に壊された。私は、そ
の時計がかなり気に入っていたのでわざわざ店を教えてもらい同じ
時計を買いに来たのだ。
 「こんなとこ私1人じゃ来ないわ」
 来ない、のではなく来れない、のであるが。そんな事を呟きなが
ら私はぐるり、と店内を見渡した。
 と、背中に引っ張られるような感覚があった。次の瞬間にはがし
ゃん、背後で何かが落ちたような音。そして、じりりりとベルの鳴
るけたたましい音。 私は恐る恐る背中を振り返った。未だに鳴り
止まないベルの音。床には黒色の目覚まし時計が1つ、落ちていた。
 私は、このシックな店の静寂を破ってしまった事を深く恥じなが
ら、こそこそとそれを拾い上げた。時計に傷が付いていなかった
事は唯一の救いといえた。
 かち、とノブをoffに合わせたが、ベルは止まなかった。傍目
にこそ傷はなかったものの、中はやっぱり壊れてしまっていたのだ。
 私は死ぬほど恥ずかしかったがレジに向かった。友達がくれたの
と同じじゃないけど、これだって十分可愛いじゃない、と買い取ら
される事を予想して自分を励ましさえしたのだ。
 私は、ベルの音がどうしようもなくて走ってレジに行った。別に
もう軽蔑されようがそんな事どうでも良くなってきていた。
 叩き付けるようにして時計を置き、「すみません」と声高に言っ
たのに誰も答えてくれなかった。店員は誰も居なかった。私は怖
くなって店内を駆け回ったが、変に静寂していてじりりりと言うベ
ル音だけが響きわたっていた。
 むかむかと腹が立ってきて、無理矢理にカバーを外し、電池を引
きちぎるようにして取った。が、私に時計はもっと大きな音でじり
りりと鳴いて見せた。私がうろたえるともっともっと大きな音でじ
りりり、と。それはだんだん他の時計も加わって大合唱になってい
った。じりりり、じりりり、じりりりりりりり。
 気が付くとベットの隣では銀色の時計が1人で黙々とあたしを起
こしていた。じりりり、と。なんだ、と私はほっと安堵して、その
時計に手を伸ばした。が、その手は時計に届く前に恐怖によって空
間に止められてしまった。
 真っ暗な辺り。私はこんな時間に目覚ましをかけた覚えはない。
 蒼白になる私に、時計はじりりりと鳴いてみせた。
 心なしか音が大きくなった気がする……






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