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第20回中高生1000字小説バトル Entry4

飲み込む子供

ママに言いたいことがあった。
でも絶対に真面目に聞いてもらえないから黙ってた。

「なんて顔をしているの。言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」

言ってみた。
まっすぐ、自分をぶつけてみた。

「私に言ったって仕方ないでしょう。聞いたって楽しくないから話さないで」

………………おいおいおいおいおい。
言えって言わなかった?
はっきり言えって。あなた言ったよね?

「………………」
「すぐにそういう顔をする!言いたいことがあるなら言いなさい!」

言ったって、どうせまた同じ台詞で拒否するだけなんでしょ。
どうせ聞きゃしないんでしょ。あたしの話なんか。

ママが聞いてくれないのに誰があたしの話を聞いてくれる?
あたしを産んだママでさえ聞いてくれないのに。

ゴクン。

詰まった喉の奥であたしは空気を飲み込んだ。
喉が痛い。

「何よその目は!」

『 だ っ て マ マ が バ カ な こ と を 言 う か ら じ ゃ な い 』

ゴクン。
あたしはまた空気を飲み込んだ。
言葉と一緒に。

だって言ったら怒鳴られるって解ってるもの。
だって言ったら叱られるって解ってるもの。

どうせ聞いちゃくれないって、解ってるもの。

ゴクン。

あたしは言葉を飲み込んだ。
傷つきたくないから。
痛いのは嫌だから。悲しいのは嫌だから。

だから、それはあたしがあたしを守るための手段だったの。

ゴクン。

現実逃避なんて、わかってるけど。

ゴクン。

こんなことしてても何も解決しないなんて、わかってるけど。

ゴクン。

それでも…

ゴクン。

こうしている間は、これ以上胸が痛むことはないから。

ゴクン。

飲み込んでいくんだ。
多分、これから、ずっと。

ゴクン。

違和感はあまりなかった。
これから何度もこれを繰り返すのだろうな、と
あたしはそれを自然なことのように思った。

ゴクン。

…空気だけ飲むのは痛いなぁ。


あたしは、大して欲しくもない水を大量に飲むようになった。

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