第25回中高生1000字小説バトル全作品
#作者題名文字数
1Kait 入り口 998 
2蒼月堂 桜 493 
3華月 Dearest 540 
4麻葉 放課後 1000 
5関口葉月 愛しき日々 1095 
6神風夜月 呪うというコト。 1000 
7詩音 夢のナビゲーター 1000 
8しゃちめばる 幸せなカタストロフィー 1000 
9田中田郎 何が欲しい 961 
10Louis14 いきるいみ。 1000 
11でりら 貴方はモー娘。派? ZONE派? 794 


結果発表はここからご覧になれます。


Entry1

入り口

Kait

文字数998


今、僕は高校の帰り道にある、駐車場の壁に腰を掛けている。駐車場には、いつも車が一台しか停まっていない・・・いつも?そう、僕はこの駐車場に学校の帰りにここで、ぼーっと、これからのことを、考える。今から家に帰って、風呂に入ってテレビを見て、頭が悪いながらに、勉強をして、寝て、等と考える。また、時には明日の事も、考える。その時、ふっと我にかえる、そして時計を見ると、5:30だったのが、6:00に、なっている。外も、暗かったのが、一層暗くなる。
僕は、急いで家に帰る「まだ、外に居たんだ」別に、急ぐ必要は無いし、できれば家に帰りたくない。なぜなら、僕の両親はいつも夫婦げんかをして、その後、僕にイライラが、向けられる。言葉で、文句を言われるなら、まだいい、殴る蹴るもう虐待と言ってもいいほどだ。無理が通れば、学校にも行きたく、ない理由はイジメだ。イジメと、いっても小学生が、やるような、ちゃちなものではなく殴られ、皆の前で、馬鹿にされ、先生に相談しても相手にされず、クラス全体でのイジメ、そんな、僕にも、バイト先で、彼女ができた。その後、バイトをやめて、彼女とも、自然消滅かと、思っていた。しかし、数日後僕に、手紙が来て、内容では、彼女は別れたと、思っているらしかった。僕は、返事を書くのを、忘れてしまった。それからだ、彼女のストーカー行為が、はじまったのは、僕はこんなに辛い思いを、するぐらいなら、死んだほうがいいと、何度も思ったが、どうしても死にきれなかった。そんな僕が行き着いた、苦しみから逃れる方法は・・・。
空想だった。空想、夢、幻想の世界は、僕をいつも、受け入れてくれた。そして今日も、目をつぶって、幻想の世界の、入り口に立つ。その中での、両親は・・・
「修一(僕の名前)ハッピーバースデー!!」(父さん!母さん!)学校では・・・
「修一今度家で、お前の誕生日会を開くんだけどお前来てくれるよな」(みんな)
「修一君、はいこれ、誕生日プレゼント」(ミカ!)
そうだったんだ、僕が欲しかったのは、こんな何でも無い会話だったんだよ・・・

ずっと、この世界に、いられたら・・・

そう僕が思ってしまった瞬間、幻想の世界への第一歩を踏み出してしまった・・・

雨が降り出した。でも僕には分からない。なぜなら僕はここにはいないからだ

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Entry2



蒼月堂
文字数493


「そして僕らはこの輪を断ち切ることが出来ると言うわけだ」

「貴方は信じているの?」

「さてね」

風が吹き、桜の花弁が空を淡い桃色に染めて舞い上がる。男はその様に視線を移し、口の端に微かな笑みを浮かべる。

「前世での約束…陳腐だが、実際に起これば信じられるものではないな。――だけど」

その笑みの半分は、自嘲。

「それを求めることだけが、僕にたった一つ、自分が此処に在ることの意味を示してくれるものだった」

そして、もう半分は悲しみ。

「幾人もの僕が、此処を、君を探したのだろう。だけど、それも終わり」

女が男の胸にそっと抱きつく。

「ごめんなさい…私は貴方を縛ってしまった」

「いや…君は僕の存在を、その理由を与えてくれた」

「でも…私は…」

「もう…逝くのかい?」

「ごめんなさい…私たちはもう一度逢ってしまったから…約束は果たされてしまったから…」

「そう…か。これで輪は…想いは断ち切れたのかな…」

風が吹く。

桜の、花弁をはらはらと散らす様を、男は一人、見上げていた。

「誰だったかな…桜の花が美しく咲くのは、その花弁の一枚一枚に人の想いが宿っているからと言ったのは…見てるかい?この桜は…」

「こんなにも…美しい」

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Entry3

Dearest

華月
文字数540


 君は魔法使い。
 君を見つけるたびに、俺の瞳は君ばかりをうつしている。
 そう、いつだって――。

 でも、今日は違った。
 俺はそれどころじゃなく落ち込んでいた。
 テストで悪い点とって、先生に呼び出されて。
 家に帰ればきっと親からもしかられる。
 全く、ついてないなあ。
「はあー……」
 学校からの帰り道。
 重苦しく息を吐きながら、俺はとぼとぼと家へ向かって歩いた。
 橙色に染まった空が、今日はなぜかいっそう悲しみを誘う。
「佑紀君っ」
 聞きなれた声が、背後から俺を呼んだ。
 俺は声のした方を振り向いた。
 そして、軽く目を見張った。
「佐原……」
「元気ないね。さてはテスト、悪かったんでしょ」
 彼女にそう言われ、俺は[まあ……」と曖昧に返した。
 いや、彼女の言うとおりなんだけどさ。
 あまり知られたくないっていうか……。
「ま、誰だってそういうことはあるよ。次がんばれば大丈夫!ほら、元気だして!」
 彼女はとびきりの笑顔でそう言うと、俺の肩をぽんと叩いた。
 君は魔法使い。
 君のその笑顔一つで、その一言で、俺の心はこんなにも明るくなる。
 物悲しかった夕焼けも、こんなにも美しく感じられる。
「――ああ」
 俺が笑顔で返事をすると、彼女はいっそう微笑んだ。
 空には星が一つ。
 俺たちを見下ろしていた。

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Entry4

放課後

麻葉
http://members.tripod.co.jp/akira_f/ftp.html FOR THE PRESENT
文字数1000


校長室からの帰り、読みかけだった本を読んでしまうと、私は図書室から教室へと向かった。
教室の電気は消えていて、誰もいない空間が広がっていた。
廊下側の前から二番目。私の席。椅子をひくと、ガガガッと響いた。まるで学校中に響いているように思える。
昼間は大嫌いなここも、今はそれほど嫌ではない。むしろ、私の好きな場所に近い。明るすぎず、静かで、寒くはないがどこかひんやりとした空気が漂っている。
外からは、コンピューターで作ったような、野球部の気持ち悪いほど尖った音が聞こえてくる。
   
  カキーン
  カキーン

それに続いて、何語かわからないような掛け声。映画やドラマのワンシーンのようで、私は奇妙な感覚に包まれた。自分の行動は全て誰かの台本にすでに記されているのでは? という気分さえ不思議な物ではないと思えてくる。
私は、ブレザーを脱ぎ椅子の背もたれに掛けると席を離れた。今度は一番後ろの列のど真ん中の席に座ってみた。
後ろから見ると、きちんと並んでいるような机も実はガチャガチャだとわかる。
椅子は曲がっている、机の中身ははみ出ている、プリントが落ちそうになっているあの席は、誰だっけ。

  カキーン

私は体をべったり机に押し付けた。頬に当たる冷たい感触が気持ちよい。
目に留まる、廊下側、前から二番目。私の席。椅子に掛かったブレザーが小さい私の背中を表している。ほんの少し、泣きそうになった。

いつのまにか、尖った音は聞こえなくなっていて、野球部は白球を追うことをやめていた。
強い声が聞こえた。
「ありがとうございました!」
教師に、校庭に、校舎に。
学校というこの空間に。
挨拶をする者、従う者、無視する者、壊す者、逆らう者。

「ありがとうございました」
突っ伏したまま言ってみた。

部活を終えた青春人たちが帰ってくる前に、私はブレザーを着、机とロッカーの中身をバッグに詰めた。
昇降口、34番。靴を履き、上履きをしまった。バッグの中に。

門を出て振り返ると、入学時よりとてもくすんだように思える校舎が、私を見下ろしていた。
ふと、届出を渡した時の教師の顔が浮かぶ。笑顔でも、悲しみの表情でもない。鮮明に思い出される、諦めの顔。彼らの目は、『どうしようもない』と私に言っていた。

「ありがとうございました」
感謝の意ではなく、区切りの言葉を放った。
私は正門に向かって礼をすると、校章をはずし、門の中へと投げ入れた。

せめてもの、置き土産にと。

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Entry5

愛しき日々

関口葉月
http://haduki0.fc2web.com/ JackpoT
文字数1095


頭が
痛いんです。

こめかみを締め付けるように、内側から何かが飛び出そうとするように、とにかく頭が痛むんです。

私は痛む頭を両腕で挟むように抑えながら、扉の向こうでなにか陶器が割れる音を耳にしました。

言い争う声が聞こえてきます。甲高い、まくし立てるような声。
言葉はよく聞き取れません。

…サルの喧嘩みたいだ。

キイキイと、本当にサルのような声が二人分も響いてくるのです。
私はドアから視線を外して、枕元の小瓶を見つめました。
水色の蓋をしたそれは、中に小さな白い錠剤を詰め込んで少し窮屈そうに立っていました。
蓋を開けて、中身を手の平にぶちまけます。
それを一気に煽ります。あまり焦ったので何粒かが布団の上に落ちましたが、構ってはいられません。

噛み砕いて、噛み締めて、飲み込みます。

口に含んだ分を一通り飲み終えると、私は一息ついてベッドの上に体育座りをしている自分の身体を抱き締めました。
手が震えて何度か外れてしまいましたが、それでも頑張って膝を掴みました。
この薬を飲んでしばらくすると、震えも頭痛も治まるのです。
ただ、ひどく眠くなってしまうのですが。

熟睡しても、またサルのような喚き声が私を起こしてくれることでしょう。
今朝のように。さっきのように。
今までのように。

いつものことです。
これが私の日常です。

「…ねえ。起きて」

私は、優しい声で目を覚ましました。
目を開けた先には、綺麗な女の人が立っていました。

「どなたさま、ですか?」
「あなたを救う者」
「…私を、救う?」

何から、でしょうか。
私は少し首を傾げましたが、その女の人はとても優しく微笑んで私の髪を撫でてくれました。

「もう大丈夫よ。あなたを助けてあげる」
「…?」
「次に目が覚めたときには、あなたは普通の女の子になれる」
「…普通の…?」
「そう。普通に学校に行って、友達を作れるの」
「……」

このひとは。
何を、言っているのでしょうか?

「…普通に…学校に行って、友達を…」
「そうよ」

…そんなことが。可能、なんでしょうか?
これは私の、都合のいい夢で。
だって私がそんな場所に行けるはずはないのに。

「あなたにはその資格があるわ。心配しなくて大丈夫よ」
「……」

学校。
友達。
『普通』の、環境。

「………」

憧れです。
憧れでした。
それでも?

私は。

『私は』

パリン、という、何かが割れる音で私は目を覚ましました。
ドアの向こうから、サルの鳴き声のような声が響いてきます。
それに続く、甲高い返答も。

私はしばらくぼうっとドアを眺めていましたが、やがてまた枕元の小瓶を手に取り その中身を掻き込んで横になりました。

何故かひどく安堵して、私は微笑みました。

いつものことです。
これが私の日常です。

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Entry6

呪うというコト。

神風夜月
文字数1000


 私はパソコンを起動させ、ネット回線を開いた。探し出したのは呪いのHP。
 黒い壁紙。釘を打ち付けた藁人形の画像。
 血が数滴、滴り落ちるJAVAプログラミング。

 これしかない!

 私は直感した。
 呪いを行う上での注意を読み進めていくと、精神異常をきたす場合があるらしい。
 あの男を殺ることができるなら、かまうもんか!
 十年同棲した末、上司の娘と結婚するからと、私を易々と捨てた男。
 あまりの悲しみに、何度も自殺を計った。
 その度、誰かに助けられた。
 そして、気づいたのだ。
 何故、私が死を選ばなければならないのか? 
 と。
 あの男の身勝手のために、なぜ私が……!!
 そう思うと、あの男の人生を壊してやりたくなった。
 一度捨てた命だけに、なんでもできるような気がした。

 それからの私の行動は早かった。
 ネットで丑の刻参りのセットを購入し、昨日届いた。
 今日は丑年の丑月の丑日。
 悪魔がくれた最高の条件。
 鏡の前でニカッと笑う。それが妙に悪魔めいていて面白かった。

 夜。
 身体を清めた。冷水を何度もかぶった。冷たいと思う感覚でさえ、見失っていた。
 長い白い衣を着て、口紅を引き、蝋燭を数本身にまとった。
 決行の三時間前、私は車で山奥の神社へ向かった。
 そこは人知れず、ひっそりとした場所で、人気が全く感じられなかった。建物は時が止まったかのように、神の社と呼ばれた頃のままだ。だが今は、異様な空気を放っている。
 私は臆すことなく目的の大木に近づいた。
 儀式まであと一分。
 藁人形と五寸釘、トンカチを足元に置き、蝋燭に火を灯す。
 秒針があと一回転するのを待つだけなのに、それが永遠にさえ感じられた。
 とうとう時計は一時を指し、私は藁人形と五寸釘を手に取る。
 
 コン コン コン

 ゆっくりゆっくり、憎しみを込めて打った。
 どうか死んでくださいと、祈る。

 

 儀式を一週間続け、最後の日から三日が過ぎた。
 あの男と同じ職場の私は吉報を耳にする。
 なんと! あの男が死んだというのだ。

 ざまぁみろ!!

「あはははははは!」

 耐えかねて、大声で笑いだした。白い目を向けられたが、気にしない。
 会社が終わり、その帰り道でも私はまだ笑っていた。
 赤信号だということも忘れて、横断歩道を渡った。
 だから私は案の定、交通事故に遭った。
 幽霊になった今でも笑いは止まらない
 
「あははははははは!!」

 生きていた頃の肉声が、辺りに響いた。

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Entry7

夢のナビゲーター

詩音
文字数1000


「にゃ〜にゃ〜」
出た。今夜もやってきた。
今夜も当たり前のように私の夢の中にはネコが出てきた。
そのネコが私の最近の悩みである。私には”夢をコントロールできるチカラ”がある。簡単に言えば、見たい夢が見れるのだ。「明日、テストで100点取りたい」と思ったら夢の中で100点を取っていた。夢を自由自在操る事も出来る。
確かにいい気分になるけど・・・。
でも、ここ1週間は私の夢は1匹ネコに支配されている。
まるで不眠症になった感じがしてすっきりしない。
「にゃ〜」
「・・・何?」果てしなく白い空間に私はネコと2人っきり。
「にゃ〜にゃ〜」もちろんネコ語なんか理解できない。
「・・・分からないよ!日本語でしゃべってよ!」
イライラしたので叫んでしまった。でも、ネコは何事もなかったように”ちょこん”と座っている。そして・・・
「最近、美沙ちゃんおかしいよ。」私の名前が呼ばれた。
「・・・・・・?」誰が喋った?ここにはネコと私だけ。
「僕だよ。」周りを確認する。
「僕だよ。」もう1度確認する。
「僕だよ!君がネコ語が分からないって言ったから日本語になったんだよ!」
「・・・・。」気づかないうちに、チカラを使っていた。
忘れていた・・望んだら・・・このネコだって・・・。
「どうして君は僕が嫌いなのに消さないの?コントロールできるのに」
「・・・。」
「君は本当はチカラなんかいらないんだよ。」
「・・・。」
「だから、毎晩僕に夢を支配しても消さなかったんだ。」
「・・・。」
「楽しかったでしょ?毎晩、予想の出来ない夢が見れて」
ネコはにっこりと笑顔を見せた。
「・・・うん。」はじめて寝る前に『今日はどんな夢だろう?』って
わくわくした。楽しんでたんだ・・。
「もういらないよね。このチカラ。」
「・・・うん。」
「もう二度とこのチカラを手に出来ないよ?」ネコが再確認した。
「うん。いらない。」もうチカラなんかいらない。
「では、領収書を。」ネコは1枚の紙を私に渡した。
「何これ?」何も書かれてないただの紙。
「領収書です★」ネコは首輪の鈴をチリンチリンと鳴らしながら真っ白な世界を歩みはじめた。私はただ、じっとネコを見送った。
次の日から、ネコは夢の中に出てこなかった。夢をコントロール出来なくなったいた。でも・・・
『いい夢を見続けて下さい。夢の案内人より。』と
書かれた紙は今も枕元に大切に置かれている。
今夜あたり、あなたの夢にネコがやってくる・・・かもしれませんね。

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Entry8

幸せなカタストロフィー

しゃちめばる
文字数1000


「破滅を呼ぶのが人間であって、何がおかしいって言うの?」
そう言って、君は空を見上げる。
「私、太陽って嫌い。第一光りすぎよ。しかもいかにも善の象徴ヅラしてんじゃない、月が可哀想よ!」
周囲には僕の彼女として認識されているけど、それと同時に「変なヤツら」とも思われてるのを僕は知っている。
 僕も変わっていると思われているのは彼女のせいだけど、彼女を嫌いになったことはなかった。
「で、煎じ詰めれば何が言いたいのさ」
そう聞くとニヤリ笑いをされた。
「壊すの。あの太陽、私達で砕いて、文明も砕くのよ」
小悪魔的な正面顔を、僕も真正面から見つめた。
「そうだね。たまにはそんな終わり方してもいいね」
 多分、僕は微笑んでいた。

 そして二人で計画をたてた。
 学校の屋上から飛んで太陽まで行く。その時拳を突き出して、太陽も僕らも壊れる。そんな段取り。
 衣装もちゃんと決めた。どこかの映画じゃないけれど、気持ちいいくらいに上下真っ白。僕は白いズボンがなかったから、ジーンズ一本を漂白剤で殺して白くした。彼女はピンクのシャツを同じように殺した。
 その日が近付くにつれて、まるで遠足に行く子供のような胸騒ぎが襲ってきた。毎晩、興奮でよく眠れなかった。
 そんなだったから、計画実行の日は寝不足だった。
「さあ」
風になびく髪を気にせず君は振り向いた。白い学校の白い屋上に白い僕ら。太陽はそんな二人を嘲笑って光る。
「行こうか」
 彼女がそう言ったとたん、思わぬ感情がどっと湧いてくるのがハッキリわかった。見なれたはずの街が、建物が、人が、とても小さい。
 僕は、怖い。
「どうしたの?」
そんな彼女に答えられなくて、気付けばただ首を横に振っていた。
「ダメだよ」
気付かないうちに膝が笑い始める。ウハウハ大笑い。もうたまらねえや大爆笑。それぐらいの規模でガックンがっくんと不安定な足と心。やだ死にたくない。頬が濡れた。おい、今泣いてるよ。
「こんな方法じゃ、太陽は壊せないよ」
 もうダメだった。笑い続ける膝を抱えて縮こまって、君を見上げた。
 能面みたいな顔だ…と思った。だって少し微笑んでたから。漂白剤のニセモノの白が一層際だてる、能面笑顔。覗いた美しすぎる歯並びはただ気色悪い。
 君は狂っている?

 でも君は微笑んだ。何よりも、優しく。
「私もそう思った」
僕はそんな君を見て、ああ綺麗な歯並びだなあと考えていた。僕らはけして狂っていなかった。
 幸せな午後。

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Entry9

何が欲しい

田中田郎
文字数961


カツ、カツと、窓ガラスを小突く音がする。
そのまま寝続けようとしたが、窓を叩く音は止まない。
寝ぼけまなこで、窓を見る。と、サンタがいた。
白い大きなひげに、真っ赤な外套。まちがいなくサンタ・クロースだ。
目が会うと、サンタは窓を引くゼシュチュアをした。
(部屋に入れて欲しいのか)

温い布団から出て、窓の鍵を開ける。
サンタは、大きな体を身軽にこなして、窓から出てきた。
「なかなか気付いてくれないんで 難儀したよ。ああ、外は寒かった」
 大きく身震いし、おどけて言う。
インクを垂らしたように赤い頬と鼻からして、相当に寒かったようだ。
「クリスマスおめでとう。さて、一年のごほうびにプレゼントをあげよう。何が欲しいかい?」
 あれこれと欲しいのを考えるけれど、なかなかひとつに絞れない。
代わりに、ひとつの疑問が浮かび上がった。
今年はそんなに善いことをした覚えがないのだった。

それを問うと、サンタは何度かまばたき、しばらく考えているようだった。
それから咳をひとつして、実は、と切り出した。
「今夜、君のところにくる予定はなかったんだ。ただ、最後にプレゼントをあげるつもりだった子が、言ったんだよ。『今は充分幸せだから、どうか他の人にプレゼントをあげてください』とね。補欠のようで申し訳ないが、気を悪くしないでくれ」
 補欠と聞いて、快いはずない。
もっとも、補欠になってしまったのは自業自得。
気になるのは、せっかくのチャンスを棒に振ってしまった子だ。
すると、心中を読んだかのように、付け足す。
「プレゼントを譲ってあげた子は、君も知っていると思う。駅前にダンボールで生活している子だよ」
 さすがに驚いた。
ホームレスの子が、幸福だと答えたとは。
 何が欲しいかと聞かれて、とっさに品物を並べていた自分。
その強欲を、今になって恥じる。
「僕こそ、プレゼントは結構です。駅前の子に、住む家をやってください。お願いします」
 自然に口からでたつもりだった。
「君の願いを叶えるのが、私の仕事だ。ただし、自分で達成できることは、自分でやらねばならない」
 サンタはまた空咳をする。
そして、しばらく間を置いてから続けた。
「私は、家無しの子を連れてくることはできる。もっとも、そのあとは君が彼と代わって生活することになる」
 
それでもいい、とは言えない。
やはり、僕は補欠なのだ。

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Entry10

いきるいみ。

Louis14
文字数1000


『もしも願いが一つだけ叶うとしたら、あなたは何を望みますか』

私は死を望む。
この世界に生きていたくなかった。

死を意識し始めたのは、最近ではない。青春時代に持ち始めたその感覚は、大人になるにつれ、大きくなっていった。

初めての恋。
あの子が振り向くたびに、私はどれだけ心を震わせたことか。目の端に映るだけで、私の全ての感覚は甘い薄桃色に染まった。

そして失恋。

誰しも経験することかも知れないが、私にとっては、人生でただ一人の女性だった人を失ったのだ。そしてその日から、私の心は光を見ることがなかった。

ある秋の日のことだった。
私は何をするあてもなく、ただ当てもなく枯れ葉の散る公園をさまよいながら、季節の変化の中に身を置いていた。

「おじちゃん、うちにおいでよ!」

後ろから声がした。
振り返ってみると、小さな女の子がこちらを見上げていた。
「なんだって?」
「うちに、おいでよ」
その女の子は大きな瞳で、不思議そうに私を見つめていた。

なんということはなかった。
別段理由など無かったのだ。
もしかしたら、私はその少女の透き通る瞳と、くもりのない白い肌に惹かれたのかも知れなかった。
私は彼女に連れられるまま、みすぼらしいアパートの一室に入った。

何も無かった。

光さえ。
後ろのドアもなくなっていた。
少女の姿も消えた。

私は闇の中に取り残され、幻覚を見ていたのかも知れなかった。
「僕だ…!」
そこには、私が居た。
「思い出したぞ…!」

目の前で幼い私は、両親と食卓についていた。
その日の夕飯はシチューだった。
私は幼い頃を田舎で過ごした。
家の周りは広い草原で、よく晴れた日には付近の山々がその白い頭を見せたものだった。
そして寒い秋の日は決まって、母の手作りの温かいシチューが出た。
「私」がスプーンを口へ運ぶ。もぐもぐと口を動かし、味を確かめながら飲み込んだ。
その幼い「私」は、にっこりと笑った。父も母も口元をほころばせた。

その次の日、私の父は心臓発作で倒れたのだ。
夕飯は、シチューだった。冷たい、シチューだった。

徐々に周りが光を取り戻してきた。目の前の少女の輪郭も、はっきりしてきた。
彼女は相変わらず、透き通った大きな目で私を見つめていた。

「どう? 死にたい?」

私は首を横に振った。
彼女はにっこり微笑んだ。

そして私はベッドの中で目が覚めた。
私は思った。久しぶりに、田舎に帰ろう、と。

もしも、私の願いが叶うなら。

どうか。

温かい、シチューが欲しい。

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Entry11

貴方はモー娘。派? ZONE派?

でりら
文字数794


 彼はスヌーピーのトレーナーを着ていたのですが、それは所謂地雷で、どう考えてもどうもっていう感じだったりしたのですが、それはおくとしてもどうでもいい感じがしたりしたのです、つまり彼は私の人生に関係がないんです、居るじゃないですか、夜の駅でワーって言いながら駆けていく人、叫びながら? 何が怖いのかナーって思いますがその後なんだか触発されて怖くなるじゃないですか、そう言う感じです、関係ないのに影響を与える。
「何考えてるの」
「何も」
「此処五月蠅いね」
「そうだね」
 もう彼との間の会話が途絶えて久しいのですが、たまに思い出すとあいたくなって会って適当にセックスして帰ります。言葉がないからセックスに走るのかセックスに走ったから言葉が亡くなったのか卵が先か鶏が先かって話ですけどあんまり気にしてないです。どちらにしろ結婚に結びつかない愛情は破滅への道をまっしぐらです。これを言うところが嫌われる理由よね、と思います。
「誕生日何時だっけ」
「今日」
「ウソ、この前2月の14日って」
「バレンタインじゃん、チョコ欲しかっただけ」
「あぁそう、今日は何が欲しいの?」
「モーニング娘。の新譜」
「好きなの?」
「貴方がZONE派だから好きになったの」
 こう言うことをいって顔を覗き込むと言った彼らの顔が歪むのを見るのですが、だからといって良心の呵責を覚えたりしません。そもそもりょうしんなんて無いんじゃないの? そうです、私には両親は居ません。
「親から愛されなかったから」
「嘘つき、みんなに愛されてるじゃん、ウソ」
「ウソつかないとみんな愛してくれないもの、解ってる?」
 時計を見ると天才てれびくんワイドが始まってしまっています。あぁ、大切な番組を見逃してしまった。貴方の所為よ、とか言いながら相手の腕をつねります。籾心地が大変よろしいです。
「あのね、この前電車で可愛い子みかけたのよ、凄く可愛いの、出っ歯でね」
「又ウソ、そういうことしてるとその内愛想尽かされるよ?」
 あぁ、貴方の愛想は尽きてしまったね、さようなら。思いながら目を閉じて、スヌーピーのトレーナーを思い出します。別に世界の破滅とか死なさそうだけど私くらいは簡単にクルエソウダなぁと思いました。

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