第33回中高生1000字小説バトル

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 エントリ 作者 作品名 文字行数 得票なるか!? ★
 1 lapis.  傍観者  1020   
 2 歌羽深空  私のブランチ  1000   
 3 朝霧  また、逢いましたネ。  1000   
 4 月下 雫  offense and offense  0   
 5 南 那津  私暦〜わたくしごよみ〜  1000   
 6 さわら  記憶すくい  997   

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Entry1
傍観者
lapis.・・・・・



「ここか」
 そんな声が不意に聞こえた。
 ちょうど良い声の低さで、私の耳には聞こえやすい声色だ。
「……ちょっと待ってっ!まだ、まだ心の準備がっ」
 さっきの声に覆い被さるように女の声が聞こえた。焦った声色、歳はいくつだろうと私は考えた。
 私は声だけでは面白くなくなって興味本位で目だけでそれらしい男女を見つけた。きっとこちらには気づきはしない。
 一人は、少年だった。いいや青年かもしれない。制服を着ているだろうから高校生には違いないと思った。それにあの制服は市内の高校のものだ。私も昔着ていた。
 青年は美青年なのかもしれない。染めた金色が夏の日の太陽よりも眩しかった。
 青年の横に立っていた女はありふれた服装のごく普通の女だった。
 歳は多分二十代後半、……お世辞でも若いとは言えなかった。目尻に皺が見える。肌も潤いが少ない。あの青年の横にいるからこそ際立って見えた。
 人々は目的の為に二人と私の間を遮って歩いて行く。

「……でも、……けないと、……やばいんじゃないの?」
 コインロッカーの前、青年は顔をしかめてそんな風に言った。青年はいかにも面倒臭そうな顔をして、しきりに頭を掻いた。
「そうだけ……っっ!!!……にはわかんない……、子供のクセにっっ!!」
 女の方は顔を赤面させながらそんな風に言い捨てた。なんか声が泣きそうだ。でも多分泣いてない。ここからじゃちょっと離れてて分からない。
 声も行き交う雑音に紛れて上手く聞き取れないし。

「……腐っちゃうよ?」
 青年は顔色も変えずにそう呟いた。
 ―――何が?
 と私は首を傾げた。絶えず聞こえる蝉の音と人の靴音と声がうるさい。私は思いがけない展開に思わず唾を飲み下し、それから汗を拭った。
「……虐待で終わるのと、殺人と終わるのは?」
 青年は事も無げにそんな風に呟く。周りのうるさいと感じた雑音が耳鳴りのように一つの音に聞こえ、その声だけが不気味に耳に残る。

 ヤバイ。
 青年がこちらを見た。不意打ちだ。冷ややかな視線。
 頭の中ではもうこの危ない会話は聞けない、立ち去らなければいけない、なんていう警鐘が頭の中で響き合う。目を逸らさなければ。
 焦燥感が私の胸を這い、落ちつこうと慌てて目を閉じた。
 
 ―――聞きたい。
 
 その欲求だけが膨れ上がり、いくつかの警鐘を跳ね除けて、ひとつ声が響いた。
 そして私がゆっくりと目を開けると漂う陽炎が私と二人を遮っていた。
「邪魔だ、どけ」
 私はひとり、そう呟いていた。



Entry2
私のブランチ
歌羽深空・・・・・



何するのも面倒くさい。
私の口癖は
「退屈が忌々しい」
きっと誰かの歌の1文。
それにしてもなんて矛盾してるんだか。
退屈が忌々しくて、面倒くさいなんて。

午前11時。
まぁvブランチのお時間。
うわっ・・・自分で思っておかしいよ・・・。

いきおいよくフトンを飛び降りる。
手に突っかかった果物包丁。
やばい・・・手、切っちゃった・・・。
舐めておけば直るかぁ。

ふと見下ろす。
布団の上にはいつもみたいに赤黒いシーツが広がっている。
最初は薔薇みたいな色で綺麗だったんだけど。
嗚呼もう取替え時かしら。

今日のランチは・・・まあいつも通り。
飲み物は紅茶。
赤くて綺麗・・・。でもなんか臭いけど。
鮮度落ちたかなぁ。でも、これ、手作りなんだよ?
前菜は普通のサラダ。
メインディッシュは・・・!
なんだっけ。この鱈の白子みたいな。
たらこみたいなやつ。
美味しいから冷凍庫で保存しておいたのを焼いたんだけど。

・・・まっずぅ。

やっぱり鮮度はおちやすい。
注意しないとなぁ。

お茶を一飲み。
そうやってすこし落ち着いてから。

モビールを眺める。
白くて、つやつやしてて(私が磨いたんだけど)。
大きかったり、小さかったり。
キレー。
誰にも見せた事ないの。
私の秘密で、私の宝物で。

あ、でも・・・
このアパートの住人さんなんだけど。
人の部屋に「臭い」とか「おかしい」とか言うのよ?
それはまったく失礼な事じゃない。
住人さん全員で「出て行け」っていうのよ。
ほんとに・・・。
それでね、そんなことないって態度で現そうと思って、
部屋に招待したの。
一番最初に驚いた・・・隣の部屋の橋本さん。
いきなり叫んだお向かいの東上さん。
モビールを見て携帯で写真をとった反対隣の佐々木さん。
反対に電話をかけようとした上の階の小林さん。
玄関で倒れてしまった1号室の山本さん。
そして管理人さん。

それから・・・どうしたっけ。
最近顔見てないなぁ、あの人たち。
たしか、無言で頷いてくれたから、理解してくれたとは思うけど。

モビールも、少し成長したのよ。
成長するモビールって、あんまりないでしょ??

そういえばね。
このアパート、他の人たちからは「島流し荘」って呼ばれてて。
郵便も新聞も来ない、警察も暗黙の了解で立ち回りに来ない。
そんなところなんだって。
あーあ。不動産屋さんに騙された。
でも許す。

「今日も、頑張ろうかな」

呟いたら、
橋本さんがベランダで頷いた。
あなたも、頑張ってね??

そう呟いて、私は食器を洗い始めた。




Entry3
また、逢いましたネ。  
朝霧・・・・・



「ああ。また、逢いましたね…」
知らない人間に、街角で声を掛けられた。初めて会ったはずなのに微笑みかけてくる
相手。
「はあ、人違いじゃないんですか?」
意味が分かず言ってやれば、男は曖昧に哀しげに笑う。
「いえ、また逢うと思います。それでは…」
律儀に頭を下げてきた相手の行動に、もう一度、はあと言い顔を背けた。
面倒事なんて、できるだけ避けて歩きたい程だし。大きな欠伸をしてバイト先のコン
ビニへと向かった。

そう、特にあいつの事なんて意識してなかったんだ。

「また、逢いましたね…」
にこりと愛想良く笑いかけてくる男。夕方に会ったあいつだと瞬時に悟りつつも後に
は数人の客。
「いらっしゃいませ…」
機械的な笑顔を向けト、言われた言葉を受け流す。本当に面識なんてないのに。もし
や、俺のストーカー?
と考えつつ、差し出された飲料のバーコードを読み取りお金を受け取る。
ありがとうございましたと、また機械的な笑顔を向けて次の客の相手をする。
男は、フフと気味の悪い笑みを浮かべて去って行く。
内心ホッとした。

バイトの帰り辺りはすっかり夜が明けてきて今日も暑くなりそうだなと思う。
公道に出た所で猛スピードで走ってくるトラックが目に入った。
あんなスピードでカーブを曲がり切れるのかと思った刹那自分の元へと直進してき
た。
運転手はというと、泥酔状態なのか顔を赤くして眠っている。ヤバイ。思いつつも足
がすくんで動けない。
その場にへたり込んでいると、急に誰かに押されてその場をよろめき離れる。
何だ!と顔を上げれば長身な眼鏡の男。バイト中に…夕方にあった男だ。
そいつは、自分の方を振り返り哀し気に笑った瞬間トラックと思いっきり衝突した。
やたら、そのシーンがスローに見えて息を詰まらせて口をパクつかせた。
どうして、あいつが自分を助けたのか。視界が揺れた。目前には血塗れで生存不明な
相手。
思わず駆け寄り手を握った。
「……葵」
知らないはずの相手の名前を呼ぶ自分。相手はゆっくりと口元を緩ませた。
「……やっと…思い出してくれましたね…」
手を握り締めれば涙だけが溢れ返る。相手の反応は返ってこない。
「やだ…死ぬな!もう、俺の前では死なないって言ったじゃんかよ…」
浮かんだ言葉をそのまま口に出し泣き叫ぶ。でも、相手は動かなかった。

確かに、あの男の事なんて知らなかったんだ。でも、咄嗟にoたあの名前は?約束した
ような言葉は?
何時何処で会ったのか知らないまま、あいつは逝ってしまった。




Entry4
offense and offense  
月下 雫・・・・・



「ねぇ、翔也くんってさぁ、サッカーしてるときめちゃくちゃかっこ良くない?」
「えっ・・そうかなぁ・・・。」
「絶対かっこいいって!彩菜は幼なじみだから分かんないんだよ。私さぁ、好きになっちゃったかもしれないなぁ・・・。」
 放課後の教室。委員会の仕事で残っていた真琴が突然言った。

「告白しようかなぁ・・・。ねぇ!彩菜も応援してよ!!」
「うっ・・うん・・・。」
真琴の顔は真剣そのものだったし、突然言われたからただうなずくことしかできなかった。

 ハッキリ言って真琴は女の私から見ても可愛い。当然男子にもモテる。しかし、裏の顔があることを私は知っている。

 夜の街に飛び交う犯罪。ドラッグ・売春・援助交際・・・。そんなものに彼女は手を染めているのだ。
 私は口止めされているけれど、私以外に知っている人も居たと思う。けどみんな、他人がどうなろうと自分には関係ないから噂は広まらない。そんな状況が余計に彼女をその世界に引きずり込んでいったのかも知れない。
 私も多少気にかけていたけど、友達と言っても所詮は他人。私には関係ない。

 そう思っていたが、(翔也はちゃんとした奴だから、真琴を変えてくれるかな)と期待を抱いてた。
 やっぱり、他人と言っても友達は友達。良くなるに越したことはない。

 それから二ヶ月。二人をくっつけようと私は必死だった。Wデートを装って、遊園地に行ったり、映画を見に行ったりした。
 翔也と真琴が仲良くなっていくうちに、だんだんと真琴は夜の世界から手を引くようになっていった。

 そして、二人は付き合いだした。
 そのころには真琴もすっかり変わって、中身から本当に可愛くなっていた・・・・・・はずだった。


 数カ月が過ぎたある日、路地裏に座り込んでいる翔也を見かけた。
「何でこんな所にいるの?気分でも悪いの?」
と声をかけると、翔也は顔を上げ、
「あぁ・・・。彩菜ぁ・・・?何かこれ真琴に貰ったんだけど、これ飲むとすっごいフワフワして気持ちいいよぉ・・・。彩菜も飲むぅ?」
と、虚ろな目で言った。手には何粒かの錠剤を握っていた。
「真琴が・・・?」
(そんなはず無い!)という気持ちがよぎりながらも、真琴に対する憎悪がわきあがってきた。それと同時に激しい絶望感に襲われた。翔也がこんな風になってしまったのは、私にも責任がある。

(真琴を・・殺す・・・・。そして私も・・・死ぬ。)
翔也の持っていた錠剤を取り上げ飲み干した。その瞬間、激しいめまいと頭痛に襲われた。しかし、今ならなんでも出来る気がした。

 真琴には理由を聞かないようにしよう。
 理由を聞いても、もう取り返しはつかないから・・・・。




Entry5
私暦〜わたくしごよみ〜  
南 那津・・・・・



 佐々木に「いいやつだな」と言われ、
 熊谷に「お前ってすごいなぁ」と言われ、
 細川に「期待してるから」と言われ、
 林に「親友になりたい」と言われ、
 三河に「いつも真剣だよね」と言われ、
 尾形に「お前を尊敬するよ」と言われ、
 平に「疲れないか」と言われ、
 佐上に「何時が本気で何時が本気じゃないのかわからない」と言われ、
 坂下に「人にはたった一つだけでっかい事ができるのさ、欲張るな」と言われ、
 寺本に「お前がたくさんいてくれたら世界は平和なのになぁ」と言われ、
 本郷に「要するに馬鹿なんだな」と言われ、
 光田に「嫌いじゃないよ」と言われ、
 具志堅に「俺たちはライバルだ」と言われ、
 沼田に「二位! すごいじゃん」と言われ、
 浜口に「初めて勝った。うれしぃ」と言われ、
 金城に「人間くせぇ」と言われ、
 高瀬に「それでいい?」と言われ、
 朝田に「適当言ってんじゃないだろうな」と言われ、
 高松に「完璧主義者」と言われ、
 古橋に「肝心なところで失敗するんだな」と言われ、
 黒崎に「その人を上から見下ろすようなしゃべり方、やめた方がいいよ」と言われ、
 小出に「嫌いかも」と言われ、
 亀田に「友達は選ぶべきだ」と言われ、
 尾野に「うざい」と言われ、
 祖父江に「あたし、だめなんだ。もう、別れよう。ゴメン」と言われ、
 三品に「………」と言われ、
 郡に「……ねぇ。僕、君と友達になりたいんだ。でも、僕……あれ、だから」と言われ、
 小野田に「俺たちはオンナジだ」と言われ、
 富塚に「最近のお前、付き合う仲間変わったよな」と言われ、
 垣内に「しっかりしろ!」と言われ、
 関本に「いつも本気なあんたはどこいったんや。そう、その顔や。わいの知ってるあんたはそんな顔しとらなあかん」と言われ、
 竹島に「ウインクしてみて」と言われ、
 松林に「お前眉毛太いな。ちっとは剃れよ」
 榊原に「大好きっ」と言われ、
 大津に「本音で話してくれる」と言われ、
 下野に「この前連れて他女は誰だよ。くぅ、かあいい女の子連れやがって、このっ」と言われ、
 淵上に「女に手ぇ出すとは抜け駆けしやがって、俺たちの友情はどこいったんでい。あはは」と言われ、
 桑原に「主役、がんばれよ」と言われて、
 柳に「お守りもってんだ。似合わないよ。かわいい」と言われ、
 柿本に「芸能界目指してみろよ」と言われ、
 星野に「ユーアーサムライ!」と言われて俺はここにいる。




Entry6
記憶すくい  
さわら・・・・・



 彼は二ヶ月前交通事故で死に、僕は彼が好きだった喫茶店へと通いつづける。
そして何曲かビートルズを聴いて―――僕は何をしているんだろう?よくは分からないけれど、そこにいると色んなものが確かめられる気がする。記憶を整理して、一部分はその店に置いていくのだ。

 そして今、見たことも無い男が、僕の前に座って心配そうに、こちらを窺っている。彼の組まれた細い指の前にも、アンティーク調のコーヒーカップがあり、芳しい湯気が立ち上っている。
(誰だ?何時からそこに?)
「はじめまして。今日はあなたに大切なお話があって参りました」
「僕にですか?人違いだと思いますが」
「いいえ。率直に申し上げますと、あなたはある本の中の登場人物なのです」
 あまりの突拍子の無さと馬鹿馬鹿しさに、笑い出したかったけれど、相手は至って真面目な顔つきだったので、僕は首を振るだけにしておいた。僕の長いとは言い難い人生が頭の中を巡る、ことを想像した。
「といいましても、その本の作者はあなたです。つまり、一般的な言い方をすれば、あなたは記憶を本という形で記録していた。参考までにご紹介しますが、他にも音楽や絵、映画など種類は様々あります」
 もっとドラマチックな展開がよかったかな、と男は小さく付け加えた。夢にしてはあまりにも香りや、音がリアルすぎた。
「自覚したことがないので、よく分からないんですけれど、そのことが何か問題でもあるんですか」
「ええ、今にもあなたはその本を燃やそうとしています。とても死に近づいているということです。現在の私との会話は、その次元とは異なっているので安心してください。ここはいわば栞のような空間なのです」
「僕が死ぬ?何故、そんなことが分かるんですか」
「摂理です」
 わけがわからなくて、窓の外、広がってきた灰色の雲を呆然と眺めた。一呼吸おいて、彼は続けた。
「あなたがご覧になっている雨雲は、記憶を燃やしたときに出る煙です。だから雨はある種の感情や事実であり、世界はそれにより洗われ、流れていくのです。全ての事象は、世界を漂流する」
「ひとつの摂理として」
「その通り」

 僕はその美しい世界を生きていく。

 ふと我に返った僕は、一人分のコーヒー代を払って、喫茶店を出た。
頬にぽつりと雨粒が落ち、僕は何か混沌としたものを思い出す。パーカーのポケットに手を突っ込むと、カッターナイフの冷たい感触があった。死んだ親友が頭を過った。