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第37回中高生1000字バトル

エントリ作品作者文字数
日常的で当たり前な事 紅花花屋本舗 1156
僕と『スズキ』 サユキアヤコ 1000
人間不信+神=・・・ 歌羽深空 1000


バトル開始後の訂正・修正は受け付けませんので覚悟してください。

バトル結果ここからご覧ください。



エントリ1  日常的で当たり前な事   紅花花屋本舗



 タイムマシンなんて物は無い、と友人達は口々に言った。
 あくまであれは漫画の中で青い狸人形達が出してくれる道具であり、現実に存在はしない、と言う。
 それを裏付ける根拠は、と聞くと。
「だって、もしタイムマシンがあったらさ、未来の人がこの世界に来てるはずだろ?」
 と言う。確かに、それは納得の行く答えかもしれない。僕もまだ、未来から来た人になんて、会った事も無い。
 むしろ、実際に『私は未来から来ました』とか言われても、頭がおかしいんじゃないか、と僕は思うだろう。
 ということは、僕には相手が未来から来たかなんてまず分らない、もしくは信じないのではないか。
 しかし、それでいいのか?
 もしかしたら、未来人は僕達が気がつかないようにこの世界に暗躍していて、そして、何か密かに動いているのではないだろうか。
 例えば、ありがちだが金儲けとか。資源の少なくなった未来にとって、僕等の時代の資源は安く仕入れられて、高く売れるんじゃないか。もしや、未来ではガス御殿とか、石炭御殿とか、そんなものが建つくらい資源が無いのではないか?
 もしかして、未来は酷い戦争状態で、今の僕等の時代に非難してきてるのかもしれない。しかし、だったら言ってあげたい。この時代は、日本人は馬鹿みたいに何事にも無関心な人が多くて、アメリカは戦争したがりな国ですよ、と。 日本じゃ、凶悪な少年犯罪が増えて、ロクでもない時代ですよ、と。
「いや、私の時代も大変ですよ? 下克上が怖くて、迂闊な行動が即命取りですよ」
 へぇ、大変ですね。僕の時代はこんなのでも平和なのかな。
「そうだよ。 私の時代なんか、自然が無くて殺風景でねぇ。 この時代は見るところがあっていいね」
 自然破壊も、そこまで進むと大変ですね。もっと自然は大切にしなきゃ駄目ですよ。
「この時代はいいねぇ」
 誰だって、昔は良かったと思いますし、誰だって未来に希望を持ちますよ。でも、昔は戻ってきませんし、未来はすぐにはやってきま
せんよ。今の自分の時代をゆっくり生きていこうじゃありませんか。
 ところで、貴方達どなたですか?
「未来人です。 あ、こちらの方は戦国時代からお連れした武将さんの……」
 分りました。とりあえず、バケツいっぱいの水をぶっかけますから、そこにいてくださいね。
 言わなくても分ってますって。頭がお熱なんでしょう?
 僕がバケツの水を持ってくると、既にそこには誰もいなかった。
 とりあえず、バケツの水をかぶってみた。あぁ、頭がはっきりしてきた。何か、分った気がする。
「やっぱ、タイムマシンてあるんだな」
 明日使える無駄知識が増えた気がした。
 でもとりあえず、今は溜まってたレポートをこなすの先決だな、うん。留年嫌だし。

 とりあえず僕は、明日のレポートをタイムマシンより優先することにした。


website:紅花堂


エントリ2  僕と『スズキ』   サユキアヤコ



冬も本格的になってきた12月半ば。

僕は朝食を取りながらニュースを見ていた。

はきはきと音声だけが冷えた耳を震わせていた。

「今日未明、自営業の鈴木さんの自宅で火事があり、木造2階建ての建物が半焼しました。」

火事があった場所は家の近くだった。

真っ黒になり骨組みだけが取り残された大きな屋敷と横たわる消火ホースの映像が流れた。
よくある火事場の風景。

「鈴木さんを含む家族3人が行方不明になっており、現在確認を急いでいます。」 
 
僕はココアを雑誌に垂らしてしまった。

焼け残ったらしい残骸の中に赤いアルバムがあった。
僕と同い年の数字が読まれた。

僕は散らかった部屋の物置を漁った。

アルバムは僕の卒業した中学校の物だ。
あの地域の中学でアルバムが赤いのは僕の学校だけだったはず。

もしかしたら同窓生が死んでるかもしれない。
僕の頭は好奇心で一杯だった。

自分のクラスのページを探す。
めくる度に白っぽい埃が冷たい空気に舞った。

鈴木、鈴木と。

「あった。」

僕はあっさり見つけた。
作文のページだった。
しかし集合写真には写っていない。

「これじゃ顔は分かんないな。」

しかも名前は苗字だけと来てる。
性別は分からないし、どんな奴だったかも思い出せない。

作文も
ただ一行、将来の夢は会社員と書かれていただけだった

まったく思い出せない。
鈴木という人間のことだけが本の抜け落ちのように欠落している。

鈴木の名の横に掠れた鉛筆書きで女子と書かれていた。
記憶の水で僕の頭は洪水になった。

思い出した。
スズキ。
おとなしい子だった。
何回か席が近かったこともあった気がする。

顔は思い出せないけど髪の毛は長かったかな。

その辺にあったノートの切れ端に髪の長い子を描く。

でも下の名前だけはなぜか思い出せないな。

水はすぐに枯渇した。

本当にあの子は死んでしまったのだろうか?

気休めに新聞を開いた。

新聞から薄茶の封筒がすとん、と僕の爪先に落ちた。

何も書いていない。

中には便箋が一枚入っていた。

私の事覚えてる?

スズキ。

名前褒めてくれたね、私の嫌いだった。

あげは。

桐生君今絵描いてるでしょ。きっと。

私が今までで覚えてた人桐生君だけだったの。

私多分もう居ない。

胸を打ち抜かれたような苦しさを覚えた。

今僕は蝶の図鑑の挿絵を描く画家だ。

やっぱりあの子はもうこの世には・・・・。

あの子は死ぬことを予感していた?

涙が止まらなかった。

きっと孤独なあの子と僕が重なったのだ。

寒い日曜日の朝の出来事。




エントリ3  人間不信+神=・・・   歌羽深空



俺は俺以外のものをあんまり信じない。
第一、『現実』とはなんなんだ。

”CG”っていう、便利なもののおかげで
人間って奴は益々現実と妄想との見境がつかなくなった。
これはよっぽど人間という奴が、器用に出来ていないのだということを露呈したようなもんなのだ。

信じる馬鹿は救われぬ。ならば全てを疑ってかかればいい。
・・俺のように。

俺は猫と恋人のいる空間で暮らしている。
実在などしない人間・動物だ。
仮想嫌いの俺が仮想に入り浸る。滑稽だが。
全てがデータで、全てがゲームで。

なかなか、仮想空間も面白いもんだ。なあ?
只、しかし。これは仮想の現実で、嘘の世界だ。
俺が見ている空の青さでさえも、嘘の青でしかないんだ。

外に出る。風のにおい。最近はより本物らしくを心がけているらしい。
いい事か、悪いことか。

突然、目の前にオレンジのスポーツカー。・・ちょっと待て。
中の人間は眠っているじゃないか。俺のところに近づく。
行き止まり!防げない!!!

!!
そうだ、ここは嘘の世界。
これすら、なんかのアトラクション。
なかなか仮想空間も粋な事をやってくれるじゃないか。
見てみろ!!俺はこの車をひらりと飛んでやる!
I CAN FLY!!!

パンッ

その瞬間、俺は空を飛んだ。車は逃げた。
・・ふぅん。仮想空間もなかなかナメタもんじゃないな。
さあ、着地・・

頭から・・?

ガスッ

痛い。・・へえ、感覚つきか。でもそれは嫌だなあ。
あとでクレームをつけなければ。

さあ・・そろそろ現実の世界に戻ることにしよう。
またのお越しを・・・素晴らしい気分を・・・
ああ、気分は悪いよ。

・・・
・・・

「昔から、演技のうまい役者でね。来週から稽古が始まる舞台に向けて、役作りをしていた。」
「そうでしたか・・。ちなみに役どころは?」
「この方には”自分は神だ”という妄想を持った人を演じて頂く予定でした。」
「おかしな役ですね。でも、役に入りすぎたんですかね。自分で車に飛び込んで死ぬなんて・・」
「まじめな人でしたよ。まあ・・欠点はありましたが。」
「欠点?」
「自分以外は、皆嘘をついているという・・一種の、人間不信ですよ。」
「ほぉ。でも、あなたもさぞ驚いたでしょう。人が飛び込んでくるんですから。」
「ええ・・刑事さん、ありがとうございました。」

刑事と男は去っていった。
刑事はパトカーに、男はオレンジのスポーツカーに・・。

”俺は、現実を信じない。お礼外は、みんな嘘なのだ。”

さあ、嘘吐きは誰だ。