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第38回中高生1000字バトル

エントリ作品作者文字数
いやなポケットモンスター 木戸 浩次郎 1000
大気総括製造公社 歌羽深空 1000
夜の闇と白い猫。 1000
時差で伝わってくる 亜高 由芽 1000
あなたのためなら 芦野 前 906
すり減る人々 相川拓也 1000


バトル開始後の訂正・修正は受け付けませんので覚悟してください。

バトル結果ここからご覧ください。



エントリ1  いやなポケットモンスター   木戸 浩次郎



この話しはノンフィクションです。
「パチパチパチパチ」拍手とともに幕があがった。
とうとう映画「ポケットモンスタ−」が始まった。
幕が上がるとともに推定身長160cmのピカチュウと
約150cmのサトシと140cm以下の
オーキド博士が立っていて、それとともに
通訳さん(?)がマイクを持っていた。
オーキド博士が急に「サトシよ、
ポケモンマスターになってくれ。」と言った。
サトシはどこから連れて来たか分からない
ピカチュウに「よし。行くぞピカチュウ!」
と言った。ピカチュウはなぜか、
「ビガヂュフ(!?)」と言った。
そこからなんだかよく分からない旅が始まる。
 5歩ほど歩いた時点で、
尻尾すらないヒトカゲと甲羅のない
ゼニガメが出てきた。サトシは、
モンスターボールも使わず、二匹を捕まえた。
 舞台を一周ほど歩くと150cm程度の
ポッポが現れた。これまた何も使わずに
すんなり捕まえた。ここでなぜかピカチュウが
「ビガヂュフ」とほざいた。
またしばらく歩くと今度は谷があった。
サトシたちは降りてみた。そこには
すごい数の私服を着ているゴーリキーがいた。
急に「第一関門。綱渡り」
と言う声が聞こえた。なぜかサトシたちも
参加する事になった。サトシたちは、
床に背中を引っ付けて、恐ろしい谷を、
命綱無しで何回も往復した。
そこでサトシの声で「れべるあーっぷ」
と声が聞こえた。その後すぐに何かのメーターが来て
0から5にレベルが上がった。その次に何らかの関門
を『サトシが』クリアしてレベルが5から10になった。
そして第三関門。バトルが始まった。
サトシとゴーリキーが違うサンドバック
をたたき続けた。ここでやっとゴーリキーが現れた
のにもかかわらず、もうレベル10になっていた。
しばらくたってゴングが鳴った。もうどっちが
勝ったか分からない状態で、よく分からないが
またもや何もせずに、『レベル15』で進化
したカイリキーをゲットし、谷を降りた。
谷から降りて10歩ほど歩くと、オーキド
がいた。しかも研究所である。本来なら
ここでサトシがポケモンマスターになるのだが、
オーキドがこんなことを言った。
「サトシ!わしと勝負じゃ!お前の修行の
成果を見せてみろ!」
と修行暦30分程度のサトシに言った。
オーキドは右手の親指と小指を前に出した。
するとピカチュウ以外のポケモン(?)
が自殺した!。ピカチュウは、「もはやこれまで」
と日本語で話したあげく、サトシを盾にして、
逃げた。逃亡した。脱藩した。
そしてピカチュウは日産に車を試乗させて
もらいながら、
付添い人を食って泣く子も黙る79万円の車を
パクッた、こんな行動をしたピカチュウは、
ノーベル賞をもらうことになった。
ノーベル賞はここ200~300年 森総理
が引き受けている。森総理はピカチュウと
林 真●美に死刑判決を言い渡した・・・




エントリ2  大気総括製造公社   歌羽深空



・・・この世界で、笑う事が出来なくなったのは、いつからですか・・・?

未来を君らは知らないだろ。タイムマシンはまだ出来ていないよ、残念ながらね。
でもその分、笑顔が少なくなった。いや、無いに等しいかもしれない。
テレビバラエティはマンネリ化だし、無表情の鉄仮面野郎が増えたから。

そこで政府から創られたのが、僕の勤める会社、大気総括製造公社だ。

入社試験合格率がきわめて低いこの会社。
それだけ人を選んでいるって事で。入った僕は・・・天才?

基本的に、何の仕事か?
それは・・・”大気総括製造公社”の名の通りさ。
空気に、ある物質を入れるんだ。
亜 酸 化 窒 素 。聞いた事位はあるだろう?
過去の世界では、麻酔にも使われる、あれだよ。
笑気、ともいうってね。

あれを、大気に含む。言っただろう?”笑顔が少なくなった”と。
だから、亜酸化窒素を混ぜることにしたんだ。

亜酸化窒素は、甘い気体で、吸い込むと筋肉・神経が痙攣・麻痺を起こし、
顔の筋肉が引きつり、笑ったような顔になる・・・あれだ。
人間に無害とはいえないが、もうこれを何十年も続けていると、人間から慣れてしまうものさ。

今はみんな、吸わなくとも笑顔だ。もう、顔が元に戻らないから。
生まれた子供も、もうしわくちゃの笑顔で生まれる事が、当たり前になっている。
みんなが笑顔の、素敵な世界。
それがこんなんだって知ったら、みんなどうするだろう。

え?無害じゃないんだから駄目じゃないか?・・・過去も、同じ事をしているだろう。
たとえば、原子力発電。あれは、果たして本当に無害だといえるのかい?
設備がきちんとしているならば、いいって訳ではないと思わないかい?

空気が毒?
そんなことはない。それは昔も今も変わらんことさ。
人間は、本当は二百歳まで生きる事が可能なんです。
ただ、鉄が錆びるように、ガードレールが黒くなるように
人間も、酸化するのです。
酸化して、錆びて。ボロボロになって。
死んでいくのです。息をしているから。
しかし、息をしなければ、生きられない。
・ ・ ・ 酸 素 は 毒 だ 。
だから、せめて甘い空気。亜酸化窒素は甘い空気。
ど ち ら も 毒 だ 。

みんなが笑顔だから、もうこの会社は要らない?
馬鹿な事言うんじゃないよ。
みんな、失業はしたくない。
工場から、見る景色はオレンジの太陽も青く見える。
え?何かの副作用だ?
・・・内部告発なんかしたらクビだ。

今日も、酸化しながら死ぬのを待つ。




エントリ3  夜の闇と白い猫。   音



 にゃあお。
夜の闇の中、猫の鳴き声が響いた。
「うっわ、びびったー…」
「だっさ。」
「うるせぇ。」
 猫は、ゴミ収集用の蒼いポリバケツの近くに居た。
俺は猫の鳴き声に驚いた所為で、其のポリバケツを倒してしまった。
其れを元に戻そうとすると、再び猫の鳴き声がした。
 にゃあお。
鳴きながら猫は俺の手に擦り寄ってきた。
猫の毛色は雪のように白く、毛触りはふわふわとして柔らかかった。
「なあ、裕。こいつ超可愛いんだけど。」
「あっそ…」
 猫を抱き上げて頬擦りしながら云う俺を、裕は然程興味も無さそうに冷ややかな目で観ていた。
裕は俺の彼女で、裕子という名前だ。
けれど裕は俺以上に男らしく格好良いので、俺は「裕」と呼んでいる。
本人も「裕子」と呼ばれるよりも「裕」と呼ばれるほうが好きらしい。
「なあ裕。この猫、瞳の色違う。金と蒼だ。」
「ふぅん…」
 可愛らしい猫を見つけて嬉しがっている俺とは対照的に、裕の反応は薄い。
まあ、裕は可愛いものとかにも興味が無いし仕方が無いのかもしれない。

「あ。」
 するり。
猫が俺の腕から抜け出した。
其の侭、猫はアスファルトの地面を駆けて行く。
白い猫は直ぐに闇に溶け、姿が観えなくなった。

 暫くして、車のブレーキ音がした。
そして一拍置いて、猫の叫び声。

「なあ、裕。」
「何だ。」
「さっきの、白い猫さ。」
「ああ。」
「金目と、蒼目だったじゃん。」
「……ああ。」
「ああいうのさ、オッドアイって云うんだけど。」
「…へぇ。」
「オッドアイの猫って、蒼目の方の耳が悪い事が有るんだって。」
「ふうん…」
「だから、後ろから車が来たりしても気付かない事も有る、って。」
「………」
「なあ、やっぱり、さっきのって、さ…」
「…取り敢えず、解らねぇから。気にすんな。」
「……うん。」
「明日、この道通るなよ。」
「………解った。」

 そんな約束をしたところで、俺が約束を破る事など裕は観越していただろう。
次の日俺は裕に黙って、猫が轢かれただろう道路へ向かった。
 其の道路に猫の死体は無かった。
有ったのは、粗末な白い花。道端で観掛ける様な雑草だ。
恐らく、俺よりも先に裕が来て、猫の死体を片付けた後で供えたのだろう。
裕らしい、此れで御供えの積もりに違いない。

 …嗚呼、この花の名前は何だっただろうか。

 俺は思い出せない花と、赫く染まった道路を見下ろしながら、泪を流した。
何故泪を流したのか。
其の理由さえも解からない侭、俺は只管泪を流していた。




エントリ4  時差で伝わってくる   亜高 由芽



 朝、爽やかな気持ちで自室を出た。居間は既にストーブで暖められていて、母がテレビも観ずに椅子に座っていた。
「おはよう」
 母が無表情に言うので、不思議に思った。
「おはようじゃないだろ、新年なんだから」
「そうね。明けましておめでとう」
 やっと、息をついたと同時に笑ったので、僕も笑った。
「何かあったの」
 僕は笑顔のまま言うと、母は口をつぐんだ。言うべきか、と悩んでいるようだ。何かよくない事なのだ、と空気が言っていた。
「同じクラスの狭山さんが、昨日の晩に亡くなったって」
 事実が静かに耳に入った。でも僕は驚かなかった。
「そうなんだ」
「大変よね、こんな時に」
 僕はテレビの電源を入れた。晴れ着姿の芸能人が、朝から甲高い声で騒いでいる。チャンネルを切り替えると、遥か彼方で起こっている悲惨なニュースを報道していた。生暖かい部屋の中で、時計の針が几帳面に動く音に、現実味はなかった。
 ――狭山が死んだ。
 それもまた、頭でわかっていても現実味がなかった。椅子に座って、テレビ画面を瞳に写しながら、狭山のことを考えていた。

 文化祭の準備で、二人で体育館にいたとき、彼女は大声で「死にてえー」と叫んだ。狭山はすっきりした、というような顔をして、けらけらと笑った。だから、僕には冗談で言っているようにしか聞こえなかった。
 僕はどうしてそんなことを言うのか尋ねた。
「なんとなく」
 なんとなくで死にたいと言えるのか、僕の感覚では理解し難かった。

 寝不足のせいか、そのまま机に突っ伏して眠ってしまっていた。いけない。
「優君、もうそろそろお父さんと隼ちゃんを起こしてきて」
 食卓の用意をしていた母が、目覚めた僕に言った。

 昼過ぎに、家の外へ出た。
 温暖なこの地方で、水が凍るのはまだ先のことだった。それでも、扉を開けた外は、刺さるような寒さだ。玄関に植えてある山茶花は満開だった。燃えるような赤い花から、水気を含んだ甘い匂いがする。
 郵便ポストを覗いた。たくさんの葉書が、輪ゴムで一つにまとめられて入っていた。自分宛の葉書を探していると、その中に、狭山京子と書かれた葉書を見つけた。
 丁寧な字で、「あけましておめでとう! 今年もよろしくね」と書かれていた。一字一字を指で触れると、やっと涙がこぼれてきた。この字を書いた人は、もうこの世にいない。
「何で、今年もよろしくなんだよ……」
 山茶花の咲く玄関で、気が済むまで僕は泣いた。



エントリ5  あなたのためなら   芦野 前



 明日の天気は、曇りのち晴れだそうだ。
 目の前のお天気お姉さんがたった今、にこやかに伝えてくれた。
 タカシは、曇りという天候を嫌っている。
 それは、幼馴染であるミカが一番よく知っている。
 曇天。雨が降るわけでもなく、だからといって晴天のように気持ちのいい天気でもない。そんな中途半端、がどうしても嫌なのだそうだ。
 ……それでも明日は、特別な日なのに。
 手帳に記されたピンクのハートマークを見つめて、ミカは溜息をついた。
 休日に、二人で遊園地である。
 もっと平たく言ってしまえば、初デートということになる。
(あーあ、タカシって曇りの日、妙に機嫌悪いんだよね)
 しょうがないか。日にちをずらそう。
 だって、タカシが笑っていなきゃあたしヤだし。
 ミカは二度目の溜息をつき、携帯に手を伸ばした。

 明日の天気は曇りのち晴れだそうだ。
 先ほどからつけていたテレビで、お天気お姉さんが能天気に伝えてきた。
(おいおい、勘弁してくれよ……)
 タカシは曇りという天候が嫌いだ。
 幼馴染のミカには前に「中途半端さが嫌なんだ」とか何とか理由をつけてごまかした気がするが、実のところは単なる偏頭痛持ちなのである。
 よく雨が降る前日に頭痛を起こす人がいるが、あれに属するものだと言っていいだろう。
 天気が曇りだと、否応なしに頭のガンガンがやってくる。
 健全な男子高校生が偏頭痛持ちなんて知れたら格好悪いので、今のところこの事実を把握している者はタカシの家族のみである。
 ……それでも明日は、特別な日だ。
 カレンダーの赤丸が視界に入り、タカシは眉をしかめる。
 休日に、二人で遊園地である。
 幼馴染の関係から抜け出せる、初めての日だ。
 しょうがないか。
 明日は曇りのち晴れ、なんだから。
 ミカは、晴れの日を一番好いている。
 それは、幼馴染であるタカシが一番よく知っている。
 何年か前のからっと晴れた日に、その日の太陽と同じくらい眩しく笑って、そう言っていた。
 しょうがないか。
 だって、ミカが笑っていられるんだから。
 もう一度小さく呟いたとき、タカシの携帯が鳴った。
 着信画面をみて、ちょっとやわらかい気持ちになって、それからタカシは電話をとった。




エントリ6  すり減る人々   相川拓也



 かたん、かたん、と電車は単調に揺れている。棒のような人々が、そのハコの中でなびく。黒くなりはじめた夕方、窓に車内の像がうかぶ。狭い東京を縫うように、電車が走っていく。
 車内は密閉されて鉛のような空気で満ちている。立つ人はまばらだが、ぬるい暖房が息苦しい。人々は痩せ細っている。みな背丈に不釣合なほど細い手足や体をふらふらさせて、眠ったりつり革にぶら下がったりしている。さながらジャコメッティのような心許ない人々を乗せて、電車は疾走する。
 退勤途中の男が、つり革を握って眠りかけている。背広を着、一七〇センチはありそうに見える。しかし、その痩せこけた肢体が彼を実際よりずっと小さく見せている。彼の足は今なお痩せ続け、やすりをかけられているような粉が飛んでいた。顔には表情さえ無い。目鼻や口が置かれているだけの顔。
 男の前の優先席には中年の女が座っている。薄茶の髪にしわの彫られた顔、荷物を抱えてぐうぐう眠っている。彼女も腕は骨ほどの太さしかなく、足も子供のように細い。閉じた目は時々ぴくりと動く。口は半開き。
 その向かいの席には男子高校生が座っている。ウォークマンで自分を外界から隔離した彼は、色のない目をむかいの女に向けている。名のある進学校の制服。体はひものように細くなっている。目的地までの時間を、シャカシャカ音楽を聴いてつぶす。耳も干からびたようだ。
 乗客はみなそんな風だ。電車の揺れにただ身をまかせて一緒に揺れている。体のすり減って出てくる粉塵が、鉛の空気に漂う。

 駅に停まる。外はすっかり暗くなり、その中で煌煌とホームが光っている。ひとつかみほどの人の群れの前でドアが開く。彩度のない塊が車内に入ってくる。
 降りた者も幾人かいた。優先席が空き、そこには一人の若い女が座る。足は細く、ふらふらと座礁するように。乗客の視線が一瞬彼女に集まる。身重の腹。片手に買物袋、もう一方には幼児を抱えている。
 彼女は子を隣に座らせて手を握る。その手はふっくらとして生き物らしい形をしている。握りかえす子の手も、美しい形だ。枯枝のような肢体の人間達の中で、この親子は唯一生気を発している。彼らは小さなろうそくの炎のようだ。乗客はその親子の炎に気付かない。体に不釣合な、大きなまぶたの廂が邪魔をする。彼らはみな、死んだ表皮で自らを覆い、車内で揺れているだけだ。
 電車は暗い冬の夕を変わらぬ鼓動で走りつづける。

注:ジャコメッティ Alberto Giacometti(1901-1966) スイスに生まれた彫刻家・画家。独特の細長い人物像を製作した。