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第41回中高生1000字バトル

エントリ 作品 作者 文字数
先輩。 神風夜月 1000
sweet 亜高 由芽 1000
翼をください 篠崎かんな 1137
ツイスターなダンスホール 紅花花屋本舗 990
SPRING yuki 1000
残光 芦野 前 1000
不眠症 ハル 877


バトル開始後の訂正・修正は受け付けませんのでご覚悟を。

投稿、投票ありがとうございました。
バトル結果ここからご覧ください。



エントリ1  先輩。   神風夜月



「よ」
「うわあ!」
 駅のホームにいると背後から突然、力強く左肩に手を置かれた。
 なにしろ唐突だったので、私はおもわず大きな声を出してしまう。
 振り返ると、私の叫び声に驚いているらしい相手の目と出会った。
「先輩。少しはマシな登場の仕方してくださいよ」
 私は懇願するように言う。
「悪い悪い」
 もちろん先輩は全く悪びれてなんかなく、にかっと笑っていた。私は、先輩のこの自由奔放なところは仕方ないものだと受け止めている。いや、先輩に関わる全ての人がだ。
 白いシャツとジーンズが良く似合う、長身のこの男。限りなくマイペースで、そして昔からそれを許される人徳があった。
 私と先輩は高校時代からずっと上下関係が続いている不思議な間柄だった。なんせ、お互いもう二十代前半だ。
 そんな不思議な縁が続いているのは、今でも年に数回、高校時代の部活の気の合う面子で、飲み会をやっているからだろう。
 二人で電車に乗り込み、ドア付近に立った。
「先輩の家ってこの辺でしたっけ」
 私はさらりと疑問を口にした。先輩の家がこの辺にないことなど知っていた。
「なんで?」
「薫先輩のお墓って確か、さっきの駅の近くにありましたよね」
「……」
「まだ忘れられないんですか」
 先輩は窓の外の風景に目線をずらし、沈黙した。
 春の日差しも沈みかけて、橙色の夕陽が車内まで漏れていた。郷愁を誘うような淡い夕焼け空だった。高校時代にも見た、こんな空を思い出させるには十分だった。
 あの頃の私は、薫先輩と並んで帰って行く先輩の後姿を目で追うことしかできなかった。
「もう、いい加減忘れたらどうです」
 もう、いい加減私にしたらどうです、という言葉を飲み込んでそう言った。
「お前こそ、俺なんかやめて他の男にしろよ」
 先輩もさらりと、ごく自然に返した。私の気持ちを知っていながら、いつまでも薫先輩を忘れない先輩に苛立ちを覚え、溢れ出しそうになる涙を抑えるので精一杯だった。
「意地悪ですね」
「お前もだ」
「薫先輩は死んでしまったんですよ」
 先輩は曖昧に笑った。
 先輩は言葉には表さなかったけれど、私はちゃんと分かっていた。
 薫先輩以外に愛せる人はいないのだと。
 彼女の代わりは無いのだと、その遠くを見つめる瞳は言っていた。
 私は小さく先輩に分からないように息を吐き出し、しばしの間、沈黙して電車に揺られていた。
 この夕陽を二人で見ることはもう無いだろうと、察していながら。




エントリ2  sweet   亜高 由芽



 可愛い彼女と、街をちょっと自慢気味に歩く。お金は無いに等しくて、立ち並ぶ綺麗な店の中には足を踏み入れられないけど、一緒に歩いているだけで十分楽しい。咲子は、遠慮気味に俺の腕に手をかけている。でも咲子の視線の先は店ばかりで、俺がちゃんと歩いていないと人にぶつかりそうだ。
 疲れたら、よそ見ばかりしている咲子を駅前の公園へ案内する。日当たりのいいベンチに、距離を置き気味にお互い座る。咲子はなぜかいつもバッグの中にお菓子をたくさん入れていて、こんな風に座っているとごそごそ出してくるのだ。そして、俺と彼女の隙間を埋めるようにすり寄ってきて、お菓子を渡してくる。
「ねえ、これ飲める?」
 でも今回、咲子がバッグから出したのはスナックでもチョコでもなかった。彼女の掌にはガムシロップが二つ。
「無理無理」
 俺は手を振った。すると咲子は残念そうな顔をした。
「美味しいのに」
「甘いだけ」
「飲まなきゃわからないよ」
 咲子は一つ、ふたを剥がして一気に飲み干した。見ているだけで自分の中にも甘さが浸みてくるような気がした。俺が嫌そうな顔をしたのに、咲子はなぜか笑った。
「幸博君はいつも格好つけすぎ。そういう顔見てる方が楽しいかも」
 俺と咲子は付き合って二月だった。まだそんな部分があるのも自覚していた。でも、彼女に指摘されると恥ずかしい。俺は自分の顔が赤くなっていないか、非常に気になる。
「わたしは幸博君に自分のこと知ってほしいし、幸博君のことを知りたいな。だから、これ飲んでよ」
 どうしてそれがシロップ一気飲みに繋がるのかわからなかった。
 でも俺は、銀色のふたを剥がして、とろとろの砂糖水を口に流し込んだ。濃厚な甘さが口の中の水分まで奪っていきそうだ。甘い。ただそれだけで、何のにおいも無い。そのまま吐いてしまいそうな俺は、目をつむって飲み込んだ。喉がぎゅっと砂糖漬けにされた気がした。
「どう?」
 口の中に、かすかに甘みが残っている。胸のあたりでむかむかする。
「不味い」
「うん。甘すぎるよね」
 咲子は急に俺に抱きついてきた。
「分かち合って、同じ気持ちになりたかったの。嫌いにならないでね」
 そういうわけか。今一つ腑に落ちないけど、こうしていられるのなら別にいい。彼女から、名前の知らない香水の匂いがする。子供っぽいのに、急にどきっとさせる。
 俺は咲子の首に手を回して、ちゃんと聞こえるように、好きだよ、と言ってやった。




エントリ3  翼をください   篠崎かんな



「翼をください」
 カウンター越しに言った私の言葉に、男は顔を上げた。
「安くないよ」
「わかってます」
「じゃ、こっちへ……」
 店の奥の通路、片側はガラス張りのショーウィンドウ。その中にいるのは、鎖でつながれた有翼族、つまり人間に羽の生えた姿の動物だ。
「さぁ、どれがいい? 赤い翼、青い翼、ほかに水玉とか、ストライプもあったなぁ」
 ガラスの向こうの女一匹が、こっちに気づいて鎖ギリギリまで近づいてきた。やつれた顔で涙を流して、必死に何か叫んでいる。
「どうかしたか?」
 立ち止まった私に男が聞いた。
「これ、何言ってるんですか?」
「完全防音ガラス使用だからなぁ……たぶん、『助けて』とかのたぐいだろうな」
「ふーん」
 せわしなく口を動かす顔の後ろに真っ白な羽が揺れていた。
……そんなに助かりたいの? 飛べばいいじゃない。翼があるんだから……
 見下すように笑った後、男の方に言った。
「この翼、ください」
「さっき言ったように安くはないよ」
「大丈夫です」
 私は持ってきたボストンバックを渡した。小さい頃から、この為だけに貯めてきた。
「OK。十分だ」
 男は携帯電話を取り出した。
「交渉成立。13番よろしく」
 ガラスの中に数人の男が入ってきて、白い羽の彼女の腕に注射器を刺した。
「さぁ、あんたもこっちへ。羽に毒が回る前に移植せんといかんのでな」

 寝て、起きたら手術は終わっていた。
「気分はどうだい?」
 まだボーっとする頭のまま、顔を後ろに向けると、そこには純白の翼が生えていた。
「私の……翼」
「すぐにでも飛べるよ。ご利用ありがとな、気を付けろよ」
 吸い込まれるように青空へと飛び出す。長年夢見てきた、このためだけに生きてきた。今、私は空を飛んでいる。この青い空に居るのだ。

 突然、視界に編み目模様がかぶさった。
『翼族捕獲の網!』
 そう気づいた時には、がんじがらめに縛られて、数人に押さえ込まれていた。
「違うわ、私はにんげ……」
 言いかけた私の口を、誰かの手が素早く塞いだ。
 目の前にあの男が現れて言う。
「捕獲法にもとづいて、確認を行う。もし、あんたが翼を移植しただけの人間だったら、三十秒以内に言ってくれればいい。審議確かめの上、無傷で解放する」
 にやついた顔で見下ろす男。
 私は人間よ!
 どんなに頑張っても、塞がれた口から、意味をなした音は出なかった。

 鎖でつながれた私は、ガラスの中にいる。
 翼はたらい回しに売られていたのだ、羽を売った人間を捕まえ、また売る……
 ガラスの向こうに男の姿、その後ろには一人の女性。翼を買いにきたのだろうか。
 私は必死に叫んだ。翼を買っては駄目、捕まるだけだわ!
 彼女はにっこりと笑い、私を差して男に何か言った。
 たぶん、こう言っているのだろう。
「この翼ください」





エントリ4  ツイスターなダンスホール   紅花花屋本舗



 バブル景気と呼ばれた頃には、若者は暗く目に悪い色の光のダンスホールで踊ってるだけでも仕事に就く事ができたという。僕の祖父は『本当に良い時代だった』とその当時を語るが、仕事を遊んでやっているような人間は何を人生の目標に生きていたのだろう。別に仕事が人生の生きがいとは言わないが、総じてその頃の若者のやっていた事と言えばダンスホールで踊る事だったようで、もしかしたら当時の若者達は全員ダンサー志望だったのだろうか。確かにそれなら、その数年後に現れたオヤジダンサーズというのも納得行く気がする。
 ともかく、今はそんな時代ではない。2010年である今年の大学生の就職内定率は50%ジャスト、大学卒業者の半分はプータローという時代である。かく言う僕も来月には大学を卒業するが就職の内定は決まっていない。
 こんな状況だが、若者達は踊っている。僕は踊っていないが、彼らは今日も踊っている。もっともダンスホールは光の当たる健康的なダンスホールになったが。
 
 ダンスホールでは今日も数人の大学生が踊っている。BGMは彼らのうめき声にも聞こえる声。目は虚ろか、もしくは生気が感じられないような目。
「あっひゃっひゃ、もう駄目だ〜」
 一人の男が笑いながら、ダンスホールを飛び出した。

 ドス、と重い音が僕の背後から聞こえた。振り向くと、そこには人が一人倒れていた。また、ダンスホールから飛び降りた人が出たようだ。うちの大学でも今月に入ってもう10人目である。というか、一日一人はあそこから飛び降りている。つまり、自殺している。
 しかしそんな事には誰も目をくれない。皆『いつもの事だ』で済まして歩いていく。5年位前なら自殺の増加は立派なニュースになったが、今じゃ大学生が飛び降り自殺するのは当たり前、とさえ言われる時代なのだ。
 しかし、死んでどうなるというんだろうか。確かに就職こそできなかったが、バイトなら探せば幾らでもある。死んでしまったほうが葬儀だの何だので面倒な金がかかるのに、彼らの最終手段は決まって自殺である。親も苦労する。
 皆、何がしたくて大学に入ったんだろう。一つの壁にぶち当たっただけで諦めて死ねるような、その程度の事をしたくて大学に入ったんだろうか?

 今日も、大学の屋上はダンスホールとなっている。そして皆、ダンスホールから弾き飛ばされないよう必死になって、何かにしがみついて踊ってる。


website: 紅花堂


エントリ5  SPRING   yuki



 肌を何かが滑り落ちた。左頬から右頬までそれはキスの嵐をしながら流れていった。
 風だ。どこからか風が吹いてる。出所を確かめるために重いまぶたを開けると下着姿の女が写った。
 華奢で細い腕。肩まで流れる黒い髪。女は肘をかけてアインシュタインのように舌を出した。
「春の味がする。」ハルノアジ。変換。なんだそれ?味?
「味じゃなくて匂いじゃないの?」春の風。春の匂い。
 女は急に振り返った。心持ち首をかしげる。肩からブラジャーのストラップがするりと落ちた。
「春の匂いってどんな匂いなの?」
「さぁ、桜とか花の匂いじゃない?」少し考えるふりをして答える。すかさず、次の質問。「じゃぁ、秋は?」秋?思わず聞き返す冬じゃなくて?
「秋はきっと、焼き芋の匂いだわ、ねぇ?そうでしょう?」女は自己完結をして同意を求める。俺の質問は風に流されて宙を漂っている。あー、そうだね。いかにも興味なさげに俺は言った。でもそれじゃぁ、あたしに秋はなかったわ。
「だって去年焼き芋を食べてないし、見てもないの。冬はおもちを食べたけど…。あたしの秋はどこに行ったのかしら。」
 女の中で冬はもちに決まっているらしい。きっと、夏ももう何かしらに決まっているのだろう。それでも、女は真剣に考え込んでいた。
 
 華奢で細い腕。肩まで流れる黒い髪。ウエストのくびれ、ずり落ちたストラップ。その姿を恥じらう様子もなく漠然と春景色を見て、過ぎ去った秋を探していた。
 いーんじゃない?たばこに手を伸ばしつつ言った。別に焼き芋じゃなくても、味でも匂いでも。そんなの、人の感じ方次第だ。気にする方がおかしい。
 たぶん。そう、たぶん昨日の酒がまだ残っているんだろう。思えば、俺も頭の端がすこし痛む。風がシーツの繊維の隙間を縫って体に当たるたびに、痛みは増長されていく。でも、あたしね?
「春って嫌いなの。なんだか、胸がわさわさして色んなものが色づいて。いかにも新しい出会いが待ってるかも♪って、期待で溢れてて。否応無しに息苦しくなるでしょう?」ピカピカのランドセルや、制服。結局いつも、思ったよりつまらないモノなのに。

 会話はしばらく途切れ、風が一直線に吹き込んだ。
「春の味ってどんな味なの?」
 何本目かの煙草に火をつけ、俺は聞いた。
「さぁ、桜とか花の味がするわ。」
 窓を勢いよく閉め、昨日出会ったばかりの女がするりと俺の横へと潜り込んだ。ベッドだけがぎしりと軋んだ。


website: queen


エントリ6  残光   芦野 前



(誰かこの世界壊してくんないかな)
 あまり手入れされていない芝生が、制服越しに私の背中を刺した。
 春のせいでひどく曖昧な温度の中、寝転がって傾く太陽を見上げる。
(いらないんだけどな)
 何の魅力も感じない。
 たとえ、この先が自分自身の未来でも。

「こーんな所にいた」
 少し残る冬の枯れ草を踏み分ける音がしたと思ったら、
 この不良高校生。
 声が上から降ってきた。
 木の下に適当に転がっていた卒業証書を先生が拾い上げるのを、私は横目でぼんやりと見ていた。
「出ないの? 『卒業を祝う会』」
「出ないよ」
 私が視線を空に戻すと、先生はそのまま私の隣に腰を下ろした。
「先生がこんなトコでサボっていいの?」
 体を起こすと、きつくない香水の匂いが届く。
「やっぱ丘の上って、見晴らし良いわね」
 きれいね。
 私の問いには答えずに、手を上に伸ばして先生が呟いた。
 学校、鏡張りのビル、霞んで見える家、全てを赤に塗って太陽は落ちる。
 先生の横顔にも仄かに暗い影が差して、それは二重の瞼や、長いまつげや、細い輪郭をそっと彩った。

 ざあっと風が吹いて、また桜が散る。
(あ、)
「頭に、桜が」
 ウェーブの髪に手をふれると、いい匂いがした。
 そのまま近すぎる距離で目が合って、時間が止まるかと思った。
「浜里朱音!」
 視線をそらせない強さで、先生が私の名前を呼ぶ。
「右の者は、本校の課程を修了したことを証する」
 まだ先生の髪の上にあった私の手をそっとはがし、卒業証書を握らせる。
「2004年、3月3日」
 その唇が、ふっと優しく笑みの形を作った。
「おめでとう、元気でね」
 
 燃えては揺れる太陽が、桜を赤く染める。
 私の上に、血のような花びらが舞い落ちる。

「果歩!」
 初めて名前で呼んだ。
 ひどくゆっくり振り返る彼女の上にも、桜が涙のように降り注ぐ。
「なあに?」
 沈黙。
 言うべきことは、何もないはずだった。
 本当に伝えたいことは、間違っても口にしてはいけなかった。
「……サヨナラ」
 甘い微笑みと共に、言葉はそのまま、私に返ってきた。
「ええ、さようなら」
 
(神様)
 胸の奥で、強く願う。
 もしも、どこかにいるのなら。
(この世界を、壊してください)
 価値観も、ルールも、この恋心も。
 ありとあらゆるもの全てを。
(私に、しあわせをください)
 溶けるように燃える太陽が沈みきると、闇の女王が夜のネオンにひざまずく。
 すっかり色を失った桜の中、私はどこまでも独りだった。





エントリ7  不眠症   ハル



知人に勧められた不味いハーブティーにも飽きた。
入浴も眠気を誘う事は無い。
退屈な映画もイライラするばかり。
酒にも強い。酔うまで飲めば翌日二日酔いになる。
すでに睡眠薬は飴玉のようなものだった。
ベッドの上で寝返りを打つ。
あくびをする振りをする。
眠たい眠たいと言い聞かせてみる。
部屋はとても静かだ。
とても静かなアパートの一室で、只一人目を覚ましているもの。
不眠症の自分ぐらいだろう。
もう三日寝ていない。そう一睡も。
四時間眠れば十分なのに其れすらかなわない。
なんだかとても疲れた。
目を閉じる。
換気扇の音が気になった。
ベッドを出て換気扇を消した。
目を閉じる。
時計の針が五月蝿かった。
手を伸ばして電池を抜いた。
目を閉じる。
冷蔵庫の唸りが気になった。
台所へ行ってコンセントを抜いた。
目を閉じる。
枕に押し付けた左耳に響くこもった音。
生きているのだ、と思う。
天井を向いた。
右を向く。
横を向いていないと落ち着かない。
顔の角度を調節して耳の鼓動を遠ざける。
手首が、胸が、足が、首が、振動している事に気づいた。
規則正しく。
熱く。
血の流れを強く強く感じた。
全ての鼓動の下に赤い血が、流れているのだと思う。
ぎゅっと目を閉じる。
深呼吸する。
この鼓動を、もっとゆっくりとしたものにしたいと思う。
息を吸う。
ゆっくりと吐く。
心持落ち着いたらしい其の音はしかし決してやまなかった。
無視しようと思う。
別のことを考えよう。
とく。とく。とく。
明日は仕事が休みだ。
とく。とく。
映画でも観ようか。
とく。とく。とく。
それとも買い物をしようか。
とく。とく。
いつになったら、眠れるだろう。
とくん。
ああもう。イライラすれば音も大きくなった。
兎に角、静かでなければ。
昔から、真っ暗で静かなところでなければ眠れなかった。
…この音を止めるのは慣れ親しんだ白い飴玉。
先月分の一袋。何の効果も無いので使わずにとっておいた。
だけど、知っている。
効果が無いのは「用法、用量を守って」使うからだと。
ガラスのコップ。
其処に半分の水。
六十の錠剤。
一緒に使うと静かになった。
無音の中で、やっと眠りについた。
静かな安らかなねむり。