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第42回中高生1000字バトル

エントリ 作品 作者 文字数
Night birds 妃原 華 998
お前と過ごした二年間 青春海夏 740
花のような人 亜高 釉芽 1000
I love you 芦野 前 1000
ロード 田中田郎 999
つば 911
リョウの高校 -mitsukuni- 1000


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エントリ1  Night birds   妃原 華



 着地成功。二階の窓からシーツを切って結び繋げた紐を伝い降りてきた。小さなあくびをして目をこすり今日も私の朝が始まった。私の朝は暗闇に包まれていて、鳥はねぐらに居て草木は暗闇の中で不気味な顔をしていた。空気は人々の疲れをしょって重くなっていた。普通はこれを夜と言う。でも私の中では朝になっていた。
 一週間前。私は学校に行かなくなった。誰がああだとか何がこうだとか他に理由をつけて学校に行かなくなったのではない。やりたいこともないのに学校に行って、将来役に立つか分からない勉強をして興味もない友達の話を聞いて・・・そんな学校生活に不条理を感じてきた。それから私は学校にいかなくなり朝は寝て夜は出歩くようになった。つまり朝と夜が逆転した生活を送っている。
 コンビニへ向かう途中、灯りが消えかかっている街灯を右折したとき背後から聞き覚えのある声がした。
「帆波?」
その声で振り返ると同じクラスの灯本がいた。灯本とは席が一回だけ隣になっただけでほとんど話さない奴だった。
「おまえ、なんでここにいるんだよ?」
灯本が乗っていた自転車をひきながら私の隣に来た。
「別に。」
素っ気なく答えた。
「別にって、あ、おまえ学校休んで一週間経つんだぜ?そろそろ来いよ。」
別にって言葉で私から突き放したのに灯本はついて来る。どうして?
「だってさぁ、学校行ったって意味ないよ。」
「・・・?」
「やりたいこともないのに学校に行って、将来役に立つか分からない勉強をして興味もない友達の話を聞いて・・・そんなことやっているくらいなら、学校行かないほうがいいよ。」
ああ、なんでこんなこと話てるんだろう。周りがこんなこと聞いたら変わっている奴だと思う。理解されなくてもいい、変わっている奴だと思われてもいい。でも誰かに聞いてほしい、そんな気持ちが少しだけあった。油を注していない自転車のキーキーと言う音が止まった。そして私も足を止めた。
「変わっている奴だな。」
やっぱり。
「でもそれでもいいと思う。おまえの考えなんだから。だから学校に来いよ。おまえの考え聞いてくれる奴いっぱいいるから。」
え?その意外な言葉に灯本の方を向いたら、自転車に乗りゆっくり動いて前の方へいた。
「俺も聞いてやるから。」
大声で叫んだ灯本の声が耳にキーンときた。透かさず走って自転車の荷台に飛び乗った。
「家に帰ろうか?」
「うん。」
灯本の背中に寄りかかったときはく息が震えた。





エントリ2  お前と過ごした二年間   青春海夏



 その日、いつも明るく、面白い話をしたりして僕たちを盛り上げてくれる彼が珍しく元気をなくしていた。その日は高校の卒業式だった。かといって僕たちが卒業し離れ離れになってしまうのでその悲しみから元気をなくしていたわけではなかった。僕たちはまだ高校2年生の17歳、しかし彼は高校2年生の18歳だった。

 彼の名前はイグチケンタ。イグチは僕たちよりも一つ年上だった。それは彼は留年し1年生を二度やっていたからだ。イグチと同期に入学した生徒は今年卒業する。

 卒業式が終わり、外で僕とイグチと他の友達で話をしているとイグチの知り合いの卒業生が歩み寄ってきた。
 「よー! イグチ! 俺はもう卒業やぞ」
 「お前も後一年学校行ってちゃんと卒業しろよ! 」
そう言うとその卒業生は立ち去った。留年したからといって、はじめの一年間は全く学校に行っていなかったわけではなかったらしく、ときどき昼から登校したりはしていたらしい。そのため、話したりする程度の友達はいたようだ。イグチは話をしている僕たちの横で、
 「俺、何やってたんだろう・・・ 」
と悲しそうに言い地面にしゃがみ込んでしまった。
 
 イグチがはじめの一年間、学校にあまり登校していなかった理由は僕たちは知らない。しかしイグチはこの二年間とても頑張っていたと僕は思う。僕は知っている。イグチは自分から進んでクラスの委員長になり仕事を頑張ってやっていた。イグチは文化祭の時、みんなより朝早く学校に来て準備を一生懸命やっていた。他にもいろいろな面でイグチは活躍していたとぼくは思う。

 僕は地面でしゃがみ込んでいるイグチに心の中で言ってやった。
 「たしかにお前は人よりも少し遠回りの人生をおくっているかもしれない。でもお前はこの二年間とても輝いていたぞ」と。





エントリ3  花のような人   亜高 釉芽



 背の低い木は、五弁の小さな花を咲かせた。無数の小さな花はかたまりとなって、季節はずれの雪のようだ。大河は学生鞄を持ったまま、そっと腰をかがめた。すると、雪柳の独特で清楚な匂いが、立って眺めていたときよりもより強く感じられた。
「うずもれたい」
 唸るように呟いた声は、足下の花々にのみ届いた。大河には、群生する花や草を見ると、うずもれたいという衝動に駆られることがしばしばあった。爽やかで冷たい風は、彼の髪と花房をゆらした。
「アホか、俺は」
 誰も聞くわけではないのに、自嘲気味に言い、軽く背筋を伸ばし、家に帰っていった。

 数日が経った。気温も雪柳が咲いていたときよりも暖かになった。
 大河は土手にいた。彼は白いシャツにジーンズという出立ちで、そんな彼の隣には少女がいた。
「大河君、付き合おうよ。クラスでも噂になってるんだから」
「ノリで付き合えっていうの? 俺、興味ない」
 冷たく返事しながらも、大河の表情は迷惑そうと言うよりも、困り果てた色が強かった。少女は何か言いかけて、口を閉じた。気まずそうに、大河は溜息混じりで言った。
「俺ね、変人だから」
 すっと彼は、土手に咲く菜の花の群を指さした。
「あれを見ていると、花の咲く中に飛び込んで、そのままうずもれたくなるんだ」
「それがどうしたの」
「変だろう?」
 少女は首を振り、大河を遠慮がちに抱きしめた。それは彼にとって、不意打ちだった。
「わたしの方が、変でしょう?」
 唖然としている大河を無視して、少女は去っていった。
「何なんだ」
 不思議な感情が彼の中を流れていた。
 落ち着かない大河の視界で、黄色の花が彼を招くように揺れている。現実味が失せ、足もとがふわふわする中、彼は菜の花に引き寄せられていった。そして、衝動に突き動かされるまま、そっと花の中にうずもれてみた。
 彼の白いシャツに、いくらか葉緑素がかすった。背中に、軟らかい湿った土が当たる。寝ころんだまま見上げると、黄とその間から見える空の青。菜の花の匂いはきつく、耳元では虫の羽音がする。
 ――何か違う。
 大河が求めていたのは、これらの感触ではなかった。小さな衝撃だった。心の一部が冷め、別の部分がじわじわと加熱させられていく。彼は遠慮がちに抱きしめられたのを思い出そうとした。花にはない、柔らかで、暖かな感じ。
 ――あれか。
 大河は飛び起きた。そして土も払わぬまま、慌てて土手を駆け上がっていった。




エントリ4  I love you   芦野 前



 歌に気付いたのは、駅から二十分くらい歩いたときだった。
 いつもはチャリだけど、今日は雨だから、こうして家までの道を濡れている。
 カサが無いのは、別れるときに彼女に渡してきたからだ。
 最後くらいはちゃんといいところを見せられただろうか。
 そう、最後くらいは。
 
 ……尾崎だ。尾崎が流れている。
 顔を上げ、辺りをぐるっと見回す。
 原曲よりだいぶ高いキー。でも深みがあって、夜の雨に溶け込むように僕の耳へと響いてくる。
 もっと近くで聴きたい。
 見ると、注意しなければ気付かないような細い道があって、湯気のこぼれる小窓が一つ面している。
 歌はそこから流れていた。
 駆け寄り、何気なく窓を覗き込む。
 ……二つの瞳が僕をとらえた。
 僕にとって不幸だったのは、その窓が全開だったことと、風呂で歌っていたのが女の子だったことだ。
 最初に石鹸が飛んできた。
 次に洗顔フォーム、スポンジ、たわし、ついには今しがたまで湯船に浸かっていたであろうアヒル隊長まで飛んできた。
 お供の小さなヒヨコが全部地面に落ちても、僕はまだそこにいた。
 正確には、飛行物の死角になる窓の真下にじっとしゃがみこんでいた。
 だって、歌は止まっていなかったのだから。
 窓はまだ開かれたままだ。
 雨でシャツが冷たく重くなっていくけれど、僕はこの曲が終るまではここから離れないつもりでいる。

 この歌は彼女が好きだった。
 僕は彼女が大好きで、だから彼女が愛する曲も同じように大好きだった。
 いつも並んで、二人で聞いていた。

 不思議だね。
 君はもう僕をすきではないのに、なぜ僕は今でもこの曲を愛してるんだろう。
 なぜ、この気持ちは変わらないのかな。

 雨が強くなってきた。
 水の粒にまじって、頬を何か暖かいものが滑り落ちる。
 それが涙だと気付くのに、少し時間がかかった。
 みっともない、そう自分に言い聞かせて顔を左右に振るけれど、気がつけばそれは頬だけでなく、僕の頭や肩にもぽたぽたと垂れてくる。
 見上げると、さかさまの洗面器がにょきっと窓から伸びて、僕を冷たい雨から守っていた。
 それを支える白い手首と細い指が夜の景色によく映える。
 ……歌は、相変わらず流れ続ける。
 まるでこの雨のように、僕を緩く柔らかく抱きかかえて、当分は放してくれそうにない。
 うつむいて、転がった石鹸を見つめながら僕は一人で目を閉じた。

 もうしばらくだけこうしていよう、と思った。

□作者付記:「I love you」 作詞・作曲 : 尾崎 豊





エントリ5  ロード   田中田郎



 タカシとノブの二人が、俺の遊び仲間、あるいは悪友なのだけれど、どっちも部活で断られた。タカシとノブのいない放課後は、マンガでも読んで過ごすしかない。
 古本屋でシケたのを買う。あとスナック菓子でも、とコンビニに向かった。
 店の入り口には、いつもたくさん自転車が止められている。錆に覆われたチャリに混じって、一台のレース用自転車。その一台に目が惹かれた。俺を呼んでいるように見える。近寄ると、より強く俺を誘う。この自転車を目にしたときから生まれた感情が、ついに抑えきれなくなった。
 サドルに跨り、ハンドルを握る。これだけで胸が高鳴る。鼓動が、頭の中に響くほど、早い。体中が熱くなる。が、どこからも咎める声はしない。それどころか、誰も見ていないに気付く。拍子抜け。急に大胆な気分が広がってきた。思い切ってペダルを踏み込んでみる。自転車はなめらかに滑りだした。
 走っていると、脇に学校が現れた。校庭で野球部が練習をしているところだった。校庭の端では、タカシがピッチング練習をしていた。タカシはガキのころから球を投げるのがうまかった。ドッヂボールをやると、タカシのいるチームが必ず勝った。そして今や、うちの学校のエースピッチャー。
 学校を通り過ぎて、一本道を進んでいると、前を陸上部が走っていた。ランニングする列で、しんがりを勤めているのはノブに違いない。痩せ型の多い陸上部の中で、ぽっちゃりしている色白のノブは、遠くからも目立つ。ノブの体型は俺の知る限りずっと変化ない。体育もいまいちで、昼休みは図書室にいる奴だった。そんなノブが、陸上部に突然入った理由はまったく推測できない。ただ、入部から一年経った今も止める気配はなく「走るのって楽しいよね」と言い出す始末。 
 信号待ちしていると、横断歩道の向こうに、この自転車の持ち主が居た。上下のバイクスーツにヘルメット。手にはコンビニのポリ袋。首を上下左右にせわしなく動かせて、「自転車はどこだ」といった雰囲気で満ち溢れている。どう観ても格好悪い。
 『格好悪い』と思った瞬間、「お前は?」という声が聞こえた。俺は、格好悪いはずが……なくなかった。華奢なレース用自転車に黒い学生服。こんなナンセンスな奴は世界に一人といやしない。さっきまでの俺を除いて。
 すぐに自転車を降り、道の脇に乗り捨てる。あとで持ち主が気付くように。そして俺は探しに行く。俺に似合う場所を。

□作者付記:2年前に参加させて頂いたのですが、それからしばらく小説を書くのを止めていました。
何をしていたかというと、実は何もしていませんでした。
キザっぽく言えば、自分の場所を探していたのですが、それが最近うっすらと見え始めた気がします。
ともかく、この2年間を小説にしてみようと思い、再び筆を執った次第です(気障だなあ)





エントリ6   つば



私は伸びる静かに伸びる。今日も彼はテレビに夢中で、私に全然かまってくれない。だけど、私は黙ったままです。気まぐれに、彼は水を私にくれる。水道水をそのままくれる。とても美味しい水道水で、私は伸びる、どんどん伸びる。私がいるのは台所、私の横には塩がいて、私はまるで調味料の仲間みたい。彼が料理をしているのを、私は毎日見ています。昨日はチャーハン、今日はカレー。たまには違うの作ってみたら? ある日お客がやってきた。彼はなんだか、いつもと違う。お客が私のことを見て、私を綺麗とほめてくる。だけど彼は私をほめない、彼がほめるのはお客さん。私より、君のほうが綺麗だって言っている。その人だあれ。すごおく気になる。最近、彼がお水をくれない。私のことを忘れているの? 私は伸びたい、もおっと伸びたい。彼が私に気づくまで、私は伸びる、ゆっくり伸びる。
彼は私を思い出さない。毎日私が彼を見ても、彼は私を見てはくれない。いつも目の前まで来ているのに、私を全然見てはくれない。私は伸びたい、もおっと伸びたい。私はだんだん萎んでいく、彼が私を見てくれないと、私はどんどん萎んでいく。お願い、私を思い出して。
ある日のお客がやってきた。私を綺麗とほめた人。お客は私を見てくれた。そしてお水を私にくれた。とっても美味しい水道水。お客は私にとってもやさしい。私は伸びる。どんどん伸びる。彼は私を見てくれないけど、お客が私を見てくれる。いつもお客は来てくれる。彼のところに来てくれる。私はお客が大好きです。彼もお客が大好きです。
ある日お客が来なくなった。彼はいつもの元気がない。私の元気もなくなったみたい。私はもっと伸びたいのに、彼は私を忘れているから。私はどんどん萎んでいく、だれも私を見てくれないから、私はどんどん萎んでいく。もうすぐ私はいなくなるかな。
ある日突然、彼がきて、私にお水をくれました。とっても美味しい水道水、私は元気になりました。それから彼はお水をくれる。いつも私を見てくれる。
そのうち、お客がやってきた。私の好きなお客さん。彼はとても元気になって、私も今は元気です。これからずっと元気です。彼は私を忘れないから、私は伸びる静かに伸びる。



website: つば屋


エントリ7  リョウの高校   -mitsukuni-



「あんたそろそろ高校の事も考えなさいよ。」
「高校行かねぇ。」めんどくさそうに大きく息をはいた
「何言ってんの」母親の目は呆れていた。
「どうしようが人の勝手だろ。口出しすんじゃねぇよ」そう言ってリョウは部屋に入っていった。
机には締め切り日をとっくにすぎた進路希望調査票がまだ白紙のまま残っていた。

落ち葉が風に舞う季節になった。

一般の中学生は進路先も確定し、合格へ向けて本格的に受験勉強を開始する頃である。だがリョウは所謂不良中学生と言うやつで、三年間勉強に手をつけた事は無く、毎日ただ遊びほうけていた。

担任はこの不良生を放っておく訳にもいかず、家庭訪問に訪れた。
リョウの考えはただ怠けているとしか思えなかったので、取りあえずリョウの学力でも入れるような私立高校を紹介してもらい、半ば強制的に受験させることにした。

だが進路先が決まった後もリョウは勉強に不安も抱かず、遊びほうけていた。

そんな彼にある日父親が話をした。

「お前あの高校行く気あんのか」
「ねぇ」
「でも母さんはお前を何としてもその学校に入れたがっている。なんでか分かるか」
「しらねぇよ」
「母さんは自分を責めているんだ」
「・・・」
「母さんは自分が母親じゃなかったらリョウに可哀想な思いをさせなくてすんだと言っている。だから高校に入ったら一生懸命応援する。リョウのこと分かってあげられる母親になりたい。それしかできないってな。」
「・・・」

リョウは自分の部屋に戻っていった。

受験の日はついに一回も勉強することなく来た。
「一生懸命がんばりなさい」
母親は力強い声で言いながらリョウを駅まで見送ったのだった。

学校に電話が入ったのはお昼を過ぎ、日が傾き始めた頃だった。
その内容を聞いた担任はすぐに両親に伝えた。担任も両親も言葉が出なかった。

「リョウ君なんですが、面接の時に「受かりたくない」と言ってきたんですよ。我々はビックリして理由を聞いたんです。そしたら彼は 「自分は今まで両親や先生に迷惑をかけすぎた。もうこれ以上かけるわけにはいかないと思っている。だけどこの高校に入ったら今までのオレみたいなやつがたくさんいてまた調子に乗りそうな気がする。だからオレはオヤジがやってる大工の見習いになって1からやり直したいんです。」 というんです。」

合格発表の日、彼の受験番号は掲示板には無かった。だが彼の顔は希望に満ちていた。

高校に入らなかったのは
彼なりの孝行だった。