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第43回中高生1000字バトル

エントリ 作品 作者 文字数
B.U.(ビィユゥ) 歌羽深空 1000
ディスプレイ 神崎現 1000
人魚姫 天霧 1001


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バトル結果ここからご覧ください。



エントリ1  B.U.(ビィユゥ)   歌羽深空

いきなり某国からの手紙が届くから驚いた。
だって外国には友人もいなければ知り合いもいない。しかも送り主は国家。

内容は、なんでも「至急貴殿の貧乏ゆすりを自粛願いたい」との事。
汚い日本語で書いてあった。

でも、でもだ。
いくら国家だからといって、何で今更俺の癖をやめなきゃいけない?
それにどうせ誰かの悪戯だろうと、その手紙を丸めてゴミ箱へ捨てた。

それから、5日後。
家に帰ると、見知らぬ外国人がドアの前にいた。

「えぇと、ホワイ……あれ、わかんねぇ。」

英語が苦手な俺が一生懸命話そうと必死になっていると
目の前の奴は綺麗な日本語で言った。

「私は、数日前手紙を送らせていただいた国の大使です。はじめまして。」
「……あ、どうも。」
「あなたに、貧乏ゆすりを止めていただきたいと、お願いしましたが、あなたは全然改善して下さらないので、参った次第です。」

俺は、冷や汗をかいた。
だって、自分のプライベートを知っているんだ、気持ち悪いだろう。

「なんで、俺が、やめなきゃいけないんですか。」
「……あなたは、中国と蝶と米国の竜巻の話を、知っていますか?」
「はぁ?」
「中国の一匹の蝶の羽ばたきが、米国の竜巻を起こしているという説です。
つまりは、そういう事なんです。」
「話が、見えません。」
「そうでしょうね。ですから、あなたの貧乏ゆすりが私の国では大きな地震になるんです。わが国は、プレートが重なっていないのに地震がおきる。なぜだと、わが国の科学者が一生懸命調べまして、あなたが原因とわかったんです。この土地の位置、あなたの貧乏ゆすりのリズムからね。それさえなければ……。どうかやめて頂けませんか?」
「……。」

俺は、顔がニヤついているのに気づいた。
もしかしたら、このまま金を要求できるかもしれない。
そしたら、一生遊んで暮らせる。

「それなら、条件があります。」
「はぁ、条件とは?」
「契約料として、お金を下さい。」
「は?」
「お金、です。何事も交換条件が必要でしょう?」
「あぁ、やはりそうきましたか。事前に、あなたの性格も調べてよかった。」

え?

突如、突き抜ける激痛。

「無償協力、ではすまないと思いましたから。すみません、わが国はあなたの起こした地震の所為で現在国家予算が殆ど無いんです。知らないでしょうが、わが国ではあなたを死刑にしろという暴動まで起きています。すみません。遺体は大事に城の前に晒させていただきますよ。」

そこで、思考は途切れた。





エントリ2  ディスプレイ   神崎現

 弟の部屋に入った途端に転び、パソコンをする弟に笑われた。雑誌で立錐の余地もない入口を振り返り、膝をさする。
「良くやりくりできるわね」
 小遣いをそのまま食べているような弟が、雑誌を諦めないとは。今どき雑誌代で豚丼が買える。
「雑誌買って、飢えない?」
 弟はパソコンを続ける。
「またチャット?」
 時々にやにやするのが不気味だ。最近とみに大きくなった躯で隠されて、ディスプレイは覗けなかった。
「大丈夫だよ、電車で拾ってるから」
 私を追い払い、彼は面倒くさそうに眉をひそめた。
 そういえば電車で弟を見たことがある。端に座り、雑誌に読みふけっているようだった。あれが拾ったものだったのか。話しかけられずに様子を眺めたのを覚えている。よく見ると紙に何かを書いていたのだ。それを座席の隙間にねじ込み、電車を降りた。
 誰かと筆談でもしているのだと思った。あんなローカル線では毎日同じ車両を同じ時刻に運転する。チャット好きの新たな楽しみに違いないと単純に考えていた。
 翌日見かけた時、弟は降車する少女を目で追っていた。手には雑誌を持っていた。それを目にして、全てを諒解した気になった。
 弟が最寄り駅で降りるのを見届けてから、端の席へと移った。弟が何を書き、少女が何と返事をするのか知りたかった。パソコンを覗く気分だった。手を突っ込む。一枚の紙切れがあった。しかし、そこには何の返事もなかった。ただ弟の言葉だけがあった。
 罪悪感を覚え、紙を隙間に投げこんだ。勢いで車両を移る。手が震える。見てはいけなかったのだ。結果的に乗り過ごしたと気づき切符を買い、下車した。車掌が車内点検し、あの席で身をかがめるのが見えた。
 私は紙を集め始めた。弟はしたため続ける。でも、もう救われなくはない。返事を貰えないのではないから。弟は拾い続ける。
 平和が費えたのは突然だった。ある日弟は雑誌を拾わなかった。もとより雑誌が捨てられていなかった。弟は自室に籠った。パソコンが低く唸っていた。
 次の日も私は紙を隙間から救い出した。そして胸に挿しておいたペンを、おもむろに手に取った。





エントリ3  人魚姫   天霧

 祐樹はあたりを見回し、人がいないことを確かめた。海を見下ろしながら、首もとのネックレスに手をかける。太陽の光を海面に反射させて、5回。数拍置いて、海に向かってささやいた。
「大丈夫だぞ、出てきても」
 祐樹が言うと、動物の「みっ」という鳴き声が聞こえ、乳白色の丸い動物が出てきた。ボールに4つの角が飛び出ているだけにも思える、奇妙な物体。海水をそこら中にちりばめながら出てきたそれを手にもち、祐樹はバッグの中からタオルを出してふいた。水がふき終わる頃にはさくらのような淡いピンク色の肌と、立派な顔と体ができた。大きさに差はないものの、幾分人間らしくなったそれは、祐樹の手からタオルをとって、自分の身体に巻きつけた。
「本当に不思議だな」
 祐樹が呟くと、動物が出てきたのと同じ場所から、今度は金色の長い髪をぬらした少女が出てきた。蒼色の目に、足元が青いうろこの、言うなれば人魚。
「タオルをくださいな。乾いたら、一緒に街へ行きましょ?」
「わかってる。ほら、アンタ用」
 投げられたバッグは、海岸に座った人魚の膝元に軽い音を立ててのる。人魚はなれた動作でバッグのチャックを開け、大きなバスタオルを取り出す。
「いつもありがとう、ね」
 人魚がうろこの水を吸い上げていくと、水の無くなったところから人の肌が見えはじめた。気付いた頃には服も靴も、カバンの中に入っていたものに着替え、うろこのあった人魚とは思えない、人間の少女のいでたちであった。
 祐樹はいつも、こうなってしまうことが不思議でたまらない。
「人魚姫って、乾いたら死ぬんじゃないのか?」
 水がわずかに滴る髪以外、体のすみずみまで乾ききった彼女は、祐樹がそう問いかけると、目を細めて笑った。
「現実とは違うものよ」
 人魚が胸を張ってそう答える様子に祐樹は首を縦に振り、いつもと変わらない海面を見つめた。少女が出てきたところには、多くの魚介類がひしめき、海の王女を心配していた。
「――早く帰らないと、……だな」
「森に行きたいのに。……時間、ないかしら?」
 人魚が不老不死である、という話はウソだが、寿命は人間に比べて『とても』長いのだと少女はいった。そんな彼女が時間を気にするなんて滑稽だな、と祐樹は笑みを浮かべて手をとり、町へと向かった。森はその、さらに西にある。動物が祐樹の手の中で、「みっ」とないた。

 いつ帰れば『早い』のか。
 2人は答えを出さずに、海を歩いた。