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第44回中高生1000字バトル

エントリ 作品 作者 文字数
フライ・ハイ ゑみりぃ 964
男のという生物 神風夜月 1000
或る小説家の苦悩。 1000
サァフガァル 歌羽深空 1000


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エントリ1  フライ・ハイ  ゑみりぃ

8階建てのビル。
屋上。
背中に感じるフェンスの圧迫感。
目を落とせばアスファルトの道路と走る車の群れ・・・。
この絶好の自殺ポジションに、僕は今立っている。
視線を下に向けたまま、
微動だにせずに。直立不動。
怖がっているわけじゃない。
一度死ぬと決めたんだ。もう怖いものなど何もない。
「じゃあ生きろ」と言いたいところだろうけど、
そうゆうお節介はこの際やめて欲しい。
僕は決めたんだ。まあ黙って見ていてよ。
動けないワケは他にあるんから。

分からないんだ。
僕が何故、自殺するのか。

散々苦労してこのビルを上がり、
やっとの思いでここに立った瞬間、
この疑問にぶち当たったまま、
僕は動けなくなってしまった。
自殺するって決めたはいいけど、そのワケが分からないなんて。
大事なことだろう?
どうせならカッコイイのがいいじゃないか。
生死をかけてるわけだし。
敵に追い詰められていて逃げ場所がなくて仕方なく・・・とか、
愛しい彼女と許されざる恋の末に・・・とか、
色々想像してみたけど、想像は想像でしかないわけで・・・。
・・・なんて考え続けて相変わらず棒立ちの僕に
一人の男の人が近づいて来た。
彼はフェンスを乗り越えて、僕の真横に立った。
こんな場所だというのに靴を脱いで、
見上げる僕は完全無視。
ふと、彼の身体が前のめりになった。

・・・あっという間だった。

彼は飛び降りた。僕の目の前で。
吸い込まれるように落ちていく彼。
僕は呆然と見送った。
目が悪いから地面に叩きつけられたであろう彼は見えなかったけど。
僕が思うに、彼には理由があったんだ。
自殺する理由が。ちゃんと。
だからこんなにあっさり飛び降りたんだ。
・・・僕は急にバカらしくなった。
自殺することが、じゃない。
こんなところで突っ立ったまま考えてるのが、だ。
別に急ぐことじゃないんだから、
また今度でもいいじゃないか。
自殺の理由が分かった後、またここに来たら、
あの彼みたいにあっさり飛び降りれるかもしれない。
8階まで上がった苦労が水の泡になるのは悔しいけれど、
思いついたらまた来よう。

そんな決意を胸に、僕は飛び降りた。

ところで、なんでも食べるカラス達は人の肉も食べるだろうか。
ビルの下に落ちてることを教えたら、
意地悪なカラス達とも友達になれるだろうか。
少し筋肉痛になった翼を広げ、
ゆっくりと舞い降りながら、
僕はそんなことを考えていた。





エントリ2  男のという生物  神風夜月

「男という生物は単純だ。1に性欲が強く、2に美人には目がない。3に浮気する」
 隆が言っていた。
 少なくとも俺は違った。
 浮気したのは彼女のほうだ。

 重い体をベッドに投げ出してから、どれほど時間が経ったのだろう。
 俺は思考を放棄していた。
 何も考えられない……。
 唯一、覚えているのは彼女から電話があったことだけだ。
 どうやって電話を切ったのかも、わからない。
 ああ、だとか、そう、だとか言ったかもしれない。
 押し殺す嗚咽も、静かに流れる涙の音も、今だけは気づかないフリをしていたかった。
 俺は全てを忘れてしまいたかったんだ。
 
 ……なのに、なんでなんだ。
 
≪ラフメ――イカ! ジョウダ―――ンじゃない!≫

 携帯からBUMPのラフメイカーが流れてくる。しかも、ボリュームはヒートアップする一方だ。
 俺をほっといてくれ。
 本当に今は、冗談通じない状況なんだ。
 電話の向こうの相手に怨念を送ってみたが、鳴り止む気配すらなかった。
 俺は舌打ちした。
 苛立ちから携帯を手に取り、
「どちらサマ?」
あからさまに不機嫌を露にする。
『ラフメイカー』

 ……。

「冗談じゃねー!」
大声で叫んでやった。
『……声、デカイんだけど』
「うるせえ!」
『ほっとくのも可哀相だから、慰めてやろうと思ったのに』
「ほぉ? 貴様は俺が失恋したの知っててそう言ってるのか。残念ながら、俺には野郎に慰めてもらう趣味は無い!」
『女ならいいんだろ? 合コンの設定したけど来る?』
「お前、人の話を聞いてないだろ」
『瞳ちゃん来るってさ』
 卑怯だ。
 ゼミのマドンナの名前を出してくるなんて。
『来ないの?』
「……行かない」
『惜しいなぁ。瞳ちゃん、お前が来るから合コンなんか参加するのに。他の薄汚い野郎に瞳ちゃんを譲ってもいいわけだ』
「そうとは言ってない」
『じゃ、来るよな?』
「……」
 沈黙を肯定と受け取って、携帯越しに、隆の忍び笑いが漏れる。
『二時間後に大学のカフェで』
 電話は一方的に切られたが、俺は聞くともなしに一分程ツーツーという音を聞いていた。
 とりあえず、涙でぐしゃぐしゃの顔をなんとかしたほうがいいと思ったので、冷水で顔を洗う。
 タオルで水気を取り去り、俺は深いため息をついて、右手に握った携帯をかかげた。
「お節介な親友と、俺の前向きすぎる性格と、男という生物であることに……乾杯ならぬ完敗!」

 シルバーカラーの携帯が、今日は一段と輝かしく見えた。

作者注:*「ラフメイカー」。BUMP OF CHICKENという音楽グループの曲。




エントリ3  或る小説家の苦悩。  音

「ただいまー」
 キーボードを打っていると、息子が帰ってきた。
彼は黒いランドセルを背負ったまま私のいるリビングを駆け抜けると、台所にある冷蔵庫から
麦茶を取り出し、食器棚から取り出したグラスにそれを注いだ。
一気に嚥下し、流しにグラスを置くと私の方へ近付いてきた。
小さな歩幅が可愛らしい。小学校低学年の子供の動作というのは無条件に可愛いものだ。
「ねぇ、おとうさん」
 背伸びをしながら、椅子に座る私と視線を合わせようとしている。非常に可愛らしい。
これはもう、親莫迦というやつでは無いだろうか。
「どうした?」
 私は正面に置いていたノートパソコンを端に寄せ、体勢を変え少し背を曲げて息子と視線の高さを合わせた。
 そしてそんな私に息子が言い放ったのは、残酷は一言だった。

「どうしておとうさんはおしごとしてないの?」

 ぴしり。そんな擬態語が今の私には似合っている。私は息子を見たまま凍りついてしまった。
何故仕事をしていないのか、と訊かれてしまった。実の息子に。
どうやら息子の目には私が仕事をしていないように見えているようだ。
これでは父としての尊厳など欠片も無いではないか。まあ、そんなもの有るのかどうかすら謎だが。
 息子の友達の父親はきちっとしたスーツに身を包み、毎朝決まった時間に家を出て会社へ向かう。
学校へ行く道すがら、息子はそれを見ているのだろう。
そんな人達と較べれば、昼間から家にいて無精髭を生やしたままスラックス姿でパソコンに向かう父親が仕事をしているように見える筈が無い。
毎朝スーツを身に纏い会社へ向かう父親は、立派に仕事をしているように見えるだろう。
 弱った。何と説明すれば良いのか。小説家などという職業が果たしてこの子に理解できるだろうか。
「おとうさん?」
 悶々と私が悩んでいると、息子は私の顔を覗き込んできた。嗚呼、早く説明をしないと私は只遊び呆けている父親になってしまう。
「……あのな、父さんは小説を書くのが仕事なんだよ」
「……しょうせつ?」
 見切り発車で説明を始めたが、私はきちんと自身の仕事について話せるだろうか。
「そう。国語の教科書に御話が載っているだろう? ああいうのを書くのが仕事なんだ」
「ふぅん……?」
 駄目だ、理解していない。どうすれば良いのかと私は悩んだが、結局良い答えは出なかった。

 夜、息子が寝てから妻にその話をすると笑い飛ばされたが、私にとってはこの上なく重要な問題なのだ。





エントリ4  サァフガァル  歌羽深空

職場で自分の顔を見る。鏡に映った、年齢不詳の女。いや、むしろ是非年齢不詳でいさせて頂きたい。例え幾つに見えても、それは私の前では言わずに、黙っていて戴きたい。お願いだから。

私は、7年間必死に学び、そして2ヶ月前から、念願だったこの職についている。

いやいや、つくといってもそう簡単にいくものではない。
何万、何億という者たちの中から選ばれた、エリート中のエリートなのだから。
教養・俊敏さ・正確さ・柔軟さ・そしてある程度の適当さが必要なのだ。

「今日は、この人の担当ね。わかったわね?」
「はい、わかりました。」

ちなみにこの仕事は1日交代である。私達が飽きないための考慮だそうだ。
名簿を渡されて、約1秒で職場に着く。その俊敏さも、訓練の賜物だ。
席につき、一呼吸すると、改めて、名簿を見てみる。

「ふぅん、山田A夫……、25歳ねぇ。うわぁ、今までの仕事記録からしてあまりいい事をしているとは言い難いわね。」

突然、目の前のモニターが突く。
お客様……もとい山田様が来た様だ。

山田様は、モニターをつけたまま歯を磨きながら、こちらに向かって微笑む。
こっちは、何も返さない。失礼な事かもしれないが、それが決まりなのである。

「おはよう?」

こう言われても、黙ったままである事。これも訓練した賜物。
それにどうせ、私に向かった話し掛けたり微笑んでいるわけではないのだから。
私の前にあるものに向かって、微笑んだりしているんだから。

あ!モニター越しにキスしてる!!

私は少し呆れながらも、平静を保って山田様が席につくのを待った。

いや、山田というよりは、むしろブタ田である。失礼な言い方か?いやいや、どうせわかっちゃあいないのだし。

ブタ田は一度うがいをしに戻り、帰りに食パンを加えてやって来て、やっとの事で席につく。

ブタ田は慣れた手つきで私の前に「ロリコン 乳」と打ち込む。
私は席を立つと、後ろのサーフボードに乗り、データの海に出た。
これが私の仕事である。
私は、ネットサーファーなのである。

しかし、ここ2ヶ月前やって来て、たまに職場を変えたいと後悔する時がある。
たとえば、今日のブタ田の様な検索を持ってくる人にあたった時もそう思う。

ただ、最近一番嫌なのは、総務省や宮内庁など、本当に関係ないところまで行って
「ロリコンや乳という単語のページはありますか?」
と聞くことである。

その時のサーファー担当事務官の目が、たまらなく嫌いだ。

え?あるの!?