QBOOKSトップ

第46回中高生1000字バトル

エントリ 作品 作者 文字数
ゆず べっそん 1391
あたしはきっと笑ってた。 香月 1277
恋愛無しのロミオとジュリエット 歌羽深空 1000
太陽までの距離 芦野 前 1000
クワガタとかくざとうとナマケモノの話 神崎現 1000
ブレイク。 1000


バトル開始後の訂正・修正は受け付けませんのでご覚悟を。

投票、投稿、ありがとうございました

バトル結果ここからご覧ください。




エントリ1  ゆず   べっそん

今日も元気だ酎ハイがうまい。いくぞぉ〜〜!! いーチ、にぃ〜、サーん・・・       ぱぁ。

 ゆずがくさい。 柚子、マジしみるだけ。なんで、婆ばこんなのいれちゃうんだろう。つれぇよ。うぜぇよ。

「あっちゃ〜ん、柚子の皮でよ〜肌もんどきぃ。とんだべっぴんさぁなるからぁ。」

婆ばありがとう。これが、ひ孫がいてもピンピン現役の婆ばの美貌の秘訣だんだね。 んなバカな。そんな心配してんだったら、ファンデの一つでも買えるように、金くれよ。年金たんまりじゃろ?爺じ、校長までしぶとくやったんだから。

「ぬるくないかぇ。言うてくれたら、もっと薪さ、くべるからぁ。」

ちょうどいいよ。ありがとう。
臭いだけだから。痛いだけだから。ニキビぶつぶつ、婆ば似でブサイクなだけだから。   
  
ちょっと最近胸が発育した。黄色い湯につかったふくらみを見下ろす。彼氏ができて、もんでくれたからかな。 あいつにもまれたってのはちょいとアタシの自慢話。野球部で、二年だけどレギュラーで、今年の夏は甲子園出場を果たしてる。だから、顔は猿だけど、やたらモテル。キャーキャー叫んで、メス猿がオス猿を追い掛け回す。オスは盛りだから、かたっぱしから犯しまくる。そんで、アタシも話題性に魅せられてオスにのっからせてやったバカなメス猿。 でも、みんなやりたっがてるから、やっぱちょいと鼻タカダカ。  

 でも、処女だった。

ホントは痛かった。 裂けるようだった。 やばかった・・・

自分らが想像してるようなところじゃなくて、ココロが。 

友達には自慢しまくりながら、自分の言葉がジンジン傷にしみてる。
かっこわりぃヤツだな、アタシは。

えぇ、どうせあたしは使用済みですよ。好きでもない男にやらせまちた。
ナニカ?
唯一の救いは、アイツがアタシとやってからちょっとしたぐらいに、アイツは見境なく女とやるのをやめたらしいって噂がすこ〜しだけ流れたこと。アタシはそれを都合のいいように解釈しちゃってる。これ、あたしの思想の自由。
つーか、やっぱ・・・  しみるんだよこのくせぇ、お湯が! つらかぁ。

風呂でて、酎ハイぐきゅぐきゅ飲んで、夕飯は・・・から揚げ。婆ば特製。
「あっちゃん、コレあんたの高校やろ?」
爺じが指差したのはNHKが選局されてるテレビ画面。甲子園中継。 
マウンドであいつが見たことないような真剣な顔でサインに首振ってる。
キュン。
 今日試合だったんだ。 忘れてた。      

・・・ウソ、覚えてた。 見ないつもりだったのに。

あいつのグローブに、あいつのフォームに、あいつの二重の目に吸い込まれそだった。
吸い込まれそうだから、目をつむったら、カキン。歯切れの良い金属音。
目あけたら、あいつがマウンドで、ヒザをついて崩れていた。チームメイト達がまわりに集まってきて、整列させるために、肩をかす。
あ〜ぁ。泣いてやがんの・・・    あいつ、野球好きなんだな。
ちょっとそれっぽく目頭が熱くなってきちゃったりしたから、ティッシュ一枚とって、ずずぅ〜。 泣くなよ、猿。泣くなよ、アタシ!  
あいつは野球とアタシだったら、どっちが好きなのかな。 
つーか、そんなのわかんない。 つーか、なんでこんなにしみるんだろう。
今夜メールで聞いてみよ。 なんでって、あいつは猿で、女たらしで、アホで、やっぱり猿みたいに泣くけど、
どうやら、アタシはその猿が好きみたいだから。





エントリ2  あたしはきっと笑ってた。   香月

それは、ひどく蒸し暑い日だった。

なんていうか、こういう状態を自暴自棄と言うのだろうか。あたしはくだらない古典の授業なんて微塵も聞かずに、今の自分についての分析をしていた。なにがおもしろいのかわからない。なにをしたいのかわからない。こんな、きっとみんなにとってはくだらなすぎる、数学のテストでいう所の問1みたいな問題にずっとつまづいているんだ。今のあたしには『みんな』が誰なのかもわからない。
「キーンコーン カーンコーン・・」
あたしはひとり昼飯を買いに学校前のコンビニへ行った。おにぎりなんかちっとも食べたくはないのに、あたしの体はまるで決められた通りに動くだけの人工ロボットのようにおにぎりを二つレジへ持っていった。きっとあたしが何を考えても無駄なんだ。体は生きるために動き続ける。

前のおばさんがのろのろしてて、あたしはイライラしながら外を見た。コンビニ前の電柱に一匹の真っ白とはいえない、すこし汚れた雑種犬がつながれていた。あたしはそいつと似てるかもしれない。自由になりたいともがき汚れるけど、結局何がしたいのかもわからない。馬鹿な生き物。
ようやく開いたレジであたしはさっさと買い物を済ませ、店を出た。その犬はあたしの前のおばさんの犬だったようで、にこにこだらしない格好をしたおばさんに連れて行かれていた。あたしはそれがまるでそいつの牢獄に見えて、駆け足になった。
おばさんが足音で振り返る。あたしはかがんで犬の頭を撫でる。おばさんは誇らしげに「可愛い子でしょ」と言った。あたしにはおばさんがあたしの周りの『みんな』に見えて。もうその犬はあたしにしか見えなくて。
そっと、長い髪をまとめていたシルバーのコンコルドをはずした。
「でも、このコかわいそうですね」
おばさんはむっとした顔をしたけど、あたしは続けた。
「自由にしてあげないと」

きっとあたしは笑ってた。

勢いよく振り下ろした右手に、綺麗なまでのしぶきがあたしに降り注いだ。顔も、胸も、腕も、すべてがまっさらになっていく気がした。だというのに、おばさんの世界を切り裂くような叫び声であたしは現実に戻らなければならなかった。
「ぃいやぁぁぁぁぁぁあー!!!!!!」
コンコルドは犬の首に深く刺さっている。おばさんは愛犬を殺されたことに腹を立てることなど忘れて、あたしの突然の行動に怯えきっている。あたしはもう一度右手に力を込め、刺さったまま前後左右に動かす。そのたび、ぐちゃ、という音と手に不思議な感覚が走る。あたしは犬に「ごめんね」と一言いった。殺してごめんね、ではない。首を切り離してあげられなくてごめんね、だ。
あたしは今度力いっぱい手を振り上げ、コンコルドを抜いた。そして、愛犬を捨て逃げ去っていくおばさんの後姿を見ながら、笑った。

「かわりにあたしもがんばるね」犬に告げて。

痛いというよりも、あたしはなんだか楽しかった。はじめて自分の『生』を感じた気がして。すごい。人間て、動物ってすごいと改めて感じた。
あたしは『生』に酔いしれたまま、首にコンコルドを刺して、雑種とともに死を迎えた。
あたしはきっと笑ってた。





エントリ3  恋愛無しのロミオとジュリエット   歌羽深空

昔見たっけな。
あの頃のドラマは、このまま時が止まればいいのに、なんて台詞がよくあったな。
そして自分もまた、好きな人と時の経過など関係なく、過ごせたらどれだけいいだろうと思ったものだったが。

実際のところ、いざ自分の身に起こってみると、これ以上の苦痛は無いもんだ。
しかも自分は好きでも嫌いでもない人、つまり赤の他人となのだから。いや、もしかしたら知っている人かもしれない。ただ、どうしても思い出せなかったのだから、これはもう赤の他人の扱いでいいだろう。

「どういう事かね、これは。」
「どういう、と言われましても。」

何でこんな時に時が止まるのだろう。
晴れた空、スズメ達が、微動だにせず空間にいる。まるでアート美術館にいるような感覚だ。いや、実際行った事は無いが。
そして今、この時の止まった空間で動いているは、自分とこの婆さんだけだ。

「一体何があったんだい、なんだ、時間が止まったのか。」
「さぁ。私は、そう思っていましたが。」
「あんた、誰だい。」
「あなたも、誰でしたっけ。」
「さぁ。」
「向かい合っているんで、面識はあったんでしょうね。」
「いやいや。もしかしたら、私が道を尋ねていただけかもしれないよ。」
「それもありますね。」

時が止まるというのは恐ろしいもので、顔と内臓部分は動くが、他の部分は全く動かない。これじゃ他の場所はどうなのか見に行くわけにもいかない。
しかもこんな婆さんと一緒だなんて、……あー、もう。

「久美子、大丈夫か。」
「久美子って言うのは、あんたの奥さんかい?」
「はい。」
「そうかい……孫の直樹は、どうしているだろう。」
「心配ですね。」
「まったくだよ。」

「お前な、トイレの場所くらいわかれって。」
「俺の家じゃねえもん!そんなのわかるかよ!さ、続きやろうぜ。」
「おう!負けねえからな!」

そう言い子供達は、ゲームを再開する。

「いっちゃえ、サラリーマPC波!」
「おい、オルドウマンには近未来攻撃は……!あー!少しで死ぬじゃん!」
「へへへ。」
「くそぉ、ババア嫁嫌味爆弾!」
「あー!お前、メンタルの弱いペコペコンにはその攻撃絶大なんだからな!あーあ、負けた。折角新婚レベルにまで育てたのに!」

こうして、また彼らの時は動き出し、そして終わったのである……が。

「暗い!暗いんですけど!」
「私に言わないでおくれ!私だって見えないんだ!」
「あなた……誰ですか?」
「あんたこそ、誰だい?」
「「……。」」
「「さあ。」」





エントリ4  太陽までの距離   芦野 前

 真っ青に晴れた夏の朝。
 排気ガスにまみれた小さな世界にうんざりしながら、僕は早足でまっすぐに通りを歩いていた。
「逃げなさい」
 唐突に、凛と通る声が辺りを打つ。
 女が一人立っていた。
 それもずいぶん造作の整った、眩しい顔立ちの。
「取り憑かれるわよ!」
 僕の顔が疑問に歪む。
 取り憑かれるって、いったい何に。
 話が通じないとわかった女の顔に、絶望が走る。
 いつもと変わらない風景の中で浮くその必死さは、妙に滑稽だ。
 ははあ、さてはこの人、現実と漫画の世界を混同しちゃってる可哀想な人なのか。
 最近よくいるんだよな、そう思って視線を下げる。
 他人の顔をして早足で動き出そうとした先に、黒いものが見えた。
 見慣れた景色に付随する影ではない。
 影は、こんなに意思を持った動き方はしない。
 流動するタールのように、それはじわり、じわりとこちらに近づいてくる。
 僕がいつものように進もうとした、まっすぐの道を逆にたどって。

「逃げて!」
 女が悲痛な叫び声をあげる。
 そういえばこの人はずいぶん「特別」な感じがするな。
 顔もスタイルもよくて、着ているものも高そうだけれど、何よりその雰囲気が。
 決して屈せず立ち向かっていく、まるで強い炎のような。
 昔の戦隊ものに、こういう人が出てきたっけ。
「逃げてってば……」
 対して僕は、普通の家庭に生まれて普通の大学を出て普通の企業に就職した、ごく普通のサラリーマンだ。
 ヒーローなんてガラじゃあ、もちろんない。

 女が僕とそれの間に立ちはだかる。
 ふと見ると、肩が細かく震えていた。
 ああ、ヒーローがピンチだよ。
 僕は「特別」にはなれなかったけれど、せめて。
 せめて、目の前で見たことを信じるくらいは。

 道を逸れ、横に走る。
 僕とそれを結んでいた「いつもの道」が崩れて、黒いものの動きが止まる。
 彼女が胸の前で手を交差させるとそれは消えた。
 思ったよりあっけない終わり方だった。
 彼女が地面に座り込み、僕は慌てて駆け寄る。
「ありがとう」
 彼女が言った。
 アリガトウ。
 きらきら光る笑顔を携えて、彼女は僕に、そう言った。

 日差しが眩しくて、空を仰いだ。
 大きな太陽と僕の間には途方もない距離がある。
 僕の視界には相変わらず、金融会社のビルやラブホテルの看板ばかりが目に入るけれど。
 今はこの光が見せてくれた夏の幻を信じて、とりあえず会社への道を急ぐ。

 今日も、暑い一日がはじまる。





エントリ5  クワガタとかくざとうとナマケモノの話   神崎現

 昔、ナマケモノとクワガタとかくざとうが仲良く暮らしていました。
 クワガタは毎日森から薪を運びました。ナマケモノは水車小屋で小麦を挽き、窯に火をおこして、配膳をすることになっていました。かくざとうは料理番でした。
 ある日のことです。
 クワガタは道すがらカブトムシに出会い、自分の身の上を得意げに話しました。カブトムシは言いました。
「ばっかじゃねぇの。ナマケモノは火ぃおこして、小麦挽きゃ、メシまで休みじゃん? かくざとうはパイ生地に甘み付けて、窯の前で座ってりゃいいし? パイが焼けたら、お前が帰ってきて、楽しくご飯の時間かよ。そんで朝までぐっすり。『ステキな暮らし』だよな」
 翌日、そそのかされたクワガタは、こう訴えました。
「仕事を取りかえてみようよ」
 ナマケモノとかくざとうは彼を説得できませんでした。仕方なく、仕事を交換しました。
 かくざとうは薪、ナマケモノは料理番に、クワガタは火おこしと粉挽きになりました。
 かくざとうは森へ行きました。クワガタは火をおこし、ナマケモノはパイを作り、かくざとうの帰りを待っていました。
 しかし、かくざとうは帰ってきません。心配になってクワガタが迎えにいくと、いくらも行かないうちに、大勢の蟻が哀れなかくざとうを殺しているのを見つけました。クワガタは蟻を威嚇しましたが、蟻はぱっと散っては戻ってくるのでした。 クワガタは家に帰り、ナマケモノにそのことを話しました。ふたりは悲しくなりました。けれど、すぐに彼らはこう言い合いました。
「楽しく暮らそう、かくざとうの代わりに」
 クワガタは食卓、ナマケモノは食事の支度をします。かくざとうがしたように窯に身を乗り入れ、パイを焼こうとしました。すると、のんびりしたせいで毛に火がつき、パイと一緒に焼けてしまいました。
 クワガタが来ると、料理番が居ません。びっくりして探しましたが、料理番を見つけられませんでした。
 クワガタは料理番が出かけたのだと思いました。ですから、水車小屋で粉を挽くことにしました。そして、石臼の穴に小麦を注ぎ込んでいる時に、うっかり自分も穴に落ち、挽かれて死んでしまいました。

作者注:グリム童話「小ねずみと小鳥と焼きソーセージの話」の換骨奪胎モノ。





エントリ6  ブレイク。   音

 窓の外には青空が広がっている。夏はもうじき終わる。振り絞るように、蝉が鳴いている。
クーラーも扇風機もない部屋の中。私を見つめる彼の額にはじっとりと玉の汗が溜まっている。
汗を吸ってTシャツの色が変わってしまっている。
 私は虚空を見つめている。彼は動かない私を黙ったまま見つめている。
……嗚呼、そんな瞳で私を見ないで。私はもう疲れてしまったの。
もう、厭なの。あなたとこれ以上暮らすのは御免なの。
「なぁ……」
 やめて。そんな苦しそうな表情で私を見ないで。
私に飽きたと云っていたじゃない。他の子が良いんでしょう?
知ってるわ、私。あなた最近、外国から来たというあの子ばかり目で追っていたでしょう。
貴方から一番近いところにいた私が気付かない筈無いじゃない。
名前は確かローラとか云ったかしら。良いとこの御嬢さんって感じだったわね。
「どうしてなんだよ!」
 どん、という大きな音。彼がテーブルを叩いた音だ。
グラスが倒れて中に入っていた紅茶が私に掛かったので彼は慌てた。別に私は気にしていないのに。
 どうしてかなんて貴方が一番よく知っているでしょう。
私の鼓動はもう直ぐ止まってしまうし、貴方は私に飽き始めていたし、丁度新しい子も見つけていた。
完璧な理由じゃない。これ以上の理由が有るかしら。しかも私は貴方を引き止めようとはしていないのよ。
幸せな事じゃない。心置きなくローラのもとへ行けるでしょう。自分で云うのもなんだけど、私って結構寛大なのよ。
「俺は……御前を捨てなきゃいけないのか?」
 彼の問いに、私は答えない。彼もそれを知っていながら訊いているのだ。
意味の無い質問。訊くという行為だけで彼は満足しているに違いない。例え自覚が無かったとしても。
私は貴方以上に貴方の事を理解しているつもりよ。だって私は貴方の事を誰よりも愛していたんだから。
 さあ早く、私を捨ててしまいなさい。ローラのもとへ行きなさいよ。もう良いわ。楽しかったわ。
あなたと過ごした六年間を私は決して忘れない。私の鼓動はもう直ぐ止まってしまうけれど。
『さよなら、さよなら。有難う。楽しかったわ……願わくば、貴方が私を忘れませんように……』
 彼に届かない言葉。奇跡が起きて届いたら良いのだけれど……きっと無理ね。
 
 嗚呼、鼓動が……止まってしまう…………

「爺ちゃんに買って貰ったのに……とうとう止まっちまったなぁ……次は自分でロレックス、買っちゃおうかな」